
有酸素運動と筋トレの組み合わせにはさまざまな意見があるが、正しく組み合わせることで、それぞれの効果を高め合う相乗効果が期待できて、より効果的な身体づくりを目指せる。
本記事では、有酸素運動と筋トレを組み合わせるメリット、目的別の最適な順番や時間配分、組み合わせる際の注意点などを解説。組み合わせの事例も紹介するので、ぜひ自分の目標に合わせてメニューを見直してみよう。
この記事の監修者

青山 剛さん
トライアスロン元日本代表/プロフェッショナルコーチ
有酸素運動と筋トレは組み合わせた方がいい!
有酸素運動と筋トレは、それぞれが相乗効果をもたらすため、目的に応じて適切に組み合わせよう。一方、いきなり有酸素運動や筋トレをしても、パフォーマンスが上がり切らないため、必ずストレッチ(静的ストレッチ)やスイッチ(動的ストレッチ)も一緒に組み合わせること。
ストレッチをして筋肉を伸ばして緩めることで、身体が柔軟になり、その後に続くさまざまな運動の動作に対応できるようになる。また代謝が上がるので、運動の際に脂肪が燃焼しやすくなる。
スイッチの役割は、使う筋肉に動きをつけて「軽い筋肉痛」を起こすこと。パフォーマンスアップでもダイエットでも筋肉が重要になるため、スイッチで筋肉に刺激を与えることで、筋肉の動員率を上げることができる。
【筋トレでのパフォーマンスを上げたい場合:順番】
- ストレッチ
- スイッチ(軽めの有酸素運動)
- ストレングス(筋トレ)
【有酸素運動でのパフォーマンスを上げたい場合:順番】
- ストレッチ
- スイッチ(軽めの筋トレ)
- ストレングス(ジョギングやランニングなどの有酸素運動)
自身の目的に応じてスイッチの中身を変えて、運動のパフォーマンスを最大化しよう。

マネするだけでOK!有酸素運動と筋トレの組み合わせ方
30分運動をおこなう場合は、ストレッチ10分・スイッチ10分・ストレングス10分の時間配分が理想的。特別な競技目標がない場合は、仕事や日常生活に支障のない範囲での運動が理想的。
有酸素運動が目的の「ストレッチ→スイッチ→ストレングス(有酸素運動)」の日と、筋トレ目的の「ストレッチ→スイッチ→ストレングス(筋肥大目的の筋トレ)」の日を設けるなど、バランスよく組み合わせるのがおすすめ。
参考事例は以下のとおり。
- 目的:健康的な身体を維持したい/常に元気な身体でいたい
- 年代:20代~30代
- 組み合わせ
筋肥大目的:ストレッチ → スイッチ(軽めの有酸素運動)→ ストレングス(筋トレ)
脂肪燃焼目的:ストレッチ → スイッチ(軽めの筋トレ)→ ストレングス(有酸素運動) - 曜日
筋肥大目的:月・金
脂肪燃焼目的:水・日 - 頻度:週2~4回
上記の例であれば、「筋肥大目的」と「脂肪燃焼」のプログラムを2回ずつおこない週4回の頻度になる。週1回で「現状維持」、週2回で「変化」、週3回以上で「劇的な変化」が期待できるので、最低でも各組合せを1回ずつ実施して週2回、より効果を実感したい場合は各組合せを2回ずつ実施して週4回を目指そう。
スイッチ運動は1種目1分以内で1セットを目安とし、複数の種目を組み合わせて10分間のプログラムを構成しよう。ただし、これは最低限の内容であり、より効果を求める場合は3〜4セット実施するべき。
スイッチの中でも重要な種目として「腹筋運動」がある。腹筋が弱い場合、有酸素運動の際に足のみに頼って走ってしまう傾向があり、ケガのリスクが上がるだけではなく、女性の場合は足が太くなる可能性も。また、片足立ちなどバランス系のスイッチ運動も効果的。

「ストレッチ」「スイッチ」のおすすめメニューを紹介しているので、さっそく実践したい人はチェックしてみよう。
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有酸素運動と筋トレを組み合わせるメリット
有酸素運動と筋トレを組み合わせることで以下のメリットがある。
- 正しいフォームになり体脂肪を減らしやすくなる
- バランスのよい身体づくりができる
正しいフォームになり体脂肪を減らしやすくなる
筋トレで基礎代謝を上げながら、有酸素運動で直接的な脂肪燃焼を促進することで、より効率的な減量が可能となる。筋トレ後の有酸素運動は、脂肪をエネルギー源として優先的に使用するため、高い減量効果も期待できる。
筋肉量を維持しながら減量できるため、リバウンドしにくい身体づくりが可能。とくに、下半身の筋トレと有酸素運動を組み合わせることで、より効果的な脂肪燃焼を実現できる。
また、筋トレで筋肉や神経へ適切な刺激を与えることで、有酸素運動の際に自然と正しいフォームになりやすい。とくにお腹・お尻・股関節周りの軽い筋トレは、正しいフォームを導くために必要となる。

正しいフォームでおこなうことで、有酸素運動による脂肪燃焼効率も高まります。一方、ただ走るだけでは、望ましい体型への変化は難しいため、ストレッチと軽い筋トレによる「下ごしらえ」(運動をするための身体の準備)が必要です。有酸素運動をおこなう際は、ストレッチと筋トレを組み合わせましょう。
走るときのフォームの自己チェック方法として、腕の動きに注目してみてください。ショーウインドウなどに映る自分の姿を見て、腕と身体の間に三角形の隙間ができていればOKです。この隙間ができない場合は、肩甲骨周りの硬さが原因の可能性が高いので、ストレッチを積極的におこないましょう。
バランスのよい身体づくりができる
有酸素運動による持久力向上と、筋トレによる筋力アップを同時に実現することで、見た目の引き締まりだけでなく、実用的な体力も手に入れることができる。
さらに、異なる種類の運動を取り入れることで、運動不足になりがちな筋肉まで満遍なく鍛えることができる。ランニングは下半身・水泳は上半身など、有酸素運動では偏った筋肉を使うケースもあるため、様々な筋トレをおこない筋肉に軽い刺激を与えて身体全体のバランスを保つようにしよう。
有酸素運動と筋トレの効果の違い
- 有酸素運動:持久力向上と脂肪燃焼効果
- 筋トレ:筋肥大と基礎代謝アップ
有酸素運動:持久力向上と脂肪燃焼効果
有酸素運動は、心肺機能を強化と持久力の向上に効果的。運動開始から20分程度で脂肪燃焼が本格化し、そのあとの運動で効率的な減量効果が期待できる。
高い脂肪燃焼効果を得るためには、呼吸が口呼吸になるほどの運動強度が目安。ウォーキングをしていても口呼吸が必要でない状態は、脂肪燃焼には不十分な運動強度。脂肪燃焼には、口を開けたくなる程度の早歩きが適している。
階段の上り下りや坂道を取り入れたウォーキングなど、やや強度の高い運動を積極的に取り入れることが効果的。
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筋トレ:筋肥大と基礎代謝アップ
筋トレは、筋肉に負荷をかけることで筋肉量を増やし、基礎代謝を向上させる効果がある。筋肉量が増加することで、安静時のカロリー消費量も増加し、痩せやすい体質へと改善される。
また、筋力アップにより日常動作が楽になり、活動量の増加にもつながる。適切な重量と回数でおこなうことで、引き締まった身体づくりが可能となる。筋肉量増加による代謝改善を目指せる。
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【目的別】有酸素運動と筋トレの適切な順番
有酸素運動と筋トレを組み合わせる際は、運動の目的によって最適な順番が異なる。自分の運動の目的に合わせて、最適なやり方で取り組もう。
- ダイエット・健康維持を目指す:筋トレ → 有酸素運動
- 筋肥大を目指す:有酸素運動 → 筋トレ

ダイエット・健康維持を目指す:筋トレ → 有酸素運動
筋トレ(スイッチ)を先におこなうことで、体内の糖質を消費して、そのあとの有酸素運動で脂肪燃焼を促進できる。筋トレで使用した筋肉に血液が集中している状態で有酸素運動をおこなうことで、より効率的な脂肪分解が期待できる。
ただし、筋トレは10分~20分程度に抑え、疲労で有酸素運動のパフォーマンスが低下しないよう注意が必要。有酸素運動は20~40分程度おこなおう。

筋肥大を目指す:有酸素運動 → 筋トレ
筋肥大を目指す場合、軽い有酸素運動をおこない、そのあとに本格的な筋トレに移行するのが効果的。体温が上昇し、筋肉が柔軟な状態で筋トレをおこなうことで、ケガのリスクを軽減できる。
有酸素運動は10分程度の軽いものにとどめ、エネルギーを温存することが重要。そのあとの筋トレに集中することで、より効果的に筋肉の成長を促すことができる。
本格的な筋力トレーニングを目指す場合は、12回を3〜4セット程度の負荷が必要となる。この場合「ストレッチ→軽い有酸素運動→スイッチ→筋トレ(ストレングス)」で、筋トレを補強として実施することもおすすめ。筋トレ(ストレングス)でベンチプレスなどの本格的な筋肥大のトレーニングをする場合、スイッチはダンベルを使った軽いトレーニングに留めておこう。

【目的別】有酸素運動と筋トレの最適な時間配分
有酸素運動と筋トレを組み合わせる際の時間配分も、運動の目的によって目安が異なる。以下を参考に、最適な時間配分を計算してみよう。
- ダイエット・健康維持を目指す:有酸素運動を多めに
- 筋肥大を目指す:筋トレを多めに
ダイエット・健康維持を目指す:有酸素運動を多めに
1時間の運動時間を確保するなら、ストレッチ10分、スイッチ(筋トレ)10分、有酸素運動40分の配分が効果的。
ダイエット・健康維持を目指す場合は、有酸素運動を多めに設定することで、継続的な脂肪燃焼が可能になる。また、過度な筋トレを避けることで、翌日の疲労を軽減して、定期的な運動の継続ができるようになる。
筋肥大を目指す:筋トレを多めに
筋肥大を目指すなら、ストレッチ10分・スイッチ(軽めの有酸素運動)10分・筋トレに40分を割り当てるのが効果的。筋トレを重点的におこなうことで、効率的な筋肉の成長を促すことができる。
有酸素運動は、ウォームアップとして位置づけ、軽めの強度でおこなうことが重要。過度な有酸素運動は筋肉の成長を妨げる可能性があるため、時間と強度を適切に管理する必要がある。
有酸素運動と筋トレの組み合わせる際の注意点
効率よく効果を出すためにも、有酸素運動と筋トレを組み合わせておこなう場合は、以下のポイントを意識してみよう。
- 同じ部位の筋肉を連続して鍛えない
- 無理なく長期間続けられるメニューで取り組む
- 自宅や室内でおこなえるメニューを組む
同じ部位の筋肉を連続して鍛えない
同じ部位を連続して鍛えると過度な負担になるため、ケガや筋肉の回復を遅らせてしまう可能性がある。上半身と下半身を交互に鍛えるなど、部位をずらしながら運動をおこなうことが重要。
とくに、大きな筋肉群を使う運動のあとは、十分な休息を設けること。週単位でのスケジュールを組み、各部位に適切な回復時間を確保することで、効果的な筋力アップが可能となる。
無理なく長期間続けられるメニューで取り組む
急激に運動強度を上げると、モチベーションの低下やケガのリスクを高める原因となる。初めは軽めの負荷から始め、徐々に強度を上げていくことで、安全で継続的な運動習慣を身につけることができる。
また、無理のない範囲で楽しみながらおこなえる運動を選ぶことも重要。音楽を聴きながらの運動(イヤホンはなるべく避ける)や、友人との共同トレーニングなど、継続のモチベーションを保つ工夫を取り入れよう。
自宅や室内でおこなえるメニューを組む
自宅でできる運動を中心にメニューを組むことで、天候や時間に左右されない運動習慣を確立できる。
簡単にできるストレッチと自重のスイッチを組み合わせることで、自宅にいる時間をフィットネスの有効な時間として活用できる。
運動の習慣をつけるためには、まずは今までの習慣を変えることが必要。毎日10分ストレッチをおこなうことを目標にしてみよう。

有酸素運動と筋トレに関するQ&A
どれくらい続けると効果を得られる?
A:効果を得るためには、最低でも3ヶ月の継続が必要。

人の身体の変化は、一般的に3ヶ月(12週間)で1サイクルを迎えます。3ヶ月以内でも効果の手応えは感じられますが、運動による持続的な効果を実感するためには、最低でも3ヶ月の継続が必要です。
2ヶ月程度の短期でも身体は変化しますが、厳しい食事制限などをともなう場合が多く、継続が困難でリバウンドのリスクも高くなってしまいます。長期的に継続しやすい食生活を維持しながら、3ヵ月間を目安に目標を立てるのがおすすめです。
筋トレの休息日に有酸素運動をしてもよい?
A:休息日に有酸素運動をしてもよいが、運動の目的に合わせて適切に組み合わせることが重要。

運動の組み合わせ方は、運動の目的によって異なります。基本的な組み合わせとしては「ストレッチ→スイッチ(軽い筋トレ)→有酸素運動」の流れが推奨されますが、筋肥大を目指す場合は、ストレッチとスイッチを十分におこなったあとに筋トレを実施する方が効果的です。
しっかりと準備運動をおこなうことで、より大きな可動域での筋トレが可能になります。休息日に有酸素運動を実施してもよいですが、運動の目的を明確にしたうえで、適切な順番と種目の組み合わせを意識しましょう。
1974年東京生まれ。千葉県立八千代高校から日本体育大学に進み、トライアスロン競技をスタート。在学中よりプロ活動を開始して世界中を転戦。25歳からコーチに転身し、2004年アテネ五輪では、女子トライアスロン選手を日本代表に送り出した。
その後、パーソナルコーチングシステム「TeamAOYAMA 」を立ち上げ、アスリートから一般社会人、学生、子ども、シニア、タレント、財界人などへ幅広く「正しい走り方」を中心に運動指導を行っている。
現在は企業での健康経営や健康寿命延伸セミナーのオファーが多く、子どもの発育発達を促進する「スイッチマン体操教室」も全国の学校や保育園で開催している。著書は度々部門別ベストセラーを獲得中。詳しくは青山剛公式HPで紹介。