
お尻を中心に鍛えることができる「ヒップアブダクション」。本記事では「ヒップアブダクション」で鍛えられる筋肉と効果、正しいやり方、効果を高めるコツなどを詳しくご紹介。また、あわせておこないたいお尻の宅トレメニューや、お尻のストレッチ方法も解説。
この記事の監修者
つむら みおさん
パーソナルトレーナー
「ヒップアブダクション」はどこに効く?鍛えられる3つの筋肉
ヒップアブダクションで鍛えられるのは以下の3つの筋肉。
・小臀筋(しょうでんきん)
・大腿筋膜張筋( だいたいきんまくちょうきん)
ここでは、この3つの筋肉を詳しく解説するので、「ヒップアブダクション」に取り組もうと考えている人はチェックしてみよう。
中臀筋(ちゅうでんきん)
「ヒップアブダクション」は、骨盤から大腿骨につながる中臀筋に効果的なトレーニング。足を横方向に広げる動作で動かすことができる。
片足立ちでバランスをとる際も中臀筋が活躍していて、骨盤の水平を保ち安定感をもたらす。また、おしりの引き締め、形の美しさを追求するなら、この筋肉を鍛えるのがおすすめ。
小臀筋(しょうでんきん)
小臀筋は、骨盤と大腿骨の先端を結ぶ筋肉。比較的小さな筋肉だが、脚を横に開く動作や、歩行時の安定性に関わり、美しい姿勢の維持に不可欠な存在。
さらに、小臀筋はインナーマッスルとしての役割も果たし、大臀筋や中臀筋の働きをサポートしながら、下半身全体のバランスを整える。美しいヒップラインを作りたい人は、小臀筋も鍛えるようにしよう。
大腿筋膜張筋(だいたいきんまくちょうきん)
大腿筋膜張筋は、大臀筋、中臀筋、小臀筋と協力し、股関節の動きをサポートしている。大腿筋膜張筋を鍛えることで、股関節の安定性を高め、歩いたり走ったりするときの効率が上がる。そのため、下半身の運動パフォーマンスを上げることができる。
くわえて、大腿筋膜張筋を鍛えることは、股関節周りの動きをスムーズにし、ほかのトレーニング効果も高める。
また、健康的な身体作りと美しいレッグラインを目指すうえで、大腿筋膜張筋は重要な役割を果たす。日々のエクササイズに取り入れ、理想のボディを目指そう。
美尻を目指せる!「ヒップアブダクション」の効果
ここでは「ヒップアブダクション」で得られる効果をご紹介。
以下の項目について詳しく解説するので、ヒップアブダクションで自身の目的が達成できそうか確認してみよう。
・ウエストのくびれを強調できる
・脚を長く見せる
・美しい姿勢の維持につながる
きれいなお尻をつくる
「ヒップアブダクション」をおこなうことで、すっきりときれいなお尻を目指すことができる。
また、お尻の筋肉量が増えると、結果として基礎代謝も上がりやすくなる。基礎代謝が上がると、何もしなくても消費できるエネルギーが増える。そのため、太りにくくなり、リバウンドのリスクを減らすことができる。
ウエストのくびれを強調できる
「ヒップアブダクション」は、中臀筋を鍛えることができるため、お尻の横の部分にボリュームを加えて、立体感を出すことができる。
お尻の横にきれいな膨らみをつけることがで、ウエストとヒップの差が際立ち、くびれが強調される。
脚を長く見せる
「ヒップアブダクション」は、美しいくびれやお尻をつくるだけでなく、脚の長さを強調する。
お尻が1センチ上がると、脚が3センチ長く見えるといわれていて、お尻の位置がわずかに上がるだけで、見た目に影響を与える。また、ヒップトップの位置が上がることでお尻と太ももの境目がはっきりし、脚全体のシルエットがきれいに見える。
美しい姿勢の維持につながる
中臀筋を鍛えることにより骨盤が安定し、自然と姿勢が改善される。
また、下半身のバランスがよくなることで、トレーニング効率を高める。姿勢がよくなることで、よりスタイルがきれいに見えやすくなる。
「ヒップアブダクション」の正しいやり方
マシンを使用するときと、自重でトレーニングをおこなうときでは、負荷の高さとそれに伴う効果に大きな差がある。ここでは、以下の種目の正しいやり方やトレーニングの流れをご紹介。
・チューブ スタンディング ヒップアブダクション
・ライイングヒップアブダクション
・マシンを使った「ヒップアブダクション」(通常の姿勢)
・マシンを使った「ヒップアブダクション」(前傾姿勢)
マシンを使ったトレーニングの場合は、特定の筋肉に対して高い負荷をかけることができるため、筋肥大や筋力アップに効果的。
一方、自重でのトレーニングは、マシンを使う場合に比べて負荷が低めになる。ただし、引き締めやダイエットなど、低負荷で回数を多くした方が効果的なトレーニングには十分。場所を選ばずにできるので、気軽にトレーニングを始めやすいのも嬉しいポイント。
チューブ・ライイング・ヒップアブダクション
<やり方>
- 床に寝そべり、横向きになって下のほうの手で頭を支え、寝そべる
- 両足をチューブバンドに通し、両脚とも伸ばした状態にする
- 天井側の脚を、「ゆっくり」「高く」を意識して持ち上げる
- 上げた脚をゆっくり下ろして、元の状態に戻す
- 3,4を繰り返し、反対の脚も同様におこなう
「チューブ・ライイング・ヒップアブダクション」は寝た状態で、チューブを使用したヒップアブダクション。チューブを使用する分、「ライイングヒップアブダクション」よりも強度を強めた形でトレーニングできる。「ライイングヒップアブダクション」に慣れてきて、より高めの負荷で鍛えたり、お尻を引き締めたい人におすすめ。
チューブ・スタンディング・ヒップアブダクション
<やり方>
- チューブを柱などに巻きつけ、固定する
- 柱の横に立ち、柱側ではない方の足にチューブを巻きつける
- まっすぐ立つ
- 脚を身体の外側に向かってゆっくり開き、ゆっくりと戻す
- 繰り返し、反対側の脚も同様におこなう
「チューブ・スタンディング・ヒップアブダクション」は、チューブ・ライイング・ヒップアブダクションと同様に、チューブを利用したトレーニング。トレーニングチューブは比較的お手頃な価格で売られていることも多いので、自宅でも強度を高めたトレーニングがしたい人は購入を検討してみよう。
ライイングヒップアブダクション
<やり方>
- 床に横向きに寝そべり、ひじを立てて上半身を支えるようにする
- 天井側の脚は伸ばした状態にし、床側の脚は軽くひざを曲げておく
- 天井側の脚を、「ゆっくり」「高く」を意識して持ち上げる
- 上げた脚をゆっくり下ろし、元の状態に戻る
- 3,4を繰り返し、反対の脚も同じようにおこなう
トレーニングに必要な器具がなく、自宅で簡単に始められるトレーニング。横になれるスペースがあれば誰でも簡単に始められ、自重で比較的負荷も低めなので、初心者におすすめ。
マシンを使った「ヒップアブダクション」(通常姿勢)
- しっかりと胸を張った状態で座る
- パットとパットが当たるまで脚を閉じていく
- 脚を開いていく際は、閉じるときよりもゆっくりとおこなう
足首は「背屈」といい、角度を90°にしておこなうと、より内転筋に刺激が入りやすくなるので、意識してみよう。
また、脚を閉じるときよりも開く動作をゆっくりとおこなうことで、より内転筋に効きやすくなる。完全に開き切ると負荷が抜けるので、ギリギリのところで止めてまた閉じていくのがポイント。
マシンを使った「ヒップアブダクション」(前傾姿勢)
- シートのやや前方に座って、身体も少し前傾にする
- 通常のアブダクションと同様に、姿勢を保ったまま脚を閉じていく
基本の動作は一般的な「ヒップアブダクションマシン」のトレーニングと同様。脚を開くときも、開き切らないことを意識しておこなう。
しっかりと踏ん張れる分、重い重量を扱うことができるようになるので、初めての重量でトレーニングする際などにぴったり。
「ヒップアブダクション」マシンの正しい使い方
「ヒップアブダクション」はお尻の筋肉を鍛えるトレーニングで、正しい負荷の設定が大切。また、座り方と動きも正しく行うことで、お尻の形を整えて、すっきりと綺麗な見た目に。
ここでは、座席の調整や脚の置き方、適切な重量設定まで画像でわかりやすく紹介。
「ヒップアブダクション」の効果を高める3つの方法
「ヒップアブダクション」でより効果を高めるためのコツは以下の通り。
・脚を閉じ切らない
・呼吸を止めない
トレーニングで大切なのは正しいフォームと負荷でおこなうこと。無理せず適切にできる範囲でトレーニングを続けられるようにしよう。
姿勢を正しく維持する
「ヒップアブダクション」の効果を最大限に引き出すためには、股関節から意識的に動かし、背中が丸くならないよう注意することが大切。
正しい姿勢でトレーニングをおこなうことで、しっかりとお尻に効かせることができる。ただし、マシントレーニングの場合、前傾姿勢で取り組むのはOK。前傾姿勢をとることで、お尻に力が入りやすくなり、重い重量でもトレーニングできるようになる。

前傾姿勢は踏ん張りやすくなるので、重量を上げたばかりのトレーニングや、初めて「ヒップアブダクション」に挑戦する人にもおすすめです。この際も背中は丸めず、背中をまっすぐ伸ばしたまま前傾することを意識しましょう。
脚を閉じ切らない
「ヒップアブダクション」の効果を高めるには、脚を閉じる動作にも工夫が必要。脚を完全に閉じず、負荷が逃げないギリギリのところで止めることがポイント。

負荷が逃げないようにすることで、筋肉に常に負荷をかけている状態にし、よりトレーニングの効率を上げることができます。
呼吸を止めない
筋肉を収縮させる動作の際には「息を吐き」、筋肉を緩める動作の際には「息を吸う」ことを心がけよう。この呼吸法は他トレーニングも同様。
「ヒップアブダクション」でも呼吸のコントロールを意識することでトレーニングの効率を上げることができる。
安定して呼吸ができると、筋肉への酸素供給が最適化され、筋肉をしっかりと動かすことができる。また、心拍数をコントロールし、長期間トレーニングができるようになるので、トレーニングを始めたばかりの人はとくに意識してみよう。
「ヒップアブダクション」の重量と回数
「ヒップアブダクション」の目安となる回数は、個人の体力や筋力、目標などによって異なる。
ダイエットをしたい人の場合は、「15~16回を3セット」取り組めるような、比較的負荷のかからない重量でおこなうのがおすすめ。
身体を引き締めたい場合は「12~15回程度できる重量」、筋肥大の場合は「8~10回の3セットがギリギリできるくらいの重量」でおこなうようにしよう。
あわせておこないたい!お尻を鍛える筋トレ2選
ヒップアップ効果をさらに高めるために、「ヒップアブダクション」と組み合わせるとよいトレーニングは下記など。
・サイドスクワット
これらのトレーニングは、ヒップアブダクションと同様に下半身、とくにお尻の筋肉をターゲットにしているため、組み合わせることで相乗効果が期待できる。
クラムシェル
<やり方>
- 横向きに寝て膝を90度に曲げ、腰に手をあてる
- 両脚のかかとをつけたまま、お尻に収縮が感じられるところまでひざを外に開く
- 両ひざがつく寸前まで脚を閉じ、同じ動作を繰り返す
- ヒップアップ効果や股関節の柔軟性アップにつながる
「クラムシェル」は、横になった状態で脚を重ね、ひざを曲げたまま上の脚を持ち上げる運動。この動作は、とくに外側のヒップを鍛えるのに効果的。
サイドスクワット
<やり方>
- 脚を肩幅より広く開き、つま先を正面に向けたら両手を前に伸ばす
- 腰を落とし右膝に重心を移動させたら、最初の状態に戻る
- 同じ動作を左右交互に繰り返す
スクワットは、下半身トレーニングの基本で、お尻や太ももの筋肉を効率よく鍛えることができる。正しいフォームで深く腰を落とすことで、ヒップアップに必要な大臀筋を含む複数の筋群に負荷をかけられる。
お尻(中臀筋)のストレッチ方法
中臀筋(ちゅうでんきん)を伸ばすためには、床に座った状態でのストレッチがおすすめ。ひざ裏を90度にして前に倒れ込む動作が基本となる。
ストレッチの際は、深呼吸を意識しながらゆっくりと身体を前に倒し、伸ばす感覚をしっかりと感じるようにしよう。
・寝た状態でできるストレッチ
・テニスボールでのストレッチ

座った状態から片方の脚を後ろに伸ばし、もう一方の脚を内側に折り曲げて腰を落とすポーズもストレッチに効果的。股関節周りの柔軟性を高めると同時に、腰周りの筋肉を柔らかくする効果が期待できます。また、ストレッチをおこなう際には、無理なく自分の身体の柔軟性に合わせることが大切です。痛みを感じる場合はすぐに動作を止めるようにしましょう。
イスを使ったストレッチ
<やり方>
- 床に足がつく高さのイスに、やや浅めに座る。
- 右脚のひざを曲げて、外くるぶしを左ひざ辺りに乗せる。両手は右脚のすねか腰に添える。
- 息を吸って背骨を真っ直ぐに伸ばし、そのまま上体を前に倒す。
- お尻の外側に伸びを感じつつ、その状態で20秒キープする。
- 脚を入れ替え、反対側も同様に行う。
寝た状態でできるストレッチ
<やり方>
- 仰向けに寝て、両方のひざを立てる。
- 片脚を、もう片方の脚の上にのせて組む。
- そのまま、両脚を胸の方へ引きつけて、両手で抱えながら20秒キープする。
- 脚を組み替えて、反対側も同様に行う。
テニスボールでのストレッチ
<やり方>
- 三角座りをして、両手は後ろにつけて身体を支える。左側のお尻、坐骨の少し上辺りにテニスボールを置く。
- 重心を左側に移動させてボールの上に乗る。このとき、右のお尻を少し浮かせる。
- 身体を前後にスライドさせるようにし、お尻の下でボールを転がしてほぐしていく。
- 反対側も同様に行う
「ヒップアブダクション」に関するQ&A
中臀筋(ちゅうでんきん)が発達しすぎると美尻になれない?
A:中臀筋を鍛えること自体に問題はない

中臀筋に力を入れて立つと、お尻が四角く見えることがありますが、これは立ち方が原因であり、発達しすぎたわけではありません。鍛える際は、お尻に力を入れすぎないことを意識することで、丸いお尻に近づくことができます。
女性の場合は低重量で回数を増やすのがよいというのは本当?
A:小さく引き締まったお尻を目指す場合は、「低重量で高回数」をこなす方法がおすすめ。

低重量で高回数でおこなうことは、男女問わず有効で、とくに女性の場合はお尻の形を整えることができます。
男性でも同様に、低重量で多くの回数を重ねることによって、大きくすることもできます。重要なのは、自分の身体の反応を見ながら適切な回数を見つけること。例えば、低重量で40回やるか、100回やるかによって、お尻がどの程度パンプアップするかが変わってくるので、その様子を見ながら調整するようにしましょう。
逆に、高重量低回数でトレーニングをする場合、お尻以外の筋肉も多く使われるため、太ももがたくましくなる可能性があります。お尻だけを大きくしようとするときには、足の付け根から太くなりやすく、お尻だけに集中できなくなる可能性があるので、注意しましょう。
ハーティネス株式会社代表
フィットネス勤務から独立し、現在はダイエット迷子に正しい知識を伝えるためのオンライングループレッスン運営中。
コンプレックスを強みに変える!ボディメイク運動指導やリバウンドなしで、理想の体を手に入れる食事指導をおこなっている。
2チャンネル目となるYouTube「みおGYM」にて週2回エクササイズ配信中
著書4冊/各種雑誌、テレビ出演
JBBF 日本ボディビル・フィットネス連盟 2年連続優勝経験を持つ