
寝室は、一日を始め、一日を終える特別な場所。気持ちよく一日をスタートするためにも、睡眠の質を高めるための機能性はもちろん、デザイン性にもこだわりたいもの。今回は、上質な素材がもたらす機能性と洗練されたファッション性を兼ね備えたラグジュアリーハウスリネンブランド「イヴドローム」へ。イブ・ドローム・ジャパン株式会社の岡崎さんと夏目さんに、ブランドの歴史や素材へのこだわり、寝室をコーディネートする際の寝具選びのアドバイスを伺った。
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眠るのがもっと好きになる!素材×織り×デザインでつくる睡眠時間
睡眠の質に直結する“素材の質”
──上質な綿をつかったベッドリネンが「イヴドローム」の特徴ですが、“素材の質”はどのように寝心地に影響するのでしょうか?
岡崎さん:「イヴドローム」の製品で使用されている「超長綿(ちょうちょうめん)」の特徴の一つとして「軽さ」が挙げられますが、これは寝返りのしやすさに直結します。布団が重く寝返りが打ちにくいと、覚醒してしまう原因にもなりますので、睡眠環境を整えるにあたり、寝返りのしやすさも大切な要素です。
また、吸水性と速乾性に優れている点も寝心地に大きく影響します。超長綿は、一般的な綿よりも表面積が大きいため、吸水性も高いという特徴があります。さらに、コーミングによって不純物を取り除き、繊維の隙間がきれいに整えられることによって、通気性も向上します。就寝中の汗を効率よく吸収・発散してくれるので、睡眠時の布団の中の湿度と温度を快適に保ちやすく、夏場でも蒸れにくいんですよ。
── 上質な素材は、やはり機能性にも優れているのですね。
夏目さん:そうですね。また、上質なものと聞いて高価なイメージを抱く方も多いかと思いますが、コーミングされた綿糸は、生地が痩せにくく、耐久性も強いため長持ちするんです。
実際に、10年以上前に買ったシーツや掛け布団カバーを使い続けていたり、親が使っていたものを子や孫へ引き継いで使われたりする方もいらっしゃいます。気に入ったものを長く使い続けられるという点も、上質な素材の魅力の一つではないかと思います。
── 今後シーツや掛け布団カバーを選ぶ際は素材の質にも目を向けてみようと思います。
織り方によって異なる“肌触り”
──「素材の品質」のほか、寝具選びではどのような点を意識すればよいでしょうか?
夏目さん:質以外では、やはり「肌触り」も重視するとよいですね。イヴドロームは織物工場としてのルーツを持っていることもあり、生地の織り方には多様な工夫を凝らしています。ベッドリネンも複数の織り方で製造されており、同じ綿を使っていても、織り方の違いによって肌触りの特徴が大きく異なるんです。
最近はインターネットも普及し、実物をみなくても商品を購入することができる時代ではありますが、肌触りに関しては実際に触ってみなければ、自分の好みのものかわかりません。店舗で手に取って自分が心地よいと感じるものを選ぶのがおすすめです。
織り方ごとの特徴については、弊社の商品をお見せしながら詳しくご紹介しますね。
── 織り方の違いによる触り心地の差を意識したことがなかったので、とても新鮮です。
好みの“デザイン”で、寝室を特別な空間に
──こんなにおしゃれな商品が揃っていると、デザインでもどれにしようか悩んでしまいそうですね。
夏目さん:ありがとうございます。寝具選びにおいて、素材、肌触りが重要とお伝えしましたが、「デザイン」も大切な要素かと思います。気に入った柄を選ぶことで、寝室がより特別な空間になりますよね。寝室は1日をはじめ、1日を終える空間ですから、自分好みの環境に整えるだけでも、1日の気分が上がりますよ。
玄関やリビングなど、人の目に止まりやすい空間をこだわる方は多いかと思いますが、自分のために寝室を整えることで、心の余裕も生まれます。
イブドロームでは毎シーズン多数のデザインが登場しますので、きっと好みのものが見つかるはずですよ。
── ベッドリネンを選ぶ際は、素材、肌触り、デザインに注目することで、寝心地もよく、気分も上がる睡眠環境を整えることができそうですね。素敵なアドバイスをありがとうございます。
直接触れて体感したい織りによって異なる肌触り
── ベッドリネン選びで重要な要素の一つである「肌触り」について、もう少し詳しく教えてください。実際に織り方の違う商品を触り比べてみると、こんなにも肌触りが違うものなのですね。
夏目さん:そうなんです。いろいろなベッドリネンに触れたり、素材を意識していないと、肌触りの違いと聞いても、あまりピンとこないかもしれませんが、織り方が違うだけでも、こんなに肌触りが異なるんです。
── どれも触り心地がよいので、一つしか触っていなければ、すぐに「これだ!」と決めてしまいそうです。ですが、こうやって触り比べてみると、心地よさのタイプが違うことがわかりました。人によって好みが分かれそうですね。
夏目さん:ありがとうございます。今はオンラインでも商品を購入できる時代ですが、ベッドリネンはぜひ店舗で実物を触って選んでいただけると嬉しいです。
イブドロームは織物工房から歴史がはじまっていることもあり、生地の織り方にも多様な工夫があります。ベッドリネンは、大きく分けるとサテン、ダマスク、パーケル(平織り)の3種類です。
サテンはとくになめらかさを追求したもので、光沢のあるすべすべとした肌触りです。
ダマスクは模様を織り入れた光沢感が特徴で、肌触りはしっとり。ダマスクの中でもジャカードと呼ばれる織り方は、模様を立体的に見せる技術を採用しています。
パーケル(平織り)はハリ感のあるさらっとした肌触りで、緻密に織られているため、深く洗練されたマットな白色に仕上がるのも特徴です。織りの技術が進化し、従来のパーケルよりもさらに緻密に織り、薄く仕上げたバティストも登場しました。イヴドロームで一番新しく、軽い生地です。
また、すべての生地に共通して、「スレッドカウント(打ち込み本数)」に頼らず、素材そのものの質の高さで滑らかさを実現している点もイヴドロームの生地の大きな特徴です。この点は長年の経験と知識がなければできない部分です。
── 織物と糸を古くから研究し、質を追求され続けているからこそ、生み出すことのできる心地よさなんですね。どの肌触りも心地よくて、どれか一つに決めるのも悩んでしまいますね。
夏目さん:ありがとうございます。綿の質へのこだわりは変わりませんので、吸湿・放湿性や耐久性に優れている特徴はどの織り方も同じですが、機能面に少し違いがございます。
たとえば、ジャカード織りは、生地の重さを若干感じる程身体に沿うドレープ性の高さから、リネンと身体の間の空間が小さくなり、布団の中の暖かさを保ってくれます。
そして、一番軽い生地とご紹介したバティストは、ジャカード織りとは反対に、肌離れに非常に優れています。
── 季節に応じて異なる織りのリネンを使い分けるのもいいアイデアですね。
寝室に柄ものをおしゃれに取り入れるコツ
── 季節ごとに使い分けるとなると、夏と冬で違うデザインのリネンを選ぶことで、寝室に季節感を演出できそうですね。
岡崎さん:そうですね。イヴドロームでは、春夏コレクションと秋冬コレクションで各シーズン6〜8柄ほど、新しいデザインを発表しています。まるでアパレル商品のようにベッドリネンを楽しむことができるのは、ベッドリネンを販売されている会社の中でも、イヴドロームならではの特徴です。
デザインは、フランス人デザイナーのローランスさんが手がけています。すべての柄は彼女が手描きした水彩画をもとにして作られているんです。生地への印刷には、発色が美しく奥行きを出しやすい「シルクスクリーン」を用いており、水彩画らしい繊細さが表現されています。デザインごとにストーリーがあり、季節ごとの変化も楽しんでいただけますよ。
── 水彩画をもとにプリントされたデザインなんですね。色合いもとても美しいです。今回用意してくださった商品は、花や植物など自然を感じるデザインが多い印象を受けますね。
岡崎さん:そうですね。植物や動物をモチーフにしたデザインは多く販売されています。ですが、それだけではなく、18世紀のフランスのタペストリーやベルサイユ宮殿の装飾が題材になることもあるなど、デザインのジャンルも多岐に渡ります。
とくに今シーズンは、ベルサイユ市とのコラボレーションで、宮殿内で有名なスポットのひとつである「鏡の間」をモチーフにしたものや、祝祭時に打ち上げられた「花火」をイメージしたコレクションも登場しました。一つひとつの柄にストーリーがありますので、それを知ると製品への愛着もより一層深まると思います。
── 本当ですね。デザインが生まれたストーリーを知ることで、さらに柄を楽しむことができますね。
差し色を活用!柄ものアイテムで色のバランスを取るコツ
──柄ものリネンを取り入れて、寝室をおしゃれにしてみたいのですが、リネンを選ぶ際のコーディネートのアドバイスなどはありますか?
夏目さん:柄ものは差し色を活かしつつ、お部屋全体の雰囲気を統一するのがポイントです。たとえば、掛け布団カバーにプリントされた花柄の中にあるピンクと同じ色のシーツを選ぶと、女性らしい柔らかい印象になります。一方で、同じ柄でもベージュと同じ色のシーツにすると、落ち着いた雰囲気になります。柄の中の色を活用すると簡単に色のバランスを取ることができますよ。
また、春夏には明るい色味、秋冬には温かみのある色合いを選んでみるなど、季節感のある色を意識したコーディネートなどもおすすめです。
── 掛け布団カバーや枕カバー、シーツなどさまざまな商品を販売されていらっしゃいますが、まずはじめに揃えるとしたら、どのアイテムがおすすめでしょうか?
岡崎さん:ぜひ最初は、掛け布団カバーとシーツのセットを試してみてほしいです。掛け布団カバーはお部屋の印象を大きく変えるアイテムですし、シーツは肌に直接触れるアイテムですので素材のよさをダイレクトに体感いただけます。肌触りのよいシーツとカバーに包まれることで、今までにない寝心地に驚かれることと思います。
まずは一つだけ、ということでしたら、身体に触れる部分が一番大きいシーツから揃えてみるのがおすすめです。
また、イヴドロームでは、タオルやバスローブ、バスマット、クッションなど、寝具以外のアイテムも豊富に揃えているため、寝室だけでなくリビングや洗面所なども含めてコーディネートを楽しんでいただけます。お家全体を居心地のよいお品、好みのデザインで整えることで、生活全体をアップグレードできますよ。
長年こだわりつづけた「上質な綿」の魅力とは?
── イヴドロームさんは、非常に長い歴史をお持ちだと伺っています。まずはブランドの歩みについて詳しくお聞かせいただけますか?
岡崎さん:1845年にフランス北部の繊維産業が盛んだった地域で誕生しました。リネン織物の工房として創業しましたが、約50年後には綿の繊維を糸に加工する紡績工場(ぼうせきこうじょう)も設立し、代々家族経営で事業を継承しています。現在は6代目の兄弟が引き継いでおり、織物や糸を作り続けて約180年の歴史を迎えます。
イヴドロームのブランドとしてベッドリネンコレクションの展開がはじめられたのは、彼らのお父さまである5代目が事業を引き継いだ20世紀初頭のことです。当時、フランスのベッドリネンは白一色が主流でしたが、そこにファッション性やトレンドを取り入れ、アパレルのように“春夏コレクション”“秋冬のコレクション”といった形式でデビューさせたのです。ベッドリネンにこのようなスタイルを取り入れたのはイブドロームが初めてで、非常に革新的な取り組みとして注目を集めました。
コレクション形式でのベッドリネンの展開は、イヴドロームブランドの象徴的なスタイルとなり、現在も続いています。
── こちらに並んでいる商品も、華やかなデザインが目を惹きますね。触り心地もとてもよいですが、素材にはどのようなこだわりを持たれていらっしゃいますか?
岡崎さん:ありがとうございます。イヴドロームでは“一度使うとほかのベッドリネンへは戻れない”と思っていただける肌触り、心地よさを追求して商品作りをしています。綿製品は、すべてオーガニックコットンを使用し、綿の質にはとくにこだわっているんです。
── 質のよい綿といえば「エジプト綿」など、過去に耳にしたことがあります。産地へのこだわりなどはございますか?
岡崎さん:日本では、過去の販促などの影響もあり、高級な綿と聞くと「エジプト綿」を思い浮かべる方がとても多いようです。結論から申し上げると、イヴドロームではとくに産地にこだわってはいません。
綿がとれる綿花は、農作物として自然の中で育つものですので、天気や温度などのいろいろな要素が影響します。そのため、同じ産地であったとしても、そのシーズンによって質には差がでてしまうのです。弊社は約180年近く綿に関わる事業をおこなっていますので、綿の仕入れルートもたくさんの選択肢があります。どこかの産地のものにこだわるのではなく、そのシーズンで一番上質な綿を仕入れることにこだわりをもっています。
── 質へのこだわりがよく伝わりました。イヴドロームさんが厳選されている“上質な綿”には、具体的にどのような特徴があるのでしょうか?
岡崎さん:こちらが私たちの商品に用いられている本物の綿です。ぜひ実際に触ってみてください。
イヴドロームでは「超長綿(ちょうちょうめん)」と呼ばれる、一般的な綿よりも繊維の長い綿を厳選して使っています。短い繊維をよりあわせて作られた糸は、摩擦によって毛羽(けば)が立ち上がりやすく、毛玉や糸のほつれなどの原因になります。繊維が長い綿で作った糸は、耐久性に優れています。
── こんなにもツルツルしているんですね! 滑らかさに驚きました。想像したよりも軽い印象を受けました。
岡崎さん:ありがとうございます。おっしゃってくださったように軽さも特徴の一つです。
また、この綿は「コーミング」という特別な工程を経て作られています。簡単に言うと、髪の毛をクシでとかすように、繊維をクシで整えるような作業のことで、この工程をはさむことで、短い繊維や不純物が取り除かれ、繊維がきれいに整えられます。綿に光沢が増し、滑らかで毛羽立ちが少ない仕上がりになるんですよ。シルクのような光沢感も特徴です。
── おっしゃる通り、光沢も美しいですね。ずっと触っていたくなる心地よさです。
岡崎さん:生地1インチ(=2.54cm)四方あたりに使われる糸の合計数は「スレッドカウント(打ち込み本数)」という値で示されます。スレッドカウントの数値が高い、つまり糸が多く使われているほど、織りの密度が高くなりますので、一般的には滑らかな生地になるとされています。
ですが、イヴドロームではそもそも「超長綿」という質の高い素材を使っていますので、スレッドカウント数にこだわらなくても、滑らかな触り心地を実現することができます。
こうして手で触るだけでも、十分に心地よさを感じていただいていると思いますが、この素材を使ったシーツと掛け布団で身体全体が包まれると、極上の寝心地なんです。“一度使うとほかのベッドリネンへは戻れない”と思わせる、上質な綿ならではの心地よさを身を持ってご体感いただけると思いますよ。
織り方によるタオルの肌触りの違い
── ベッドリネン以外にもたくさんの商品を展開されていますね。タオル製品にも多くの種類があると伺いましたが、最後にご紹介いただけますか?
岡崎さん:実は、イヴドロームの歴史はタオル作りから始まりました。今ではベッドリネンブランドとして有名ですが、当初は高品質なタオルやバスローブを専門に作っていたんです。その伝統は今も受け継がれており、タオルには独自の素材と織り方の工夫が詰まっています。
素材も綿100%のものから、ぶなの木の繊維を使った「モダール」まで幅広く、他社さまでは真似ができないような織り方の商品もございます。
── タオルの織り方には、どのようなものがあるのでしょうか?
岡崎さん:たとえば、「ジャカード織り」は、最後にプリントするのではなく、織りの段階で模様を作り出す技術で、タオルの裏表で異なるデザインを楽しめるのが特徴です。また、繊維の「撚り(より)」が少ない「無撚糸」タオルもあります。このタイプはふんわりとした触り心地が特徴で、赤ちゃんや敏感肌の方によく好まれています。反対に、撚りが強いタオルもあり、こちらは吸水性や耐久性が高く、毎日頻繁に使用するのに適しています。
── タオル製品の肌触りがよいことはもちろん、見た目もとても美しいですね。ベッドリネン同様、デザインにもこだわられていることが伺えます。
岡崎さん:はい、デザインにもこだわりが詰まっています。たとえば、柄が織り込まれたジャカードタオルは、まるで彫刻のような高級感があります。また、色展開も豊富で、シンプルな無地からバスルームのアクセントになるような柄ものまで揃っています。とくに「エトワール」シリーズは、イヴドロームのアイコン的な商品で、デザイン性が高く、フランス国内外でも人気があります。
肌触りだけでなく、耐久性に優れていまして、お客さまから「10年以上使い続けている」という声をいただくことも珍しくありません。フランスでは、嫁入り道具としてリネンやタオルを持たせる習慣があり、タオルも「一生モノ」として選ばれることがあります。イヴドロームのタオルは、まさにそのような特別な一枚になるはずです。