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“きこえる人”と“きこえない人”がおもしろがれる社会をつくるoioiの挑戦!

「Wellulu」の様々な取材を通して、今回は堂上自身があるイベント会場で出会い、エンパワーメントされ、衝撃を受けた、大阪を本拠地とする「一般社団法人 手話エンターテイメント発信団oioi」(※)という団体の代表と理事のふたりを取材させていただいた。
一般社団法人 手話エンターテイメント発信団 oioi(オイオイ) ……バリアクラッシュという理念のもと手話エンターテイメントを発信している団体

彼らが目指す社会は、“きこえる人”と“きこえない人”の間にある、目に見えないバリアをとりのぞく、ボーダレス社会だ。「手話エンターテイメント」という演者を通して、多くの人が持っているバリアをぶっ壊しにいく熱い気持ちを堂上が聴く。

大阪のあるカフェにて、ふたりの情熱がボーダレス社会のウェルビーイングをつくる。

 

岡﨑 伸彦さん

一般社団法人 手話エンターテイメント発信団oioi 代表理事

生まれたときから耳が全くきこえない。デフファミリー(全員がきこえない家族)育ち。

■出演歴
東京2020パラリンピック開会式出演、「はじまりはありがとう/天道清貴」MV出演(2021年)、TEDxKobe 2019登壇、Eテレ『バリバラ』出演多数

https://www.oioi-sign.com/

石田 竜士さん

一般社団法人 手話エンターテイメント発信団oioi理事

大阪体育大学卒。大阪生まれ大阪育ち。
2014年にoioiへ加入。

■出演歴
聾宝手話映画「卒業〜スタートライン〜」出演、ミュージカル「羅針盤~キャプテン・ジョンの物語~」出演、「はじまりはありがとう/天道清貴」MV出演、「ヒゲの校長」出演

堂上 研さん

Wellulu編集部プロデューサー

1999年に博報堂へ入社後、新規事業開発におけるビジネスデザインディレクターや経団連タスクフォース委員、Better Co-Beingプロジェクトファウンダーなどを歴任。2023年、Wellulu立ち上げに伴い編集部プロデューサーに就任。

手話って面白い。進化し続ける手話を通してつくるコミュニケーション

堂上:今日は、大阪まで「一般社団法人 手話エンターテイメント発信団oioi(以下:オイオイ)」のみなさんに会いたくて来てしまいました。僕はコモンビート20周年のイベントでオイオイの公演を見させていただいて、ウェルビーイングな人たちだと感じて、ずっと取材したいと思っていました。今日はよろしくお願いいたします。

岡﨑石田よろしくお願いいたします。

堂上:早速、おふたりがオイオイと出会ったきっかけや、オイオイの団体をはじめたのはなぜなのかを教えてください。

岡﨑:オイオイは、元々手話のボランティア団体だったのですが、そこに参加することからはじまりました。当時は、手話を交えて歌を歌うという「手話歌」の活動をメインに行っていましたが、色々なところから「きこえない人は楽しめない」とご指摘をいただきました。そうしたこともあって、その後、僕らが挑戦したのが「手話のお笑い」です。手話や聴覚障がいに関することをお笑いにしたら、きこえる人もきこえない人も、もっと手話を楽しんでくれるのでは、と思ったのです。僕はこの時に、初めてコントの勉強をはじめました。

堂上:歌よりも、コントのほうが受け入れられたのですね。

岡﨑:そうです。そんなふうに手話コントをやっているうちに「手話パフォーマーになりたい!」と見学に来たのが竜士です(笑)。

堂上:石田さん登場してきました。

石田:僕は大学時代に「手話」の授業があったことがきっかけで、手話の勉強を始めました。僕自身はきこえるし、まわりの友だちもきこえる人ばかりだし、その授業が面白いかどうかも分からなかった。けれど、その授業の先生が「おもろい大阪のおばちゃん」で、授業がめちゃくちゃ面白く感じて。気づけば僕の中で「手話って面白いやん」になっていました。

堂上:運命の出会いが、手話の先生、大阪のおばちゃんだったわけですね。

石田:はい、そうなんです。当時ストリートで歌を歌っていたのですが、その時に手話パフォーマンスを行っていました。大学卒業後も活動をしていたのですが、手話の勉強は独学でやっていたので本当にこれで伝わるのか不安になり、しばらくしてちゃんと手話パフォーマンスをしている団体を探しました。一時期は東京の団体にも所属していたのですが、「大阪にもあったらいいなぁ」と探していた時に出会ったのが、オイオイです。手話と出会ってから6年後ぐらいですかね。

堂上:そこでやっとおふたりの出会いにつながったのですね。

石田:僕は東京で、上品で、丁寧で、きれいな手話で表現をすることを習っていました。けれども、大阪でオイオイの稽古を見学しに行った時に、オイオイは、汗だくでうるさい、ださい感じだったのです。見学の途中で「もう少し声のボリューム落とせますか?」って電話がかかってきたりするぐらい稽古が暑苦しいんです。これだ!って思いました。

それだけでもすごいのに、さらにすごいのが、きこえるメンバーとのぶ(岡﨑さん)が話しているときに、きこえるメンバーが、「ねえ、ねえ、さっきの話どう思う?」って聞いたんです。そしたら、のぶが「え、なに?」って聞き返したんです。すると「ちゃんと、聞いとけや。」ってのぶに言うんですよ。すると、のぶが「ごめん、おれきこえへんねん。」って言ってふたりで笑っているんです。これは衝撃的でした。

堂上:ええ、「ちゃんと聞いとけよ。」って、きこえない人に言うセリフではないですよね。それが日常会話になっているんですね。

石田:ふたりの会話を聞いて「格好いいな、この関係」って思えたのです。そこで「オイオイに入ろう!」「俺もきこえない人と壁なく話をしたい!」と思って、そこからどっぷりはまっています。ちなみに見学に行って、ドアを開けた瞬間の第一印象なんだったと思います?

堂上:そうですね。汗くさっとか??

石田:正解です。「くさっ」です(笑)。

堂上:どこまでいじっていいのか、とか、なかなか分からないので、この辺の関係づくりは難しいですよね。お二人は出会ってどのくらいの年月経っているのですか?

岡﨑:うちのメンバーは、いじってもらって全然問題ないです(笑)。僕らが出会ってからは10年くらい経ちましたね。

手話で世界を変えることができる。手話はウェルビーイング

堂上:ところで、おふたりはご家族とどのように過ごしていらっしゃるのですか?

岡﨑:家族全員、聴覚障がいがあるので、家族の会話は手話だったのですが、僕は自分がきこえないことが嫌でしたし、手話をすると、きこえないことが周りの人にも知られてしまうので手話が嫌いでした。けれども、ちゃんと手話を学んでみたら、会話がすごくラクになった。手話を使うまでは、一生懸命相手の口を読み取って会話をしていたのに、手話だと自然に入ってくるんです。そして次第に自分の障がいも受容できるようになりました。

堂上:手話を通して、周りの人とのコミュニケーションがスムーズにとれるようになったのですね。

岡﨑:手話歌をやめて、手話コントにしたことで、みなさんの笑顔をつくれたのが楽しかった。そして今は年間100件以上、全国の公演に呼んでいただいています。もっともっと、手話パフォーマンスを浸透させていきたい。

堂上:手話歌パフォーマンスでご指摘をいただいたからこそ、逆境をばねに新たな挑戦をすることで、オイオイのパフォーマーとしての型が生まれたのですね。すばらしいです。おふたりのこれからの展望や未来について教えてください。

石田:手話パフォーマンスを文化にしたい。当たり前に手話パフォーマーがいて、きこえる人も、きこえない人も手話を通してコミュニケーションがとれている状況をつくりたい。僕自身は、パフォーマンスが大好きなので、大舞台でお客さんといっしょに手話を通してつながりたい。

堂上:僕が初めて石田さんたちオイオイのパフォーマンスを観た時、会場にいた300人が一体となって手話をやっている。これは感動しました。あの時は、明らかに手話でたくさんの人を笑顔にして、ウェルビーイングな時間をつくってくれていました。

岡﨑:手話が当たり前の世界をつくりたい。日本を手話先進国にしたい。そう思っています。

堂上:手話は世界共通ではないですよね? 手話って自分たちでどんどん創っていってもいいんですか?

岡﨑:そうですね。手話は世界共通ではありません。手話の特徴として、手や身体の動きでその情景を表すことがありますので、そういう意味ではみんなが自分なりの表現を創っていると言える部分もあると思います。

堂上:手話も自分たちで創れるんだ、というのは新しい文化をつくれますね。クリエイティビティは、ウェルビーイングにつながります。そもそも、おふたりが楽しそうなのが良いですね。

岡﨑:手話を表す時は、表情が大切なので、手話を使っていると自然に表情が豊かになると思います。

堂上:「Wellulu」を読んでくださっている人たちにも、手話に関心持ってもらえる人がひとりでもいてくれると嬉しいですが、どうやったら手話が日常の中で普通になっていって、面白いと思ってもらえますかね?

岡﨑:手話を覚えようとするのではなく、オイオイの公演を観に来ていただくのが良いと思います。そこで、一緒に手話で身体を動かしてもらいたいですね。あとは、手話で認知症予防になるというのもあるかもしれません。

石田:実際に、年齢を重ねると耳がきこえにくくなり、コミュニケーションを取るのが嫌になってしまうケースが多いと伺いました。コミュニケーションが減ると脳が動かない時間が増え、認知症になりやすいとも聞いたことがあります。そんな中で、手話を覚えると、耳がきこえなくても全然コミュニケーションが苦にならないので、脳は動くし自然と笑顔が増える。認知症予防にもつながるのではと考えています。

堂上:僕はついついウェルビーイング事業を創ろうと発想してしまいますが、これは手話を通した認知症予防、それも手話を楽しく覚えるコミュニティだと思ったら、この世界の可能性は拡がりますね。

石田:年齢を重ねて、耳がきこえにくくなった人は、手話を覚えるだけで、お孫さんとテレビ電話で会話ができたりしますし、さらに笑顔が増えますね。

岡﨑:子どもが手話を覚えると、目を見て会話をすることも覚えていく、ということもあるんです。あとは声を出すのが苦手な人もいますよね。「ありがとう」って恥ずかしくて言えない子どももいると思います。そんな子たちが、手話を学んだら無理に声に出さずとも相手に想いを伝えることが出来るんですよ。

堂上:確かに、年配の方や子どもたちが手話を覚えるだけで、色々とウェルビーイングな社会が拡がりそうですね。

岡﨑:親子で手話を覚えたことで、家族の会話も増えたというお話も聞きます。

堂上:手話には可能性がありますね。こうやって手話が拡がることで、手話を通したコミュニケーションが普通になったら、ボーダレス社会というのに近づくんですね。

石田:手話が普通の日常会話の中に取り入れられ、きこえない人と誰もがコミュニケーションできる社会になれば、困っているきこえない人はいなくなり、いつしか聴覚障がいという言葉もなくなるのではと思っています。そういう世界をつくりたい。

堂上:最後にそれぞれのウェルビーイングと、オイオイの未来がどうなっているか教えてください。

石田:僕はパフォーマンスしている時が、最高に気持ちいい。そのために生きているといっても過言ではない。だから、舞台で手話パフォーマーとしてやっている状態がウェルビーイングですね。

堂上:いいですね。石田さんが舞台でお話しているだけで、観客側まで楽しくなっていくのは、もう才能ですよね。

岡﨑:僕は何かの主人公になっている時が、一番ウェルビーイングを感じる。自分が社会を変えていく中心にいたい。そして、オイオイがなくなっているくらい手話が浸透した社会をつくりたいです。世界を変えた男となって教科書に載っているような。

堂上:手話が世界共通語になって、世界を変えた男として岡﨑さんが載っているのはうれしいですね。その上では、子どもたちが楽しく学べる教材をつくっていけばいいんじゃないですか?

岡﨑:まさに今、そんな教材をつくろうと動き出しているところです(笑)。

堂上:みんなでつくる手話教科書とかもあってもいいかもしれませんね。新たな手話をどんどん開発していく。そうすることで手話をもっと好きになる。学校の授業で国語・算数・理科・社会・英語・手話のようになっていったら最高ですね。

石田:僕は手話がこんなに面白いって気づけただけで人生が変わりました。

堂上:手話が広まったことによって、ボーダレスな社会が実現すると良いですね。手話や言葉の力で世界が変わっていく。そんな社会はウェルビーイングな社会ですね。今日は、おふたりにお話を聴かせていただいただけて、とても楽しかったですし、手話が世界を変えると理解できました。素晴らしい時間に感謝です。ありがとうございました。

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