就職氷河期世代・ゆとり世代・Z世代といったように、社会に飛び立つ年代によって、会社や仕事に求める条件も大きく変わってくる。まさに就活真っ只中の学生たちは、何を意識し、どのようなポイントを会社選びの判断軸にしているのだろうか。
今回、マーケティング・ブランディング領域のコンサルティングファーム「Weiden Haus(バイデンハウス)」と、同社が運営する「若者の研究所」の学生研究員5名と座談会を開いた。
学生の皆さんがウェルビーイングを感じる瞬間、また社会に出てウェルビーイングに働く上で会社に求めることや理想を伺った。
石崎 健人さん
株式会社バイデンハウス 代表取締役
三上 広葉さん
株式会社バイデンハウス マネジャー
若者の研究所 コミュニティ・マネージャー
若者の研究所のコミュニティ・マネジャーとして若者のエスノグラフィー調査に取り組む。
後藤 樹さん
法政大学 経営学部 市場経営学科 4年生
東京都出身。趣味はモータースポーツのレース観戦(F1やMotoGP)、最近ハマっていることはガチャガチャを回すこと。いろいろ診断は珊瑚色。
菅井 彩加さん
お茶の水女子大学 文教育学部 人文科学科 4年生
奈良県出身。趣味は絵を描くこととコーヒー、最近ハマっていることはラテアートとバー巡り。いろいろ診断は空色。
今野 ひなさん
聖心女子大学 現代教育学部 国際交流学科 3年生
東京都出身。趣味は、ランニングコースの開拓。最近ハマっていることは、ストーリーミュージシャンの動画を見ること。特に、海外の地下鉄の演奏がお気に入り。いろいろ診断は瑠璃色。
松尾 ゆきさん
早稲田大学 商学部 3年生
大阪府出身。趣味は推し活で、応援するアーティストは変わりつつも15年ほど続いている。最近ハマっていることは「おぱんちゅうさぎ摂取」と「コスメ研究」。おぱんちゅうさぎは家に47体のぬいぐるみを所持するほどにどハマりしているコンテンツ。いろいろ診断は桜色。
柴田 勇介さん
東京工業大学大学院 物質理工学院 材料系 修士2年生
東京都出身。趣味は小学生から続けているサッカーで、最近は海外のサッカーチームに興味が出ている。最近ハマっていることは街歩き。同じ街でも、ひとつ道を変えるだけで新たな発見があるのが魅力。いろいろ診断は瑠璃色。
堂上 研
Wellulu編集部プロデューサー
1999年に博報堂へ入社後、新規事業開発におけるビジネスデザイン ディレクターや経団連タスクフォース委員、Better Co-Beingプロジェクトファウンダーなどを歴任。2023年、Wellulu立ち上げに伴い編集部プロデューサーに就任。
太陽の光を浴びる。好きな時に好きなものを食べる。身体の良好を保つのが第一歩?
三上:まずはじめに、皆さんにとってのウェルビーイングを聞いてみたいのですが、どんな状態がウェルビーイングだと思いますか?
今野:私なりの解釈は、何か出来事があってウェルビーイングを感じる、というよりは、常に幸福度指数が高い“状態そのもの”をウェルビーイングというのかな? と最近考えています。
三上:最近、何かあってそういう考えになったのですか?
今野:今のバイト先は、ウェルビーイングという概念をとても大事にしているんですね。普段から運動を取り入れることを推奨している会社で、身体のコンディションを整えることがウェルビーイングを保つために重要だとバイトを通じて考えるようになりました。
三上:バイトの研修では、他のバイト仲間とウェルビーイングについて語ることも?
今野:そうですね! 運動に関する補助も出ますし、店舗同士でどれくらい運動(スポーツ)を行なったか競い合ったりもしているのでウェルビーイングへの意識は強いと思います。あとは、同僚に「ラブレター」を書くという制度もあります。
後藤:ラブレターを書くとウェルビーイングな気持ちになるんですか?
今野:日ごろの感謝の言葉を伝えるのですが、対面だと恥ずかしい言葉も手紙になら込めることができるので、チーム全体が温かい雰囲気になりますね。
三上:今までの話は、勤務先でウェルビーイングを感じた取り組みですよね。私生活で心がけていることはありますか?
今野:ご飯を食べる時は、できるだけ室内で食べずにテラス席で食べるようにしています。ずっと室内にいると太陽の光をまったく浴びないので、ご飯の時間くらいは自然に触れてリフレッシュすることが大事かなって。
柴田:僕はこの取材を受けるまで「ウェルビーイング」という言葉自体知らなくて、取材が考えるきっかけになりました。考えてみたのですが、僕なりには「自分らしくいれること」がウェルビーイングで、そこから自分だけでなく自分が所属する組織全体が“らしくある”ことが組織のウェルビーイングなのかなと思いました。
後藤:心当たりのあった出来事はある?
柴田:僕的には「食べたい時に食べたいものを食べる」というのがあって(笑)。というのも、高校時代に面白い授業があって、人間は食べたい時に食べたいものを食べるのが、一番栄養面で合理的という話を耳にしたことがあったからです。
あとは、僕は人が喜ぶことを行動したいので、自分の行動で人に感謝された時にウェルビーイングを感じます。
十人十色のウェルビーイング観。お互いの意見を尊重しながら座談会は進む
後藤:僕も「ウェルビーイング」という言葉はあまり知らなかったんですが、ウェルビーイングは、他者と比較して高低を評価するものではないのかなと思いました。たとえば、他人に強制されて「TOEICで何点取りなさい」と指示されるのではなく、自分の意思で「TOEIC何点取ろう!」と目標を決めて、自己研鑽している時にウェルビーイングを感じる気がします。
石崎:誰かに強制されずに、自分で熱中している時ですね!
後藤:たとえば、僕は水泳を15年続けてきたのですが、「タイムを何秒に縮めなくてはいけない」という周りからのプレッシャーがない状態で泳ぐ時が、精神的にも一番ウェルビーイングを感じられました。
堂上:「物事に熱中する」のは、ウェルビーイングな生き方の大事な要素だと思うのですが、何に自分が熱中するのかってやってみないと分かりませんよね。
新しいことにチャレンジする上で、皆さんはどのような心がけをしていますか? 食わず嫌いみたいなのはあるんでしょうか?
松尾:どういう人が周りにいるか、どんな人と一緒にやるかによる気がしますね! 私は14年書道を続けているのですが、いまだに続けられている要因は教室に通っていた頃の師匠をはじめ、受講生たちの雰囲気が良かったからだと思います。そういった雰囲気の中だと自分らしく活動することができ、自分らしくいれる人と一緒に取り組むことができれば、熱中して続けられるのではないでしょうか。
堂上:なるほど!
三上:菅井さんがウェルビーイングを感じる瞬間は?
菅井:とても漠然とした考えなんですが、自分の心の波の高低差が大きくないことが大事な気がします。何事にも執着せず、期待しすぎないこと。なんだか修行僧のようですが、最近は就活やサークルで結果を出さなければならないことが多く、結果に一喜一憂しがちだったのですが、心の波をなるべく大きくしないように心がけると、ウェルビーイングな状態でいられると気づきました。
今野:心をさざ波の状態にする感じ?
菅井:そう、そんな感じ。
松尾:私は「幸せ」とか「楽しい」とか、何か感情が動くことがウェルビーイングな状態なのかと思います。
というのも、一昨年祖母が亡くなったのですが、後年はずっと母が介護していたんですね。そんな母は、毎日のように「日々が、楽しいも悲しいもない」と言っていました。
娘として聞いていて、その状態はどうなんだろう……と心配になって。それから、毎日のように母親と電話して「仕事でこんな大変なことがあったよ〜」とか近況を報告しあっています。たまにケンカすることもありますが、ケンカも含めて感情が動いている証拠なので、以前よりは母もウェルビーイングになったのだと感じます。
私個人の話をすると、私生活のスケジュールがびっちり詰まっているほうが充実感を得るタイプです。いろんな人と接する中でぶつかることもありますが、人間はいつ死ぬか分からない……と考えると、今を全力で楽しんで生きる意識が、充実感をもたらしてくれるのかなって思います。
仕事のルールがなさすぎても働きづらい?
堂上:では、ここからは「『働く』とウェルビーイング」についてお話を聞きしたいのですが、皆さんは現在就活真っ最中と伺っています。どういう会社で働きたいと思いましたか?
松尾:システマティックな仕事が好きではないため、自身の思考や工夫によってどうにかできるもの、また学生ながらも一定の期待値を持ってくれているが故に裁量権のある長期インターンを志望しました。“自分の工夫が体現される職場”で働けると嬉しいなと思っています。
石崎:マニュアルはないほうが嬉しいってこと?
松尾:マニュアルは最低限あればいいかなと思っていて、それを作る側になれるのが理想です。逆にいうと、マニュアルはゼロでも困らないかもしれません。会社やプロジェクトとしてのビジョンには共感できている前提で取り組んでいるので、具体的な業務などのやり方はある程度任せてもらえると嬉しいですね。
後藤:大学3年生の時は、SNS運用をおこなう会社にインターンとして勤務していました。ベンチャー企業だったということもあり、社内の体制が整っておらずサービス残業も多い感じだったので、その頃のウェルビーイング度は低かったです。
その後、知人から人が足りないということで某新聞社のインターンを紹介され入社しました。そこでは、社内の規則が明確に定められていたため、編集業務ということもあり、社内の人とコミュニケーションを取りながら効率的に業務を進められました。
このように、自分としては会社や業務に一定のルールが定められている職場が、ウェルビーイングに働くために必要な気がします。
学生が会社に求めるポイントは人それぞれ。世代で決めつけず、深く対話する姿勢が大切
堂上:皆さんがこれから社会に出て働く上で、外せない優先度はなんでしょうか? ぜひ、本音の話を伺ってみたいです。
柴田:僕はお金と勤務地と社風です。その会社で40年間働くことを考えると、なるべく地元の東京がいいなと思います。
堂上:今の話面白いなと思うのですが、そもそも柴田さんは40年働くイメージでいるんですね。
柴田:今の考えではそうですね。
堂上:僕らの時代は終身雇用が当たり前の時代だったので40年働く……ということに違和感はないんですが、皆さんは次世代なので3年区切りくらいで考えているのかなと思ってました。そこで、40年という言葉が出たので驚きです。
柴田:周りの友人には、すでに転職するタイミングや業界を決めた上で、新卒で入るべき会社はどこか、という順番で就活をしている人もいますよ。
堂上:やっぱり、いるはいるんだ! まあ、入ってみないとその会社の魅力は分からないですもんね。松尾さんはいかがですか?
松尾:私は成長の実感があることです。成長するために挑戦することを許してくれる企業が魅力的に感じます。自分の成長を通して、他者や社会に貢献していきたいので、その貢献度のボリュームが大きい会社を選びたいです。
三上:お金は気にしないですか?
松尾:お金は自分の成長に付随して増えていくものだと思うので、成長していけば自ずと増えていくものかなと。
三上:では成長実感が得られやすい職場であれば、業界や規模感は問わない感じ?
松尾:そうですね。結局、まずはやってみないと分かんないかなと思っていて。自分を見つけにいくために就職するようなイメージです。
よく「配属ガチャ」と口にする人もいますが、絞られた業務の内容しか見ていないからであって、企業の理念やビジョンに自分が心から共感できいていて、業務を通じて貢献の実感があればいいのかなと思っています。
後藤:僕はモノを売るプロモーションやコミュニケーションに興味があるので広告業界か、あとは流通における価値創造に興味があるので商社業界に絞って考えています。
企業のビジョンやパーパスも就活時にチェックするのですが、働いているバイト先で「パーパス設定しました!」という変化があっても、実際に現場で働いている人が、どれだけ意識して働いているかというと疑問があります。
なので今後の事業成長の見込みや、日々どれだけ面白い仕事ができるかのほうを重視しています。
菅井:私は自分がやりたい業界であることと、自分の好きな美容などの自己投資ができるほどにはお金をもらえるところです。あとは女性目線で、出産や育児などのライフステージの変化が訪れた時に、制度が充実しているかは気になります。だから、OB・OG訪問では先輩社員の生の声を聞くようにしています。
今野:私はお金の面は高望みはしないですが、毎月安定した報酬がもらえること。
三上:金額の基準は? たとえば、毎月ネイルやエステに行けるくらいとか。
今野:うーん、そうですね……。3~4カ月に一回ほど国内旅行に行けるくらい!
社会や上司からリアクションが返ってくることが、仕事のやりがいを感じるための必須要素?
石崎:先ほど話してもらったことが、今後の職場選びでみんなが大事にしていることだと思うのですが、仕事の中のやりがいはどういった時に生まれると思いますか?
菅井:「自分でなければならない仕事を担当できるか」が重要だなと思います。誰でも同じ結果になる仕事ではなくて、自分が手掛けるからこそ、良い結果が出るような仕事。自分の介入価値を見出せた時に、仕事のやりがいを感じると思います。
松尾:私は自分のおこなった仕事が外から見て、見えるものでもそうでないものでも「リアクションが返ってくること」だと思います。リアクションは良し悪しそれぞれあったとしても、反応が返ってくること。
最初のテーマで私のウェルビーイングな状態は「心が動くこと」とお話しましたが、何かそういう自分の感情を動かす反応を他者からいただきたい。それが仕事のやりがいにつながると思っています。
堂上:ここまでの皆さんのお話を聞いていて、「『働く』とウェルビーイング」って、僕は誰と働くかがとても重要だと思っていたのですが、皆さんの考えの中では「何をやるか」をとても重視されていたのが興味深かったです。
その上で最後にお聞きしてみたいのですが、仕事でどんな人と一緒に働きたいと考えているか、願望を聞かせてもらってもいいですか?
後藤:私は幅広い分野にアンテナを張っている人、情報収集に長けている人と一緒に働きたいなって思います。ひとつの価値観に捉われずに、公平公正に物事を判断してくれるのではないかと期待できるので。
菅井:私は「相互扶助の精神」を持っていて、誰かがキャパオーバーになっていたら「巻き取るよ!」って気にかけて、助け合える人と働きたいです。会社も集団で成り立っているので、チームで高いパフォーマンスが出るのであれば、日頃から連携し合っていたほうがいいと感じます。
柴田:お互いの長所を伸ばし合える関係の人と働きたいです。そういった関係性があるからこそ、チームとしても最大限のパフォーマンスを発揮できると考えているので。そのためには自分の素をさらけ出してくれている環境のほうが長所を伸ばしやすいのかなと思います。
松尾:私は“自分”をしっかり持っている人と働きたいです。自分を持っている人とは、私と合わない意見だった場合でも、接することで磨かれる部分があると思いますので、一緒に働きたいなと思います。
今野:私が働きたいのは、常に好奇心や心を躍らせてワクワクしながら取り組んでいる人です。そういう方と一緒に働いていると、本来はツラい仕事であっても楽しく働けると思います。
堂上:『Wellulu』で実施したウェルビーイングの調査で、経営者や上司が楽しく働いている組織はウェルビーイングになりやすい、逆に経営者や上司がたとえば寝不足でイライラしている組織は、Not ウェルビーイングになりやすいという調査結果があります。
やっぱり、経営者が楽しく働いていない組織は会社自体がつまらなくなって、ひいては社会全体に影響を与えるものだと思いますので、これからももっと皆さんのような若い方々が働きたいと思う会社を『Wellulu』を通じて増やしていきたいと思います。
本日は新鮮なお話をたくさん伺えました! 皆さん集まってお時間をいただき、ありがとうございました!
外資系コンサルティングファーム等を経て現職。バイデンハウスの消費財・ラグジュアリー・テクノロジー領域のリーダー。