「ダンベルフライ」は、大胸筋を鍛えるトレーニングで、厚い胸板をめざす男性、バストアップしたい女性に人気の種目。本記事では「ダンベル」で得られる効果、正しいやり方、効果を高めるコツなどを詳しく紹介。目的別での重量の目安も紹介するので、これから「ダンベルフライ」に取り組む人はぜひ参考にしてみよう。
この記事の監修者
関根 綾さん
パーソナルジムDecision 代表トレーナー
「ダンベルフライ」の4つ効果と鍛えられる部位
「ダンベルフライ」にはさまざまな効果が期待でき、筋力アップもダイエットにも向いている種目。続けることでどのような効果が期待できるのかを詳しくみていこう。
・大胸筋を集中的に鍛えることができる
・痩せやすい身体づくりに効果的
・厚い胸板をつくる
・女性に嬉しいバストアップ効果
部位:大胸筋を集中的に鍛えることができる
「ダンベルフライ」は、とくに大胸筋を集中的に鍛えるのに効果的。ダンベルを利用して両腕を外側に開く動きにより、大胸筋の「上部」「中部」「下部」に渡って広範囲を効率よく鍛えられる。
「ダンベルフライ」の際の筋肉を広げる動作が筋繊維(きんせんい)を細かく伸ばすが、これが美しい胸板を形成することにつながる。また、大胸筋のサポート役として機能する「三角筋」などにも効果があるため、胸だけでなく肩も鍛えられる。
効果:痩せやすい身体づくりに効果的
身体の中でも比較的大きな筋肉のひとつである「大胸筋」を鍛えることで、筋肉量が増え基礎代謝が向上する。基礎代謝の向上はエネルギー消費の増加を意味し、脂肪燃焼が促進されるため、食べても太りにくい身体づくりに効果的。
効果:厚い胸板をつくる
鍛えにくい「大胸筋の内側〜外側」までを鍛えることで厚くたくましい胸板をつくることができる。適切な重量のダンベルを使用し、肩の負担を減らしながら胸部に集中して負荷をかけよう。
効果:女性に嬉しいバストアップ効果
バストラインだけでなくボディラインの美しさが手に入れられるため、「ダンベルフライ」は、女性にもとくにおすすめ。乳房の多くは大胸筋の上に位置するため、大胸筋を鍛えることはバストを持ち上げ、形のよい理想的なバストラインに導いてくれる。
ほかにも、肩周りの筋肉も同時に鍛えられるため、肩の安定性や可動域の向上にもつながり、日常生活での姿勢改善や肩こりの軽減にも効果的。
「ダンベルフライ」と類似トレーニングとの違いは?
「ダンベルフライ」と同じく大胸筋を鍛えるトレーニングとして、「ダンベルプレス」「ベンチプレス」「ペックフライ」が挙げられる。それぞれ「ダンベルフライ」とどのような違いがあるのかみていこう。
・「ダンベルフライ」と「ダンベルプレス」の違い
・「ダンベルフライ」と「ベンチプレス」の違い
・「ダンベルフライ」と「ペックフライ」の違い
「ダンベルフライ」と「ダンベルプレス」の違い
「ダンベルフライ」と「ダンベルプレス」は、どちらも主に大胸筋を鍛えるトレーニング。
「ダンベルプレス」は、筋肉の収縮を意識しやすく、負荷を上げやすいため、筋力アップにつながる。複数の関節と筋肉を使う「コンパウンド種目(多関節種目)」で、関節の動きにともない多くの筋肉が動く。そのため、高重量を扱うことができ、筋力アップや成長ホルモンの分泌などの特徴がある。
一方、「ダンベルフライ」はストレッチ種目であり、胸の筋繊維に負荷をかけやすく、胸の外側の輪郭部分の形成に役立つ。大胸筋のみにピンポイントに負荷をかけ続けられたり、大きく収縮させることができるので、効率的な筋肥大が可能。
「ダンベルプレス」のやり方や効果、鍛えられる部位についてもっと詳しく知りたい人は下記の記事を参考にしてみて。
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「ダンベルプレス」で鍛えられる3つの筋肉と効果 ここでは「ダンベルプレス」で鍛えられる3つの筋肉をご紹介。以下の筋肉を鍛えたい人は要チェック。 ・分厚い胸板をつ.....
「ダンベルフライ」と「ベンチプレス」の違い
大胸筋を鍛える点は共通しているが、関与する筋肉に違いがある。「ダンベルフライ」の場合、主に肩関節を使い、大胸筋を集中的に鍛えるもの。使用重量は比較的軽く、ほかの筋肉への負担が少ないため、全身の筋肉は関与しづらい。
一方、「ベンチプレス」は大胸筋のほか、「三角筋前部」「上腕三頭筋」を含む多くの筋肉が関与している。高重量を扱いやすく、全身を使ったトレーニングが可能。
「ベンチプレス」のやり方や効果、鍛えられる部位についてもっと詳しく知りたい人は下記の記事を参考にしてみて。
「ベンチプレス」の正しいやり方や効果は?重量の換算方法や平均重量も紹介
「ベンチプレス」はどこの部位に効果がある? ベンチプレスは主に大胸筋にアプローチできるトレーニング。また、三角筋や上腕三頭筋にも影響する。ベンチプ.....
「ダンベルフライ」と「ペックフライ」の違い
「ダンベルフライ」はフリーウエイトを使ったトレーニングのため、重力の関係で負荷が真下にしか作用しない。そのため、上腕を下げた際、どうしても負荷が抜ける瞬間ができてしまう。
一方、「ペックフライ」はマシンを使用するため、動作中は均等な負荷をかけ続けられる。そのため、負荷が抜けにくく、大胸筋を広い範囲で鍛えることができる。
「ダンベルフライ」の種類と正しいやり方・フォーム
「ダンベルフライ」にはいくつかのトレーニング方法がある。ここでは以下4つのやり方やフォームを詳しく紹介。
・基本のダンベルフライ
・インクラインダンベルフライ
・デクラインダンベルフライ
・ベンチなしでおこなう「フロア・ダンベルフライ」
基本のダンベルフライ
<やり方>
- ベンチ上で仰向けになり、手のひらが向かい合うようダンベルを握る
- 腕を完全に伸ばし、ダンベルが逆V字形に配されるよう調整する
- 肩甲骨を寄せ、肩を落とし、胸を前に突き出す
- 次に、前腕を若干外側へ拡げつつ、ひじを開くようにしてゆっくりとダンベルを下ろす
- ダンベルは胸のトップまで下ろす
- ひじの内側が胸に触れるよう意識しながら、弧を描きつつ閉じる動作をおこなう
- 最後に、腕をスタートポジションに戻す
「ダンベルフライ」は初心者でも挑戦しやすいトレーニング。しかし、おこなう際にはひじの角度に注意が必要。ひじの角度が開きすぎると、肩への負担が増えてケガのリスクが高まるため、ひじの角度は「90~100度程度」に保つことが大切。また、肩がベンチから離れないようにし、胸をしっかりと張ることで、大胸筋に適切な負荷をかけられる。
肩甲骨や胸を意識しながら、ダンベルを持つ手をゆっくり動かしましょう。胸のてっぺんの位置までダンベルを下ろしたら、弧を描くようにして腕を閉じます。
インクラインダンベルフライ
<やり方>
- インクラインベンチの角度を「15~30度」に調整
- ダンベルを両手に持ち、ベンチ上で仰向けになる
- ダンベルを手に握り、手の内側が向き合うようにして、腕を床と垂直に保つ
- ダンベルが互いに向かい合う形で、ひじを曲げつつ胸部を広げる動作をしながら、ダンベルが弧を描く軌道をたどりながら降ろしていく
- 胸を張り続け、ひじを引き寄せる感覚で、大胸筋を使い、両腕を開始位置に戻す
「インクラインダンベルフライ」も、初心者でも挑戦できる。フラットでおこなう「ダンベルフライ」と比較すると、肩関節の屈曲の動きが強くなり、大胸筋の上部がより強く刺激されるのが特徴。ポイントは、ベンチの角度にあり、「15~30度の間」で設定するのが適切。「45度以上」の角度は肩への負担が増えてしまうので控えよう。
ひじの角度は開きすぎないように注意してください。「90~100度の範囲」で保つことがおすすめです。
デクラインダンベルフライ
<やり方>
- フラットベンチを頭がやや下がる角度に設定する(あるいは、水平なベンチ上で仰向けになり、足を立てて腰を少し持ち上げる)
- ダンベルを両手に持ち、腕を完全に伸ばして胸の上で準備する
- ひじをわずかに曲げ、ダンベルを外側に開くようにして、弧を描く動きでゆっくりと降ろしていく
- 動作範囲を最大にして、ゆっくりと開始位置に戻す際、上半身をベンチにしっかりと密着させる
「デクラインダンベルフライ」は、頭が足よりも低い位置になるよう身体に角度をつけておこなうため、大胸筋の下部に負荷を集中させられることが特徴。また、ひじの角度が開きすぎないように注意し、こちらもひじは「90~100度の範囲」で保つようにしよう。
ベンチの角度は「15度程度」に設定しましょう。「30度以上」にすると、ほかの筋肉を使ってしまい、大胸筋を鍛える効果が薄れてしまいます。
ベンチなしでおこなう「フロア・ダンベルフライ」
<やり方>
- 床に寝転がり、脚を曲げて立てる
- 手のひらが互いに向き合うようにダンベルを持ち、腕は軽く曲げてスタートする
- 息を吐きながら、腕を左右へ大きな弧を描くようにして広げていき、ダンベルが床すれすれに達するまで下ろす
- その後、腕を持ち上げて初期位置に戻す
「フロア・ダンベルフライ」では、ベンチを利用した他種類のトレーニングよりも可動域が狭くなってしまうため、胸を十分に張るのが難しくなる可能性も。ひじの位置が身体を支える面よりも下になるように意識し、角度は「90~100度の範囲」で保つ。
ベンチを利用するのが理想ですが、やむをえずフロアでおこなう場合は厚めのヨガマットなどを活用するのがおすすめです。
「ダンベルフライ」で役立つ器具の使い方
ここでは、ベンチプレスで使うトレーニング器具をご紹介。
動かし方などを画像と動画で解説するので、参考にしながら正しく使えるようにしよう。
「インクラインベンチ」の正しい使い方
「デクラインベンチ」の正しい使い方
「ダンベルフライ」の効果を高める6つのコツ
筋トレの効果をしっかり出すためには、正しいフォームでおこなうことが大切。ここでは、「ダンベルフライ」を効果的におこなうための6つのコツを紹介。
おさらいの部分もあるが、改めて意識すべきポイントを確認してトレーニングにのぞもう。
・ひじを軽く曲げる
・胸を張り、肩甲骨を意識する
・ダンベルは肩の高さまで落とす
・呼吸を意識する
・慣れるまでは軽い重量でおこなう
・腕がきついときはパワーグリップやストラップを使う
ひじを軽く曲げる
「ダンベルフライ」をおこなう際のひじの適切な角度は「90~100度」。
この角度は、大胸筋にピンポイントで負荷をかけ、腕に負荷が逃げてしまうのを防いでくれる。トレーニングをおこなう際は、胸をしっかりと張り、肩甲骨を寄せた状態でひじを曲げ、胸に負荷が乗っているかを確かめよう。
自分の扱える重量を超えるダンベルを使うと、コントロールができなくなり、ひじが伸びてしまう可能性があります。決して無理はしないようにしてください。
胸を張り、肩甲骨を意識する
胸をしっかりと張り、肩甲骨を寄せることは、効果的なトレーニングにつながるだけでなく、腕や肩への不要な負荷を防ぐこともできる。
仰向けで寝転んだ姿勢でおこなうトレーニングでは、肩甲骨が正しく使えていないと、身体のバランスを取るのが難しいため、しっかり肩甲骨を意識しよう。
肩甲骨を正しく使うためには「肩を下げる」イメージをするのがポイントです。鎖骨をあごに近づけるように意識することで、肩甲骨が正しい位置に動きやすくなります。動作中は常に肩甲骨の動きや位置に意識を向け、大胸筋にきちんと負荷がかかっているか確認しながらおこないましょう。
ダンベルは肩の高さまで落とす
肩より上でダンベルを動かすだけでは、胸の筋肉に十分な負荷がかからない。一方で、肩の下まで下ろしてしまうのは、肩を痛めるリスクがある。そのため、ダンベルを下ろすときは肩と同じ高さまでにしよう。筋肥大が目的の場合でも無理はせず、動作は肩のラインを意識しておこなおう。
うまくおこなえない場合は、重量を下げたり、フォームを見直したりするのがおすすめです。また、肩に痛みがある場合はおこなわないようにし、病院を受診すること。痛みを感じながらの無理なトレーニングは避け、ジムに通っている場合はトレーナーに相談しましょう。
呼吸を意識する
腕を下ろす際に深く「息を吸い込む」ことで、胸の筋肉が伸び、より多くの酸素を取り込むことができる。一方、腕を閉じるときは「息を吐くよう」にすることで、効果的に鍛えることができる。
身体に力が入り、無意識のうちに呼吸を止めてしまうことがありますが、これでは身体に不必要な緊張が生まれてしまい、トレーニングの効率が下がってしまいます。正しい呼吸法を意識することで、身体を安定させ、ケガのリスクを下げることにつながります。
慣れるまでは軽い重量でおこなう
慣れるまでは軽い重量から始めることが大切。軽い重量でも十分に負荷が加えられるだけでなく、無理な高重量はケガのリスクにつながるため、まずは正しいフォームを最優先に慣れていこう。
腕がきついときはパワーグリップやストラップを使う
重たいダンベルを長時間握っていると、握力が落ちてしまい、ただダンベルを上げ下げしているだけになって、トレーニングの質が下がってしまう。手首が安定することで、ストレッチや収縮に集中しやすくなるため、ストラップの使用がおすすめ。
パワーグリップも有効ですが、より安定感を求めたい人にはストラップがおすすめです。
「ダンベルフライ」の平均重量・回数設定
正しいフォームを維持しながらおこなうことで、たとえ軽い重量でも筋肉を効果的に鍛えることが可能。そのため、まずは正しいフォームで安定して動作できる重量から始めるのが重要。
一般的な平均重量を気にするよりも、それぞれの筋力に合わせた重量でトレーニングを開始し、慣れていくにつれて、徐々に負荷を調整しよう。
・筋力アップが目的の場合
・筋肥大が目的の場合
・筋持久力を高める場合
・男女別:重量・回数
筋力アップが目的の場合
筋力アップを目的とする場合、「ベンチプレス」の方が向いている。
ただ、「ダンベルフライ」でおこなう場合、「6~10回で限界がくる重量で3セット」が目安。インターバルは2~3分と長めに取ることで、次のセットに向けて十分な回復を促す。重量を設定する際は、正しいフォームを維持しながらできる範囲で徐々に上げていこう。少ない回数でもよいので、やや重めで鍛えると効果的。
下記の記事では「ベンチプレス」のやり方や効果について詳しく解説しているので、気になる人は参考にしてみて。
「ベンチプレス」の正しいやり方や効果は?重量の換算方法や平均重量も紹介
「ベンチプレス」はどこの部位に効果がある? ベンチプレスは主に大胸筋にアプローチできるトレーニング。また、三角筋や上腕三頭筋にも影響する。ベンチプ.....
筋肥大が目的の場合
筋肥大を目的する場合、「10~12回で限界がくる重量で3セット」おこなうのが目安。インターバルは1分程度取ろう。トレーニング中は胸部を意識し、正しいフォームを維持しておこなうようにしよう。
筋持久力を高める場合
筋持久力アップが目的の場合、「15回以上で限界がくる重量で3セット」おこなうのが目安。
インターバルは短く、息を整える程度に留めるようにしよう。筋持久力を鍛えるには、重量よりも回数を重視する必要があるが、回数が多い分フォームが崩れがちなため、雑なフォームになってしまわないよう意識しておこなおう。
男女別:重量・回数
平均的な重量は、男性では体重75kgの場合、「20kg」が目安。女性では体重55kgで「10kg」が目安。ただし多くの人はこの重量では重すぎるため、正しいフォームを維持できる適切な重量から始めるのがいい。
回数は、初心者の場合、「10~12回を3セット」。経験者の場合は、「より重い重量で8~10回を目安に」。また、100kgのベンチプレスを上げられる人であれば、その30%程度である「30kg」を目安におこなおう。
年間約1000セッションを指導。経営者や芸能関係者の指導経験も多く、ダイエット・ボディメイク・健康維持など、さまざまな悩みに幅広く対応している。2021年より大原学園大宮校スポーツトレーナー科講師としても活動。
【保有資格/実績など】全米エクササイズ&フィットネス協会認定トレーナー(NESTAーPFT)/IMBF公認ファスティングカウンセラー
/関東オープンメンズフォジーク選手権入賞