ウェルビーイング(Well-Being)とは?

Well-beingとは?

ウェルビーイングとは、「well=よく、よい」と「being=存在する、〜の状態」が組み合わされた言葉。「福祉」「人々の満足度」「幸福」といったように、様々な視点で語られることも多い。WHOでは、健康の定義は「精神的、肉体的、社会的によく生きることを含んだポジティブな状態」であると広く受け入れられている。ただ、ウェルビーイングを定義づける必要はないとも言われている。

ウェルビーイングが定義されていない一因は、ウェルビーイングがひとり一人違う概念で捉えられると考えられているから。日々の生活の中でも考え方は変わっていき、コロナのような誰も想像できないような外的要因によって、ウェルビーイングの概念も変わってしまうものだと気が付かされた。

堂上 研

Wellulu編集長

堂上 研

私たちWellulu(ウェルル)は「つながりの中でつくる関係性」をウェルビーイングのベースに考えています。特に大切にしているのは、主観的なウェルビーイングです。主観的なウェルビーイングの掛け算が個人のウェルビーイングにつながり、地域やコミュニティのウェルビーイングにつながります。それが最後には地球のウェルビーイングにもつながっていると信じています。

ウェルビーイングと歴史

ウェルビーイングと歴史

ウェルビーイングは、well(良い)とbeing(状態)を組み合わせた言葉で、「良好な状態」を意味する概念。世界保健機関(WHO)は、健康を「身体的、精神的、社会的に良好な状態」と定義しているが、ウェルビーイングはそれに加え、人生の質や生きがい、自己実現なども重視する。身体的健康だけでなく、精神的・社会的な充実感や満足感を追求するのがウェルビーイング。

ウェルビーイングという概念自体は古くからあるが、学術的に使われ始めたのは比較的最近のこと。1948年にWHOが健康の定義に「社会的に良好な状態」を加えたことで、身体的健康だけでなく精神的・社会的な側面も重視されるようになった。

ウェルビーイングの歴史におけるターニングポイントはコロナによるパンデミック。そこで、ウェルビーイングな生き方ができなくなった。一つ目は『孤独』。コロナによって人とのつながりが失われ、孤独が社会課題として顕在化したこと。二つ目は『内省』。パンデミックによって自分はどう生きるのかという内省の機会が生まれたこと。

同時に、GDPに変わる考え方としてGDW(Gross Domestic Wellbeing国内総充実度)という考え方が世界で進められてきている。客観的で物質的な豊かさを測定するGDPでは捉えきれない、国民一人ひとりが心理的に体感できる幸せを意味するウェルビーイングの総量を測る指標としてのGDWは注目されだしている。

堂上 研

Wellulu編集長

堂上 研

個人の価値観が多様化し、モノ消費からコト消費へとシフトしていることも、ウェルビーイングへの関心の高まりに影響しています。「LIVE」から、「HAVE」へシフトし、「DO」に変化してきた時代において、今後は「BE」(どう在りたいか)という生き方がウェルビーイングと言われています。

主観的ウェルビーイングと客観的ウェルビーイング

主観的ウェルビーイングと客観的ウェルビーイング

ウェルビーイングには、「主観的ウェルビーイング」と「客観的ウェルビーイング」の2つの側面がある。「主観的ウェルビーイング」は、個人の主観的な感情や認知に基づくもので、ポジティブ感情の頻度や人生満足度などで測定される。

一方で「客観的ウェルビーイング」は、所得や健康状態、教育水準、街の環境など外的な指標で測るもの。また、「主観的ウェルビーイング」と「客観的ウェルビーイング」は必ずしも一致しない。客観的な指標では恵まれていても、主観的な幸福感が低い人もいる。

ウェルビーイングを考える上では、主観と客観の両面から捉えることが大切。個人の感情や認知を大切にしつつ、客観的な指標も考慮しながら、両者がバランスのとれた状態を目指すことが求められる。

「主観的ウェルビーイング」が重要視されている理由は、個人の価値観を尊重する必要性が高まっているから。例えば、運動習慣について一律の基準を設けるのではなく、その人に合った目標を設定することが求められる。

堂上 研

Wellulu編集長

堂上 研

「主観的ウェルビーイング」を重視する際は、他者との比較ではなく、自分自身の状態に向き合うことが大切です。自分らしく、楽しみながら、自分にあったウェルビーイングな行動や習慣を身に着けていくことが重要だといえます。画一的な基準に当てはめるのではなく、一人ひとりに合ったアプローチを模索していくことが大切です。

「ウェルビーイング」と「幸福」の違いって何?

「ウェルビーイング」と「幸福」の違いって何?

ウェルビーイングと似た概念に「幸福」があるが、両者には違いがあると考えている。幸福は主に感情的な満足感を指すのに対し、ウェルビーイングはより包括的で多面的。

幸福が一時的な感情状態を表すのに対し、ウェルビーイングは長期的な人生の質や生きがいを重視する。また、幸福は主観的な感覚に重きを置くが、ウェルビーイングは客観的な指標も考慮に入れる。目先の欲求を満たすだけでは一時的な幸福感は得られるかもしれないが、長期的なウェルビーイングは高まらない。

自己実現や人生の目的の追求など、より高次の要素を満たすことが、持続的なウェルビーイングにつながる。また、ウェルビーイングを高めることで、結果的に幸福感も高まるという関係性がある。

ウェルビーイング(Well-Being)の構成要素に関する研究

PERMA理論

PERMA理論

ポジティブ心理学の第一人者であるマーティン・セリグマン博士が提唱したのが「PERMA理論」。ウェルビーイングを構成する5つの要素として、Positive Emotion(ポジティブ感情)、Engagement(没頭)、Relationships(人間関係)、Meaning(意味)、Accomplishment(達成)を挙げており、5つの要素を満たすことでウェルビーイングが高まるという。

例えば、ポジティブ感情を多く経験したり、夢中になれる活動に没頭したり、良好な人間関係を築いたり、人生の意味を見出したり、目標を達成したりすることが重要とされる。PERMA理論は、ウェルビーイングを多面的に捉える包括的な理論。ポジティブ感情だけでなく、人生の意味や目的、他者とのつながりなども重視している点が特徴的。

SPIRE理論

SPIRE理論

SPIREとは、Spiritual(霊的)、Physical(身体的)、Intellectual(知的)、Relational(人間関係)、Emotional(情動的)の頭文字を取ったもので、タル・ベン・シャハー博士が提唱したもの。

ウェルビーイングに関する100万人以上の調査データを分析し、人は健康、良好な人間関係、経済的安定、仕事のやりがいなどを同時に満たすことで、高いレベルのウェルビーイングを実現できるという結論に至った。

SPIRE理論では、spiritual(霊的)な成長も重要な要素として加えられている。人生の目的や価値観を見出し、より大きな存在とつながることがウェルビーイングを高めるとされる。

ギャラップ社の研究

ギャラップ社の研究

ギャラップ社は、ウェルビーイングに関する大規模な調査研究で知られている。同社が2013年に発表した「ウェルビーイングの5つの本質的な要素」は世界的に注目された。

5つの要素とは、Career(仕事)、Social(社会)、Financial(経済)、Physical(健康)、Community(地域社会)。これらの要素のスコアが高く、バランスが取れている人ほど、ウェルビーイングが高いとされる。

調査の結果、5つ全ての要素で「やや良い」以上の人は、そうでない人に比べて、エンゲージメントが高く、ストレスが少なく、健康的で、生産性が高いことがわかった。人生のさまざまな領域で充実感を感じられる人が、仕事でも高いパフォーマンスを発揮している。

一方で、5つの要素のうち1つでも「苦しんでいる」状態の人は、離職率が高く、欠勤が多く、医療費がかさむ傾向にあることも明らかに。個人のウェルビーイングの低さが、ビジネス全体にも悪影響を及ぼしている。

Weluluが考えるウェルビーイング(Well-Being)の構成要素

Weluluが考えるウェルビーイングの構成要素

Welluluでは、ウェルビーイングを構成する要素を独自の視点から分析し、主観的なウェルビーイング21の因子に分類している。

分類の方法としては、博報堂の過去の生活者のライフスタイル調査のデータから、まず幸せと答えた人に共通する項目をリストアップ。それらの項目をグルーピングして、健康、食事、人間関係、感謝、称賛など、ウェルビーイングに寄与する因子を抽出。

当初は因子を7つ×3つのマトリクスにまとめ、わかりやすさを優先した分類をおこなっていたが、さらに細分化が可能だったため、因子を大分類、中分類、小分類の3階層に整理し、最終的には852の細かな分類にまで落とし込んだ。

Welluluの記事は、「主観的ウェルビーイング21因子」をタグづけしているのだが、ほかのウェルビーイングの研究とは異なる独自の分類法となっている。今回の「21」という数字に特別な意味はなく、あくまで一つの区切りとして設定されたものであり、この因子は掛け算で、ひとりひとりのウェルビーイングの傾向値を見出すことに意味がある。個人によって傾向、重要度が異なることを考慮し、それぞれの因子が複合的に作用し合うことも踏まえている。

堂上 研

Wellulu編集長

堂上 研

Welluluでは、この21因子をウェルビーイングを捉える上での一つの物差しとして活用しながら、継続的な調査を通じて因子の特性を明らかにし、一人ひとりのウェルビーイングを高めるための方法を探っています。

ウェルビーイング(Well-Being)ってなんで注目されているの?

社会的背景

PERMA理論

ウェルビーイングが注目される社会的背景として、とくに重要なのは働き方に対する意識の変化。日本では長らく経済的な豊かさが重視され、働く人のウェルビーイングは二の次にされている。しかし近年、企業がウェルビーイングな組織づくりに舵を切り始めている。働く人のウェルビーイングを高めることが、生産性の向上や優秀な人材の確保につながるという認識が広がってきた。

ウェルビーイングの様々な発表によると、社員がウェルビーイングになると、創造性が300%増加(ハーバード・ビジネス・レビュー)、営業数字が37%向上(マーティン・セリグマン博士)、生産性が31%向上(グリーンバーグ&アラカワ)となり、さらには、病欠日数が66%減少(フォーブス)、離職率が37%低下(デイビッド・ワイルド)という方向がされている。(日本ウェルビーイング推進協議会発表資料より抜粋)

堂上 研

Wellulu編集長

堂上 研

企業も採用活動や社員のエンゲージメント向上につながる取り組みをし続けないと、持続的な企業活動が困難になってしまうくらい「人的資本」に注目しだしています。

政治的背景

ギャラップ社の研究

日本においても、政府がウェルビーイングの向上に向けた施策を打ち出し始めている。自民党内にウェルビーイング推進委員会が設置されたことや、岸田首相が所信表明演説でウェルビーイングに言及したことは、大きな一歩。

海外では、ニュージーランドが2019年からウェルビーイングバジェット(ウェルビーイング予算)を取り入れ、ブータンではGNH(gross national hapiness)で幸福指標を政治目標にしたりと、制度は進んでいる。

しかし、前提として、日本と海外を比較すること自体にあまり意味がない。それぞれの国の価値観や文化が異なるため、一律の基準で測ることは難しい。重要なのは、各国がそれぞれの状況に応じて、国民のウェルビーイングを高める取り組みを進めていくことに意味がある。

経済的背景

経済的背景

日本では、失われた30年と呼ばれる長期的な経済停滞が続いている。賃金の伸び悩みやインフレ、物価高などの影響もあり、経済的な発展に苦労している。経済的な安定によるファイナンシャル・ウェルビーイングは、どんな生き方をしたいかで、ある程度の生きるための生活費があれば良いとも考えられる。そもそも、働く人がウェルビーイングにならないと経済が回復しないということに社会が気づき始めている。社会全体でウェルビーイングを追求する意識を醸成していくことが日本のウェルビーイングの発展につながると考えられる。

日本は、地域に埋もれている資産がたくさんある。最近、政府が発表した「中堅企業支援」では、全国の9,000社の可能性を示唆した。地元への貢献が地域課題を解決し、経済的豊かさをもたらし、地域コミュニティが活性化する。そこから、また新たな産業が生まれることで、新たな雇用が生まれるというイノベーションによる好循環が生まれてくる。

教育的背景

経済的背景

教育的な背景として重要なのは、リベラルアーツの考え方の浸透。リベラルアーツは、文系理系といった枠組みを超えて、物事を多角的に捉えることを重視する。例えば、最近開設された武蔵野大学のウェルビーイング学科では、哲学や心理学、経済学など幅広い学問領域を横断的に学ぶカリキュラムが組まれている。

子供のウェルビーイングを考える上では、親や教師自身がウェルビーイングでなければ、子供もウェルビーイングにはなれない。親や教師は、子供に特定の生き方を押し付けるのではなく、自分自身が楽しく生きる姿を見せることが大切。親が成功だと思うことを子供に強要するのではなく、親自身が楽しく生きる姿を子供に示すことで、子供も自然と楽しく生きることを学んでいく。

また、過去の日本の学校教育は、ある程度の学力(記憶、認知能力)が重視されていたが、ウェルビーイングな社会をつくる上で、重要な能力は「主体性」「多様性」「協調性」であり、日本人が不得意と考えられていた能力である。世界で活躍できる、自分自身でウェルビーイングを切り拓くためには、非認知能力(人に優しくできる能力、課題発見や探求する能力など)の重要性が見直されている。

堂上 研

Wellulu編集長

堂上 研

ウェルビーイングを語る上では、子どもと教育の現場の変革が喫緊の課題になっています。未来にどんな社会を自分たちで創っていきたいか、自分たちで世界は変えられると信じられる教育を受けた子どもたちがウェルビーイング共創社会を創る担い手になるでしょう。

日本と比べて世界のウェルビーイング(Well-Being)はどうなっている?

世界幸福度調査による国別ランキング

世界幸福度調査による国別ランキング

国連が発表している世界幸福度ランキング(※)によると、日本は51位という結果に。1位はフィンランド、2位デンマーク、3位アイスランド、4位スウェーデンと上位は北欧諸国が占める形となっている。

北欧諸国の幸福度が高い要因としては、ワークライフバランスのよさ。仕事と家庭の両立が可能な環境が整備されており、夕方早くに退社して家族と過ごす時間を大切にする文化が根付いている。

また、高福祉高負担の社会保障制度により、国民の生活の安定が図られていることも幸福度の高さに寄与していると考えられる。教育や医療など、生活の基盤となるサービスが手厚く提供されている。

※「世界幸福度報告書」 https://worldhappiness.report/

堂上 研

Wellulu編集長

堂上 研

北欧から学ぶべき点は、やはり「働き方」です。夕方5時に終わって、家族でいっしょに食事をする、自分の時間を大切にする、という考え方が根づいています。日本には、「おもいやり」「おもてなし」「おもんぱかる」という素晴らしい文化がありますが、そこに自己犠牲が伴う利他になってしまってはウェルビーイングな生活にはならないです。自己実現をした上で、相手を敬い、いっしょに協働することが求められています。

どうして日本の幸福度は低い?

どうして日本の幸福度は低い?

日本の幸福度ランキングが低い要因としては、「比較文化」の影響が大きい。日本人は他者と比べて自分を評価する傾向が強く、自分が恵まれていると認識しづらい。

また、「恥の文化」とも言われるように、自分のよさをアピールすることをよしとしない風潮がある。幸福度の調査では、控えめな回答をする日本人が多くなるのも、こうした文化的背景が影響していると考えられる。

ただ、そもそも文化も背景も違うのであまり比較はせず、幸福度ランキングは参考程度に捉えるようにすると良い。むしろ、個人ひとり一人がウェルビーイングを実感できるような社会をつくっていくことが重要だと捉えている。

ウェルビーイング(Well-Being)に関する取り組み事例

企業の取り組み(経営)事例

企業の取り組み(経営)事例

ウェルビーイングな経営に注力している企業として、「丸井グループ」「楽天」「アステリア」は、社内にCWO(チーフ・ウェルビーイング・オフィサー)を設置して、社員のウェルビーイングはもちろん、社外との協業や働きやすさを追求している。

例えば、楽天グループは、社内にフィットネスジムが完備されており、お昼の時間などにヨガを無料で受けられるようになっている。さらに社員食堂は、朝昼晩いつ食べても無料であり、ハラル食やベジタリアンにあわせたメニューで、それぞれの食文化に合わせた個々人のウェルビーイングを考えた設計が施されている。

もうひとつの事例で、丸井グループは、社員のウェルビーイングを高めるために、自発的な手上げ制度を導入するなどして、自らが立候補をして自分がやりたいことを実現するなど、先進的な取り組みをおこなっている。社員が働くことに熱中できるフロー状態をつくる取り組みをしているのだ。

企業がウェルビーイングな経営を実践するためには、経営者自身がウェルビーイングでなければならない。たとえば、経営者や上長が睡眠不足だと、判断力の低下や病気につながるので、チームの生産性は低下し、チーム内のウェルビーイングは低下すると言われている。

大切なのは、お互いの協働を意識することで、自分の苦手と得意を共有し、信頼と尊重に基づいたオープンな人間関係を築くことである。ウェルビーイングを疎外するひとつが、会社の中での人間関係と言われている。お互いが対話を重ねながら、働きがいのある職場環境をつくっていくことが求められる。

楽天本社のウェルビーイングな職場環境とは?社員が本音で語るウェルビーイングな生活

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堂上 研

Wellulu編集長

堂上 研

企業には、生活者をウェルビーイングにする商品やサービスの開発も期待されています。そこでビジネス×ウェルビーイングを設計する上で、重要になってくるのが、顧客価値デザインであり、3つのクリエイティビティが重要です。①インセンティブ設計、②エンターテインメント性、③コミュニティ形成支援で、様々な切り口からウェルビーイングとビジネスを結びつける顧客価値デザインができます。

政府・内閣の取り組み事例

政府・内閣の取り組み事例

政府は、ウェルビーイング推進特命委員会を立ち上げ、ウェルビーイングな社会の実現に向けた取り組みを進めている。具体的には、GDPに代わる新たな指標としてGDW(グロス・ドメスティック・ウェルビーイング)の導入を検討している。

また、中小企業や労働者のウェルビーイングに関する調査を実施し、課題の把握に努めている。働き方改革や健康経営の推進など、労働環境の改善にも注力している。

地方創生の文脈でも、住民のウェルビーイング向上が重要な柱の一つになっている。地域コミュニティの活性化や、自然環境の保全など、ウェルビーイングな地域づくりに向けた施策が展開されている。

経団連でも、生活者の価値デザインにおいて、新たな市場としてウェルビーイング共創がテーマになっている。今後、注力するのは「子どものウェルビーイング」と「地域のウェルビーイング」としている。

地方自治体の取り組み事例

地方自治体の取り組み事例

ウェルビーイングに力を入れている自治体として、富山県や福井県が挙げられる。

福井県では、健康増進プログラムや育児支援策を通じて、住民の「主観的幸福感」向上を目指しており、。自然や文化に触れる機会も提供し、住民が自分らしく豊かに生活できるよう支援している。

一方、富山県は、ウェルビーイング調査や指標の策定を実施し、地域コミュニティの活性化と教育、健康プログラムに力を入れている。また、地域とのつながりを深めるイベントも頻繁に開催されており、人と人のつながりを促進している。

自治体がウェルビーイングを重視する背景には、医療費の削減という課題がある。高齢化が進む中、住民の健康寿命を延ばして多くの人をウェルビーイングな状態にすることが大切になっている。

具体的な取り組みとしては、ラジオ体操の普及や、毎日の健康・食事チェックなどが行われている。また、地域通貨を導入し、住民同士の助け合いを促進する自治体も出てきている。

下記記事では、富山県と福井県のウェルビーイングの取り組みを詳しく紹介。気になる人はチェックしてみて。

【福井県】幸福度日本一のその先へ。健康増進や育児サポート、自然や文化に触れる体験など、「主観的な幸福感」を向上させるウェルビーイングな取り組みとは?

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【富山県】みんなでつくるウェルビーイング先進地域。成長戦略の中心にウェルビーイングを掲げた富山県の取り組みとは?

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豊かな自然環境と多様な文化・伝統が根付く富山県。この地域のウェルビーイング(心も身体も社会的にも「満たされた状態」、実感としての幸せなどを表す)に対する...

堂上 研

Wellulu編集長

堂上 研

デジタル技術を活用したり、地域企業や地域大学と連携したりするなど、多様なアプローチを組み合わせながら、ウェルビーイングな街づくりを進めていくことが重要になってきています。地域通貨との連携やリアルな街での徒歩圏内でのウェルビーイングな街づくりが進められています。

教育現場の取り組み事例

教育現場の取り組み事例

教育におけるウェルビーイングの取り組み事例として、子どもたちがどう幸せになれるかを考え、子どもたちファーストで考えていく必要がある。子どもたちがウェルビーイングになるには、学校という場が重要になる。そして、先生や親がウェルビーイングでないと、子どもたちも学ぶことを楽しむことができない。

現在は、私立学校を中心に新たな教育を提供するところが増えると同時に、地域の学校にも海外の取り組みなどを取り入れた積極的なアクティブラーニングなどを実践しているようになってきた。けれども、まだまだ日本の教育においては、詰め込み式の暗記型のものになっている傾向があり、AO入試などの導入など、画一的な教育を改革していく必要がある。

例えば、東京都にあるドルトン東京学園は先進的な取り組みをしている。同校では、米国のドルトンメソッドを導入し、生徒主体のウェルビーイングな教育を実践している。ドルトンメソッドでは、生徒一人ひとりの興味関心に基づいて、探究心を育むことを重視する。教科の枠組みにとらわれず、生徒が主体的に学ぶカリキュラムが組まれている。

また、学年の垣根を越えた交流を通じて、コミュニティ形成を図る取り組みもおこなわれていて、異学年が一緒に学ぶことで、多様な価値観に触れ、協調性を身につけることができる。ドルトン東京学園の事例は、日本の教育に新しい視点を提供する可能性があり、偏差値重視の受験競争から脱却し、生徒のウェルビーイングを最優先に考える教育が求められている。

教育カリキュラムを見直し、主体性や多様性、協調性を育む教育を推進していくことが大切。

下記では、ドルトン東京学園・安居長敏さんのインタビュー記事を紹介。本校の取り組みや考え方が紹介されているので、詳しく知りたい人はチェックしてみてほしい。

【安居長敏校長×タカサカモト氏×堂上研】子どもたちの興味と関心が無限に広がっていく学校――ドルトン東京学園での学びを体験する

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堂上 研

Wellulu編集長

堂上 研

子どものウェルビーイングを高めるためには、生徒に寄り添い、対話を重ねる中で、ともに学び合う姿勢が不可欠です。教師と生徒、生徒同士の信頼関係、親との関係において、価値観の押し付けではなく、お互いがお互いを敬うことから、子どもたちの可能性を導き出すことができるでしょう。

ウェルビーイング(Well-Being)度を測ることはできるの?

キャントリルの梯子(ハシゴ)

キャントリルの梯子(ハシゴ)

ウェルビーイングを測る代表的な指標の一つが、キャントリルの梯子(ハシゴ)。 米国の社会心理学者ハドリー・キャントリルが開発した主観的幸福度の測定法。

「人生の階段」とも呼ばれるこの指標は、10段階のハシゴを用いて人生の満足度を自己評価する。最悪の人生を0段目、最高の人生を10段目とし、現在の自分の人生がどの段階にあるかを答えてもらう仕組み。

回答者は、自分なりの基準で人生を評価することになる。主観的な指標ではあるが、国や地域、年齢層ごとの比較に使われることもある。キャントリルの梯子は簡便な測定法だが、人生満足度を直感的に表現できるのが魅力な一方、その時々の気分に左右されやすいのが欠点。

長期的なウェルビーイングを測るには、複数の指標を組み合わせることが望ましいが、手軽に使える指標として、今なお世界中で活用されている。

人生満足度尺度

人生満足度尺度

人生満足度尺度は、キャントリルの梯子と並ぶ代表的なウェルビーイング指標でイリノイ大学のエド・ディーナーら研究者が開発した5項目の質問で構成される。

「私の人生は、多くの面で私の理想に近い」「私の人生は素晴らしい状態だ」などの5つの質問に対して、7段階で満足度評価するのが特徴。合計得点が高いほど、ウェルビーイングが高いと判断できる。

人生満足度尺度は、主観的幸福感を測定するための信頼性・妥当性の高い指標として世界中で使われており、幸福度の国際比較にも用いられている。

人生満足度尺度は、個人のウェルビーイングを多面的に評価できる利点がある。自分の人生を振り返り、総合的に判断するため、その時の感情に左右されにくい。

一方で、自己評価であるため、回答者の性格や文化的背景に影響を受けやすいのが欠点。

幸福度診断(Well-Being-Circle)

幸福度診断(Well-Being-Circle)

幸福度診断は、より多面的にウェルビーイングを測定するための指標で慶應義塾大学大学院の前野隆司教授らが開発した、72の質問で構成される。

幸福度診断の特徴は、自分がどの領域で充実し、どの領域で物足りなさを感じているのかが一目でわかる。

例えば、「やってみよう力」は没頭できるものの有無、「ありがとう力」は日々の感謝の気持ちなどを表している。これらの要素がバランスよく満たされることで、ウェルビーイングが高まると考えられている。

企業や自治体でも導入が進んでおり、組織や地域のウェルビーイング向上に役立てられている。

主観的Well-Being 21因子(いろいろ診断)

Welluluでは、個人のウェルビーイングの感じ方を測る「いろいろ診断」を開発して、個人のウェルビーイングを測ろうとしている。ウェルビーイングは主観的な概念なので、自分自身の状態を客観的に把握することが難しいが、「いろいろ診断」では、個人のウェルビーイングの状態を把握することが可能。

いろいろ診断では、21の因子に基づいて設問が用意されている。回答結果から、自分が今どういう状態にあるのか、どの因子が強く出ているのかを知ることができる。これらのアルゴリズムは、博報堂DYホールディングスが取得した「Well-Giving Cycle」というリコメンドアルゴリズムの特許を活用している。

大切なのは、診断結果を一時的なものと捉えるのではなく、継続的に活用していくこと。定期的に診断を受けることで、自分のウェルビーイング度合いの変化を時系列で追うことが可能になる。

堂上 研

Wellulu編集長

堂上 研

未来の自分を思い描き、そこから逆算して今何をすべきかを考えるバックキャスト思考も大切です。理想の状態と現実のギャップを認識し、行動計画を立てて失敗をおそれず挑戦することがウェルビーイングの向上につながります。

ウェルビーイング(Well-Being)度を高めるためのヒント

ウェルビーイング度を高めるためのヒント

自分自身のウェルビーイング度合いを高めるためには、日々の生活の中で意識的に行動することが大切。とくに重要なのは、以下の3点。

1. 多様なコミュニティとゆるやかにつながる
様々なコミュニティに所属し、多様な人々と交流することで、新しい気づきや学びを得ることができる。 一つのコミュニティに依存しすぎず、適度な距離感を保ちながら、つながりを広げていくことが重要。

2. 感謝の気持ちを習慣化する
日々の生活の中で、感謝する機会を意識的に設けることが大切。例えば、家族との食事の際に、その日あったよかったことを共有するなどの習慣を取り入れてみよう。
感謝の気持ちを言葉にすることで、ポジティブな感情が増幅され、ウェルビーイング度合いの向上につながる。

3. 新しいことにチャレンジする
自分の可能性を信じ、新しいことにチャレンジすることもウェルビーイング度合いを高めるためには欠かせない。 普段と違うことに取り組むことで、自己効力感が高まり、さらなる挑戦への意欲が生まれる。

ただし、無理のない範囲で、楽しみながらチャレンジすることが大切。自分らしいウェルビーイングを追求するためには、人と比べるのではなく、自分自身の成長を実感できるような生き方を心がけることが何より大切だと考えている。

Welluluが考えるこれからのウェルビーイング(Well-Being)

Welluluが考えるこれからのウェルビーイング

これからやっていきたいことは、「Welluluを通じてひとりでも多くの人をウェルビーイングにしていくこと」です。そのために、Welluluを通じて、大きく二つのことに取り組んでいきたいと考えています。

一つ目は、ウェルビーイングな事業を共創するプラットフォームになること。様々な企業や個人がつながり、新しいアイデアやビジネスが共創から生まれていく場を提供していきたいです。

Welluluには、多様なバックグラウンドを持つ人々が集まっています。その知見を結集することで、ウェルビーイングに寄与する画期的なソリューションが生み出されるはずです。

二つ目は、ゆるやかなコミュニティづくりを支援することです。Welluluを訪れた人同士が、興味関心を共有し、つながりを広げていける環境を整備していこうと思っています。そこはある意味、渦をどんどん大きくしていくことだと考えています。渦は、ある特定のウェルビーイング領域を通して、仲間を増やしていくイメージです。

例えば、睡眠のウェルビーイングに関心がある人が集まり、お互いの悩みを共有したり、改善策を話し合ったりできるコミュニティの形成を後押しするイメージですね。

こうしたコミュニティが生まれることで、Welluluに集う一人ひとりがエンパワーメントされ、ウェルビーイング度合いの向上につながると期待しています。

将来的には、Welluluがウェルビーイングな社会を実現するための起点となることを目指していきます。ウェルビーイングの重要性を広く発信し、多様なステークホルダーを巻き込みながら、持続可能な取り組みを進めていきたいですね。

【Welluluがおすすめ】ウェルビーイング(Well-Being)に関する本

ウェルビーイングに関連するおすすめの本を紹介させていただきました。これらはほんの一例ですが、ウェルビーイングについて理解を深めるためのよい入り口になるはずです。多様な視点から学ぶことで、自分なりのウェルビーイング観を醸成していくことが大切だと考えます。

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