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震災での「おすそわけ」がきっかけ? 社会貢献プラットフォーム『OSUSO』の開発秘話と目指す未来

「社会貢献」と聞いて、自分ごとと捉えられる人はどのくらいいるのだろう。「良いこと」「世の中に役に立つこと」とは分かってはいても、実際に行動できる人はそう多くないのではないだろうか。

そんな「社会貢献」を、より手軽に、誰もが参加できるように画策してきたのが株式会社USTUS代表取締役の新田拓真さんだ。新田さんが、そして2023年にリリースされた社会貢献プラットフォーム『OSUSO』が目指す、ウェルビーイングな社会とは。Wellulu編集部の堂上研が伺った。

 

新田 拓真さん

株式会社USTUS 代表取締役

宮城県石巻市出身。東日本大震災をきっかけに、社会貢献に対する想いが芽生え、社会課題解決に取り組む企業に就職。2014年に植物×おすそわけ事業として『URBAN GREEN MAKERS(事業売却済)』をスタート、2018年に独立後、食×おすそわけ事業として『BURGERS TOKYO』などを立ち上げる。2023年、社会貢献プラットフォーム『OSUSO』をリリース。おすそわけをコンセプトに新たな社会貢献文化を世界へ拡大しようと邁進している。

堂上 研さん

Wellulu編集部プロデューサー

1999年に博報堂へ入社後、新規事業開発におけるビジネスデザインディレクターや経団連タスクフォース委員、Better Co-Beingプロジェクトファウンダーなどを歴任。2023年、Wellulu立ち上げに伴い編集部プロデューサーに就任。

日本人が潜在的に持っているおすそわけの精神

堂上:新田さんがやられている社会貢献プラットフォーム『OSUSO』、すごく面白いサービスだと思っていたので、お話をお伺いできるのを楽しみにしておりました。本日はどうぞよろしくお願いいたします。

新田:ありがとうございます! よろしくお願いいたします。

堂上:早速ですが、『OSUSO』が生まれた背景をお伺いしてもよろしいでしょうか。

新田:はい。きっかけは、2011年の東日本大震災です。当時私は大学生で関東にいたんですが、実家が石巻市雄勝町(おがつちょう)というところにあったんです。20メートルくらいの津波がきて、町が丸ごと被害にあったような地域だったので、もしあの時地元にいたら自分もどうなっていたか……。

大学3年生にして「生きている」ってそれだけで本当に素晴らしいことなんだ、幸せなことなんだと思い知らされたんです。それと同時に、生きているからには世のため・人のために役に立つことをしたいと思い、社会課題の解決を行う会社に就職しました。

堂上:まずは企業に入社されたのですね。

新田:はい。ゼロの状態からサービスを生み出す経験をいくつかさせていただいて、自分でもやっていきたいと思うようになりました。その時に思い出したのが、震災当時の「おすそわけ文化」でした。あの頃はみんなが毎日生きていくことに必死だったので、とにかく困っている人がいたら助け合って乗り越えてきたんです。

考えてみれば、日本人のおすそわけの精神は震災があったから生まれたわけではないんですよね。私の地元は人口4,000人くらいの小さな港町なんですが、近所の漁師のおじちゃんに魚をもらったら家の畑で穫れた野菜をお返しする、という物々交換のようなものが日常的にあったんです。交換でなくても、誰かが困っていたら躊躇なく何かを差し出すような。

堂上:僕も、実家から大量の果物が送られてきてチームのメンバーにあげる……ということをよくやります(笑)。

新田:まさにそれです。そういう日本人の根底にある文化が、震災をきっかけに改めてすごいと感じたんですよね。

堂上:日本の和の心、素晴らしいですよね。

新田:そういった日本人の血と文化の素晴らしさをエッセンスとして組み合わせて事業化していくってところをコンセプトにして、最初は植物とインテリアのブランドを立ち上げました。

堂上:あ、最初は『OSUSO』じゃなかったんですか。

新田:そうなんです。植物を購入するとその資源が植林に還元される仕組みでブランドをスタートさせて、メディアに取り上げられたり、海外で代理店がついたりして。実は1億円規模の事業にまで成長したんですよ。

堂上:すごい!

新田:次に、植物よりもさらに身近なものを通して社会課題を解決したいなと思い、始めたのが、食×おすそわけの事業です。下北沢に『BURGERS TOKYO(バーガーズ・トーキョー)』というハンバーガーショップを立ち上げ、ハンバーガーを購入したお客様に紙のコインをお渡しして、3つの支援先の中から自由に選んで支援できる仕組みを作りました。すると自然とみなさんSNSに投稿してくださるようになって、メディアや企業にも注目されるようになり、2023年にはスポーツブランド『Nike(ナイキ)』と一緒にイベントを開催しました。

堂上:どの事業でもきちんと成果を出されているんですね!

新田:『BURGERS TOKYO』は今も運営しているんですが、さらに手軽に社会貢献ができる仕組みを作りたいと思ってできたのが『OSUSO』です。誰かのための行動、つまり純粋に社会貢献がしたいという気持ちと行動が可視化され、きちんと評価されて世の中に還元される社会を作りたいと思っていたら、色々な方がそのアイデアにロマンがあると評価してくださって。支援を受けながら、事業化までたどり着きました。

ゆくゆくは全国、そして世界に広げたいと思っているので、拡散力を狙ってオンラインのサービスにしました。ただ、私たちには『BURGERS TOKYO』で培ってきたオフラインの成功体験もあるので、デジタル×リアルをうまく組み合わせながら、社会課題の解決を促進したいと思っています。

堂上:『OSUSO』にたどり着くまでに、そんな道のりがあったんですね。

新田:そうですね。事業を進めながら「より手軽に」を追い求めた結果、今の事業にたどり着きました。『OSUSO』をやっていくうちに、もしかしたらまた別の事業が生まれるかもしれません。

堂上:僕はウェルビーイングな社会をつくるということを目標に「Wellulu」を立ち上げたんですが、まさにそういうロマンをたくさん伺いたいという想いもあって。実際に色々な方にお話を伺っていると、新田さんと同じように「こんな社会を作りたい!」という夢を持っている方が多くいらっしゃいます。

新田:もちろん事業なので利益も大事なんですが、サービスに対する想いやロマンは、今後も大切にしていきたいですね。

堂上:僕も、自分の得だけのためにお金を使う社会ではなく、みんながお互いを少しずつ思いやれるような社会こそがウェルビーイングな社会だと思っているので、すごく共感します。まさに新田さんの考えや『OSUSO』のコンセプトは、「Wellulu」にも通ずるところがたくさんありますね。

新田:『OSUSO』を始めてからは、堂上さんのように、共感してくださる方との出会いが増えました。もともと日本人は思いやりの心が強いので、きっと共感してもらいやすいんだと思います。

堂上:確かに! 震災の時にも、自然と助け合ったりボランティアに行く人が増えたりしますもんね。日本人がある意味当たり前と思っている精神を、『OSUSO』のように体系化したり言語化したりすることで、改めて気付くというのはすごく素敵ですね。

新田:『OSUSO』が、潜在的に日本人が持っている素晴らしいポテンシャルを引き出すきっかけになれば良いなと思います。そしていずれ、日本人の文化として海外にまで発展していけたら嬉しいです。

福利厚生×社会貢献で、従業員と企業のウェルビーイングを実現

堂上:『OSUSO』のサービスについて、もう少し詳しくお話をお伺いしてもいいですか? 今、事業としてはどのように運営しているのでしょうか。

新田:2023年に立ち上げたばかりのサービスなので、今は試行錯誤しながらサービスを確立させている最中です。『OSUSO』は、社会貢献をもっと楽しく、手軽に、身近な存在にするコンテンツを提供することで独自の共感を生み出します。そしてその共感から生まれる「おすそわけ」を、社会や地域課題の最前線で活動する団体へつなぎ、社会貢献における「徳」を可視化するプラットフォームとしてサービスを提供しています。

まずは、企業のSDGsへの課題や、人的資本経営、ウェルビーイングの促進へのニーズに着目し、これらの経営課題を解決するサービスとして、従業員参加型のSDGsアクションと可視化できる会員サービス「OSUSO CLUB」を企業向けに提供しています。

つい先日、福利厚生サービスを提供するベネフィット・ワン(以下、ベネワン)さんと連携したサービス『OSUSOでSDGs!徳する福利厚生』(※)の開始を発表させていただきました。
※『OSUSOでSDGs!徳する福利厚生』サービス開始のプレスリリースはこちら(2024年3月5日発表)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000013.000094436.html

『OSUSOでSDGs!徳する福利厚生』は、企業の福利厚生として企業の従業員が、社会課題の解決に参加できるサービスです。企業と従業員、双方のウェルビーイングを促進することを目的としています。

堂上:拝見しました! 素敵なサービスですよね。

新田:『OSUSO』を始めた当初、最初から一般消費者向けに展開することも考えたんですが、社会課題への参加ってすごくハードルが高いですよね。結局あまり使われずに終了してしまう……という寄付関連のサービスも実は多いんです。

そんな中、福利厚生を通して社会貢献に携わることができると、従業員の心の豊かさがどんどん増していくというデータが見えてきたんです。福利厚生なら企業側にもメリットがあるので、従業員に対して利用を促進する効果もあります。

堂上:それでベネワンさんとの連携なんですね。

新田:はい。ベネワンのサービスは、すでに福利厚生を通じて企業のお得を追求して従業員の心の豊かさを提供してきたので、これからは「得」と同時に「徳」も追求できるようなサービスになっていきます。今後は、すでにベネワンを利用している1千万人以上の会員様に楽しんでもらえるようなコンテンツを充実させていこうと思っています。

堂上:素晴らしいです!

大切なのは「できることをできる範囲で」。そこに「ありがとう」が生まれる

堂上:これからどんどん多くの方々に広がっていくことが予想される『OSUSO』ですが、今後はどのように展開していきたいというような、野望はありますか?

新田:まずは何より『OSUSO』の認知度を上げることが最優先です。『OSUSOでSDGs!徳する福利厚生』のように、色々な企業と連携しながら多くの人に『OSUSO』のサービスを知ってもらいたいなと思っています。

まさに今進行中なのが、各地方自治体と連携した地方創生×おすそわけの事業『OSUSO TOWN』です。地方への寄付を受け付け、それを財源にしてそれぞれの地域の課題解決を行い、町が活性化していく……という仕組みづくりを考えています。「この地域を応援したい!」という想いを実現する事業です。

堂上:クラウドファンディングや、ふるさと納税のようなイメージでしょうか?

新田:クラウドファンディングよりも継続性が高く、ふるさと納税のように返礼品がないのが特徴です。

地域企業が『OSUSO』を通じて地域還元できる仕組みを作り、一人ひとり、一社一社の小さなおすそわけを集めて地域課題解決におけるプロジェクトを継続的に促進していきます。『ドラゴンボール』の元気玉みたいな感じですね。おすそわけによって、新たな財源が地域の中から生み出されるので、安定的かつ継続性の高いことが特徴です。

さらに地域企業や住民だけでなく、観光客も参加できる仕組みも考えています。たとえば、観光地を旅行した際に「楽しかった」「また来たいな」と思うじゃないですか。でも、観光地が観光地であるためにはどうしても財源が必要ですよね。そこで『OSUSO』を利用して、観光客に寄付してもらうんです。ただし寄付といってもニュースになるような大きな額ではなくて、1回100円とか500円とか。1人100円の寄付でも、10万人の観光客がおこなえばそれだけで1千万円という、大きな財源になりますよね。

堂上:なるほど! 観光地で楽しんだ分、自分でできる範囲でその地域におすそわけするんですね。それが、その地域の活性化につながっていく……素晴らしい循環ですね。

新田:はい。町中の観光地や商店に『OSUSO』のQRコードを設置して、電子決済で手軽に寄付ができるようになればいいなと思っています。観光地に行ったら『OSUSO』して帰る、そんな新しい旅行の文化が作れたら嬉しいです。

堂上:今後は国内だけでなく、インバウンドで海外から日本を訪れる観光客の数も何千万と増えていくといわれていますもんね。

新田:そうですね。「日本には『OSUSO』っていう文化があるらしいぞ!」ってところまでたどり着けたら、もう最高です。

新田:社会貢献で大切なのは、自分ができることをできる範囲で行うことだと思うんです。でも、今の世の中ではそれがすごく難しい。「支援したNPO法人を選んで100万円寄付する」って、なかなかハードルが高いし、できたとしても続かないですよね。

でも「応援」の気持ちをもとに、1回の旅行で100円の寄付ならできる人は多いと思うんです。地方じゃなくても、著名人とかスポーツ選手とか、応援したい人や場所を選んで自分のできる範囲で応援するという仕組みを、『OSUSO』を通じて作っていきたいです。

堂上:そこには「ありがとう」も生まれますもんね。

新田:そうなんです。「ありがとう」が生まれるのは、まさに寄付の醍醐味だと思っています。なので『OSUSO』には寄付を受け付けた側から寄付をしてくれた方に、感謝のメッセージを伝える機能もついています。

堂上:素晴らしいですね。新田さんが理想とする社会の実現のために「Wellulu」でも、ぜひお手伝いさせていただきたいです!

子どもたちに残したい「幸せ=お金だけじゃない」という価値観

堂上:『OSUSO』はまさにウェルビーイングな社会を実現するためのサービスだと思いますが、新田さんご自身はどんな瞬間にウェルビーイングを感じますか?

新田:『OSUSO』やこれまでの事業のように、創業者としてのお役目をいただいて、新しいサービスを立ち上げてそれに向かって突き進んでいる環境にいること自体が、僕にとってのウェルビーイングです。

堂上:何か新しいことにチャレンジしている瞬間ですね。

新田:はい。それから、事業を作り上げている中で色々な方たちとつながっていって、家族や従業員、従業員の家族も含めて共鳴し合える仲間が増えていく瞬間が本当に幸せですね。

堂上:僕も「Wellulu」を通じて色々な方々とつながるのが心から楽しいので、すごくよく分かります。

新田:あとは、仕事とは別ですが、家族や子どもとの時間を過ごしている時ですかね。

堂上:それもすごく共感します……!

堂上:最後に、未来の話を伺わせてください。僕らの子どもたちが大人になる頃、どんな社会になっていたら良いと思いますか?

新田:まず、お金だけで回らない社会。もちろん生きるためにはお金も大事ですが、お金に振り回されるのではなく、お金がなくても幸せに生きる方法がある世の中になっていてほしいなと思います。

堂上:資本主義社会ではない、共感資本社会ですね。

新田:おっしゃるとおりです。とはいえ、じゃあどうやって生きるのって疑問が出ると思うので、実際にそういうふうに生きている人を紹介するコンテンツを作ったりして、広めていけたらいいですね。

堂上:僕も息子の中学受験に関わったり、授業参観に参加したりする中で、「世の中はこう生きれば幸せになるんだ」という、変にバイアスのかかった価値観を子どもに伝えてしまっているんじゃないかと思うことがあるんです。子どもたちにとってウェルビーイングな社会を残していくためには、僕たちの価値観も一度リセットする必要もあるかもしれませんね。

新田:そうですよね。

堂上:親ですら価値観を押し付けそうになるんですから、きっとこれから色々な価値観に触れて迷うこともあると思うんです。そんな中、子どもたちには、強い意志を持って周りの環境に流されずに、自分の生き方を追い求められる人になってほしいなと思います。

新田:分かります。でも「こういう生き方がしたい」と思っても、今はまだお金で解決する人が多いと思うんです。ウェルビーイングという言葉は最近広まりつつありますが、革新的に取り組んでいこうとしている人たちはまだまだ少ない。

堂上:ウェルビーイングのための行動ができるのが当たり前になると良いですよね。

新田:そうなんです。そのきっかけのひとつとして『OSUSO』を広めていけたらなと思っています。

堂上:今日の対談は何から何まで共感することが多く、お会いできて、お話を伺えて、本当に良かったです。新田さん、本日はどうもありがとうございました!

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