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【安居長敏校長×タカサカモト氏×堂上研】子どもたちの興味と関心が無限に広がっていく学校――ドルトン東京学園での学びを体験する

2019年4月に開校した中高一貫校「ドルトン東京学園 中等部・高等部」では、アメリカの教育家ヘレン・パーカストが今からおよそ100年前に提唱した教育メソッド「ドルトンプラン」に基づいた教育を行っている。「自由」と「協働」の二つを軸に、生徒の個性を重んじながら、自主性・社会性・創造性を生徒自らが育んでいくという。

2024年3月16日・17日には「Dalton Expo2023」を開催。ドルトン東京学園の校舎全体を使い、展示や研究発表会、ワークショップなどドルトンの学びを体験できるさまざまな企画が行われた。

今回は、Wellulu編集部プロデューサーの堂上 研が「Dalton Expo2023」を体験取材。さらにドルトン東京学園の安居長敏校長と、イベントに出席していた『東大8年生 自分時間の歩き方』の著者・タカサカモトさんにも急遽参加してもらい、お二人のウェルビーイングな時間について話を伺った。

 

安居 長敏さん

ドルトン東京学園 中等部・高等部 校長

1982年に滋賀女子高等学校に赴任し、20年間教員として勤める。2002年に教員生活に一度区切りをつけて起業し、地元の彦根市でコミュニティFMを開局。06年には再び理科・数学科教員として、滋賀学園中学・高等学校に奉職。13年には同校高等学校長に就任、15年からは中学校長も兼務する。その後、沖縄アミークスインターナショナル小学校・中学校校長、学校法人アミークス国際学園・学園長を経て、19年よりドルトン東京学園 中等部・高等部の参事(副校長補佐)として開校初年度の学校運営に携わる。22年7月より現職。

タカサカモトさん

フットリンガル 代表/作家

東京大学文学部卒業。教育者として多様な現場で経験を積みながら、サントスFC広報部、ネイマール来日時通訳、ガイナーレ鳥取通訳など、サッカー界でもさまざまな活動に従事する。2017年にアスリート向け学習コンサルティングサービス「フットリンガル」を創業し、世界を舞台に活躍するプロスポーツ選手達を学習面からサポートしている。著書に『東大8年生 自分時間の歩き方』『PLMメソッド ファンを増やしてプロ野球の景色を変える!』(徳間書店)がある。

堂上 研さん

Wellulu 編集部プロデューサー

1999年に博報堂へ入社後、新規事業開発におけるビジネスデザインディレクターや経団連タスクフォース委員、Better Co-Beingプロジェクトファウンダーなどを歴任。2023年、Wellulu立ち上げに伴い編集部プロデューサーに就任。

生徒たちが「自分の好きなもの」をのびのびと発信する場

ドルトン東京学園の校舎に入り、校長室を訪れるとそこには『東大8年生 自分時間の歩き方』の著者であるタカサカモトさんと、7人の生徒たちが談話していた。サカモトさんのトークイベントのあと、生徒たちは自主的に「タカさんと話がしたい!」と集まってきたのだという。

続いて訪れた2階アリーナでは、中等部の集大成である3年生の修了研究ポスター発表会が行われていた。研究テーマは、「各々が興味・関心を抱いたもの」。その研究内容を1枚のポスターにまとめ、集まった観客に向けて発表していく。それぞれのテーマは、まさに多種多様。「金田一耕助に関する考察」から、「ドガの作品と時代背景」といった学問的なもの、「駄洒落はなぜ寒いのか」といった思わずクスっと笑ってしまうものまで、ドルトン東京学園の生徒たちの自由な発想があふれていた。

4年生(高校1年生)の学年企画は、「アジア研修2023 自己変容とNext Action」。インド、スリランカ、マレーシア、インドネシアの4カ国に分かれて研修に訪れた4年生たちが、それぞれの国の社会問題について調査し、「Next Action」を具現化しているのだ。インドネシアを訪れた生徒たちは、「ゴミ問題」に着目し、実際にドルトン東京学園で出たゴミの分別に取り組んでいるという。インドを訪れた生徒たちは、「貧困問題」を考え、高級住宅街と貧困層が暮らす地域が隣り合わせだったことに衝撃を受けたと語ってくれた。

2022年に完成したSTEAM棟の3階「サイエンスセンター」では、「触れるロボット展」を開催。自らペットボトルキャップを発射する装置を設計したという生徒が、目を輝かせながら装置の使い方をレクチャーしてくれた。

この日、感じたのは「ドルトン東京学園の生徒たちが、自分の思う“好きなこと”を存分にやっている」ということ。そこに彼ら、彼女らの興味・関心を妨げるものは何もない。自らの意思で学んでいくための環境がここにはあるのだ。

「Dalton Expo2023」を一通り体験し、再び校長室へ向かうと、そこにはまだサカモトさんと生徒たちの姿が。約3時間、話が尽きることなくさまざまなことを話し合っていたという。

新たな出会いからウェルビーイングな空間が生まれる

堂上:本日は急遽、タカサカモトさんにも参加していただいてお話しできればと思いますが良いですか?

サカモト:本当に参加してもいいんですか?

堂上:ぜひお願いします! 『東大8年生 自分時間の歩き方』を拝読して、お会いしたいと思っていたのでとても嬉しいです。あっ、勝手に決めちゃいましたが、安居校長先生よろしいでしょうか?

安居:全然、問題ございません。こういった人と人とのつながりこそが、人生なんですよね。二人のつながりを作れて、私も嬉しいですよ。

堂上:タカさんと安居校長は、どういったきっかけで出会われたのですか?

安居:私がタカさんの『東大8年生 自分時間の歩き方』を読んで、FacebookとInstagramに思いを書かせていただいたんです。

サカモト:長文の感想を投稿していただいて、読むと本当に熱があふれ出ていたんです(笑)。

堂上:これはすごく熱い感想ですよね!

サカモト:調べると学校の校長先生で、そこで初めて「ドルトン東京学園」の名前を知りました。私も教育の世界に関わっている人間なので、ご連絡を取らせていただいたのがきっかけでした。「良かったら、学校に遊びに来てください」とお誘いを受けて、「ぜひ!」と飛びついたのが2023年春頃のことです。

堂上:私は安居校長のこの投稿を見て、すぐに本を買わせていただきました。

安居:それで今日はタカさんとトークイベントがあり、お呼びしていたんです。

サカモト:イベントの後に生徒の子たちが質問に来てくれて、3時間ほど話し込んでしまいました(笑)。

安居:彼らもこれからの人生が変わったと思いますよ!

堂上:人との出会いというのは、本当にウェルビーイングにつながりますね。本日はよろしくお願いいたします!

学校なのにテーマパーク? ドルトン東京学園がファンを増やし続けている理由

堂上:真面目な話はまた今度にして、今日はお二人の「ウェルビーイング」や、「人となり」についてお伺いしたいと思います!

サカモト:たしかに校長先生の「人となり」が見られると、保護者も安心できるというのはありますよね。

安居:校長がこういう人間だから、学校もこうなるという学校もありますが、ドルトン東京学園の場合はもっと多面的なんですよね。校長がAと言っても、B、C、D、E、Fと違う意見を言ってくれる人が揃っている学校なんです。

堂上:ドルトンに来てみると、親の立場で惚れてしまうんですよね。先生と生徒の間柄も、すごくフラットに感じるんです。

安居:ドルトンでは、先生が「教える人」で生徒が「学ぶ人」という上下一方向の関係性ではありません。双方が教えつつ、学ぶというフラットな関係性です。保護者の方からも生徒からも「ドルトンの雰囲気が好き」と言っていただけることが多くなっています。

堂上:ではドルトン東京学園の魅力から、ぜひ聞かせてください。親がファンになる、子どもたちからも「ドルトンに行きたい」と言ってもらえる学校というのは、校長先生からすると何が一番の魅力になっていると感じていますか?

安居:ガラスを多用してシームレスな空間を作っている建物の独自性も、魅力のひとつだと思います。生徒が日々学校で生活している空気感が、学校全体に流れているような、オープンな雰囲気がよく伝わる校舎ですよね。

堂上:今日一日、学校内を回って、開放的な印象が本当に伝わってきました。

安居:あと生徒たちには固定された教室がなく、リュックを背負って、校舎を回りながら授業を受けるんです。「ドルトンは『テーマパーク』」と表現する生徒もいます。学校全体がテーマパークで、各教科の授業というアトラクションを楽しむようなイメージですね。

サカモト:いい意味で「幼稚園」のような学校なんですよね。子どもたちが楽しく通える場所だと思います。

安居:「土日が休みじゃないほうがいい」という生徒もいますね(笑)。学校というのは、「理想的な生徒の型にはめよう」としてしまいがちだと思います。でも、それは子どもの可能性や自主性を奪ってしまうのではないでしょうか。幼稚園で「今日は楽しかった!」と笑っていた頃の気持ちで、学校に通ってもらえると嬉しいですね。

教員を辞めて起業を経験。考え方をリセットできたある出来事とは

堂上:安居先生は、滋賀県で教員を20年勤めた後に、一度起業されているんですよね。それはどのような経緯があったのでしょう?

安居:42歳で教員生活に一旦区切りをつけて、滋賀県にコミュニティFM局を開設する事業を始めました。電車の運転士で、アマチュア無線オタクだった友人から誘われて、夢物語に乗せられた形ですね(笑)。私も音楽が好きなので、FM局に憧れがあったんです。

サカモト:学校の教員を辞めて、FM局を開設する事業を始めるというのは、かなりのインパクトがありますね!

安居:人生を変えるチャンスだと感じた、というのはありますね。

堂上:もう少し過去に遡って、安居校長はなぜ先生になろうと思われたんですか?

安居:小学校1~2年生の時、担任だった藤原綾子先生に憧れたからです。

堂上:すぐに名前が出てくるというのは、よほど影響を受けているんですね(笑)。

安居:先生としてではなく、人としての憧れでした。私の母親は、昔ながらのしつけが厳しい人で、「畳の縁を踏むな」とか「我を出さず、人のために努力しろ」と言われ続けていたんです。藤原綾子先生は、「もっと自分のやりたいことを表に出してもいいんだよ」と教えてくれました。

堂上:素敵な先生との出会いが、今の安居校長が形作られたきっかけだったんですね!

サカモト:いい先生との出会いは、心に残りますよね。私も小学校5~6年生の担任の細井実先生が、とても面白い人でした。ピンポン玉で野球をやっていたのが先生に見つかり、「ボールを渡しなさい」と言われて……。叱られると思ったんですが、「打席、打席!」と打席に立つように促されて、もの凄い変化球を投げてきたんです(笑)。でも肝心の投げ方は教えてもらえなくて、しばらくその変化球の投げ方を研究する日々になりました。

堂上:その方も素敵な先生ですね。自分が熱中していることを応援してくれる先生との出会いというのは、子どもの成長に大きな影響があると思います。「興味・関心を引き出す」というドルトンの教育とも近いですよね!

安居校長は厳しい母親のしつけを受けて、ある意味「型にはめられる」ような教育を受けられてきて、その藤原先生との出会いが殻を破るきっかけになられたのですか?

安居:いえ、それでもずっと「人のために生きろ」「人様に迷惑をかけるな」と言われながら、農家の長男として育てられたので、「親の期待に応えて、親の理想通りに生きなければ」というマインドはすごく強かったですね。

堂上:そうだったんですか! どうやってそこから脱却できたのですか?

安居:自分にとって最大の転機は、教員として働き始めて1年目に母親を白血病で亡くしたことでした。「人は簡単に亡くなる」ということを目の当たりにして、憑き物が落ちたんです。「人とは、たいしたものじゃない」、だから人にどう見られるか、人のために生きると考えることはやめようと。

堂上:その時に今までの価値観を捨て去って、一度リセットできたわけですね。

安居:そこで考え方を変えられたからこそ、起業の経験にもつながったと思いますね。

校則も校歌もない自由な場所が子どもたちをウェルビーイングへと導く

堂上:タカさんは、何をしている時に一番ウェルビーイングを感じますか?

サカモト:私は、高校生の頃から「子育て」に興味があったんです。

堂上:それは弟や妹がいて、お世話をしていたとかですか?

サカモト:2つ下に一人いますが、それとはあまり関係がないんです。少しネガティブな理由になるのですが、母親との折り合いが悪い時期がありまして。安居校長の話ともリンクするのですが、私も学生時代に母を亡くしているんです。

安居:そうでしたか。

サカモト:もともと母親は絵描きをしていたこともあり、自然の中でのアート教育のようなものを受けて育ちました。タイリクバラタナゴを探しに川に連れて行かれるとか、海で「面白い形の石を見つけてきなさい」と言われて、持って行くとマジックを渡されて絵を描くとか。僕はファミコンをやりたかったんですけどね(笑)。

堂上:いいお母さんじゃないですか?

サカモト:当時は、ですね。私が地元の附属小学校に入ってから少しずつ変わってしまい、教育ママ化していってしまって。過干渉になり、10代の頃は激しく対立するようになりました。その反動で「将来、自分は温かい家庭を作りたい」と、子育てに興味を持ったんです。

堂上:反面教師になってしまったんですね。

サカモト:母とは亡くなる前に和解しましたし、ほかの家族とも今は仲が良いのですが。そうした経緯もあって自分の子どもが生まれてからは、子どもと一緒にいる時間は何よりも楽しく、ウェルビーイングを感じています。

堂上:子どもから学ぶことは、本当にたくさんありますよね。

サカモト:小さな子どもの発想力には、本当に驚かされますよね。ある日、「パパ、髪伸びたと思わない?」と息子に聞いたら、「そうだね! うんちみたいだね!」と言われたことがありました。当時2~3歳の彼に悪意はなく、ただ純粋にうんちみたいに見えたんでしょうね(笑)。

堂上:それは突然言われるとびっくりしますね(笑)。今、お子さんはおいくつですか?

サカモト:長男は7歳でこの春から小学生2年生、2023年に生まれた次男は6カ月を過ぎたところです。本当に子育てが楽しくて、受けているお仕事は、子育てを軸にしてもできるように調整しています。

堂上:いいですね! 私も子どもが3人いますが、それぞれ性格が違いますし、それぞれがやりたいことを持っていて、すごく面白いです。

サカモト:わかります! 子どものことばかり考えていると、ドルトン東京学園に来るたびに、本当に惹かれていきますね。私自身は今のところ、親として中学受験に積極的なほうではありませんが、ここに来ると毎回、心が揺れる自分もいます(笑)。

堂上:先ほど、ドルトンが幼稚園みたいだと言っていたように、ドルトンの生徒たちは素直に育っているように見えるんですよね。今日の「Dalton Expo」での研究発表も、本当に自由な発想で多様な興味で研究をしていて驚きました。

安居:ドルトン東京学園は、基本的に校則がある学校ではないので、これをやってはいけないというルールがありません。ほかにも校歌など、学校になくていいと考えるものは全てなくしています。社会のありのままがこの空間にあって、人間関係の基本的なことを強制的に教えられるわけではなく、学校生活の中で自然に学んでいく。だから、素直な人に育つのではないでしょうか。

サカモト:そういう空気感を、先生と生徒たちが上手に作っている学校だと感じます。

堂上:その通りですね。では最後に、安居校長がウェルビーイングを感じるのはどんな時か教えてください。

安居:人と話している時ですね。今日は本当にウェルビーイングな時間を過ごせました。

堂上:安居校長とタカさんの素敵なお人柄が伝わってきました。時間もめちゃくちゃ延長してしまいすみませんでした。タカさん、急遽飛び入り参加頂き感謝です。本日は楽しい時間をありがとうございました!

[タカ サカモトさんの著書はこちらから]

『東大8年生 自分時間の歩き方』(徳間書店/2023年)

[タカさんの当日の様子を書いたブログはこちら]

ドルトン東京学園のイベントに登壇しました

[当記事に関する編集部日記はこちら]

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