AIが爆発的なスピードで普及し、あらゆる業務が自動化されていく現代。私たち人間にしか出せない「本当の価値」とは何だろうか。その答えの一つが、自分自身を深く理解し、感情を適切にマネジメントする力である「エモーショナル・インテリジェンス(感情知性=EQ)」だ。
今回は、Google本社で開発されたマインドフルネスに基づくリーダーシッププログラム「Search Inside Yourself(サーチ・インサイド・ユアセルフ)」の日本における認定講師であり、数々のビジネスリーダーを導いてきた荻野淳也さんをゲストに迎えた。
対談の舞台は、本誌編集長・堂上研が特任教授を務める「iU 情報経営イノベーション専門職大学」の講義室。激変する時代を生きる若き学生たちに向けて、これからのキャリアと人生を豊かに生き抜くためのメッセージが贈られた。

荻野 淳也さん
一般社団法人マインドフルリーダーシップインスティテュート(MiLI)代表理事/多摩大学経営大学院 客員教授/慶應義塾大学大学院 理工学研究科 非常勤講師

堂上 研
株式会社ECOTONE 代表取締役社長/Wellulu 編集長
1999年に博報堂へ入社後、新規事業開発におけるビジネスデザインディレクターや経団連タスクフォース委員、Better Co-Beingプロジェクトファウンダーなどを歴任。2023年、Wellulu立ち上げに伴い編集長に就任。2024年10月、株式会社ECOTONEを立ち上げる。
AI時代に高めるべき能力。世界が注目する「感情知性(EQ)」とは

堂上:今日は大学(iU)の授業に来ていただき、ありがとうございます! 荻野さんは、僕がウェルビーイングやマインドフルネスを探求するよりずっと前から、この領域のパイオニアとして精通していらっしゃいます。僕もお話を伺えるのを楽しみにしていました。
まずは、荻野さんが国内外で実践されている、マインドフルネスをベースにしたリーダーシッププログラムについてお聞かせください。
荻野:こちらこそ、皆さんの前でお話しできて光栄です。本格的なAIの時代を迎え、これからは発想力や創造力といった、人間ならではの力がますます重要になっていきます。
実は、グローバル企業の経営者や有識者が集まる世界経済フォーラム(通称 ダボス会議)のレポートでも、本格化するAIの時代においてどんなスキルが大切なのか、いくつかの領域が示されています。
そのなかにまず、「創造性・問題解決力」が入っています。ここに含まれるクリティカルシンキング(批判的思考)、システム思考といったところはこれまでも重視されていた領域です。
そして、私が最も重要だと考えるのは、日本でも広めている「エモーショナル・インテリジェンス」という人間力のスキルです。これは端的にいうと、日本でいう「EQ」のことで、感情知性と呼ばれているものです。これからの時代、AI(人工知能、人工的な知性)に対して、この「エモーショナル・インテリジェンス」がより一層大切になってきます。
私は現在、リーダーがこのエモーショナル・インテリジェンスを高めるための研修を行っています。この感情知性のなかには、「自己認識」「自己管理」「モチベーション」「共感」「関係性の管理」という5つのスキルが含まれています。実は、リーダーシップにおいて一番重要なスキルが、この「自己認識力」だと言われているんです。
さらに、他者と協業する力としての「コラボレーション・コミュニケーション」、常に学び続けてアップデートしていく「ラーニング・グロース(学習と成長)」が必要になります。
ロジックの限界を超える。直感と感情がもたらす「意思決定」の科学
堂上:質問していいですか? 「問いを立てる力」というのも、そこに入ってくるのですか?
荻野:知的スキルのなかにどう含まれるかという話になります。これからはAIにインプットしていくわけですが、どんな言葉を入力するかでアウトプットが変わってきますよね。そのため、その「問いを作る力(プロンプト設計力)」というところも、これから一層大切になっていくことです。
先ほど学生の方から「決断力」という話がありました。決断は、脳の中でどのように行われているのでしょうか。皆さんの中に、ご存じの方はいますか?
多くの人は、論理的にA案、B案、C案を比較して決断していると考えています。しかし実際には、決断にいたるプロセスにおいて、感情が動いていない意思決定はないと言われています。最後の意思決定の後押しは、我々の感情が担っていると神経科学が伝えています。
特に「扁桃体(へんとうたい)」と呼ばれる感情を司る脳が、意思決定に対して感情的な後押しをしていると言われます。だからこそ、自分の感情をどう扱っていくかという「感情知性(EQ)」が重要だという話になります。
ハーバード大学のMBAの先生によると、これから100年のリーダーシップにおいて、感情知性はさらに必要な力になると考えられています。政治的な対立、経済的な格差、国際社会がブロック化していくことなど、人々を分断する要因は増え続けています。
そうした時代において、リーダーに求められるのは人々を一つにつなぐことです。信頼関係を築き、対話を促し、つながりを生み出すことこそが、リーダーシップの本質だということです。現在のこうした複雑な状況認識と人間理解を基盤にした「姿勢・あり方」が、これからのリーダーには重要だとされているんですね。
そこで注目されているのが、Googleで開発された「Search Inside Yourself(サーチ・インサイド・ユアセルフ)」というトレーニングプログラムです。2007年にスタートして以来、毎年進化を続けており、現在では世界中の企業や組織で導入されています。私はこのプログラムを日本で広める活動を行っています。

荻野:先ほど、エモーショナル・インテリジェンスのなかで一番基盤にあるのが、自分を知る力である「自己認識」だとお話ししました。自分の感情や身体感覚に気づく力ですね。
自己認識が高まることで、ほかの能力も向上する余地が生まれます。例えば、自分の価値観や使命を理解することで、どのように行動すべきかが明確になるからです。日本語で表現するなら、まさに「人間力」そのものに近いかもしれません。
エモーショナル・インテリジェンスを解説するとき、私はよくパソコンの「OS(基本ソフト)」に例えます。OSが最新のものにアップデートされれば、その上で動く思考やスキルという「ソフトウェア」のパフォーマンスも勝手に向上していきますよね。
そして、この自己認識を高める(OSを整える)うえで重要だとされているのが、「マインドフルネス」です。神経科学の研究でも、マインドフルネスの状態になると、自己認識や内受容感覚を司る「島皮質(とうしつ)」と呼ばれる脳の部分が活性化することがわかっています。その結果、自分の感情を客観的に捉え、感情を上手くコントロールできるようになります。また、それはモチベーションの向上にもつながります。
マインドフルネスというと、瞑想やリラクゼーションをイメージする方も多いかもしれませんね。しかし本質はそこではありません。自分自身への理解を深め、より良い意思決定や行動につなげるための、極めて実践的な「注意力の脳内トレーニング」なのです。

荻野:ノーベル経済学賞の受賞者であり、政治学者、認知心理学者、さらにはAIの初期の理論のベースを立ち上げたことでも知られるハーバート・サイモンは、これからの情報化社会を見据えてこのような決定的な言葉を残しました。
「情報を消費するのは受け手の注意力である」
現代はSNSやYouTubeをはじめ、膨大な情報が流れ続け、私たちの脳を刺激しています。情報が豊富に、過剰になればなるほど、私たちの有限なリソースである注意力は削られ、深刻な「注意力の貧困」が起こるのです。だからこそ、未来の人たちにとっての最大の財産、そして最大の武器になるのは、何にも奪われない、自分自身の「注意力や集中力」そのものになります。
マインドフルネスとは、まさにこの貴重な注意力を手元に取り戻し、ちゃんとコントロールするための有効な手段なのです。AIが進化し、情報がさらに増えていく時代には、自分の内側に意識を向け、自分自身を理解し、集中力を取り戻す力が重要になっていきます。
どれだけ自分が普段、頭のなかの膨大な雑念(マルチタスクのノイズ)にまみれ、注意散漫な状態で生きているか。その現状にまずは「気づく」こと。気づくことで、脳のノイズをクリアする余地が生まれ、今ここにある一つの物事に集中できるようになると、人間ならではの発想力や革新的なアイデアが自然と内側から湧き上がる基盤が整います。
堂上:マインドフルネスと瞑想はどのような関係性なのでしょうか。
荻野:シンプルに整理すると、「今ここに気づいている状態」そのものをマインドフルネスと呼び、その状態に至るための科学的な「手段(アプローチ)」の一つが瞑想です。瞑想のほかにも、ヨガやジョギング・ランニングなども、今ここに意識を集中させるための手段になります。
堂上:例えばYouTubeやTikTokを見ているときは、与えられている情報に注意を奪われていて、自分自身の今に気づけていない状態(マインドレス)が多いということですね。
荻野:YouTubeもSNSも、おすすめが次から次へと出てきますよね。それを見て「自分はこういう考えに至った」と思わされている。しかし、それはある意味、アルゴリズムで無意識のうちに操作され、コントロールされてしまっているとも言えます。
堂上:今に気づいている状態を意識的につくり、習慣にしていかなければいけないですね
荻野:私は毎朝6時からZoomとVoicyで集中瞑想トレーニングを配信しています。一人では続かないことも、みんなで一緒に場を共有することで、習慣として定着しやすくなります。ぜひ、興味がある方は参加してみてください。
目標達成率が約2倍に? コミュニティの力でひらく「習慣化」の科学

堂上:やはり、日々さまざまな情報やタスクに追われている現代社会では、マインドフルネスを日常に定着させていく「習慣化」が必要だと強く感じます。一人で実践することと、仲間と一緒にチームで取り組むことでは、習慣化のプロセスにおいてどのような違いが生まれるのでしょうか。
荻野:実は習慣化について、科学的な面白い研究エビデンスがあります。一人だけで何か目標を決めて達成しようとしたときの確率が約43%にとどまるのに対し、同じ目標を志すグループやコミュニティで取り組んだときの達成確率は、約76%にまで高まるそうです。
約2倍近くも確率が高まるわけですから、やはりみんなと一緒に場を共有していくほうが、圧倒的に習慣になりやすいと言えます。
堂上:僕たちが以前に健康習慣についてリサーチしたときにも、運動や食生活を自律的に継続・管理できている人は全体の10%未満で、90%以上の人たちが3日坊主で終わってしまうというデータが出ました。ほとんどの人が3日坊主で終わってしまうんです。荻野さんはご自身でストイックに継続できる「選ばれた10%側」の人なのだと思っていましたが……。
荻野:いえ、私ももともとは90%側の人間ですよ(笑)。自分一人では続かないと自覚しているからこそ、コミュニティの力を借りてみんなと一緒に毎朝の実践を続けているのです。
私が毎朝のオンライン瞑想トレーニングを立ち上げたのは2020年の3月9日のことでした。ちょうど世のなかがコロナ禍に突入し、多くの人がこれまでにない不安や恐れに襲われていた時期です。日本中がメンタルの危機に瀕するなか、マインドフルネスが少しでも誰かの助けや安心になればと思い、まずはZoomでの配信から始めました。最初はわずか5人からのスタートでしたが、1カ月、2カ月と経つうちに、参加してくださる仲間が200人にまで増えていきました。
堂上:毎朝みんなで実践を続けていくなかで、実際の変化はどのように感じられましたか?
荻野:まずは自分の頭や心の状態に「気づく」という、一人ひとりの深い自己認識が生まれます。その気づきの定点観測ができるようになると、日常のささやかな選択や対人コミュニケーションといった「行動の変化」へとダイレクトに現れていくのです。だからこそ、今でも私にとって大切な習慣として多くの参加者が続いているのだと思います。
「人間観察」が好きだった少年時代。自らを一歩引いて見つめる“鳥の目”

堂上:ここからは荻野さんの過去のストーリーについても伺っていきたいのですが、少年時代に夢中になっていたことは何かありましたか?
荻野:小学生の頃は、「ガンプラ(ガンダムのプラモデル)」作りにひたすら没頭していましたね。あとは、近所の幼馴染たちと、公園でサッカーをするのも好きでしたよ。
ただ、今の自分に繋がっているなと感じる原体験が一つあります。それは、当時から私は無意識のうちに「メタ認知(客観的な視点)」や「人間観察」が大好きだったということです。
当時はもちろんメタ認知なんていう難しい言葉は知りませんでしたが、一歩引いたところから教室の全員を俯瞰して観察するのが、妙にしっくりきていたんですね。だから、全員の様子が見える一番後ろの端っこの席が、私にとっての特等席でした。
堂上:僕は「Wellulu」を通じてこれまで200人以上の第一線で活躍されるウェルビーイングなビジネスリーダーと対談してきましたが、自らを一歩引いたところから客観的に見つめる「もう一人の自分」を持っていらっしゃいました。
サッカーの世界でも、ピッチ全体の動きを上空から俯瞰する「鳥の目」と、現場の局所的なディテールを捉える「虫の目」の両方を持つことが重要とされます。荻野さんはまさにその「鳥の目」を、少年時代の人間観察を通じて自然と磨かれていたのですね。
直感やひらめきはどこから生まれる? 身体感覚を研ぎ澄ます重要性

荻野:マインドフルネスのトレーニングにおいても、実は「3つの基本アプローチ」があります。1点に意識を集中させる「集中瞑想」のほかに、全体を俯瞰する力をトレーニングする「観察瞑想」、そして自分の身体の感覚をスキャンしていく「ボディスキャン」です。
堂上:それらの3つのアプローチは、どのように使い分けるのでしょうか?
荻野:それぞれ明確に目的が異なります。
先ほど「意思決定の最後のひと押しは感情が下している」というお話をしました。エモーショナル・インテリジェンス(感情知性)の本質というのは、実は言語的な脳のロジックではなく、私たちの『身体感覚』に宿っているのです。
直感やひらめき、あるいは「虫の知らせ」と呼ばれるものは、脳の非常に深い、原始的な領域(扁桃体や大脳基底核(だいのうきていかく))のネットワークから出力されていると言われています。これらの領域は、論理的な「言語」を直接理解しません。そのため、言葉の代わりに、動悸や肌の感覚といった『身体感覚』のシグナルを介して、「これはおかしいぞ」「絶対にこっちの道に進むべきだ」という決定的な直感を私たちの意識に教えてくれるのです。
しかし、例えばコンサルティング会社社員であった時の私のように、朝から晩まで論理的思考(左脳的なロジック)ばかりを過度に使用する環境にいると、脳のノイズが多くなる。そうすると、身体が発してくれている大切な直感のシグナルに気づけなくなってしまい、直感が退化していっているように感じます。そのため、そうしたビジネスパーソンほど、「ボディスキャン」の実践を通じて、自分の身体感覚のセンサーを繊細に研ぎ澄ませ、直感力を高める必要があるのです。
堂上:よくわかります! 先日「Wellulu」の記事でもご紹介した、北海道の牧場で馬と対話するリーダーシッププログラム「ホースローグ」のボディスキャンのリアルな体験とも深くつながりました。
馬のわずかな耳の動き、筋肉の緊張、呼吸を繊細に観察するプロセスのなかで、大きな気づきがありました。それは「あぁ、自分は日頃、いかに目の前のリアルな身体感覚を無視して、頭のなかのロジックだけで生き急いでいたか」という深い自己認識と、アテンション(注意)の置き方に対する新しい視点です。荻野さんも、ホースローグに行かれたそうですね。
荻野:馬という存在は一切の嘘を見抜き、私たちの内なる身体感覚を鏡のように映し出してくれます。まさにボディスキャンそのものですね。
堂上:羨ましい! 僕もまたすぐにでも行きたくなってきました!
一呼吸がもたらす「選ぶ自由」。気づきの連続で対人関係は変わる
堂上:荻野さんは、今どのような活動をしているときに最もワクワクや情熱を感じられますか?
荻野:自分が一番楽しいと感じるのは、やはりGoogleのプログラム「Search Inside Yourself(SIY)」を皆さんにお伝えしたり、大学院で授業をしたりする時間ですね。受講生の皆さんから「これまでの人生のなかで、こんなにたくさんの気づきに出会えた時間はありませんでした」とか「自分自身の新しい側面に気づきました」と言っていただけることが何よりの原動力です。
実際に「SIY」を導入している企業の中には、受講後に目に見えて行動が変わっていく人がたくさんいます。そういった変化を目の当たりにできることに、深いやりがいを感じています。
堂上:マインドフルネスを取り入れることで、他者とのコミュニケーションのあり方そのものが変わっていくのでしょうか?
荻野:真剣に実践していけば、着実に変わっていく実感があります。なぜなら、自分を取り巻く環境や目の前の出来事に対する「気づき」の質が根底から変化するからです。
私たちは普段、特に対人コミュニケーションにおいて、衝動的なリアクションをしてしまいがちです。たとえば、友人からの心ないLINEやメッセージが届いたとき、カッとなって感情のままに言葉を打ち返してしまうことは、誰しも経験があるのではないでしょうか。
しかし、そこで「今、自分はイライラしているな」と一歩引いて自分の状態に気づくことができれば、そこに一呼吸を置く余白が生まれます。その気づきの連続のなかで、感情に振り回されることなく、相手とのコミュニケーションを能動的に、より良いかたちへアップデートしていけるようになります。

堂上:人生や人間関係を豊かにするうえで、マインドフルネスはまさに強固な土台なのですね。僕自身の日常で言えば、子どもが宿題をやらずにYouTubeばかり見ているとき、ついカッとなって反射的に注意してしまう場面があります。しかし、そこで「今、自分は子どもに対してイライラしているな」と認識できれば、自ずと伝え方やアプローチが変わりそうです。
荻野:私が尊敬している大谷翔平選手の象徴的なエピソードを紹介させてください。
先日、1番バッターとして試合に出場した際、インコースを攻められてデッドボール(死球)を受け、スタジアム全体が一時騒然とする場面がありました。死球を受けると、激痛と不条理さからピッチャーに向かって感情的に怒りを露わにする選手も少なくありません。
しかしあのとき、大谷選手は、まず自分の右手に大きな怪我がないかを冷静に確認したあと、すぐに一塁に向かいました。
客観的に見れば、感情を爆発させてもおかしくない状況です。もしかしたら、彼自身のなかでも一瞬、カッと湧き上がるものがあったかもしれません。それでも大谷選手は、そんな自分の感情の動きに一瞬で気づき、自らを完全にコントロールしていました。
彼が世界中から深く愛されているのは、こうした一瞬一瞬の仕草やマインドのあり方が卓越しているからなのだろうと思います。
堂上:「これは誰もがイラつくだろうな」という瞬間であっても、大谷選手はいつも寛容で、次の一歩に集中していますよね。そこにはまさに、自分のアテンションがどこに向いているかを客観的に知る、マインドフルな状態が影響しているのでしょうね。
最後に、荻野さんが理想とされる未来の社会像についても、ぜひ教えてください。
荻野:「ウェルビーイング」という考え方や生き方が、日常生活のなかに当たり前に浸透していて、もはやその言葉をあえて使う必要すらなくなるような世界が理想ですね。そのためにも、学校教育の段階からマインドフルネスやウェルビーイングが必須の教養になっていくと素晴らしいなと思います。
実際に、アメリカのニューヨーク市の小中学校では、毎朝2〜5分間のマインドフルネスの呼吸法を取り入れていた時期がありました。こうした、自分自身の内側と静かに向き合う仕組みが日本でも増えていくと嬉しいです。
堂上:僕はよく周囲から「呼吸が早く、生き急いでいる」と指摘されることがあります。振り返れば、20代、30代はただがむしゃらに仕事に追われるばかりで、自分自身に向き合う時間など1秒もありませんでした。しかし、今こうしてウェルビーイングを探求するようになって、自らをクリアに整える時間の重要性を心から実感しています。
荻野:特にこれからの時代は、AIの進化によって従来の定型業務やデータ処理などの多くの仕事が急速に代替されていきます。
たとえば現在、大手のグローバルコンサルティングファームなどでも、若手社員が行っていたような業務の多くが、すでにAIシステムへと急速に切り替わりつつあるというシビアな現実があります。
そのような時代を私たちが生き抜くうえで、最後に勝負すべきなのは、人間にしか決して代替できない「本来の創造性」や「人や場をまとめていく人間力」です。
だからこそ、自らの内側にアプローチする感情知性(EQ)を高め、マインドフルネスを毎日の確かな習慣にしていくことが、これからの時代を生き抜く戦略として必要になると考えています。
堂上:僕らもこれからの大学の講義では、まず始める前に全員で1分間のマインドフルネス呼吸法を実践し、脳のメモリをバシッと最適化してからスタートすることに決めます!
荻野さん、今日はこれからの時代を生きる若者たち、そしてすべてのビジネスリーダーにとって、希望となる素晴らしいお話を本当にありがとうございました。
堂上編集長後記:
荻野さんとは、息子の中学校の集まりで偶然マインドフルネスを体験したことがきっかけで出会った。荻野さんの考えているマインドフルネスは、すべてのリーダーやすべての経営者が実践として身に付けるべき要素だと気づき、大学でお話をしていただくことにした。
僕自身、非常に学びがあり、荻野さんの生き方が格好いいと感じた。常に観察し内省して、自分と対話し、自分と向き合う状況を作り続けるマインドフルネスは、ウェルビーイングなライフスタイルにおいて、とっても重要な要素になることがわかった。
日々の生活の中で、ちょっと自分の呼吸だけに意識を向けることをやり続けるだけで、人生が変わっていくのだろう。僕はまだまだ寛容になれていない。僕はまだまだ自分と向き合うことができていない。そんな状態でも、まずは知って、行動してみることから始めてみることにしようじゃないか。
素敵な時間をありがとうございました。新書の発表もあり楽しみです。
荻野 淳也さんの新作著書はこちら
『仕事人生を後悔しない メンタルづくりの教科書』(NewsPicksパブリッシング/2026年)


慶應義塾大学卒業後、外資系コンサルティング会社やスタートアップ企業2社で経営企画室長、管理本部長、事業責任者を経て2008年に起業。2013年MiLIを設立。大学院2校でリーダーシップのクラスを担当。大手企業からスタートアップ企業まで、リーダーシップ開発と組織変革のプログラムを提供している。リーダーと組織の本質的課題にフォーカスし、その変容を支援することで、個人の可能性開花と世界の健全な変容をパーパスとする。Googleで開発された「Search Inside Yourself(サーチ・インサイド・ユアセルフ)」の認定講師。著書・監修書籍に『マインドフルネスが最高の人材とチームをつくる』『サーチ・インサイド・ユアセルフ』ほか多数。最新刊は2026年8月出版『仕事人生を後悔しない メンタルづくりの教科書』。
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