
上半身の筋肉を鍛える「プッシュアップ」は、胸板を厚くしたい男性だけでなく、美しいバストラインを目指す女性にもおすすめの種目。本記事では「プッシュアップ」で鍛えられる筋肉、正しいやり方、効果を高めるポイントなどを詳しくご紹介。Wellulu編集部がプッシュアップを実際に体験し、感じたことや疑問をレポート。また、「CLUB100」のパーソナルトレーナー、中野さんと古谷さんに正しいフォームや効果的な方法についてガイドしていただく。
この記事の監修者
中野ジェームズ修一さん
フィジカルトレーナー

古谷 有騎さん
PTI認定プロフェッショナルフィジカルトレーナー
4年制大学で健康スポーツを学び、在学中からフィットネスクラブやストレッチサロンにて、運動指導を経験。現在は東京神楽坂・会員制パーソナルトレーニング施設「CLUB100」で幅広い年代のクライアントの運動指導、青山学院大学駅伝チームのフィジカル強化指導も担当している。
【保有資格/実績など】
米国スポーツ医学会認定運動生理学士/大阪国際がんセンター認定がん専門運動指導士
/adidasトレーニングアカデミー認定ジム&ランインストラクター/TPI認定レベル1
この記事の体験者

兵藤 俊太
Wellulu編集部ディレクター
20代男性。普段は在宅ワークが中心で、デスクワークが続く日々を送る。運動不足を感じながらも、週に1回はジムに通うよう心がけているが、自宅での運動はなかなか続かない。忙しい日常の中で、限られた時間で効率よく体を動かす方法を模索中
どこに効く?プッシュアップ(腕立て伏せ)で鍛えられる部位
・大胸筋
・上腕三頭筋
・三角筋
・背筋群

手の幅や位置を変えることで、鍛える部位を変えられる!
ちょっとした工夫で効かせられる部位を変えられます。下記の3パターンを意識して取り組んでみましょう。
・大胸筋:胸の横の延長線上に手を置く(手幅広め)
・上腕三頭筋:手を胸の真横に置く(手幅狭め)
・三角筋前部:手をやや前方に置く
大胸筋
「プッシュアップ」は大胸筋をメインに鍛えられるトレーニング。「上部」「中部」「下部」に分かれている大胸筋の中でも、とくに「中部」を中心に鍛えられ、フォームを変更することで集中的に鍛えたい部位もコントロールできる。
男性だと胸の筋肉を大きくする、女性だと胸の形を整える役割を果たす。大胸筋を鍛えることでバストの維持力が増し、見た目の美しさに影響する。
大胸筋を鍛える筋トレは以下の記事でも紹介。
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上腕三頭筋
上腕三頭筋は、腕の背側にある太くて大きい筋肉であり、上腕二頭筋に拮抗している。上腕三頭筋を鍛えることで腕が引き締まり、見た目にも美しい腕のラインをつくることができる。
ひじの関節をしっかりと伸ばして運動をおこなうことが、上腕三頭筋に対する効果的な刺激につながる。
上腕三頭筋を鍛える筋トレは以下でも紹介。
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三角筋
三角筋は肩の筋肉で「前部」「中部」「後部」に分かれている。「プッシュアップ」では主に三角筋の「前部」が鍛えられるが、肩を引き締めて大きな肩をつくるためには、三角筋前部だけでなく「中部」や「後部」もバランスよく鍛える必要がある。
三角筋前部は腕を前方に持ち上げる動きに関わり、前方へのリフトやプッシュの動作が強化される。
三角筋のバランスが偏ると肩こりや不調の原因になったり、猫背につながる可能性もある。
バランスよく三角筋を鍛えるための筋トレは以下でも紹介している。中部や後部も鍛えられる種目もあるので参考にしてみて。
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背筋群
広背筋は背中の部位で、背中の中央から脇の下、腕にかけてつながる大きな筋肉。
「プッシュアップ」の種類によっては、広背筋を集中的に鍛えることが可能。大きな筋肉を鍛えることで消費カロリーが増加して脂肪燃焼の促進が期待できる。
また、姿勢に関わる背中の部位であるため、鍛えることで腰痛の予防にも役立つ。日常生活での物の持ち上げや引っ張り動作が楽になるなどのメリットもある。
広背筋や背中を鍛える筋トレは以下でも紹介。
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8週間の実験で、ベンチプレス(40% 1RM ※)と腕立て伏せを行った男性参加者(18人)を比較。両群ともに上腕三頭筋と大胸筋の筋肥大と1RM(最大筋力)が有意に増加しました。特にベンチプレス群は上腕二頭筋の筋肥大も確認されましたが、パワー出力や筋持久力には変化はありませんでした。
※1RMの40%の重量。ベンチプレスの1RMが100kgだった場合、40kgでベンチプレスをおこなう
参照:Low-load bench press and push-up induce similar muscle hypertrophy and strength gain

上記の研究結果を考慮すると、上腕三頭筋と大胸筋を鍛えたい場合は自重の腕立て伏せでも十分に効果があると言えそうです。
プッシュアップ(腕立て伏せ)の効果
・厚い胸板、美しいバストライン
・二の腕のたるみ解消や腕痩せに効果的
・ウエストを引き締め、体幹の安定性向上

上半身トレーニングなら、まずはプッシュアップでOK
プッシュアップは胸・肩・背中など、上半身の筋肉をバランス良く鍛えられます。全身の筋肉を同時に使うため、上半身の引き締めやスタイルアップなど、女性に嬉しい効果も期待できます。
また、マシンやベンチプレスと比べて怪我のリスクが少なく、自宅で手軽にできるのも大きな特徴です。フォームも習得しやすく、初心者でも安全に取り組めるため、運動初心者の方や忙しい方でも継続しやすいでしょう。
厚い胸板・美しいバストライン
「プッシュアップ」をおこなうことで、男性は厚い胸板を形成し男らしい身体に。女性の場合はバストラインに影響する。大胸筋の下で胸の脂肪が支えられるため、バストの位置が上がり、より引き締まった印象を与える。
二の腕のたるみ解消や腕痩せに効果的
上腕三頭筋への刺激により、二の腕のたるみを解消して腕を引き締める効果がある。
プッシュアップ中に腕を曲げ伸ばしする動作はよい負荷をかけ、しっかりとした腕のラインをつくり出す。また、腕のポジションを変更することで、二頭筋や三角筋にも負荷をかけられるため、腕全体のシェイプアップにつながる。
ウエストを引き締め、体幹の安定性向上
「プッシュアップ」は体幹にも影響し、ウエストの引き締めなどへの効果も期待できる。適切なフォームでおこなうためには、体幹を安定させる必要があり、これが自然と体幹トレーニングにもなる。
体幹の筋肉が強化されることで、日常生活の動作が改善され、ほかの運動のパフォーマンスアップにもつながる。また、体幹を固定することで腹部のインナーマッスルである腹横筋、腹直筋、脇腹の腹斜筋なども刺激される。
プッシュアップ(腕立て伏せ)は強度が大事!
プッシュアップは、強度の調整がとても重要なトレーニング。強度が高すぎるとフォームが崩れて怪我のリスクが高まり、低すぎると効果が得られない。

初心者は20回をちょうどよくできる強度のプッシュアップをやろう!
強度が合っているか?の判断として、「正しいフォームでおこなえるか」を目安にしてください。上級者は12回・初心者は20回が目安です。この回数でフォームが崩れてしまう場合、強度を落とす必要があります。逆に楽に感じる場合、強度を上げるようにしましょう。
プッシュアップの強度には、大きく5段階ある。
2.三角形プッシュアップ
3.ノーマルプッシュアップ
4.ブロックプッシュアップ
5.デクラインプッシュアップ
男性と女性で基準となる強度が異なる。男性は「ノーマルプッシュアップ」が平均的な強度で、女性は「三角形プッシュアップ」が平均的な強度。
また、「もう少し楽なプッシュアップをしたい」という女性や、「もっと強度を上げたい」という男性には、より強度を調整したやり方もあるので、試してみよう。
「5.デクラインプッシュアップ」より強度を上げたい男性:デクラインとブロックタイプの掛け合わせ
「プッシュアップ(腕立て伏せ)」の効果的なやり方・フォーム・回数
- 基本的には20回ができる強度を選ぶ
- うつ伏せの状態から正しい手の位置を決める
- 身体が直線になるように足を延ばす
- 肘を曲げて鼻がつくギリギリまで降ろす
下記が正しいプッシュアップのやり方。正確なフォームを身に着けて、トレーニング効果を高めよう。
基本的には20回ができる強度を選ぶ
プッシュアップの負荷を選ぶ際は、「1セットで20回できるかどうか」が1つの基準になる。これは、20回という回数が「持久力向上」と「正しいフォーム習得」を両立できるラインだから。回数が多いほど動員されるのは主に「遅筋」と呼ばれる持久力のある筋繊維で、基礎的な筋力やフォームの安定に向いている。
初心者がまず身につけたいのは、無理なく動ける筋力と安全な動作。正しいフォームで1セットを20回こなせないようであれば、「膝つきプッシュアップ」などの軽めの種目から始めるのが理想的。反対に、20回を目安に動かせるようであれば、そのままノーマルプッシュアップを継続する。
1セット目で20回できても、2セット目で16回、3セット目で13回と徐々に減っていくのは自然な流れ。負荷に慣れてきたら回数やセット数を段階的に調整していこう。

よく「12回が目安」って言われることが多いんですが、実際どうなんでしょうか?

確かに12回は目安として広く使われていますが、初心者にはやや負荷が強いかもしれません。まずは正しいフォームで20回できる強度から始めるのが安全です。

ある程度慣れてきたらそのまま続ければいいんでしょうか?

目的によります。筋肥大を目指すなら、10回前後で限界が来るように調整した方がいいです。少ない回数で追い込むことで、筋肉の太さに関与する「速筋」がより多く動員されるからです。

なるほど。単に回数を増やすんじゃなくて、筋肉の種類も関係するんですね。10回で限界が来るためにプッシュアップの強度をどのように調整するのがいいでしょうか?

そうですね。強度を高めたい場合は、足をステップ台に乗せて高くしたり、プッシュアップバーを使うなどをしてアレンジしていくのがおすすめです。
- 速筋:瞬発力に優れ、短時間で大きな力を発揮。筋肥大を目指す場合に重要で、8〜12回で限界を迎える高重量トレーニングが効果的。
- 中間筋:持久力と瞬発力を兼ね備え、バランスよく筋力を向上できる。12〜15回の中程度の重量トレーニングが効果的。
- 遅筋:持久力に優れ、疲れにくい。軽い重量で20回以上の反復が可能で、初心者の基礎トレーニングに最適。
うつ伏せの状態から正しい手の位置を決める
手の位置で効く部位が変わるが、身体の癖などによって、手の位置が前すぎたり、左右のバランスが崩れることがある。正しい手の位置で腕立てするなら、下記のステップを試すのがおすすめ。
- うつ伏せで手を伸ばす
- 胸の横まで手を下ろす
- 身体を持ち上げる

実際に体験したところ、正しい位置に手を置けていないことが多かったです。正しく手を置いているつもりでも、身体の癖や今までの慣れで手がずれている可能性があります。このやり方を試すと正しい位置に手を自然と置けるので、是非試してみてください。
身体が直線になるように足を延ばす
女性の場合、ノーマルプッシュアップだと負荷が大きいため、膝をついておこなう「三角形プッシュアップ」から試すのがおすすめ。
頭から足まで真っすぐ保つことが大切。下記2つのフォームは効果を得づらいので、注意が必要。
- 腰が下がり顔が上を向いている
- 顔が下を向いている
NG例:腰が下がり顔が上を向いている
NG例:顔が下を向いている
初心者が陥りやすいNG例を2つ紹介。どちらも身体の動きが制限されることで、可動域が狭くなっている。きつくなると頭が下を向きやすいので、目線を前に向けるのが大切。

多くの人が「プッシュアップ」をする際に腰が落ちてしまい、背中が反ってしまう状態になりがちです。ひざをついてもよいので、脚から頭までをまっすぐに保つことを意識してください。また、回数を続けるうちに、可動範囲が狭くなる人もいますが、回数が減ってもよいので、適切なフォームで動かしましょう。
肘を曲げて鼻がつくギリギリまで降ろす
腕立て伏せで負荷をかけるためには、可動域を広くすることが大切。鼻がつくギリギリまで下して負荷がかかっている感覚を確認しよう。さらに負荷を掛けたい場合、ヨガブロックやプッシュアップバーを使って可動域を増やすやり方がある。
プッシュアップ(腕立て伏せ)の6つの種類
「プッシュアップ」はフォームによってかかる負荷や鍛えられる部位が異なる。ここでは、「プッシュアップ」の代表的な種類とやり方をご紹介。
・初心者向け「ひざつきプッシュアップ(三角形プッシュアップ)」
・大胸筋全体に効く「ワイド・プッシュアップ」
・大胸筋上部に効かせるなら「デクライン・プッシュアップ」
・上腕三頭筋に効く「ナロー・プッシュアップ」
・二の腕&背中を引き締める「リバース・プッシュアップ」
・広背筋に効かせる「バック・プッシュアップ」
初心者向け「ひざつきプッシュアップ(三角形プッシュアップ)」
<やり方>
- 腕立て伏せの位置から始めて、両手を肩幅より広くして床に置く
- ひざを床につけ足を上げ、ひじを曲げて胸が床に触れるほど身体をゆっくり下す
- 完全に下ろした後、一瞬姿勢を保持し、身体をゆっくりと起こす
ひざをつかないプッシュアップが難しい人や、初心者の人におすすめなのが「ひざつきプッシュアップ」。ひざをつくことで負荷が下がり、動作の可動範囲を保ったままトレーニングできる。

手の位置とひざの距離を離し、身体を直角三角形のようなかたちにすると「負荷が高く」、手とひざを近づけると「負荷を低く」することができます。負荷の調整をしながら最適な状態でトレーニングをすることがおすすめ。正しいフォームでしっかりと筋肉を鍛えながら、徐々に強度を上げていくのが理想です。
大胸筋全体に効く「ワイド・プッシュアップ」
<やり方>
- 床に手をつき、手幅を肩幅より広くする
- 身体全体を一直線に保ち、つま先と手のひらで体重を支える
- ひじを開きつつ身体を下ろし、胸が床にほぼ触れるまで下ろす
- その後、元の位置へ戻る
通常のプッシュアップに比べ、手を肩幅より広く置く「ワイドプッシュアップ」は、大胸筋全体を効果的に鍛えられるトレーニング。
手を置く幅を開くだけで胸の筋肉への刺激量が増えるため、大胸筋を鍛えたい人におすすめ。
また、胸を床に近づける際には、胸が床に触れるぐらいまで下げるのがポイント。動作の際には腰が曲がらないように身体を一直線に保ちながら、肩甲骨をぐっと引き寄せることで大胸筋への負荷が高まる。
大胸筋上部に効かせるなら「デクライン・プッシュアップ」
<やり方>
- イスに足の先を乗せ、手を肩幅で広げて身体を支える
- 身体をゆっくり限界点まで下ろす
- 掌全体を使って地面から押し上げて元の位置に戻す
「デクライン・プッシュアップ」はイスやベンチを使用して脚の位置を高くすることで、大胸筋や上腕三頭筋を刺激できる。
脚の位置が高いほど負荷が増し、大胸筋上部や三角筋に効果的にアプローチできる。しかし、脚を高くしすぎると負荷が強すぎるため、初心者は高さに注意し、適切な高さから始めることがおすすめ。

「デクライン・プッシュアップ」は、より筋肉に負荷をかけたい上級者におすすめのプッシュアップです。腰が反りすぎないように注意しましょう。また、負荷が高すぎると適切な回数をこなすことが難しくなるため、負荷の調整が必要になる場合もあります。
上腕三頭筋に効く「ナロー・プッシュアップ」
<やり方>
- 足を肩幅に開き、両手の人差し指と親指で正三角形を形成する
- 手を胸の前で地につけ、腕立て伏せの体勢を取る
- つま先から首までのラインを真っ直ぐに伸ばす
- ゆっくりとひじを伸ばしながら身体を持ち上げ、上体が床に触れる直前までゆっくりと下ろす
手の位置を肩幅より狭くすることが特徴的な「ナロー・プッシュアップ」は、上腕三頭筋を鍛えやすい。
ひじは身体の側面に沿うように動かし、胸を床に近づける際には「ひじを曲げ胸が床に触れる寸前で停止」、その後「腕を伸ばして元の位置に戻る」。この動作を繰り返すことで、上腕三頭筋に集中して効かせることが可能になる。

「ナロー・プッシュアップ」をおこなう際は、ひじの位置が重要です。ひじは身体の近くに保ちながら動かしましょう。ただ、ひじが痛くなりやすいため、ひじへの負担をかけ過ぎないように意識しながら、適度な範囲で胸を下げるようにしましょう。女性でも「ナロー・プッシュアップ」をトレーニングに取り入れている場合がありますが、難易度は高いので、無理をしないことが大切です。
二の腕&背中を引き締める「リバース・プッシュアップ」
<やり方>
- イスに座り、手を両側に置いてお尻を前方に移動させる
- お尻をイスから離し、腰を下ろしながらひじを曲げる
- 床すれすれまで下ろし、元の位置に戻る
「リバース・プッシュアップ」は二の腕と背中の引き締めに効果的なトレーニング。基本的な「プッシュアップ」と異なり、身体を起こしておこなう。

初めはひざを曲げた状態でおこない、徐々に脚を伸ばすのが強度調整のコツです。また、できるだけ「フルレンジモーション」でおこなうことで、筋肉に対する刺激が最大化されます。手は肩の直下に置き、ひじが90度の角度になるように意識することがポイントです。
広背筋に効かせる「バック・プッシュアップ」
<やり方>
- うつぶせで横たわる
- 手は肩幅から拳一個分だけ内側、へそのやや上に置く
- 足は伸ばし、つま先で床を軽く触れる
- 腕を曲げつつ、身体をゆっくり下ろしていく
- 床に触れる直前で止まり、再び起き上がる
「バック・プッシュアップ」は、とくに背中の筋肉をターゲットにしたトレーニング。背中を効果的に鍛えることができるため、二の腕・大胸筋に効くプッシュアップと一緒に自宅で取り入れる人も多い。
「プッシュアップ(腕立て伏せ)」の効果を高めるコツ
- 腰を落とさず目線を前に向ける
- しっかり胸を張り、肩甲骨を寄せるイメージで
- 呼吸を意識する
- 手の位置はハの字にする
腰を落とさず目線を前に向ける
プッシュアップでは、腰を落とさないことが大切。落ちてしまうと、腰を痛める原因になるだけでなく、体幹のトレーニング効果も大幅に減少する。
また、目線を前に向けることでしっかりと胸を張ることが出来て、フォームが安定しやすい。初心者の人は頭が下を向いてしまう人が多いので、意識的に前を向くようにしよう。
しっかり胸を張り、肩甲骨を寄せるイメージで
「プッシュアップ」を効果的に実施するためには、胸を張り、肩甲骨を寄せるイメージを持つことが大切。胸に効かせるための重要な動作で、身体を下ろす際にも肩甲骨を寄せることを意識しよう。
呼吸を意識する
トレーニング時に呼吸を止めてしまう人も多いが、血圧が上がり身体への負担が大きくなるため注意しよう。
「プッシュアップ」の呼吸法としては、身体を下ろすときに「息を吸い」、腕を伸ばして身体を持ち上げるときに「息を吐く」。
手の位置はハの字にする
手の位置に関しては、ハの字にすることがおすすめ。手首への負担を減らし効果的にトレーニングできる。
また、「手を前に置く」「内側に置く」「狭くする」など、手の位置を変えることでターゲットとする部位を変えることができるため、特定の筋肉を重点的に鍛えたい場合は手の位置を調整しよう。
自宅で始める「ゆるプッシュアップ」
在宅ワークが増え、運動不足を感じる日々。そこで編集部が試したのは、自宅で手軽にできる「ゆるプッシュアップ」。
特別な器具は必要なく、身近な家具を使って無理なく実践できるやり方を編集部が実際に試した上で提案!

今回、下記の4つのパターンを実際に試してみました。生活環境によっても異なりますが、やりやすさや刺激の入りやすさを中心にレビューします。
料理中のプッシュアップ
ベッドの縁を使ったプッシュアップ
壁を使ったプッシュアップ

腕のワイドに開いて40回実施。上腕二頭筋や二の腕がかなり効いた感じがしました。仕事中にちょっと立ち上がってサクッとできてしまうので、日常生活に取り入れやすいと思いました。強度自体は低いですが、回数を多くしたり、連続してセットをこなせば十分に刺激を感じられます。
机・テーブルを使ったプッシュアップ

20回で試しましたが、男性だと強度が足りないと感じるかもしれないです。女性だと20回程度でちょうどいい強度になる気がします。机がギシギシ音が鳴るので、あまりおすすめできないと感じました。
料理中のプッシュアップ

机のプッシュアップで強度が足りなかったので、40回実施しました。40回やるとかなり腕に刺激が入った感じがします。通常のプッシュアップと比較すると強度は落ちてしまうので、回数を増やして刺激を与えるやり方が効果的だと感じました。
ベッドの縁を使ったプッシュアップ

ベッドは高さが低くて可動域が広くなりやすいので、かなり負荷を感じました。20回でちょうどよかったです。身体の安定性も高く実施しやすいので、おすすめできます。
【1分でOK】隙間時間の腕立てチャレンジ
忙しくても運動を習慣化したい。そんな思いから、編集部が試したのが「隙間時間」での腕立て。
昼休みやちょっとした外出など、日常生活の隙間時間を活用してプッシュアップをこまめに積み重ねてみました。
とある在宅ワークの1日で試したところ、合計70回実施できた。負荷もある程度感じたので良いトレーニングなのでは?と思ったので、実際に専門家の意見を聞いてみました。
時間 | イベント | 回数 | 体験メモ |
---|---|---|---|
7:00 | お手洗い | 10回 | 朝1の10回は結構しんどい。また、左手が痛くなるので、少しフォームが上手くいっていないかもしれない。 |
9:00 | 歯磨き | 15回 | 20回やろうとしたが、15回で結構しんどい。寝起きの時よりは少し楽にできた感覚がある。 |
12:00 | 昼休憩 | 15回 | 先ほどの15回より少しきつくなってきた部分はある。一方、血の巡りが良くなった感じはあり、昼ごはんの後の眠気は飛んだ感覚がある |
17:00 | お手洗い | 15回 | 15回が結構ギリギリな感じはした。時間は空いているが、回数を重ねるときつくなってきた感じがする |
20:00 | 夜休憩 | 15回 | ごはんを食べた後でエネルギーがあるためか問題なく15回実施できた。 |

昼休みやお手洗いのついでに、1日を通してプッシュアップを実践してみたところ、合計で約70回できました。この「ついでトレーニング」について、どう思いますか?

まったく運動していなかった人であれば、70回もプッシュアップができたのは大きな前進だと思います。

たしかに達成感がありました。さらに効果を高めるには、どうすれば良いでしょうか?

タイミングを工夫して、1回で2〜3セットを連続して行ってみるのがおすすめです。昼休憩のように少し余裕のある時間帯に一気に2~3セット連続でトレーニングすると、より効果を感じられるはずです。

なるほど。「ついで」の意識で継続しつつ、できるときにはまとめて行うようにしてみます。
プッシュアップバーの使い方
・効果が出やすくなる
・手首を痛めづらい
・自宅で気軽に取り入れられる
効果が出やすくなる
「プッシュアップバー」を使うことで、一般的な「プッシュアップ」に比べて手の位置よりも深く胸を下げることができる。これにより、大胸筋を最大限に収縮させることができ、トレーニング効果が高まる。
手首を痛めづらい
「プッシュアップバー」を使用することで、手首への負担も減らすことができる。床で「プッシュアップ」をする際は、手首が直角になりがちで、これが関節に大きな負担をかけ痛みの原因となることも。痛みや負荷が気になる人にもおすすめ。
自宅で気軽に取り入れられる
「プッシュアップバー」は1,000〜2,000円程度という安価で購入可能で、保管場所もそれほど必要としないため、とても導入しやすいトレーニング器具。
また、スポンジが巻かれた「プッシュアップバー」を選ぶことで手の痛みを軽減できる。ただし、接地面が少ないと安定性に欠け、手首を痛める可能性があるため、安定性も考慮しよう。高さもそれぞれ異なるため、トレーニングの目的や使用者の身体に合わせて選ぶのがおすすめ。

プッシュアップバーは初心者にもおすすめのトレーニング器具です。可動範囲が広がるため、「フルレンジモーション」での運動が実現し効果も出やすくなります。とくに、高さが調節できるプッシュアップバーを使うと、強度の調節も可能で、トレーニングの幅が広がります。
「プッシュアップ(腕立て伏せ)」のQ&A
筋トレは「プッシュアップ」だけで十分?
A:バランスのよい身体をつくるなら下半身のトレーニングも取り入れて。

「プッシュアップ」は腕、胸、そして腹部の筋肉を同時に鍛えることができますが、トレーニングを「プッシュアップ」だけに限定することには一定の限界があります。バランスのよい身体をつくるためには、さまざまな部位を鍛える必要があり、下半身の筋肉にアプローチできる「スクワット」なども定期的に取り入れるようにしましょう。
下記の記事では「スクワット」の効果や正しいやり方について詳しく解説しているので、興味がある人は参考にしてみて。
「スクワット」の正しいやり方や効果は?種類別のトレーニング方法も紹介
「スクワット」の4つの効果 スクワットは下半身の筋力強化だけでなく、さまざまな効果が期待できるトレーニング。とくに、競技パフォーマンスの向上にも影響し、ほぼ全て.....
「プッシュアップ」「ディップス」 「ベンチプレス」の中で一番効果的なのは?
A:「頻度が大切」という視点で、プッシュアップをおすすめされるトレーナーも多い。

「プッシュアップ」は、上半身の筋肉、とくに胸、肩、三頭筋を効果的に鍛えることができます。「ディップス」は主に三頭筋、胸、肩の筋肉に効きますが、これをおこなうためにはバーなどの設備が必要となります。「ベンチプレス」はジムでよくおこなわれるトレーニングで、胸筋を中心に肩や三頭筋も同時に鍛えることができます。どのトレーニングが一番効果的か?という質問に対する回答としては、「頻度が大切」という視点でプッシュアップをおすすめされるトレーナーも多くいます。
下記の記事では「ディップス」「ベンチプレス」の効果や正しいやり方について詳しく解説しているので、興味がある人は参考にしてみて。
アメリカスポーツ医学会認定運動生理学士として、運動の大切さを広める活動を行っている。2014年からは青山学院大学駅伝部のトレーナーも務めており、東京神楽坂にある会員制パーソナルトレーニング施設「CLUB100」で一般の方やアスリートを指導。「科学的根拠に基づき、必ず結果を出す」が合い言葉で熱意のある指導を常に心がけている。