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日本酒風呂と食事摂取による効果を検証!日本酒の美容成分「α-EG」がコラーゲン密度を上昇させる【金沢工業大学・尾関教授】

美容や健康に効果的だと言われている「コラーゲン」。普段から気にして摂取している人も多いのではないだろうか?

金沢工業大学と米沢電気工事株式会社が共同で行った、日本酒の旨味成分「α-EG」を使用した食事の摂取と酒風呂への入浴を約一週間続けた実証実験によると、被験者のコラーゲン密度が上昇した。特に、食事摂取による効果が高く、速効性と継続性も見られたとのこと。

日本酒と「肌の健康」や「コラーゲン」の関係性、今研究の内容や結果について、金沢工業大学バイオ・化学部応用バイオ学科 尾関健二教授にお話を伺った。

●「α-EG」とは?
α-エチルグルコシドと呼ばれ、エタノールとオリゴ糖を基に、麹菌の酵素により製造過程で生み出される日本酒の旨味成分。真皮層にある線維芽細胞の活性化を促し、コラーゲン密度の向上を助けるため、その美肌効果が注目されている。

尾関 健二さん

金沢工業大学バイオ・化学部応用バイオ学科 教授

博士(農学)。麴菌(国菌)を利用した一番複雑な発酵物の日本酒と一番単純な発酵物の甘酒の機能性物質を高める研究なども行っている。どぶろく特区の町(中能登町)を盛り上げる活動も行っている。岐阜大学農学部農芸化学科卒業、同大学院農学研究科修了。大関株式会社、築野食品工業株式会社を経て、金沢工業大学バイオ・化学部応用バイオ学科の教授。ゲノム生物工学研究所の研究員。

真皮層から肌を健康に!「α-EG」と肌のコラーゲンの関係性

日本酒に含まれる「α-EG」が肌のコラーゲン生成を促進

──まず尾関先生が美肌成分として「α-EG」の研究を始めたきっかけを教えてください。

尾関教授:最初は株式会社車多酒造との共同研究で、2014年3月から「α-EG」についての研究を始めました。当時は「α-EG」の美肌効果についてより学術的に証明するため、超音波真皮画像装置などを導入し、ヒトによる飲用試験と塗布試験による「コラーゲンスコア」(真皮中のコラーゲンの密度)を計測しました。

この研究により、「α-EG」が肌のコラーゲン生成を促進させることが実証されました。

──もう10年近く「α-EG」について研究されているんですね。

尾関教授:はい。2017年頃から他大学でも研究が行われるようになり、現在では美肌成分のひとつとして「α-EG」は日本酒製造会社や化粧品メーカーなどからも注目され、さまざまな商品に活用されています。

──「α-EG」とはどのような成分で、日本酒にどれくらい含まれているのでしょうか?

尾関教授:「α-EG」はアルコールとグルコースに次ぐ日本酒の重要な成分です。一般的には日本酒(純米酒)に約0.8%含まれています。日本酒が製造される過程で、精米された米を用いて醸造されることで生成されます。ただ、地域や製造過程によっては、含有量が異なる場合もあります。

──なるほど。「α-EG」の美肌効果について、もう少し具体的に教えていただけますか?

尾関教授:「α-EG」は小腸から吸収され、真皮層にある線維芽細胞の活性化を促し、コラーゲン密度の向上を助けることが確認されています。また、短い期間で肌の改善に効果があるとも言われています。これらの研究成果から「α-EG」の美肌効果に期待して、最近は化粧品や飲料にも配合されるようになりました。

ただ、女性の間でもあまり知られていない印象があります。そのため美肌効果をより広めるための取り組みが、今後は必要だと考えています。

日本酒風呂試験と食事試験。より即効性があり効果的なのは?

──今回取り組んだ実証実験の目的について教えてください。

尾関教授:今回の実証実験の主な目的は、成分「α-EG」が肌の健康にどのような影響を与えるのかを検証することでした。特に日本酒や「α-EG」を含んだみりんなどの摂取が、肌の改善にどう影響するかに焦点を当てました。

──どのように行われたのでしょうか?

尾関教授:実証実験は主に二つの方法で実施しました。ひとつは食事実験で、参加者は昼食に「α-EG」を含んだみりんを用いた食事を摂取しました。もうひとつは、「α-EG」を含む温泉を使った試験です。「姫の湯」という温泉地で研究し、実験参加者は一般の方々と大学生でした。

──実験の結果はどうだったのでしょうか?

尾関教授:グラフの通り、コラーゲンスコアが向上しました。1週目で有意な効果が出たため、「α-EG」は即効性があることを示しています。

食事での「α-EG」摂取の方がより即効性あり!

──食事試験と酒風呂試験で結果に違いはありましたか?

尾関教授:食事試験では、一週間の摂取後に参加者のコラーゲン密度が増加する傾向がありました。特に女性参加者では肌の潤いやツヤ感が増したと感じている人も多かったです。一方で、酒風呂試験では角質水分量を測定していたのですが、有意な差はあまり見られませんでした。

──なぜ、食事試験と酒風呂試験で効果の差が出たのでしょうか?

尾関教授:酒風呂の場合、お酒成分の濃度が低く、皮膚に十分に浸透しなかったためと考えられます。真皮層まで浸透するには時間がかかるため、短時間の入浴では大きな影響は見られませんでした。

──逆に、食事で「α-EG」を摂取した場合は、なぜ高い効果が見られたのでしょうか?

尾関教授:食事で「α-EG」を摂取すると、その成分が線維芽細胞に素早く送り込まれます。これにより、線維芽細胞内でコラーゲン生成が促され、結果的にコラーゲン密度が上昇します。真皮層には多くの毛細血管があり、この毛細血管が栄養素や酸素を線維芽細胞に供給しています。「α-EG」のような有用な成分が毛細血管を通じて運ばれるため、その効果が早く現れていると考えています。

──「α-EG」の効果について個人差はあるのでしょうか?

尾関教授:もちろん個人差があり、人によって効果は異なります。今回の実証実験でも15ポイント以上の効果が現れた人もいれば、効果がやや低い方もいました。

ただ、今回の実験での大きな発見は、食事による「α-EG」の摂取がコラーゲン密度を増加させ、肌の潤いやツヤ感を向上させる可能性が高いという点です。参加者たちも、実際にその効果を実感していました。中には、「α-EG」を含むみりんをどこで購入できるのか尋ねてくる方もいました。

「α-EG」の美肌効果をより多くの人へ伝えるための取り組みとしても、今回の研究は意味があったと感じています。

「α-EG」や「レジスタントプロテイン」の摂取が健康促進に好影響!

「α-EG」は日本酒や酒粕、甘酒を通して摂取しよう

──「α-EG」の適切な摂取量と摂取方法について教えてください。

尾関教授:一般的には、通常の日本酒を飲む場合は100ミリから300ミリが適切な量とされています。そのまま飲んでもいいですし、日本酒が苦手な方は水や氷で薄めてもよいと思います。また、酒粕などの食材を使った料理を通じても摂取できます。

酒粕と甘酒に含まれる「レジスタントプロテイン」で腸内環境改善と免疫力の向上も

──調理をしても問題ないのでしょうか?熱を加えると効果が下がるとか…。

尾関教授:温度は関係ありません。料理や他の日本酒由来の食品を通じて摂取することは可能です。特に、日本酒に関連する食材である酒粕や甘酒を料理に使うことで、さらに多くの健康効果を得ることができます。甘酒には腸内フローラを改善することができ、免疫力を高めると考えられています。

また、酒粕と甘酒には「レジスタントプロテイン」が含まれ、酪酸産生菌の占有率を高めることができ、腸内環境を整える効果を持っています。免疫力の向上や感染症対策となる可能性もあります。

適量の日本酒摂取と、その製造過程で出る食材を使ったバランスの取れた食事は、肌の健康はもちろん、全体的な健康促進に役立つと考えられます。

──今後の研究について教えてください!

尾関教授:「レジスタントプロテイン」に注目して研究を進めています。甘酒に豊富に含まれており、腸内環境の改善や皮膚水分量に与える影響について検証しています。コロナの影響もあり、免疫力を高める食品に対する需要が増しているため、体力回復や免疫力向上などの効果を調査する研究を進めています。

健康への具体的な影響についてのメカニズムを解明することで、日本酒や甘酒に対するイメージも変わり、日本酒業界を盛り上げることができると考えています。

近年は特に健康志向が高まっているので、日本酒や甘酒が健康食品としての地位を確立できる可能性もあります。スポーツ選手や健康に気を使う生活者に対して、その効果と安全性を証明することで、市場の拡大が期待できます。さまざまな企業や町と連携しながら、日本酒の進化と健康への貢献を目指しています。

──尾関先生、本日はありがとうございました。

Wellulu編集後記:
「α-EG」を含む日本酒に美肌効果があったとは知りませんでした。今回の取材を通じて、飲用や食事による摂取でより効果に期待できること、身体の内部から真皮層の線維芽細胞に届けられコラーゲン密度の向上につながるメカニズムなど、お話を聞いていてとても納得!というか、理解ができました。

普段日本酒をあまり飲まない方々も今記事を通じて、日本酒の印象が少し変わったのではないでしょうか?料理に活用することでも同じような効果が期待できるので、肌の健康を保つためにもライフスタイルに取り入れてみたいと感じました。

明日から日本酒ライフ、始めてみようかな。

本記事のリリース情報

尾関健二教授の取り組みが「Wellulu」に掲載

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