
小麦製品をはじめ、グルテンを含む食品を制限する「グルテンフリー」。健康効果やダイエット効果があるとされているが、具体的にどのような効果が期待できるのだろうか。この記事では、グルテンフリーの具体的な効果、取り組むメリット・デメリット、無理なく取り組むコツ、グルテンを含む食品・含まない食品の例などをご紹介。
この記事の監修者

高瀬 友理亜さん
栄養クリニック表参道院/宮古島本院 総院長
みぞぐちクリニック 勤務医

古谷 彰子さん
博士(理学) 管理栄養士
博士(理学) 管理栄養士
愛国学園短期大学 家政科 准教授、早稲田大学 ナノライフ創新研究機構 招聘研究員、(株)アスリートフードマイスター 認定講師、発酵料理士協会特別講師としても勤務。「時間」という観点から、医学・栄養学・調理学の領域にアプローチすることを専門とする。科学的根拠を基にしたライフスタイルへのアドバイス、実体験を基にした食育活動や講演活動、料理教室も開催している。『食べる時間を変えるだけ! 知って得する時間栄養学』(宝島社/2022)、『10時間空腹リセットダイエット』(主婦の友社/2023)、他多数の書籍を執筆。
【所属】
愛国学園短期大学 家政科 准教授
早稲田大学ナノ・ライフ創新研究機構 招聘研究員
あきはばら駅クリニック 非常勤管理栄養士
アスリートフードマイスター認定講師
発酵料理士協会特別講師
「グルテン」と「グルテンフリー」の基礎知識
グルテンフリーに効果を見ていく前に、まずは基礎知識を理解しておこう。そもそもグルテンとは、「どのような成分」で、摂取することで「身体にどのような影響」を与えるのだろうか。
ここでは、グルテンの特徴や、身体への影響、グルテンを控えるべき理由をご紹介。
- グルテンは小麦などに含まれるタンパク質
- グルテンが身体に与える影響
- グルテンフリーが注目される理由
- 日本人にもグルテンフリーは効果的?
グルテンは小麦などに含まれるタンパク質
グルテンは、小麦やライ麦、大麦などの穀物に含まれるタンパク質の1種。おもに「グリアジン」と「グルテニン」という2つのタンパク質で構成されていて、これらが結合して粘着性のある網目状の形をしている。
小麦粉に水を加えてこねると粘り気のある生地ができるのは、このグルテンの働きによるもの。この特性によって、パン生地の膨らみや麺類の弾力が生まれる。
パンやパスタ、お菓子など、多くの加工食品に使用されていて、食品の食感や保存性を向上させる役割を果たしている。
グルテンが身体に与える影響
グルテンは、多くの人にとって問題のないものだが、人によっては健康への影響を及ぼすことも。
グルテンによる影響は、年齢や性別によって異なるが、子どもはとくに受けやすい。また、女性は生理学的に、なんとなく体調が悪い状態(不定愁訴)を抱えやすいが、グルテンがその原因になってしまっていることも。
子どもの場合は、「発達障害関連の症状」や「皮膚系の自己免疫疾患」にもグルテンフリー食はおすすめ。また、成人のメンタル疾患に対しても、グルテンを除去することが効果的な場合も。

グルテンフリーが注目される理由
グルテンフリーが注目されている背景には、健康意識の高まりや食品アレルギーへの理解の深まりがある。グルテンの身体への影響、グルテン過敏症などの認知度が上がったことで、多くの人々がグルテンフリーに注目するようになった。
また、一部の有名人や運動選手がグルテンフリーダイエットを実践し、その効果を公言したことも注目を集めた要因。体調改善や体重管理、パフォーマンス向上などの効果が報告されている。
ほか、市場拡大を通じて、スーパーやレストランでグルテンフリーのメニューが増えた。そのため、グルテンフリーの食事がより身近になっている。
ただし、アレルギー持ちではない人が、グルテンフリーダイエットをおこなうことの是非について、専門家の間で意見が分かれているので、取り組む際は注意しよう。
日本人にもグルテンフリーは効果的?
グルテンに対する反応は、人種や国籍に関わらず、個人の体質や健康状態に大きく左右される。そのため、日本人がグルテンフリーな食生活を始めた場合も欧米人と同様の健康効果が期待できる。
グルテンフリーの効果は、個人の体質や生活習慣によって差はあるものの、日本人特有の制限や限界はない。

日本人もグルテンフリー食で、欧米人と同様の健康効果が期待できますが、日本の食文化や食習慣の違いにより、グルテンフリー食への移行が欧米と比べて困難な場合もあります。
お米を主食とする日本の食文化は、グルテンフリー食との親和性が高いですが、麺類や醤油などの調味料にもグルテンが含まれているので、注意が必要です。
「グルテンフリー」の効果・メリット
効果の程度は個人の体質によって差があるが、グルテンの摂取を控えることにより、さまざまな健康効果が期待できる。ここでは、グルテンフリーのおもな健康効果をご紹介。
- 腸内環境の改善
- 臓器の炎症の軽減
- 体調不良の改善
- アトピーや肌トラブルの軽減
- 摂取カロリーの抑制
- メンタルヘルスの改善
腸内環境の改善
グルテンの摂取を減らすことで腸内の炎症が軽減され、腸内環境を整える細菌の増殖が期待できる。これにより消化吸収機能が向上し、便通の改善や腹部膨満感(お腹の張り)の軽減などの効果が見込める。
体質によっては、グルテンフリーとあわせて「カゼインフリー」も取り入れるのがおすすめ。乳製品の摂取を控えることで、口臭改善や全体的な体調向上が期待できる。
また、人工甘味料や着色料などの添加物の摂取を控えることも大切。これらの人工添加物は腸内環境に悪影響を及ぼす可能性があるため、可能な限り自然な食材を選ぶようにしよう。

人によっては「グルテン」ではなく「カゼイン」の方が体調に影響を与えている場合があります。そのため、グルテンフリーに加えて、カゼインフリーを取り入れることで、より早く腸内環境の改善効果を感じられる可能性があります。
臓器の炎症の軽減
グルテンの摂取が体内で炎症反応を引き起こし、さまざまな臓器に悪影響を与えていることも。たとえば、小腸や大腸の炎症は「消化器系の不調」を引き起こし、肝臓や膵臓の炎症は「代謝機能に影響」を与える可能性がある。
グルテンの摂取を減らすことで、これらの臓器の炎症が軽減され、機能が改善する場合も。
その結果、消化器系の症状改善だけでなく、全身の健康状態の向上にもつながる。とくに、グルテンに対して過敏に反応してしまう場合は、顕著な効果が期待できる。
体調不良の改善
グルテンフリーによって、「慢性的な疲労感」「頭痛」「めまい」「集中力の低下」などの症状が軽減される可能性がある。また、消化器系の不調、たとえば「腹痛」「膨満感」「下痢」「便秘」などの症状が改善されることも。
しかし、グルテンフリーを実践しても目立った効果が得られない場合もある。その場合、グルテン以外の問題が影響し、症状を引き起こしているかもしれない。
前述した「カゼインフリー」についても、「グルテンフリー」と同時に実践することで、顕著な体調改善が見られることがあるため、覚えておこう。

グルテンフリーの効果は個人差が大きいです。そのため、体調改善を目的として、グルテンフリーに取り組む場合は、ほかの原因も考慮する必要があります。栄養学を専門とする医師や、十分な知識を持つ栄養カウンセラーに相談するようにしましょう。
アトピーや肌トラブルの軽減
グルテンが、アレルギー反応や炎症を引き起こす原因となって、肌に影響を与えることも。
グルテンフリーを実践することで、体内の炎症が軽減され、「アトピー性皮膚炎」「ニキビ」「湿疹」などの肌トラブルが改善する可能性がある。また、肌のかゆみや赤みが軽減されたり、肌のキメが整ったりするなどの効果が期待できる。
ただし、すべての肌トラブルが、グルテンに関係しているわけではない。そのため、グルテンフリーを始める前に、医療専門家に相談するのがおすすめ。
摂取カロリーの抑制
グルテンを含む食品、とくに精製された小麦製品は、高カロリーで栄養価が低いものも多い。
そのため、グルテンフリーをおこなうことで、このような食品を制限し、野菜や果物、タンパク質源となる食品を中心とした食生活になる。このことから、栄養バランスを整えつつ、カロリー摂取を適度に抑えることができる。
また、グルテンフリーと運動を組み合わせることで、ダイエットの相乗効果も期待できる。とくに筋トレとの組み合わせが効果的。筋肉量が増えて基礎代謝が上がることで、より効率的な体重管理や筋肉量・体脂肪量などの改善が可能に。
グルテンフリーによって、消化器系の負担が軽減されることで、運動時のパフォーマンス向上につながることも。

グルテンフリーと運動の組み合わせは、単に体重を減らすだけでなく全体的な健康改善につながる可能性が高いです。ただし、効果の現れ方には個人差があるため、長期的な視点で取り組むことが大切です。
メンタルヘルスの改善
グルテンに対して過敏な反応を示す人の中には、グルテンの摂取によって「不安」や「うつ症状」、「集中力の低下」などを経験している。そのため、グルテンフリーを実践することで、これらの症状が改善される可能性がある。
また、メンタルヘルスの改善に効果的な食習慣として、血糖値の急激な変動(血糖値スパイク)を避けることも大切。
食事の際に、タンパク質や野菜を先に食べることで、血糖値の急激な上昇を抑制できる。糖質を多く含むものを先に食べることや、空腹時に一気に食事をとると血糖値が急激に上がり、メンタルにも悪影響を及ぼすことがあるので注意しよう。

グルテンフリーとあわせて、血糖値スパイクを避けることで、より効果的なメンタルケアが期待できます。ただし、効果の実感には個人差があるため、長期的な視点で食習慣の改善に取り組むことが重要です。
また、メンタルの問題は複雑で多岐にわたるため、グルテンフリー食だけに頼らず、心療内科など医療機関への受診もおすすめします。
「グルテンフリー」はどのくらい続けると効果が出る?
グルテンフリーの効果が現れるまでの期間は、個人の体質や症状によって異なる。体内からグルテンが完全に抜けるまでの期間は「約2週間」とされている。
消化器系の症状改善、身体のだるさやむくみの軽減は早いうちから効果を感じやすい。また、急性タイプの肌荒れも、グルテンフリーを始めてすぐに改善が見られる傾向にある。
子どもの場合、落ち着きのなさなどの行動面での変化が「約2週間」で現れることが多い。一方、大人のメンタル面での改善は、複合的な原因が絡むため、即効性は期待しにくい。
アトピーや慢性的な肌の問題は、皮膚のターンオーバーが必要なため、改善が見られるまでに「1ヶ月」など比較的時間がかかりやすい。

グルテンフリーの効果を感じられる時期には個人差があり、症状の種類によっても改善の速度や順序は異なります。
多くの場合、消化器系から始まり、徐々に全身的な症状へと改善が広がっていく傾向があります。効果を実感するためには2週間、体質が変わるには3ヶ月ほどの期間が必要です。
「グルテンフリー」に取り組むときのコツ
急にグルテンをまったくとらない食生活に変えることは、とても大変で継続も難しい。そのため、グルテンを完全に断とうとするのではなく、まずは無理なくグルテン摂取を控える工夫をおこなうことが大切。
ここでは、無理なくグルテンフリーに取り組む際の5つのコツをご紹介。
- 小麦粉を断ち、米粉やそば粉を活用
- 食品成分表示を確認する習慣をつける
- 和食中心の食事を心がける
- 市販のグルテンフリー商品を利用する
- 完璧を追求せず、無理はしない
小麦粉を断ち、米粉やそば粉を活用
米粉やそば粉は小麦粉の代替としておすすめで、従来の食生活に近い形でグルテンフリーを実践できる。
「米粉」はパンやお菓子作りに適していて、おいしいと感じやすいのも嬉しいポイント。ただし、ポロポロとした食感で形が崩れやすいため、使用する際はその点を注意しよう。
「そば粉」は栄養価が高く、独特の風味を楽しめるのが魅力。また、「アーモンドプードル」や「おから粉」も人気のグルテンフリー粉類。これらを組み合わせることで、無理なくさまざまな料理やお菓子を楽しめる。

小麦粉を米粉などの代替粉に置き換えても、血糖値を上昇させます。そのため、過剰摂取や爆食いは避け、適量を守りつつバランスの取れた食事を心がけましょう。
食品成分表示を確認する習慣をつける
多くの加工食品には、予想外の形でグルテンが含まれていることも。そのため、グルテンフリーをおこなう上で、食品成分表示を確認する習慣をつけることが大切。
成分表示を見る際は、「小麦」「大麦」「ライ麦」などの表記に加え、「麦芽」「デンプン」「モルト」といった言葉にも注目。これらの成分が含まれている場合、グルテンが含まれている可能性が高い。
また、「グルテンフリー」や「ノングルテン」といった表示がある商品を選ぶのも1つの方法。ただし、これらの表示がない場合でも、必ずしもグルテンが含まれているとは限らない。
グルテンが含有されているかの有無を見極める習慣をつけよう。

グルテンは副菜や調味料にも含まれますが、こういったグルテンを完全に避けることは非常に困難です。どの程度グルテンフリーの食事を徹底したかによりますが、おかずや調味料に含まれるグルテンに関しては、ある程度妥協してもOKです。
和食中心の食事を心がける
グルテンフリーを実践する上で、和食中心の食事を心がけることは効果的。伝統的な和食は、米を主食とし、魚や野菜を中心とした献立が多いため、自然とグルテンを避けやすい。
和食中心の食事で栄養バランスを保つコツは、「主菜のタンパク質量を増やすこと」と「おかずの量を増やしてご飯の量を減らすこと」。そうすることで、糖質摂取を抑えつつ、必要な栄養素を確保できる。
和食の基本である「一汁三菜」(ご飯、汁物、主菜、副菜2品)の構成は、栄養バランスがよく、グルテンフリーダイエットにも適している。また、醤油や味噌などの調味料も、原材料を確認すれば多くの場合、グルテンフリーで使用できる。
さらに、和食には発酵食品が多く含まれており、腸内環境を整えるのに役立つ。納豆、漬物、味噌などを積極的に取り入れることで、グルテンフリーダイエットの効果を高められる。

グルテンフリーを実践する上で、和食中心の食事を心がけることは非常に効果的ですが、和食中心の食事が必ずしもグルテンフリーに最適というわけではありません。
たとえば、懐石料理は品数も多く、主食は最後に出てくることが多いため、最初にタンパク質を摂取できて比較的バランスがよいです。一方で、定食や丼物は米の割合が高くなりやすく、糖質が多くなりがちです。カロリーオーバーや栄養不足にならないよう、丼ものは米を減らす、副菜で野菜を食べるなどを意識してみましょう。
また、和食以外だとオリーブオイルや魚を多用し、オメガ3系脂肪酸が豊富な「地中海料理」なども、グルテンフリーに適した料理としておすすめです。
市販のグルテンフリー商品を利用する
市販のグルテンフリー商品をそのまま活用することで、食生活の急激な変化を避け、ストレスなくグルテンフリーを続けられる。
近年、グルテンフリー市場の拡大にともない、パンやパスタ、お菓子類など、多様な代替品が販売されている。また、グルテンフリーの調味料や加工食品も増えており、これらを活用することで料理の幅が広がる。

グルテンフリーの商品を選択する際は、単にグルテンが含まれていないかどうかだけでなく、「カゼイン」や「人工甘味料」が使用されていないかも確認しましょう。
カゼインは乳製品に含まれるタンパク質で、一部の人にグルテンと同様の問題を引き起こす可能性があります。また、人工甘味料は体調や健康に悪影響を及ぼす可能性があるため、避けることが望ましいです。
完璧を追求せず、無理はしない
グルテンフリーで効果を出すためには、完璧を追求しすぎず、無理のない範囲で実践することが重要。突然すべてのグルテンを排除しようとすると、ストレスで継続が難しくなることも。
まずは、主要な食事からグルテンを減らしていくのがおすすめ。たとえば、まずは朝食のパンを玄米や雑穀に変えるところから始め、徐々に昼食、夕食とグルテンフリーの範囲を広げていこう。
また、特別な日や外食時には柔軟に対応することも大切。自分の体調や生活スタイルに合わせて、適度なバランスを取りながら実践しよう。

タンパク質や鉄分、亜鉛などのミネラルが不足すると甘いものを食べたくなってしまう傾向があります。グルテンフリーを無理なく続けるためには、基本的な栄養素をバランスよくとることを心がけましょう。
代謝の向上やお腹の張り、肌質の改善などの効果を実感することで、グルテンフリー継続のモチベーションにもつながります。
グルテンフリー食品の選び方・見分け方
スーパーなどでグルテンフリー食品を選ぶときは、「食品成分表示」と「グルテンフリー認証マーク」を確認しよう。
また、「グルテンフリー」や「ノングルテン」と書かれている商品が販売されているが実際、「ノングルテン」の商品には、グルテンがやや含まれている。一方で、「グルテンフリー」の商品は、グルテンが含まれていない。このように、自分に合った商品を選ぶための判断基準をまず身につけよう。
- 食品成分表示を確認
- グルテンフリー認証マークを確認
食品成分表示を確認(とくに原材料名をチェック)
グルテンフリー食品を選ぶ際、もっとも重要なのは「原材料表示」をしっかりと確認すること。
前章で解説したが、グルテンを含む代表的な原材料には、「小麦」「大麦」「ライ麦」などがあり、これらの穀物名が直接表記されていなくても、「麦芽」「デンプン」「モルト」などが表記されていないかに注意しよう。
そのほか、「食品添加物」の欄も要チェック。グルテンを含む添加物が使用されていることもある。とくに「増粘剤」や「安定剤」として使用される小麦由来の成分に注意。
ただし、原材料名に「でん粉」とだけ記載されている場合は、必ずしも小麦由来とは限らない。「コーンスターチ」や「馬鈴薯でん粉」など、グルテンフリーのでん粉を使用した商品も多く流通されている。

食品表示の「アレルギー物質」の欄に「小麦」と記載されていないかどうかでも、グルテンの含有の有無を判断できます。ただし、デンプンの原料や微量のグルテンを含むかどうかについては、食品表示の欄だけでは判断が難しい場合があります。
グルテンフリー認証マークを確認
日本では、NPO法人「日本グルテンフリー認証機構」が認証をおこなっており、このマークが付いた商品はグルテンフリーとして安心して選べる。
認証マークには、「GF」というロゴと「GLUTEN FREE」という文字が記載されている。このマークが付いた商品は、厳格な基準(1ppm未満のグルテン含有量)をクリアしているため、グルテン過敏症の人でも安全に摂取できる。
海外の商品を選ぶ際は、各国の認証マークにも注意が必要。アメリカでは「Certified Gluten-Free」マーク、ヨーロッパでは「Crossed Grain Symbol」マークなどが代表的。
ただし、認証マークがない商品でもグルテンフリーの可能性はあるため、原材料表示とあわせて確認することが大切。認証には費用がかかるため、小規模生産者の商品には付いていないこともある。

アレルギーなど、厳密にグルテンをカットしなければならない場合は、原材料に小麦を含むかどうかに加えて「工場で小麦を扱っているかどうか」も確認しましょう。同じ工場で小麦を扱っている場合は、微量のグルテンが混入している可能性もあります。
グルテンが含まれているおもな食品・食材
ここでは、グルテンが含まれているおもな食品・食材についてご紹介。
小麦はグルテンを含む食材としてよく知られているが、醤油などの調味料は「隠れグルテン」とも呼ばれ、意外とグルテンが含まれていることは知られていない。
グルテンフリーを取り入れる前に、どのような食品にグルテンが多く含まれているかをおさえておこう。
- パン
- うどん・素麺
- ピザ・パスタ
- 洋菓子類
- カレーやシチューのルウ
- ドレッシングなどの調味料
パン
パンはグルテンを含む代表的な食品の1つ。小麦粉を主原料としているため、通常のパンにはグルテンが豊富に含まれている。
グルテンはパン生地に弾力と粘り気を与えて、発酵時にガスを保持する役割を持つ。これによりふっくらとした食感や、もちもちとした食感が生まれている。
グルテンフリーを意識する場合、通常のパンの代わりに「米粉」や「アーモンド粉」、「ココナッツ粉」などを使用したグルテンフリーパンを選ぶのがおすすめ。ただし、小麦粉が主原料のパンよりもふわふわしていなかったり、風味が異なったりする場合も。
また、パンの代わりに、餅や白米などを選ぶのも1つの方法。日本人になじみがあり、グルテンフリーでありながら満足感のある食事になる。

グルテンがないとふわふわ感が出せなくなるので、グルテンなしで通常のパンに近い食感を再現するのはなかなか困難です。
市販のグルテンフリーパンの中には、比較的通常のパンに近いふわふわ感を楽しめるものも販売されており、とくに「米粉パン」は、多くのお店で取り扱われていて、手に入りやすいグルテンフリーパンの1つです。
うどん・素麺
うどんや素麺はつるつるとした食感が人気の麺類だが、これらも小麦粉を主原料としているため、グルテンを多く含む食品。これらの麺類はグルテンの粘り気を利用して、コシのある食感を作り出している。
代替品になるのは、米粉で作られた麺やこんにゃく麺、春雨など。うどんや素麺とは食感が異なるが、食べやすいものも多い。
また、麺類の代わりに、野菜を細切りにしたベジヌードルを使用するのもおすすめ。ズッキーニやニンジンなどを使用することで、低カロリーでグルテンフリーの「麺」を楽しめる。
ピザ・パスタ
ピザとパスタも小麦粉を主原料としているため、グルテンを多く含む食品。ピザ生地やパスタ麺には、グルテンが豊富に含まれている。
ピザの場合は、カリフラワーやナスなどの野菜、お米、お餅などをピザ生地として活用することで、グルテンフリーのピザを作れる。通常のピザ生地とは異なる食感だが、独特の風味と栄養価の高さが魅力。
パスタの代替品には、米粉やとうもろこし粉、豆で作られたグルテンフリーパスタがある。また、ズッキーニやカボチャなどの野菜を細長く切ったベジヌードルを使用するのもおすすめ。

セリアック病でなければ、神経質になりすぎる必要はありませんが、ソースや具材もグルテンを含む調味料はあります。どうしてもグルテンを除かなければいけない場合は、一から全て手作りがよいでしょう。野菜や肉、チーズなどの具材は、そのまま使用できることが多いですが、オイルベースやトマトベースのソースを手づくりするのもひとつの手です。
洋菓子類
洋菓子類は、その多くが小麦粉を主原料としているため、「ケーキ」「クッキー」「ビスケット」「パイ」など、さまざまな洋菓子にグルテンが含まれている。
代替品として、米粉、アーモンド粉、ココナッツ粉などを使用したグルテンフリーの洋菓子も多く販売されているため、市販のグルテンフリースイーツを活用するのもおすすめ。
また、果物や豆腐を使ったデザートやゼリーなど、グルテンフリーで自然な素材を活かしたスイーツもおすすめ。

グルテンフリーのお菓子であっても、食べ過ぎには注意しましょう。たとえば、グルテンフリーだからといって大福を3個食べるよりも、通常のクッキー1枚を食べるほうが糖質摂取量が少ない場合もあります。セリアック病でないなら、栄養バランスを考えながら、適量を守ることの方が大切です。
カレーやシチューのルウ
カレーやシチューのルウは多くの場合、小麦粉を使用してつくられているため、グルテンを含む食品。ルウにとろみを出すために、何かしらのでんぷんが使用されている可能性が高い。
小麦粉の代わりに「米粉」や「片栗粉」、「コーンスターチ」などを使用すれば、グルテンフリーなルウを作れる。また、ココナッツミルクや豆乳を使用してクリーミーさを出したり、すりおろした野菜でとろみをつけたりする方法もある。

グルテンフリーのカレーだからといって、栄養価が大きく変わるわけではありません。カロリーや炭水化物の量は通常のカレーと同程度であるため、食べ過ぎないよう注意が必要です。
ドレッシングなどの調味料
ドレッシングなどの調味料にも、意外にグルテンが含まれていることがある。これらの調味料には、小麦由来の成分が使用されているケースが多い。
たとえば、「醤油」「酢」「ウスターソース」などには、小麦が使用されていることがある。また、とろみづけや安定剤として小麦由来の成分が添加されていることもある。
グルテンフリーの調味料を選ぶ際は、原材料表示をよく確認しよう。近年では、グルテンフリー表示のある調味料も増えていて、それらを選ぶことで安心して使用できる。
自家製のドレッシングやソースを作ることも、グルテンフリーとしておすすめの方法。オリーブオイルや酢、レモン汁などをベースに、ハーブやスパイスを加えることで、おいしいグルテンフリーの調味料を作れる。

ドレッシングをはじめ、「ケチャップ」「味噌」などの調味料にもグルテンが含まれている場合があります。ただし、一度に大量に食べるものではありませんので、セリアック病やアレルギーなどでなければ、すベてをカットしようと神経質になる必要はありません。食べ過ぎない程度に気をつけて食事を楽しんでください。
おすすめのグルテンフリー食品・食材
続いては、グルテンフリー食品の中でも、取り入れやすいおすすめの食品・食材をご紹介。
効果を得るためには、グルテンフリーの食生活をできるだけ長く継続することが大切。これらの食品を活用しながら、無理なくグルテンフリーを始めてみよう。
- 米
- 米粉や大豆粉のパン・パスタ
- 十割そば
- 肉・魚
- 野菜・果物
- グルテンフリースイーツ
米
米は日本人にとって、もっとも馴染み深いグルテンフリー食品。
白米はもちろん、玄米や雑穀米など、さまざまな種類の米を楽しめる。食物繊維やビタミン、ミネラルなどの栄養素も豊富に含んでおり、血糖値をゆるやかに上げてくれるのも嬉しいポイント。
おにぎりや寿司、炊き込みご飯など、バリエーション豊かな料理を楽しもう。

玄米は、ビタミンB群やミネラル、食物繊維が豊富に含まれており、同じ量の白米と比較すると、玄米のほうが栄養価が高いです。雑穀米については、麦が含まれている可能性がありますが、健康な人であれば過度に気にする必要はありません。
アレルギーや病気などの理由で、グルテンを完全に避ける必要がある場合以外は、ビタミンやミネラルなどの栄養素摂取も兼ねて、玄米や雑穀米を選んでみるのもおすすめです。
米粉や大豆粉のパン・パスタ
米粉や大豆粉を使用したパンやパスタは、これらの製品はグルテンを含まないため、小麦アレルギーやグルテン過敏症でも安心して摂取できる。
米粉パンは、もっちりとした独特の食感が特徴。大豆粉パンは、「高タンパク質で低炭水化物」なので、栄養面でも嬉しい。また、パスタに関しても、米粉や大豆粉を使用したものが市販されており、通常のパスタに近い食感を楽しめる。
米粉と大豆粉で、食感や風味が異なるので、好みに合わせて選ぼう。

米粉は小麦粉と比較してタンパク質の含有量が少なめです。米粉製品を多く摂取する場合は、ほかの食品からタンパク質を補うよう意識しましょう。
十割そば
十割そばは、そば粉100%で作られた麺で、グルテンフリー食品の1つ。通常のそば(二八そばなど)には小麦粉が含まれているが、十割そばは小麦粉を使用していない。
そばには、「ルチン」や「ポリフェノール」などの栄養成分が豊富に含まれており、抗酸化作用や血流改善効果が期待できる。また、食物繊維も豊富で腸内環境の改善にも役立つ。
ただし、十割そばは非常にデリケートな麺であり、茹でるのに少々技術とコツが必要。また、つなぎに小麦粉を使用していないため、コシが弱く崩れやすい特徴がある。
肉・魚
肉や魚は本来、グルテンを含まない食品で、グルテンフリーダイエットの重要なタンパク質源となる。
肉類では、「鶏肉」「牛肉」「豚肉」など、さまざまな種類を楽しめる。魚類も、「青魚」「白身魚」「貝類」など、多様な選択肢がある。ただし、加工された肉製品や魚製品(ハム、ソーセージ、魚肉ソーセージなど)には、グルテンが含まれている場合があるので注意しよう。

調理法や、使用する調味料・ミールキットによっては、小麦粉を含む場合もあるので、塩焼きや酒蒸しなどできるだけシンプルな味付けや調理法を意識しましょう。肉料理はカツ、魚料理はムニエルなど、これらの料理を作る場合は、小麦粉を使用します。
野菜・果物
野菜・果物は、グルテンフリーダイエットにおいて欠かせない食材。グルテンを含まないため、安心して摂取できる。
また、ビタミン、ミネラル、食物繊維などの栄養素が豊富に含まれており、栄養バランスを整えるためにも大切。
野菜は生で食べるだけでなく、「煮る」「焼く」「蒸す」などさまざまな調理法で楽しめる。とくに、根菜類や葉物野菜は、グルテンフリーの主食の代替としても活用できる。たとえば、「カリフラワーライス」や「ズッキーニパスタ」など、創意工夫次第で多様な料理が可能。
果物は、そのまま食べることはもちろん、スムージーやデザートの材料としても活用できる。
ただし、加工された野菜や果物製品(ドライフルーツなど)にはグルテンが含まれている場合があるので、購入時は原材料表示をよく確認しよう。
グルテンフリースイーツ
グルテンフリースイーツは、小麦粉の代わりに「米粉」「アーモンドプードル」「ココナッツ粉」などを使用して作られる。これらのスイーツはグルテンを含まないため、小麦アレルギーやグルテン過敏症の人も安心して楽しめる。
近年、グルテンフリースイーツの種類は豊富になっていて、「ケーキ」「クッキー」「マフィン」など、さまざまな種類が市販されている。また、自宅で手作りする場合も、グルテンフリーの材料を使用すれば、従来のスイーツに近い味わいを再現することが可能。
グルテンフリースイーツの中には、通常のスイーツよりも栄養価が高いものもある。たとえば、「アーモンドプードル」を使用したスイーツは、タンパク質や健康的な脂質を多く含んでいる。また、果物や野菜を活用したスイーツはビタミンやミネラルが豊富。
ただし、グルテンフリーであっても食べ過ぎてよいわけではなく、カロリーや糖質には注意が必要。

単に小麦粉を米粉などに置き換えただけのスイーツは、栄養価や糖質量が通常のスイーツとあまり変わらない場合があります。
グルテンフリースイーツは焼き菓子でバターなどを使っていることも多く、高糖質・高脂質である可能性が高いので、グルテンフリーに限らず注意しましょう。ゼリーや大福など、もともとグルテンを含まないお菓子は、比較的低脂質であることが多いです。
「グルテンフリー」のデメリット・注意点
グルテンフリーの食生活は、栄養に偏りが生じたり、添加物の摂取が増えてしまったりするデメリットもある。健康的にグルテンフリーを続けるためには、デメリットを理解した上で対策することが大切。
グルテンフリーをおこなう際は、以下の4つのデメリットを知っておこう。
- 栄養の偏り・栄養不足のリスクがある
- 添加物の摂取量が増える可能性がある
- グルテンフリー食品は高価格なものが多い
- 外食や旅行時には実践が難しい
栄養の偏り・栄養不足のリスクがある
小麦製品を避けることで、「ビタミンB群」「鉄分」「食物繊維」などの重要な栄養素が不足する可能性がある。とくに、ビタミンB群は神経系の健康維持に重要であり、鉄分は貧血予防に欠かせない。また、食物繊維は消化器系の健康を支える重要な役割を果たす。
これらの栄養素を適切に補うためには、代替食品の選択やバランスの取れた食事計画が不可欠。たとえば、「全粒穀物」「豆類」「緑黄色野菜」などを積極的に摂取することで、不足しがちな栄養素を補える。
また、必要に応じてサプリメントを利用することも1つの方法。ただし、サプリメントに頼りすぎず、できるだけ食事から栄養を摂取することが望ましい。
添加物の摂取量が増える可能性がある
グルテンフリー食品の中には、通常の小麦製品に近い食感や味わいを再現するため、「増粘剤」や「安定剤」、「乳化剤」など、さまざまな添加物が使用されることがある。
添加物の中には、過剰摂取によって健康に悪影響を及ぼす可能性があるものも存在するので注意が必要。とくに、長期的に摂取し続けることで、消化器系への負担やアレルギー反応のリスクが高まることも。
そのため、できるだけ自然な食材を使用した手作りの料理を心がけることが大切。また、市販のグルテンフリー食品を選ぶ際は、原材料表示をよく確認し、添加物の少ないものを選ぼう。

マーガリンやショートニングはつなぎの役割として使用されることがありますが、トランス脂肪酸を含むことが多く、健康に悪影響を及ぼす可能性がありますので、避けることが望ましいです。
グルテンフリー食品は高価格なものが多い
グルテンフリー食品は、原材料の調達や製造過程、流通量の違いなどさまざまなことが影響して、一般的に通常の食品よりも高価格になる傾向。
たとえば、グルテンフリーの小麦代替品(米粉、アーモンド粉など)は、通常の小麦粉よりも高価。また、グルテンフリー食品の製造には特別な設備や工程が必要となることも多い。
さらに、グルテンフリー食品の需要が一般食品に比べて少ないため、大量生産によるコスト削減が難しい面もある。
ただし、グルテンフリーの麺などを購入しなくても、米類を中心にすればコストを抑えることができる。比較的安価な白米を中心にして和食を積極的にとるなど、コストをきっかけに健康的な食事を意識してみるのもおすすめ。

グルテンフリーのお菓子や置き換え食品を購入することで、食費が上がってしまうことが多いです。甘いものへの欲求自体を減らして、この機会にお菓子を制限するなど、あえて置き換えられる食品を買わないのも1つの節約法です。
外食や旅行時には実践が難しい
グルテンフリーを実践する上で、外食や旅行時に困難を感じることが多い。多くのレストランやファーストフード店では、グルテンを含む食材が広く使用されており、グルテンフリーオプションが限られていることがある。
ただ、グルテンフリーを完璧におこなおうとするのではなく、継続できる無理のない範囲で取り組む姿勢でOK。外食のときには、グルテンフリーにこだわらず食事を楽しむのもおすすめ。

外食時にグルテンを完全に避けるのは難しいですが、工夫次第で摂取を抑えられます。パスタやピザなど小麦粉を主原料とする料理を避け、代わりにリゾットなど米を使用した料理を選ぶのがおすすめです。
「グルテンフリー」に関するQ&A
グルテンは身体に悪い?
A:身体にとってのメリットは挙げづらい

グルテンはアレルギーの原因物質になることもあり、様々な不調を引き起こすこともあります。中にはグルテンよりも「カゼイン」の方が身体に悪影響を及ぼしている場合もあるので、グルテンフリーに挑戦する場合は、カゼインが含まれる乳製品の摂取もできるだけ控えるのがおすすめです。
グルテンフリーはどんな人に向いている?
A:消化器疾患・自己免疫疾患のある人

子どもであれば「集中力がない」「癇癪持ち」などの発達障害系の不調や、下痢をしやすい体質、アトピー性皮膚炎などを持つ場合にもおすすめです。
グルテンは完全に避けるべき? 一日の摂取量の目安は?
A:外食などでは気にしすぎず、自宅での食事でグルテンフリーに取り組むとよい。

グルテンは量に換算するのが難しく、明確な摂取量の基準もありません。1日の摂取量を決めるよりは、自宅で食べるときはできるだけグルテンフリーを心がける。外食やみんなで食事をとるときは、あまり気にしすぎず食事を楽しむなど、メリハリをつけて取り組むのがおすすめです。
子どもがおこなっても大丈夫? 栄養面での注意点は?
A:問題ない

幼少期をザンビア、ノルウェー、ナイジェリアで過ごす。ジュニアアスリート、ノルウェーテニス全国大会12歳以下女子シングルス優勝。帰国後、日本医科大学卒業。日本大学形成外科入局(研究員)と同時に、ドクターズコスメ併設の有名美容皮膚科へ勤務。その後、オーソモレキュラー栄養療法と腸内フローラ・口腔フローラ療法を学び、診療に取り入れる。理想の診療実現のため、2022年栄養クリニック宮古島本院を開院、2024年表参道院を開院。美容診療から難病治療まで幅広く診療している。