「ダンベルカール」は、上腕の筋肉を鍛える定番のトレーニングのひとつ。本記事では「ダンベルカール」で鍛えられる筋肉や、さまざまな「ダンベルカール」のやり方やコツなどを詳しくご紹介。上腕を鍛えたい人や、「ダンベルカール」のバリエーションを知りたい人は、ぜひ参考にしてみて。
この記事の監修者
中野ジェームズ修一さん
フィジカルトレーナー
「ダンベルカール」で鍛えられる2つの部位と効果
「ダンベルカール」で鍛えられる筋肉は以下の2つ。ここでは、それぞれの筋肉の役割や、鍛えるとどんな効果があるのかを詳しく紹介するので、気になる人はチェックしてみよう。
・力こぶを太く厚くする「上腕二頭筋」
・上腕筋・腕橈骨筋(わんとうこつきん)
力こぶを太く厚くする「上腕二頭筋」
ひじの曲げ伸ばしというシンプルな動作で、上腕二頭筋を効果的に鍛えられる「ダンベルカール」は、初心者から上級者までが取り入れているトレーニング。上腕二頭筋は「力こぶ」につながる筋肉で、腕を曲げるときに使われる。
男性の場合、「ダンベルカール」で上腕二頭筋を鍛えることで、力強い腕を手に入れることができる。上腕二頭筋は比較的肥大しにくい筋肉だが、やりすぎるとバランスが悪くなってしまうことも。
女性の場合は、二の腕を引き締めるためにも上腕三頭筋とのバランスを意識しながらトレーニングをおこなうことが大切。
上腕筋・腕橈骨筋(わんとうこつきん)
「ダンベルカール」は主に上腕二頭筋を鍛えるトレーニングとして知られているが、上腕の前側に位置する「上腕筋」にも補助的に影響を与える。
上腕筋は上腕骨の中央部から前腕の尺骨につながり、ひじの関節の曲げる際に力を発揮する部位。ひじの関節を支える力が向上すれば、「ダンベルカール」だけでなく、上腕を対象とした他トレーニングのパフォーマンスも上がる。
「ダンベルカール」と「ハンマーカール」の違い
「ダンベルカール」と「ハンマーカール」はともに上腕を鍛えるトレーニングだが、ダンベルの持ち方が違うため、効果のある筋肉群も少し異なる。「ダンベルカール」は上腕二頭筋への負荷が大きく、「ハンマーカール」は腕橈骨筋に負荷をかけやすくなる。また、ハンマーカールは手首が安定しやすいため、ケガのリスクも少ない。
以下2つの違いについて詳しく紹介するので、どちらが自分に合っているか参考にしてみよう。
・ダンベルの持ち方
・鍛えられる部位
ダンベルの持ち方
「ダンベルカール」と「ハンマーカール」の大きな違いは、ダンベルの持ち方。
「ダンベルカール」は手のひらを上に向けてダンベルを横向きに持ち、「ハンマーカール」はダンベルを縦向きに持つことで手のひらが身体の側面を向く。ハンマーカールの名前の由来は、ハンマーを握る動作に似ていることから。ダンベルを縦に持つと手の動きが実際にハンマーを使うような形になり、この握り方が名前に反映されている。
鍛えられる部位
「ダンベルカール」は主に上腕二頭筋の内側にある短頭をターゲットに、力こぶの太さや厚みに影響する。一方で「ハンマーカール」は上腕二頭筋の長頭をメインに長頭は力こぶの高さに影響を与える。
「ハンマーカール」は手のひらが身体の側面を向く特有のフォームにより、腕橈骨筋(わんとうこつきん)にも効果的に働きかける。腕橈骨筋(わんとうこつきん)は前腕に位置し、グリップ力の向上や前腕の見た目に関わり、日常生活や他トレーニングにおけるパフォーマンス向上にもつながる。
「ダンベルカール」の7つの種類と正しいやり方
ここでは7つのダンベルカールと正しいやり方をそれぞれご紹介。フォームやトレーニング器具などによって、鍛えられる部位や負荷が異なるので、自分の目的に合った種類を見つけてみて。
・基本のダンベルカール
・ダンベルコンセントレーションカール
・ダンベルサイドカール
・ダンベルリバースカール
・ダンベルドラッグカール
・インクラインダンベルカール
・オルタネイトダンベルカール
基本のダンベルカール
<やり方>
- 肩幅くらいに足を開いて立ち、両手にダンベルを持つ
- このとき、手のひらは前方に向ける
- 肩をリラックスさせて背骨をまっすぐに伸ばす
- ダンベルを持ったまま、ひじを固定して持ち上げる動作をおこなう
- ひじが完全に曲がるまで持ち上げた後、ダンベルをゆっくりと元の位置に降ろす
足は肩幅程度、ひじの位置を意識した状態で取り組もう。初心者でも「3~8㎏程度」のダンベルを扱うため、手が滑って足に落とすととても危険。
しっかりグリップして、腕の負担も考慮しながらトレーニングしよう。また、「ダンベルカール」をおこなう際、正しいフォームの維持が筋トレ効果を高める上で大切。
ダンベルコンセントレーションカール
<やり方>
- 足が地面につくほどの高さのベンチに腰掛け、足は肩幅をわずかに超えるくらいに広げる
- 身体を少し前に傾ける
- ダンベルを握る腕をリラックスさせて、太ももにひじを当てる。もう片方の手はひざに添えて安定させる
- ひじの位置をずらさずに、ダンベルを胸方向に引き寄せつつ持ち上げる
- 持ち上げる動作を完了させたら、ダンベルをゆっくり元の位置に戻す
「ダンベルコンセントレーションカール」は、上腕二頭筋を集中的に鍛えることができ、とくに力こぶを鍛えるのに効果的。
イスに座った状態でおこない、片方の手でダンベルを持ってカールする。ひじを太ももに固定することでフォームが崩れにくく、上腕二頭筋に対して高い負荷を効率的にかけることができる。
このトレーニングをおこなう際には血圧が上昇しやすいというリスクがあります。トレーニング中に呼吸を止めないように注意しておこなってください。
ダンベルサイドカール
<やり方>
- リラックスして立ち、一方の手にダンベルを持つ
- ダンベルをひじから先の部分だけを使い、身体側に持ち上げていく。このとき、反動を利用しないよう気をつける
- ダンベルを可能な限り上に持ち上げた後、筋肉の収縮を感じるよう意識しつつ、ゆっくりと初期位置に戻す
「ダンベルサイドカール」は上腕二頭筋に強い刺激を与えることができ、中級者以上におすすめしたいトレーニング。負荷が高いため、筋トレ初心者にはフォームが乱れやすく、肩が上がってしまったり、ひじが左右に動いてしまうことが多い。
「ダンベルサイドカール」をおこなう際には、身体の側面でダンベルを持ち、ひじを固定した状態で腕だけを曲げてダンベルを上げる動作をおこなう。
ダンベルを横に持つことで、上腕二頭筋への直接的な刺激が強まり、筋肉の成長を促すことができます。トレーニングの効果を最大限に引き出すためには、ひじを身体の側面に固定し、動かさないよう注意することが大切です。
ダンベルリバースカール
<やり方>
- バーベルまたはダンベルを手に取り、拳が床を指すように持つ
- 腕を身体に密着させ、ひじを身体の横で位置固定しながら、ウェイトを持ち上げたり下げたりする
「ダンベルリバースカール」は、通常のダンベルカールとは異なり、逆手(手のひらが下を向く)でダンベルを持つ。握り方を変えることで、通常のダンベルカールよりも前腕の筋肉を効率的に鍛えることができる。
前腕の筋肉は比較的小さい筋肉群であり、高重量を扱うことが難しいため、「ダンベルリバースカール」をおこなう際には、10~20回おこなえるくらいの軽めの重量を選ぶことがおすすめです。前腕の筋肉を強化することで、握力アップやほかの重量トレーニングのパフォーマンス向上にもつながります。
ダンベルドラッグカール
<やり方>
- 背骨をまっすぐにして立ち、腕を自然に下ろし、ダンベルを逆手で持つ
- ひじをやや後ろに引きつつ、ひじを曲げてダンベルを上げる
- ダンベルを上げ終えたら、筋肉の感覚を意識しつつ、同じ道筋でゆっくりと元の位置に戻す
「ダンベルドラッグカール」は、カール系トレーニングの中でも珍しく、ひじを引きながらおこない、上腕二頭筋に強い刺激を与えることができる。
ひじ関節を後ろに引く際に肩甲骨を寄せすぎると、負荷が僧帽筋(そうぼうきん)に逃げてしまうため、注意が必要。立っておこなう場合、イスに座っておこなう場合の2パターンあるが、主に立った状態で行われる。
ダンベルを身体に近づけながらひじを後方にドラッグするように引き上げていきます。筋トレ初心者はフォームが乱れやすく、肩が上がってしまったり、ひじが左右に動いたりしてしまうことがあります。初心者はまず軽い重量から始め、正しいフォームの習得を心がけるようにしてください。
インクラインダンベルカール
<やり方>
- ベンチを45度に調整し、普段よりも少し軽いダンベルを選択する
- ベンチにしっかり座り、背もたれに背中をつけて固定する
- ひじは動かさずに、息を吐きながら腕を曲げ、ダンベルを持ち上げる
- 息を吸いながら、ダンベルを最初の位置に戻していく
角度を調整できるイスを使用しておこなう「インクラインダンベルカール」は、とくに上腕二頭筋を効果的に鍛えることができるトレーニング。
インクラインベンチに座ることで上腕二頭筋をストレッチした状態から負荷をかけるため、通常のカールよりも可動域が広くなる。インクラインベンチに座り、ダンベルを持って腕を曲げる際には、ひじをベンチの端に固定し上腕二頭筋に焦点を当てよう。
筋トレの経験がある初級~中級者におすすめです。未経験~初級者がこのトレーニングに挑戦する場合は、適切なフォームをしっかり意識して、肩に負担がかからないように注意しながら、軽めの重量から始めてみてください。
オルタネイトダンベルカール
<やり方>
- 腰幅で足を広げて立つ
- ダンベルを手に取り、親指が前を向くように腕を下ろして準備する
- 右手でダンベルを持ち、親指を外に向けて腕を捻りつつ持ち上げる
- 胸の前で止めてから、ゆっくり元の位置へと腕を下ろす
- 左手にも同じ動作を実施する。この一連の動作を繰り返し、休憩を挟んで終了する
「オルタネイトダンベルカール」は、片手ずつ交互にダンベルを持ち上げることが特徴。
両手でダンベルを持ち、片方の手を下ろしている間にもう片方の手でカールをおこなうことで、連続して筋肉に負荷をかけ続けることができる。
ダンベルを持ち上げる動作をゆっくりとおこない、下ろす際には筋肉への負荷を意識しながらゆっくりとコントロールするのがポイント。バリエーション豊かなダンベルカールの中でも、とくに人気ある種目のひとつで、上腕二頭筋を集中的に鍛えたい人におすすめです。
「ダンベルカール」で役立つ器具の使い方
ダンベルカールで活用できるアイテムの正しい使い方をご紹介。
正しい使い方を知って、適切なトレーニングができるようになろう。
「インクラインベンチ」の正しい使い方
「バーベル」の正しい使い方
「ダンベルカール」の効果を高める3つのポイント
ここでは、効果的に「ダンベルカール」をおこなうためのポイントを紹介。
・ひじの位置を固定、手首の角度に注意する
・背中を伸ばし、肩を下げる
・動きにメリハリをつける
ひじの位置を固定、手首の角度に注意する
「ひじを固定しない」、または「手首の角度がずれる」と上腕二頭筋へのトレーニング効果が減少する。そのためトレーニング中は、ひじの位置が動かないよう固定し、手首が外側に曲がらないようしっかりと立てておこなう。
その上で、上腕二頭筋を意識して動かすことが重要。初心者は無意識にひじを動かしたり、手首の角度がずれたりすることがあるため、軽い重量のダンベルから始め、正しいフォームでトレーニングをおこなうことを優先しよう。
背中を伸ばし、肩を下げる
「ダンベルカール」をおこなう際、力みすぎると肩が上がってしまい、上腕二頭筋に負荷がかかりづらくなる原因となる。肩に力が入ると、本来上腕二頭筋に集中すべき負荷が分散してしまい、トレーニング効果が減少する。
そのため、肩は落とすように意識して、リラックスした状態を保つことが大切。また、猫背になると負荷が適切にかかりにくくなるため、背中をまっすぐに保つこともトレーニング効果を最大化するためのポイント。
動きにメリハリをつける
トレーニング効果を高めるためには、動作の速度に変化をつけることもおすすめ。
ダンベルを下げる動作は筋肉への負荷を意識して「ゆっくり」と、ダンベルを上げる動作は「やや速め」に。スピードに変化を加えることで、より効果的な筋トレが可能になる。
また、上腕二頭筋にしっかりアプローチするためには、上半身の反動を使わないことも大切。反動を使ってしまうと上腕二頭筋への効果が弱くなるだけでなく、腰を痛めるリスクがある。
「ダンベルカール」の重量・頻度の目安
「ダンベルカール」の適切な重量や回数は個人のレベルや筋肉量によって異なる。ここでは、「ダンベルカール」の平均重量や回数を紹介するので、参考にしてみよう。
「ダンベルカール」の平均重量は?10kgはすごい?
「ダンベルカール」における平均重量(※ギリギリ1回持ち上げられる重さ)は、男性は約25kg、女性は約15kg。ただし、上腕二頭筋に効果的にアプローチするためにも、「1セット10~20回」を目安に取り組むのがおすすめ。
トレーニング経験に応じたレベル別の平均重量を見ると、男性で「未経験者は4kg×10回」、「初心者は8kg×10回」、「中級者は16kg×10回」が目安となる。
女性では未経験者が「2kg×10回」、「初心者が5kg×10回」、「中級者が8kg×10回」がそれぞれの目安とされている。
「ダンベルカール」の適切な回数
ダンベルカールの適切な回数は、トレーニングの目的によって異なる。筋肉を大きくしたい場合は「1セットあたり8〜12回の範囲で4〜5セット」、ダイエット目的や健康維持を高めたい場合は「1セットあたり15回程度を4セット」おこなうことがおすすめ。
筋肉を強くしたい場合には、より重い重量で「1セットあたり5回程度を6セット」ほどおこなう方がよいと考えられているケースもある。
「ダンベルカール」の適切な回数は、大きく筋肉を育てたいのか、細く引き締まった筋肉を目指すのか、筋力を強化したいのかによって異なります。自分のトレーニング目的に合わせて、適切な回数を選択するようにしましょう。
「ダンベルカール」の適切な頻度
適度に負荷をかけてトレーニングしている場合は、筋肉を十分に休める時間を考慮して週に2〜3回が理想とされる。この頻度は筋肉の回復と成長に必要な休息期間を確保して、効果的な刺激を維持できるバランスを踏まえている。
一方で、健康維持などを目的として過度に負荷をかけていない場合は、毎日トレーニングをおこなっても問題はない。そのため、自身のトレーニング目的に合わせた頻度での実施がおすすめ。
「ダンベルカール」に関するQ&A
「ダンベルカール」の重量が伸びないときに意識することは?
A:トレーニングの基本であるフォームの正確さを再確認し、適切なフォームでおこなっているかを見直そう
一時的にトレーニングの重量を下げて、より高い回数でのトレーニングを試みることもひとつの方法です。これにより、筋肉の耐久力を高めることができ、その後のトレーニングでより重い重量を扱えるようになるかもしれません。
「ダンベルカール」で前腕が痛くなるのはなぜ?
A:手首が曲がっていたり、トレーニング中に動いてしまっていることで、前腕に不必要な負荷がかかっている場合がある。
ダンベルを持つ際に手首をまっすぐに保つことを意識することで、前腕への負担を軽減し、効果的に上腕二頭筋に対する刺激を集中できます。また、手首の安定性を高めるために「リストストラップ」の使用を検討するのもひとつの方法です。
前腕が痛くなる場合は、トレーニング方法を見直して、関節の自然な動きに合わせた負荷のかけ方を心がけることが重要です。適切なトレーニング方法を選択することで、痛みを防ぎながら効果的に筋肉を鍛えることができます。
前腕の筋肉は、手首の角度やひじの位置によって負荷のかかり方が大きく変わるため、左右の手の軌道を変える「バーベルカール」でも、関節や周囲の組織のダメージがある場合はトレーニング内容やダンベルの重さを見直すようにしてください。
アメリカスポーツ医学会認定運動生理学士として、運動の大切さを広める活動を行っている。2014年からは青山学院大学駅伝部のトレーナーも務めており、東京神楽坂にある会員制パーソナルトレーニング施設「CLUB100」で一般の方やアスリートを指導。「科学的根拠に基づき、必ず結果を出す」が合い言葉で熱意のある指導を常に心がけている。