自宅でも簡単におこなえる下半身トレーニングとして人気の「ランジ」。自重でも効果が期待できるので、筋トレ初心者でも取り組みやすい。本記事では「ランジ」で鍛えられる部位と効果、正しいやり方、効果を出すためのポイントなどを詳しくご紹介。
より負荷を高めたい人向けのバリエーションも紹介しているので、ステップアップした種目をおこないたい人もぜひ参考にしてみよう。
この記事の監修者
つむら みおさん
パーソナルトレーナー
下半身筋トレの「ランジ」はどこに効く?鍛えられる4つの部位
ここでは、「ランジ」で鍛えられる部位をご紹介。「ランジ」では下半身の様々な筋肉を鍛えることができるので、気になった人は確認してみよう。
ハムストリングス
ハムストリングスは、「大腿二頭筋(だいたいにとうきん)」「半膜様筋(はんまくようきん)」「半腱様筋(はんけんようきん)」の3つの筋肉から構成されている。ひざを曲げて足を前に出す際に、ハムストリングスが働くため、日常での歩く動作や、ジャンプやダッシュといったスポーツのパフォーマンスに影響を与えている。
「ランジ」は、脚を踏み出す動作や体重を支える動作などで、ハムストリングス全体をバランスよく鍛えられることが可能。
大臀筋
大臀筋(だいでんきん)は、お尻の筋肉の中で最も大きい筋肉。「体幹を支える」「股関節を伸展する」など、日常動作でも欠かせない動きをサポートしている。
また、大きな筋肉を鍛えて大きくすることで基礎代謝が上がるため、効率よくダイエットや脂肪燃焼ができるようになる。
大腿四頭筋(だいたいしとうきん)
大腿四頭筋は、太ももの表側にある「大腿直筋(だいたいちょっきん)」「内側広筋(ないそくこうきん)」「外側広筋(がいそくこうきん)」「中間広筋(ちゅうかんこうきん)」の4つの筋肉の総称。
ひざや股関節の曲げ伸ばしをサポートしており、歩く・階段を上るなど日常生活を送る中で使っている筋肉。
腸腰筋
腸腰筋は、股関節内部にあるインナーマッスル。「大腰筋」と「腸骨筋」の2つの筋肉から構成され、股関節を曲げたり身体を支えるなどの役割を担っている。
デスクワークで固まりがちな筋肉でもあり、腰痛や身体のゆがみを引き起こす原因にもなる。
「ランジ」の4つの効果
ここでは、「ランジ」で得られる以下の効果を詳しくご紹介。
- 基礎代謝が上がり瘦せやすい身体になる
- スポーツの能力が上がる
- 下半身が引き締まりキレイなラインになる
- 姿勢改善が期待できる
「ランジ」をトレーニングに取り入れようか迷っている人はぜひ参考にしてみよう。
基礎代謝が上がり瘦せやすい身体になる
「ランジ」は、下半身の中でも大きな筋肉である大臀筋(だいでんきん)や大腿四頭筋を効率的に鍛えられるトレーニングメニュー。トレーニングをおこなうことで増える筋肉量が多くなるので、基礎代謝が上がるトレーニングでもある。
基礎代謝があがることで、何もしなくても消費するエネルギー量が増えるため、ダイエットやリバウンド防止にもおすすめ。また、自重トレーニングの中でも比較的運動強度が高いため、基礎代謝が上がりやすい。
スポーツの能力が上がる
「ランジ」は、大臀筋や大腿四頭筋など、ジャンプ力や走る動作に欠かせない下半身の主要な筋肉を鍛えられ、スポーツのパフォーマンスを上げたい人にはおすすめのトレーニング。また、体幹を安定させる効果も期待できるため、力を効率的に伝えることができるようになる。
下半身が引き締まりキレイなラインになる
「ランジ」では、お尻や太ももの前後、内ももといった下半身全体を、自重トレーニングとしては高めの強度で鍛えることができる。そのため、太ももやお尻をきれいに引き締める効果が期待できる。
また、お尻を鍛えることで、ヒップトップの位置が上がり、脚が長く見える効果も。下半身の太さが気になる人や、スタイルアップをめざしたい人にもおすすめ。
姿勢改善が期待できる
「ランジ」は身体のバランスを取りながらおこなうトレーニングなため、体幹やバランス感覚も鍛えることができる。体幹を鍛えることで姿勢の維持がしやすくなり、結果的に姿勢をよくする効果が期待できる。
また、バランス感覚がよくなることで、転倒防止など日常の動作をよりスムーズにおこなえるようになる。長時間のデスクワークや、立ち仕事で姿勢が悪くなりがちの人にもおすすめ。
「ランジ」のやり方
- 足を肩幅に開いて真っすぐ立つ。手は身体の横か腰に置く
- 大きく前に一歩踏み出し着地する
- ひざを曲げて身体を下げ、前脚の太ももが地面と平行になるまで降ろす。前脚に体重がかかっていることを確認し、後ろ脚の膝が地面に触れないようにする
- 後ろ脚を使って立ち上がり、初めの位置に戻る。この動作を繰り返す
「ランジ」は、片足ずつ前に踏み出してその場に戻る動作をおこない、とくに下半身の筋肉に集中した負荷をかけることができる。内転筋や体幹の筋肉を含む、下半身の筋肉を効率的に鍛えられる。
また、ランジ初心者にもおすすめ。スクワットなどの自重で下半身を鍛えるトレーニングに慣れてきたら始めてみよう。
ただし、正しいフォームでトレーニングできるようになるのが、効果的かつ安全なトレーニングの第一歩。フォームをチェックするために鏡を使用したり、パーソナルジムなどで専門知識を持った人から指導を受けたりするのもおすすめ。
身体を深く下げられているか、バランスを崩さずに動作ができているかを常に意識しましょう。ひざがつま先と同じ方向を向くようにする、背中を丸めないようにすることも重要なポイントです。
「ランジ」のコツとトレーニング時の注意点
とくに「フロントランジ」の場合は重心の位置に注意しよう。つま先に重心が集中してしまうと、ひざへの負担が強くなり、ケガのリスクを高めてしまう。
出した足のかかとに体重を乗せてバランスを取るようにし、下半身の筋肉を効率的に使ってひざへの負荷を適切に分散させよう。
背筋をまっすぐに保つことも重要なポイント。姿勢が悪いと、効果的に筋肉が使えず、身体のほかの部分に不必要な負担がかかってしまいます。
「ランジ」の回数
回数は、男女問わず、セットあたり10~15回を基準にするのがおすすめ。大切なのは正しいフォームでおこなうこと。
とくに、ひざがつま先を超えないようにし、背筋をまっすぐ保つことを意識しよう。正しいフォームでおこなうことで、ひざや腰への不必要な負担を防ぎつつ、トレーニングの効果を最大化できる。
トレーニングの頻度は、週に2~3回が目安。筋肉の回復時間を確保することで、効果的な筋力アップを目指すことができます。
より負荷を高めたい人におすすめの「ランジ」5種目
ここでは、より負荷をかけることのできる「ランジ」を5種類ご紹介。それぞれ負荷をかけられる部位や強度が異なるので、自分に合ったものを見つけてみて。ただし、「ランジ」に慣れていない人は基本の「ランジ」から始めるのがおすすめ。
正しい姿勢を維持した状態で10~15回、3セットができるようになったら徐々に負荷を強めていくことで、ケガをしたり、狙った部位にうまく負荷がかからない状態を防ぐことができる。
ランジウォーク/ウォーキングランジ
<やり方>
- 両腕を胸の前でクロスさせ、片脚を大きく前に踏み出しかかとで着地する。後ろの脚は、ひざがほぼ地面に触れるまで曲げる
- 後ろ足で地面を強く蹴って一歩前進し、脚の前後を入れ替えて着地する。この動作を続けて前に進む
「ランジウォーク」は、普通の「ランジ」よりも負荷を高めたい人におすすめ。歩くこと自体がトレーニングになり、大腿四頭筋、ハムストリングス、大臀筋、ふくらはぎが鍛えられるほか、心肺機能が強化されるなどのメリットも。
トレーニングをおこなうためには広いスペースでおこなう必要があるため、自宅でトレーニングしたい人には向かない場合も。ジムや体育館などの広いスペースでトレーニングできる人はぜひ挑戦してみよう。
前足で立ち上がり、左右にぶれないよう脚を使ってバランスを保つことで、下半身だけでなく、コアの筋肉も鍛えられる。
「ランジウォーク」をおこなう際は、ひざをつま先よりも前に出さないのがポイント。脚を前に出しすぎるとひざも前に出やすくなり、ひざへの負担が大きくなってしまいます。体重を一回一回しっかりと後ろの脚に移動させ、落とすことを意識しましょう。
サイドランジ
<やり方>
- 直立した状態から、片足づつ足を横に広げる
- 広げた足の踵に体重を移す
- 内転筋が伸びるのを感じたら、床を蹴り初期の姿勢に戻る。この動作を繰り返す
「サイドランジ」は、足を横に大きく開く動作を利用して、内転筋に効果的にアプローチできるトレーニング。内転筋を鍛えたい人や、内ももをスッキリさせたい人におすすめ。
「サイドランジ」では、身体を深く下げる動作ができているかを確認しよう。しっかりと真横に踏み出し、ひざの角度は90度をめざすのが理想。より下半身の筋肉に適切な負荷をかけることができる。
ただし、90度まで深く踏み出すことは初心者には難しいため、少し角度を浅くして中腰程度から始めるのもよい。
ひざだけでなく股関節からしっかりと曲げることが重要です。股関節を意識することで、単にひざを曲げるのではなく、より広範囲の筋肉にアプローチでき、下半身の筋肉を効率的に鍛えることができます。
バックランジ
<やり方>
- 立った状態から、片足を後ろに引いて身体を下げる
- 前足のかかとに重心を置き、バランスを保つ
- 大臀筋が伸びる感覚があれば、前足のかかとで床を蹴り、元の姿勢に戻る。逆足でも同様に繰り返す
「バックランジ」は後ろに一歩踏み出し、踏み出した足のひざが床にほぼ触れるくらいまで身体を下げるトレーニング。お尻の形を整えたい人や、ももの前側に負担をかけずにトレーニングがしたい人、さらにはひざに負荷をかけたくない人におすすめ。
このトレーニングは、とくに大臀筋に負荷をかけることができ、お尻のラインをきれいにするのにぴったり。
「バックランジ」をする際には、背筋をまっすぐに保つことも忘れずに。姿勢を正しく保つことで、バランスを取りやすくなり、ひざだけでなく下半身全体の筋肉を均等に鍛えることができます。
ジャンプランジ
<やり方>
- 脚を前後にひらいて、姿勢を崩さず、軽く前傾する
- 前脚を90度に曲げ、身体を下げる(基本的なランジの姿勢と同様)
- 少し身体を落として床を蹴り、ジャンプする
- 空中で脚を前後入れ替えて「ランジ」の姿勢で着地する
- 身体を深く下げる
「ジャンプランジ」はトレーニングの中上級者におすすめ。バランスの維持が難しく、負荷も高いため、「バックランジ」やほかの「ランジ」を正しいフォームでしっかりできるようになってから取り組むようにしよう。
「ジャンプランジ」は、とくに下半身の筋肉に集中的にアプローチでき、心拍数も上がるので、有酸素運動の効果も期待できる。「ジャンプランジ」をおこなう際は、足を適切な幅で開くことが大切。
つま先とひざの向きは、とくにジャンプ時や着地時にひざが内側に入らないように。ひざが内側に入ると、ひざへの不適切なストレスがかかり、ケガの原因となることがある。
ジャンプする際は、身体を前に倒しすぎないように注意しましょう。身体を前傾させすぎると、バランスを崩しやすくなり、ひざへの負担も増えてしまいます。身体はできるだけ垂直に保つように意識しましょう。
ダンベルランジ
<やり方>
- 直立の状態から右脚を前方に踏み込んで、膝を曲げて腰を落とす
- 膝がつま先より前に出ないように注意する
- 出した足で床を押し返し、スタートポジションまで戻る
- 逆の足も同様に前方へ踏み込み、膝が直角になるくらいまで腰を落とす。
- 繰り返す
「ダンベルランジ」は、ダンベルを使用することで、「ランジ」のトレーニング効果を高め、下半身だけでなく、コアの安定性や全身の筋力も鍛えることができる。普通の「ランジ」で物足りなくなった人や、トレーニングの強度を上げたい中級者以上の人におすすめ。
ダンベルの重さは、普段の「ランジ」の回数をキープしつつ、それをダンベルを持って継続できる程度に設定することが理想的。初めて「ダンベルランジ」をおこなう場合は、比較的軽い重量から始め、徐々に重さを増やしていくようにしよう。
これにより、ケガのリスクを最小限に抑えつつ、筋肉を効率的に鍛えられる。重要なのは、ダンベルの重さによってフォームが崩れないこと。無理せず、自分に適した重量と回数でトレーニングを実施しよう。
ダンベルの重さに身体が引っ張られないよう、しっかりと身体を起こすことが大切。ダンベルを両手に持つ際は、肩から下へと力を抜いてぶらりと下ろすようにしてください。ダンベルの重さによって姿勢が崩れたり、不必要な力が入ったりするのを防ぐことができます。
ダンベルは両手で1つだけ抱えてもいいですが、この場合はかけられる負荷が両手のときよりも小さくなります。軽い重さから始め、徐々に重さを増やしていくのが望ましいため、ダンベル1つからはじめ、慣れてきたら2つにするのもひとつの手です。
「ランジ」と「スクワット」の違い
高負荷で効率的に鍛えたい人は「スクワット」
「スクワット」は両足で体重を支えるため、安定性が高く、バランスを取りやすい。このため、バランス感覚に自信がない人や筋力に不安がある人におすすめ。
一方で、「ランジ」は片足ずつ体重を支えるため、バランスを取るのが難しい。「ランジ」はとくに臀部や大腿四頭筋、ハムストリングスなど、特定の筋肉に負荷をかけることができるため、特定部位の強化をめざす場合や、より高度なバランス能力が欲しい人におすすめ。
トレーニングの目的や自身の能力、安全にトレーニングできるかどうかを踏まえて、「スクワット」と「ランジ」を使い分けたり、組み合わせて取り組んだりしよう。
左右差なくバランスよく鍛えるなら「ランジ」
「ランジ」は左右の筋力バランスを整えるのに役立つ。多くの人は無意識のうちに片方の足により多く体重をかけがちだが、「ランジ」をおこなうことで差をなくし、左右均等に筋肉を鍛えられる。
ただし、「ランジ」はスクワットよりも難易度が高く、ひざや腰への負担を増加させるリスクがあります。そのため、スクワットに慣れてきた人など、トレーニングで少し筋力に自信がついてきたら取り入れるようにするのがおすすめです。
「ランジ」に関するQ&A
「ランジ」でひざが痛くなる原因は?
A:「筋肉バランスの乱れ」や「股関節の柔軟性が低い場合」、「関節が硬く動きにくい」、「膝関節を過度に曲げている」などが原因になる
「ランジ」をおこなう際には、身体を直立させて前に傾けすぎないようにし、ひざがつま先を超えないように注意しましょう。また、無理に身体を深く下げすぎないことも重要で、自身の柔軟性や筋力に合わせた強度でおこないましょう。
ウォーミングアップとして、股関節を軽く動かして柔らかくしておくのもおすすめです。
「ランジ」をするとふらつくが、どうしたらいい?
A:インナーマッスル、股関節、足裏、内転筋を使うことでふらつきを抑えられる
ふらつきを抑えるためには上半身を安定させる必要があります。そのため、内転筋を意識的に使い、親指で地面を踏ん張ることも大切です。ひざが左右に流れるのを防ぎ、全体の安定性を高めるのにも役立ちます。
さらに、お腹のインナーマッスルを意識することで、体幹の安定性を高め、バランスを取りやすくなります。
「ランジ」をするとランニングのレベルも上がる?
A:「ランジ」をするときの動作が足全体の回転率をよくするための強化につながる
「ランジ」は股関節やふくらはぎ、前ふくらはぎ、内転筋を含む脚全体の筋肉を鍛える動作であり、脚の回転率をよくし、機能性を高める効果があります。結果として、足の動きが速くなり、ランニングのレベルが上がる可能性があります。
「ランジ」は高齢者のリハビリにもいい?
A:リハビリとしては若干難易度が高い
「ランジ」は自重のトレーニングのなかでも負荷が高めで、バランスをとることが必要になるトレーニングです。そのため、「リハビリ」という文脈では、最初から標準的な「ランジ」をおすすめすることは難しいです。
徐々に体力が向上してきたら軽い負荷の「ランジ」に挑戦したり、「ランジ」ができるようにすること自体を目標とし、そのために足腰を鍛えるトレーニングをおこなうようにしましょう。
ハーティネス株式会社代表
フィットネス勤務から独立し、現在はダイエット迷子に正しい知識を伝えるためのオンライングループレッスン運営中。
コンプレックスを強みに変える!ボディメイク運動指導やリバウンドなしで、理想の体を手に入れる食事指導をおこなっている。
2チャンネル目となるYouTube「みおGYM」にて週2回エクササイズ配信中
著書4冊/各種雑誌、テレビ出演
JBBF 日本ボディビル・フィットネス連盟 2年連続優勝経験を持つ