肩周りを鍛える「フロントレイズ」は、たくましい肩をつくりたい男性、肩周りをすっきりさせたい女性に人気の種目。本記事では「フロントレイズ」で鍛えられる筋肉や効果、正しいやり方、効果を高めるコツなどを詳しくご紹介。ダンベルを持つ手の向きや、レベル別、目的別でのバリエーションもぜひ参考にしてみよう。
この記事の監修者
つむら みおさん
パーソナルトレーナー
「フロントレイズ」で鍛えられる部位と効果
「フロントレイズ」は、たくましい肩をつくるのに欠かせない、三角筋を主に鍛える筋力トレーニング。ダンベルなどを使用して、効かせたい筋肉にピンポイントで負荷を与えることで、トレーニング効率を高めよう。
・大きく丸いメロン肩をつくる
・バストアップや姿勢を整える(大胸筋)
部位:肩の筋肉(三角筋)
「フロントレイズ」では、主に肩の筋肉である三角筋を鍛える。三角筋は、前部、中部、後部の3つの部位に分かれていて、トレーニング効率を上げるためには全体ではなく部位別に鍛えていくことが大切。
基本の「ダンベルフロントレイズ」では、とくに三角筋の前部に集中して負荷をかける。さらに、手の向きやダンベル以外のアイテムの活用によって、異なる部位にも刺激を与えられる。
また、三角筋は肩関節とつながっていて、上腕二頭筋のトレーニングにもなることや、三角筋前部を鍛えることで女性の肩周り前側をすっきりとさせる。
効果①:大きく丸いメロン肩をつくる
「フロントレイズ」で肩関節を包む三角筋を鍛えると、肩周りが大きく丸みを帯びた、いわゆる「メロン肩」をつくることができる。メロン肩は、ボリューム感のある肩のラインをだし、力強い印象を与えられる。
効果②:バストアップや姿勢を整える(大胸筋)
「フロントレイズ」は三角筋以外にも、大胸筋、とくにその上部も鍛えられる。大きな筋肉である大胸筋を鍛えることで、基礎代謝が上がってより引き締まった身体になる。また、男性の場合はより厚い胸板を、女性の場合は胸のハリ感をアップさせる効果が期待できる。
ただし、女性のバストアップは、カップ数が上がることや胸の丸みを保ちながらのボリュームアップを指すことが多いが、「フロントレイズ」で鍛えられるのはあくまで胸の上部の筋肉。大胸筋の厚みが増すことで胸のハリ感が出るが、必ずしもカップ数が上がることには直結せず、筋肉の発達により胸が平らに見える可能性があることも覚えておこう。
「フロントレイズ」の種類と正しいやり方
慣れてきたら、「ケーブルフロントレイズ」や「バーベルフロントレイズ」など、様々な器具を使用したバリエーションに挑戦し、トレーニングの幅を広げていこう。
・ダンベルフロントレイズ(基本)
・チューブフロントレイズ(初級)
・バーベルフロントレイズ(中級)
・インクラインフロントレイズ(中級)
・ベントオーバーフロントレイズ(中級)
・ケーブルフロントレイズ(上級)
ダンベルフロントレイズ(基本)
<やり方>
- 肩幅程度に脚を開き、背中が丸まらないよう胸を張って立つ
- ダンベルを太ももの前で握るようにする
- ダンベルを肩の前まで腕を伸ばしながらゆっくりと持ち上げる
- ダンベルの重さを感じるように、ゆっくりと元の位置までダンベルを下ろす
- これを繰り返す
「ダンベルフロントレイズ」は、がっしりとした体型を目指し、腕周りのトレーニング効率を高めるのに効果的な種目。
脚の幅は肩幅と同じ程度。背中が丸まらないように意識しながら、胸を張っておこないましょう。ダンベルの重さは、正しいフォームを崩さずに扱える範囲内で選ぶのがおすすめです。
チューブフロントレイズ(初級)
<やり方>
- 下からゴムの力を感じるように構える
- 上半身を後ろに倒さないように気をつけ、腕を前に上げる
- ゆっくりと効かせながら元の体勢に戻る
「チューブフロントレイズ」は、トレーニングチューブを使用するフロントレイズ。チューブの張力を活用して筋肉に負荷をかけるため、ダンベルを使用する方法とは異なる特徴がある。
チューブは伸びるほど負荷が増加するため、一般的なフロントレイズよりもトレーニングの強度を自分の体力レベルに合わせて調整しやすい。初心者から上級者まで幅広いレベルの人におすすめ。
ただし、勢いを使って一気に引き上げないよう注意しよう。勢いで一気に上げてしまうと、負荷のピーク時に自分に合わない重さとなり、ケガのリスクを高めてしまう。また、自分に合う負荷で行えるようなチューブの種類や長さを選ぶことも大切なポイント。
自分の力で上げられるくらいで伸ばすのが適切な負荷になります。慣れてきたら徐々にチューブを伸ばすようにし、自分の体力に合った範囲で負荷をかけるようにしましょう。
バーベルフロントレイズ(中級)
<やり方>
- バーを肩幅より狭く、オーバーグリップで持つ
- 肩幅で立ち、腕を下ろす
- 肩からおでこの間くらいまでを目安に持ち上げていく
- 息を吸いながら、ゆっくりと下ろす
「バーベルフロントレイズ」は、バーベルを使用しておこなう種目。「ダンベルフロントレイズ」と比較すると、軌道が制限されるためフォームが安定しやすい。また、両手で1つの重量を持つことでより高い重量を扱うことができ、負荷を高められる。
「ダンベルフロントレイズ」と比べたときの注意点は、肩が前に入りやすいこと。肩が前に入ると、肩関節への負担が増えてケガのリスクを高めてしまうため、肩が巻かないように胸を張ることを意識しよう。
「バーベルフロントレイズ」を始める際は、握りやすく肩や手首への負担が少ない「EZバー」から始めるのがおすすめです。重量が軽い分、フォームを安定させやすく、ケガのリスクを減らすことができます。
インクラインフロントレイズ(中級)
<やり方>
- シートの角度が45度になるよう設定する
- ダンベルを持ってシートに腰かける
- 手のひらが地面のほうを向くようにダンベルを構え、前ならえの姿勢をとる
- ダンベルを握りこんで、三角筋を収縮させる
- ゆっくりと下ろしたら、トップポジションまでダンベルを持っていく
- 動作を繰り返す
「インクラインフロントレイズ」は、ベンチの角度を45度に設定しておこなうトレーニング。とくに三角筋前部に対して強い刺激を与えられることが特徴で、筋肥大したい人におすすめ。シートに身体を預けておこなうため、反動を使うことが難しく、筋肉へピンポイントにアプローチできる。
また、重量は自分がコントロールできる範囲内で選ぶことが大切。可動域を無理に広げようと大きくダンベルを上げ過ぎることも避けて、動作は目線の高さまでが最大となるようにしよう。
「インクラインフロントレイズ」で注意すべきポイントは、手を下げすぎないことです。インクラインの状態では、重力の影響を強く受けるため、手を下げすぎると筋肉への負担が強くなってコントロールが難しくなります。
ベントオーバーフロントレイズ(上級)
<やり方>
- 肩幅程度に脚を開いて立ち、両方の手にダンベルを持つ
- 背筋を伸ばしたまま股関節から折るように身体を前傾したところがスタートポジション
- ひじを伸ばし切らずに軽く曲げ、バンザイの動作で前方にダンベルを持ち上げる
- 元に戻す
- 動作を繰り返す
「ベントオーバーフロントレイズ」は、三角筋前部や烏口腕筋(うこうわんきん)、前鋸筋(ぜんきょきん)など、肩の筋肉を中心に鍛えられるトレーニング。肩関節の安定性をアップさせる効果がある。
また、身体を前傾させるため、難易度が高くなっている。以下のポイントをおさえて取り組むようにしよう。
【ポイント】
・肩を無理に上げない
肩を上げすぎると肩周りの筋肉に無用な緊張が生じ、ケガの原因にもなりかねない。
・腕は完全に伸ばしきらない
腕は完全に伸ばし切らず、わずかに曲げることで肩への負担を軽減する。
・手の幅は適切な幅を保つ
手の幅を狭くしすぎると、動作の際に肩への負担が不均等になるため、適切な幅を保つことが重要。
・背中を丸めない。
背中を丸めないよう注意し、背筋を伸ばした状態をキープすることで、安定したフォームを維持する。
「ベントオーバーフロントレイズ」は、フロントレイズでは物足りなさを感じる人や、筋肉を伸ばす際の負荷を高めたい人、筋肥大を目的にしたい人におすすめです。
ケーブルフロントレイズ(上級)
<やり方>
- ケーブルマシンにロープのアタッチメントを下につける
- 肩幅程度に脚を開いて立つ
- ロープを股の間に通して、端っこを握る
- ロープを身体の前に向かってあごの位置まで持ち上げる
- 腕は完全に伸ばすのではなく、軽く曲げた状態を保ちながらゆっくりと下ろす
「ケーブルフロントレイズ」は、ケーブルマシンを使用したフロントレイズ。「ダンベルフロントレイズ」と比べると、ケーブルの張力は動作全体を通じて一定の負荷を維持し、筋肉により強い刺激を与えることができる。
ポイントは、重量を軽く設定して始めること。また、筋肉や関節に無理な負荷をかけないよう、腕は伸ばしすぎずに可動域を最初は狭めに設定しよう。慣れてきたら可動域を徐々に広げ、その後で重量を上げていくのがおすすめ。
「ケーブルフロントレイズ」では、脇を締めて軌道を安定させることも大切です。自分の力の入れ方によっては、ケーブルが想定外の方向に動いてフォームが崩れる可能性があるため、しっかりと身体の軸を意識しておこないましょう。
「フロントレイズ」で役立つ器具の使い方
ここでは、フロントレイズで使うトレーニング器具をご紹介。
動かし方などを画像と動画で解説するので、参考にしながら正しく使えるようにしよう。
「インクラインベンチ」の正しい使い方
「ケーブルマシン」の正しい使い方
「バーベル」の正しい使い方
「フロントレイズ」の重量・回数の目安
以下は、「ダンベルフロントレイズ」の重量・回数の目安のご紹介。あくまで、正しいフォームのままトレーニングを行える、無理のない重量・回数が大前提であることを忘れないようにしよう。
【目的別】
・筋肥大:8回(自分の最大重量で)
・スタイルアップ:12~15回
・ダイエット:15〜16回
男女それぞれの、初心者・中級者・上級者のレベル別での「ダンベルフロントレイズ」の重量・回数(目安)は下記で詳しく説明。
男性の場合
<バーベルフロントレイズ>
・初心者:体重×0.2 kg(10回 2セット)
・中級者:体重×0.5 kg(12回 3セット)
・上級者:体重×0.9 kg(12回 3~4セット)
※「バーベルフロントレイズ」での目安であり、あくまで一般的なガイドラインなので、個人の体力や経験に応じて調整が必要
男性向けの「ダンベルフロントレイズ」の場合、重量よりも「フォームの正確さ」が優先になるため、上記を参考にしつつも軽めの重量でおこなうのがおすすめ。
女性の場合
<バーベルフロントレイズ>
・初心者:体重×0.1 kg(10回 2セット)
・中級者:体重×0.3 kg(12回 3セット)
・上級者:体重×0.5 kg(12回 3~4セット)
※「バーベルフロントレイズ」での目安であり、あくまで一般的なガイドラインなので、個人の体力や経験に応じて調整が必要
女性向けの「ダンベルフロントレイズ」の場合も、上記の重量や回数を目安に。このとき、自分の限界を理解して無理のない範囲で調整しよう。
「フロントレイズ」は手の向き・ダンベルの持ち方で効果が変わる
「ダンベルフロントレイズ」では、手の向き・ダンベルの持ち方で鍛えられる部位が変わってくる。基本のやり方で進めつつ、慣れてきたら色々なバリエーションに挑戦してみよう。
・手のひらを下にする
・手のひらを上にする
・斜め方向
手のひらを下にする
手のひらを下に向けたダンベルの持ち方は、とくに三角筋(横)に効果的に刺激を与えられる。とくに肩のボリュームアップや形を整える効果が期待できる。
この持ち方では、三角筋をより効率的に収縮させられますが、同時に肩がすくみやすくなるため、注意が必要です。
手のひらを上にする
手のひらを上に向けた「フロントレイズ」は、前腕が地面と平行になる。そのため、三角筋前部がよりストレッチされて収縮しやすくなり、集中して鍛えられる。
収縮感を感じにくいため、初心者には難しい動きでもあります。「フロントレイズ」で基本のフォームに慣れるまでは手のひらを下に向けてトレーニングするようにしましょう。
斜め方向
斜め方向でのダンベルの持ち方は、三角筋前部と大胸筋に効果的。三角筋前部により深い収縮を感じやすくなり、大胸筋への刺激も得られるので、肩の前面だけでなく胸の筋肉も鍛えられる。
この持ち方は、とくに大胸筋を強化し、胸と肩の筋肉にボリュームを与えたり、筋肉のメリハリをつけることができる。不適切な角度でのトレーニングはケガを招く可能性があるため、フォームの正確さにはとくに注意しよう。
親指が上になるようにダンベルを斜めに持つことで、筋肉への刺激をより強化できますが、フォームが難しいので初心者は基本のフォームでトレーニングできるようになってから挑戦してみてください。
「フロントレイズ」の効果を高める3つのコツ
・反動を使わない
・ひじを曲げすぎない
以下では、フロントレイズの効果を高めるためのコツをご紹介。より効果的にトレーニングをするために参考にしよう。
肩を下げる
肩がすくんでしまうと、三角筋前部への負荷が適切にかかりにくいため、肩を落としてリラックスさせた姿勢を意識することが大切。
肩が上がってしまう人は、軽い重量からトレーニングを始めてみるのがおすすめ。重すぎる重量を扱おうとすると、フォームが崩れやすく、無意識のうちに肩をすくめてしまう原因になる。
また、重量を上げても常にフォームが正しく維持できているかチェックしながら進めることが大切。トレーニングの際には、鏡を使って自分のフォームを確認するのがおすすめ。
徐々に重量を増やしていく際には、1kg刻みで徐々に上げていきましょう。これにより、自分の身体が適切に対応できる重量を見極めながら、鍛えることができます。
反動を使わない
反動を使ってしまうと、肩への刺激が弱まり、肩関節や腰に過度な負荷がかかって痛みやケガの原因になることも。
トレーニング中は、とくに疲れてきたときに反動を使いがち。反動をつけない意識を持ちながら、最初から最後まで丁寧なフォームの維持を心がけよう。
反動を使わないためには、カウントを取る方法が効果的です。まずは、ダンベルを4カウントでゆっくりと上げ、さらに4カウントでゆっくりと下ろすようにしてみましょう。
ゆっくりとした動作は筋肉に対する意識を高め、無駄な反動を使わないようにできます。筋肉に対する時間的なテンション(負荷のかかる時間)を増やすことにもなり、トレーニング効果の向上も期待できます。
ひじを曲げすぎない
ひじを曲げすぎないことも、「フロントレイズ」の効果を高めるために重要。ひじを過度に曲げてしまうと、三角筋前部への負荷が適切に伝わらず、代わりに手首や腕へ負荷がかかってしまう恐れがある。
ひじをできる限り伸ばすことで、三角筋前部へ正しく負荷がかかり、トレーニングの効果を最大化できる。ただし、ひじを完全にロックする(極度に伸ばし過ぎる)ことは避けて、軽く曲がっている程度に保つようにしよう。
とくに疲れたときに、ひじが曲がりがちにならないよう意識しましょう。トレーニング中は肩に加えてひじの位置も鏡を見ながらチェックしてみましょう。
「フロントレイズ」に関するQ&A
「フロントレイズ」と「サイドレイズ」の違いは?
A:ポジションと鍛える筋肉部位に大きな違いがある
「フロントレイズ」は、身体の前で重りを持ち上げる動作で、三角筋の前部を鍛えて、前から見たときの肩の立体感を高めます。一方、「サイドレイズ」は、身体の横で重りを持ち上げる動作です。三角筋の中部を鍛えることで、肩幅を強調できます。
どちらのトレーニングも肩の形状を美しく見せるために重要であり、目的に応じて適切に組み合わせておこなうことが効果的です。立体感のある肩をめざす場合は「フロントレイズ」を、肩幅を強調したい場合は「サイドレイズ」を重点的に取り入れましょう。
立体感や肩幅にこだわらず、全体的にバランスのとれた肩をつくりたい場合は、「フロントレイズ」と「サイドレイズ」の両方を取り入れることが理想的です。
ハーティネス株式会社代表
フィットネス勤務から独立し、現在はダイエット迷子に正しい知識を伝えるためのオンライングループレッスン運営中。
コンプレックスを強みに変える!ボディメイク運動指導やリバウンドなしで、理想の体を手に入れる食事指導をおこなっている。
2チャンネル目となるYouTube「みおGYM」にて週2回エクササイズ配信中
著書4冊/各種雑誌、テレビ出演
JBBF 日本ボディビル・フィットネス連盟 2年連続優勝経験を持つ