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【ブランド責任者のB面】商品に関わる人すべての想いを一皿に!「効率」や「時短」だけではない価値を冷凍食品に載せる

産直通販サイト「食べチョク」から生まれた、生産者の顔が見える冷凍食品ブランド「Vivid TABLE(ビビッドテーブル)」。そのブランドの世界観づくりから販促までを一貫して担っている、株式会社ビビッドガーデンの山之口優さん。

冷凍食品といえば「効率」や「時短」。その常識に、Vivid TABLEはそっと逆らう。「効率や妥協のためのもの」ではなく、「食を愛する人のための一皿」へ。

教育事業からECまで、領域を越えて「まだ当たり前になっていない価値」を届け続けてきた山之口さんに、どのような想いでブランドに向き合っているのかを聞いてみた。

この記事の監修者

山之口 優さん

株式会社ビビッドガーデン 流通サービス事業部。食べチョクの生産者食材を活用したプライベートブランド「Vivid TABLE」の運営と、新規ブランドの立ち上げ探索を担当。

商品の企画・世界観設計から販促、クリエイティブディレクションまで一貫して関わり、「なぜこのブランドをやるのか」「どんな価値観を届けたいのか」といったブランドの軸づくりを担う。

大学在学中に教育領域で起業し、サービス設計からブランディングまでを経験。

その後、食品EC領域へ転じ、ECモールの立ち上げ・グロース、PB開発などに従事。生産者・飲食店・生活者それぞれの価値が循環するブランドづくりに、一貫して取り組んでいる。

 

目次

「効率や妥協」じゃない。冷凍食品の常識を、こっそり裏切る

食べチョクは、こだわりのある生産者の食材を、全国の消費者に届けるサービスなんですけど、Vivid TABLEは、食べチョクに出品をする生産者さんの農産物を「今ここで食べられる」という体験を提供するために生まれたブランドなんです。

──冷凍食品というと、こだわりよりも「便利さや手軽さ」が思い浮かびます。

山之口さん:冷凍食品って「簡便なもの」「便利なもの」というイメージがあると思うんですけど。私たちは、あえてそういう位置づけには行きたくなかったんですよね。

──それはなぜですか?

山之口さん:あくまで「日本の生産者さんの食材を、おいしく味わってもらいたい」というコンセプトなので。

「今日もおいしいものが食べたい」「今日もこだわりのものが食べたい」「今日も、日本の生産者さんが作ったものが食べたい」。そういう気持ちに応えるものでありたいと思っています。

「2キロのトウモロコシ」が届いたことがきっかけになった

──そういう位置づけにしたいと考えるようになった、きっかけはあったのでしょうか?

山之口さん:私自身、一人暮らしで、入社前から食べチョクはもともと使っていたんです。あるとき、2キロのトウモロコシが届いて「どうしよう(笑)。」となったことがありました。

──2キロ(笑)。一人では食べきれないですね!

山之口さん:一旦、大家さんに持っていって。その後、友達と会う予定を立てて、渡そうか…みたいな感じで、みんなに配っていました!

「2キロの野菜や果物を買う」という体験は、食への感度がすごく高かったり、ご家族がいたり、近隣におすそ分けできる方にはいいと思うんです。

でも、一人暮らしの方や、誰かに配れない方のニーズも確実にあるので「生産者さんの食材を、もっと日常に取り入れやすい形にするにはどうしたらいいか」、そう考えたときに、おのずと、加工食品という選択肢が出てきたんです。

並べて目に入るより、「選び取ってもらう」

──「Vivid TABLE」のサービスを利用しているのは、どのような人たちなのでしょうか。

山之口さん:そうですね。今は、情報感度や食への感度が高い方が、メインのターゲットになっています。

普段から料理もするし、外食にもよく行く。そういう方が、「今日は、誰かが作った料理が食べたい」「簡単に済ませたくはないけど、これから料理をするのはちょっと厳しい」みたいなシーンで利用いただくことが多いですね。

──料理をするのは面倒だけど、おいしいものが食べたいという日は、けっこうあります(笑)。

山之口さん:「せっかくなら、おいしいものを食べて元気をチャージしたい」。時短ではなく、「家でゆるりと、日本の生産者さんを感じるものが食べたい」。そういったシーンにフィットする商品を、心がけているんです。

価値があるのに、まだ「当たり前」になっていない

──山之口さんは、食の業界に入る前、学生時代に起業されていたと伺いました。

山之口さん:そうですね。大学2回生、19歳のときに起業して。そこから5〜6年くらい会社経営をして、それから食の業界に入った、というキャリアなんです。教育の事業だったので、食とは直接リンクしているわけではないんですけど。

──まったく違う領域だったのは、ちょっと意外でした。

山之口さん:ただ、「今ないもので、かつユーザーに提供価値のあるものを作る」というスタンスは、1社目の創業の経験から培われているなと思っていて、「一人ひとりに向き合う」みたいなところは、すごく共通している気がします。

──人との向き合い方は、起業時代の経験が大きいんですね!

山之口さん:食品業界も一次産業の業界も、本当にもう、手つかずの問題だらけなんですよね。

その課題を少しでも解決したい、というのは、教育事業のときから食品業界に移っても、ずっと共通しているところかなと思います。

「規格外だから売れない」を、見過ごせない

──「手つかずの問題」というのは、どういったものがあるのですか?

山之口さん:産業全体でいくと「離農」は大きな問題で、高齢化と後継者不足で、日本の生産力自体が落ちていっているんです。

さらに、私たちが課題に感じているのは、農業に従事されている方の収入がすごく少ないことです。

※離農:これまで営んでいた農業を廃業したり、農業従事者が他の職業へ転職したりして、農業から離れること

──それはかなり深刻な問題ですね……。

山之口さん:とくに、最近の気温上昇の影響で規格外の野菜がかなり出ており、「このサイズじゃないと売り物になりません」といった理由で、一般流通できないものも多くなってきているですよ。

私からすると「そんなわけないだろう」と思うんですけど……。

──消費者からすると、多少サイズが違っても気にならない気もします。

山之口さん:スーパーにとっては、売り場が美しいことが大事なのは分かるんですが、消費者からすると「多少大きかろうが、小さかろうが、おいしかったらどっちでもよくない?」という感覚があると思うんですね。

だからこそ、私たちは、農業従事者の方の収入源を一つでも多く作ったり、普段はやむを得ず捨てられている食材をアップサイクルしたり、きちんと料理して付加価値をつけたりといったことにトライしているんです。

「誰かのために作る」が、当たり前にあった

──お話を聞いていると、「誰かのために」という思いを強く感じました。そのルーツのようなものは、あるのでしょうか?

山之口さん:私、実家がものづくりの会社だったんです。祖父が創業者で、両親が経営を引き継いでいて。そのときから、「誰かのためにものを作る」ということが、ずっと身近にあった気がします。

──小さいころから「誰かのためにものを作っている様子」を身近で見てきたのですね!

山之口さん:そうですね!あと、子どものころから「ここにどういう仕組みがあったらいいだろう」「どういう仕組みがあったら、みんなすごく楽しいだろう」みたいなことを、妄想するのが好きでした(笑)。

──そのころから「あったらいいな」を無意識に考える癖がついていたんですね(笑)。

山之口さん:そうかもしれません。よくも悪くも「妄想がち」なところがあったので、新しい情報が入ってくると、すごくイメージが広がったり、新しいアイデアを思いついたりすることが、すごく多いんです。

今の業界に入ってまだ日が浅いんですけど、入社してすぐ、代表に「こんなことをやりましょう」「あんなこともやりましょう」と、たくさん提案できたのも、この性格のおかげかなと思います。

──その「妄想」が、今の仕事につながっているんですね。

山之口さん:食べチョクの生産者さんの食材で、もっと生産者のブランディングになるような商品が作れると思っていて。そのあたりは、かなり自分の特性が生きているなと感じています。

シェフ・生産者・工場。三者の「プロのこだわり」を翻訳する

──「妄想」を実際の商品にしていくのには、どんな難しさがありますか?

山之口さん:やっぱり、生産者さんの食材を扱う以上、私の中だけで完結してはダメなんですよね。生産者さんが作れる量には限りがありますし、実名で出てしまうプロジェクトでもあるので「生産者さんのブランドを毀損しないか」といったことには、とくに気を配っています。

また、生産者さんだけでなく、関わる人がそれぞれのこだわりを持ったプロなので、それをどう形にするかがとても重要なんです。

──プロ同士で考え方がわかれるということですか?

山之口さん:そうなんです。たとえば、シェフは「絶対、この味付けがいい」と思っている。工場の方は「こんなにソースを濃厚にしたら、機械が壊れます」と言う。生産者さんは「こんなに細かく切ったら、キャベツの食感がわからなくなる」みたいなこともあります(笑)。

──三者三様で、こだわりがぶつかるんですね。

山之口さん:それぞれの立場で、プロフェッショナルな考えをお持ちなので、こういったことはよくあるんですよ。

最後は必ず、「生活者が日常に取り入れやすいか」

──こだわりが対立したとき、どこを判断の軸にしているんですか?

山之口さん:プロの方の意見は尊重しながら、最後は必ず、「生活者の方が、日常に取り入れやすいか」という視点に立つようにしています。

以前、工場の方から「この料理は15分レンジで加熱して、15分蒸らしてから食べてください。これがベストなおいしさです」と提案されたこともありました。

「いやいや、そんな時間に余裕がある人が、冷凍食品を食べると思っているんですか(笑)。」と思っていたので、消費者の声を聞いたり、工場の方に製造工程をヒアリングしたりしながら、「15分温めるだけでそのクオリティーが出る方法を、一緒に考えてください」と交渉しました。

──30分かかると、どれだけおいしくてもちょっとツラいかもしれません(笑)。15分温めるだけだと、かなり楽ですね!

山之口さん:私のコンセプトは、ずっと「生産者さんの食材を手軽に食べられる」というところなので、これだけは、何があってもブレさせないようにしています。

泥付きのジャガイモから作る

──「手軽さ」を追求する裏側では、相当な手間がかかっているのではないでしょうか。

山之口さん:そこは、本当に泥臭い苦労が裏側にあって(笑)。通常の加工品って、たとえば海外でカットし冷凍までされたものを入れてきて、現場で調味液をかけてパッケージングする、みたいに、かなり簡易化されているんです。

それに対して私たちは、泥付きのジャガイモを北海道から送って、洗浄して、食べやすい形にカットしたりしています。

──泥付きの状態からですか!?

山之口さん:カットしただけだと食味が悪いので、最初にスチーム加工をして、それから工場に送ってパッケージングしてもらうようにしています。

産直のもの、生のものから作るというのは、やっぱり一筋縄ではいかないことが多いんですよ。

──旬の短い食材だと、さらに大変そうですね。

山之口さん:そうなんです。最近作った、「牡蠣とせりの炊き込みご飯」があるんですけど、牡蠣もせりも、旬がすごく短いので、その短い収穫期間の中で、試作からリリースまでをマネジメントしないといけなくて。

しかも、私たちは本当においしさにとことんこだわっているので、シェフのOKが出ないと、リリースできないんです。

──そこまで徹底して、ようやく消費者に届くんですね。

山之口さん:旬のもの、生のもの、国内のものを扱いながら、それを軽々と実現しているように見せることには、すごく努力や苦労があって、正直、骨が折れるなと思うこともあります(笑)。

でも、それを乗り越えたことで、定期便の6食を全部「牡蠣とせりの炊き込みご飯」にしてくださっているお客様もいます。

そういうのを見ると、「作ってよかったな」と思えるし、誰かが、この正解を作っていかないといけないので、それはそれで、すごく楽しいんです。

「色鮮やかな食卓」を、もっと当たり前に

──Vivid TABLEのサービスを、どのように利用してほしいですか?

山之口さん:「これはこだわりの食品なんだ」と身構えてほしくなくて、まずは気軽に、「今日はこれに頼ろう」「食べチョクのものなら、なんかよさそう」くらいで手に取ってもらえたら、と思っています。

でも、食べ進めていくうちに、「このパプリカがおいしいよね」「いんげんってこんなにおいしかったんだ」「じゃがいも、こんなにホクホクなんだ」。そういう、食材のポテンシャルに気づいてもらえると嬉しいです。

──食べながら新しい体験をしてもらうということですね!

山之口さん:「食べチョクって、やっぱりすごいな」という食後感になったり、「これ、どこの生産者さんのだったんだろう」と気になるきっかけになったり。そういう体験の接点になれたらいいなと思っています。

なので、Vivid TABLEの商品は、お客様が食材のことを知れるように、パッケージのQRコードから生産者さんのページに飛べるようにもなっているんです。

「色鮮やかな農地」から「色鮮やかな食卓」へ

──ちなみに、Vivid TABLEという名前には、どんな意味が込められているのでしょう?

山之口さん:もともと「ビビッドガーデン」という社名自体が、創業者・秋元の実家の農業が廃業した経験から来ているんです。

耕作放棄地が増えていく中で、「色鮮やかな農地を取り戻したい」という思いで、名づけられました。

その社名の原点に立ち返って、「色鮮やかな食卓」という意味で、Vivid TABLEと名づけました。一次産業への貢献はもちろん、多様化する消費者のニーズに応えることで、「色鮮やかな食卓」を増やしていきたい、と。

──「色鮮やかな農地」と「色鮮やかな食卓」が、つながっているんですね。

山之口さん:日本の生産者さんの食材が、当たり前のように取り入れられる形にしていくことが、一番、生産者さんへの還元につながると思っています。

「見過ごせない」を事業にする

──最後になりますが、今、山之口さんが妄想していることや、今後チャレンジしたいことはありますか?

山之口さん:アップサイクルや、やむを得ず捨てられているものに着目するのって、もしそれが儲かるビジネスだったら、大手さんがとっくにたくさんやっているはずなんですよ。

そうではないけど、「人間として、これを見過ごせないよね」というところを、どうサステナブルな形で事業にしていくか。そこに、すごく価値があると思っているんです。

──まだ、ロールモデルがない領域でもあるんですね。

山之口さん:そうなんです。でも、ロールモデルができたら、どうなるんだろう、いろんな協力者が増えていくんじゃないかとも思っていて。新しい事業モデルを作っていくことが、今、私たちに求められているなと感じていて、ありがたいことに、他業種の方からも「こういうの、やってよ」「助けてよ」と声をかけていただいているんです。

──その期待が、原動力になっているということですか?。

山之口さん:価値があるのに、まだ当たり前になっていないものって、世の中にたくさんあると思うんです。それを、生活者に届く形に翻訳していく。

一人で抱え込まずに、いろんなプロの力を借りながら、「色鮮やかな食卓」を、もっと当たり前にしていく。それが、今いちばんやりたいことですね。

Wellulu編集後記

冷凍食品と聞くと、便利さや手軽さを重視したものというイメージがありました。一方、Vivid TABLEは「日本の生産者の食材を今ここで食べられる」という価値を冷凍食品にして届けています。

その裏側には、泥付きのじゃがいもを北海道から送り、洗浄し、カットし、スチーム加工するという、目には見えない地道な苦労がありました。

シェフ・生産者・工場、それぞれのこだわりがぶつかる中でも、山之口さんが大切にしていたのは「生活者が日常に取り入れやすいか」という一点でした。

山之口さんのお話を伺いながら、こだわりを届けることは、こだわりを前面に出すことではなく、日常に自然に溶け込む形へ翻訳し続けることなのだと感じました。

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