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乃村工藝社が実践する“人財が宝”の組織づくり。働きがいと創造性を高める「空間」の力

商業施設や文化施設、オフィス、イベントなど、多様な空間づくりを手がける株式会社乃村工藝社。人々が集い、交流し、新たな価値が生まれる空間を幾重にも創造してきた同社では、社員一人ひとりの「働きがい」や「創造性」を高める組織づくりにも、並々ならぬ力を注いでいる。

スーパーフレックスタイム制度の導入、主体的な学びの機会の拡充、そして部署の垣根を越えたフラットな対話を生むコミュニケーションスペース「RESET SPACE」の設置。それらすべての施策の根底にあるのは、長年にわたり育まれてきた「人財は宝であり、成長のエンジンである」という人間尊重の考え方だ。

今回は、乃村工藝社の取締役 常務執行役員 コーポレート担当を務める前島隆之さんに、ウェルビーイングな職場づくり、社員の創造性を引き出す空間の力、そして同社に息づく挑戦の文化について、「Wellulu」編集長・堂上研が話を伺った。

 

前島 隆之さん

株式会社乃村工藝社 取締役 常務執行役員 コーポレート担当

機械メーカーを経て、2002年に乃村工藝社グループに入社。経営企画や予算管理などの経営管理部門に加え、事業部門の戦略にも携わる。2017年に人事部長に就任、2022年より執行役員としてコーポレート部門を統括。2024年に取締役、2025年に取締役常務執行役員に就任し、現在に至る。

https://www.nomurakougei.co.jp/

堂上 研

株式会社ECOTONE 代表取締役社長/Wellulu 編集長

1999年に博報堂へ入社後、新規事業開発におけるビジネスデザインディレクターや経団連タスクフォース委員、Better Co-Beingプロジェクトファウンダーなどを歴任。2023年、Wellulu立ち上げに伴い編集長に就任。2024年10月、株式会社ECOTONEを立ち上げる。

https://ecotone.co.jp/

目次

縁と運に導かれて。行雲流水の歩みで見出だした自身の原点

堂上:ウェルビーイングにおいて、私たちが日々の時間を過ごす「空間」は非常に重要な要素の一つです。乃村工藝社が手がけられる空間は、いつも 幸福感や新しい価値観に満ちていると感じます。だからこそ、社内にも素敵なウェルビーイングの風土が根付いているのではないかと、ずっと注目していました。

今日は乃村工藝社の組織づくりについてじっくり伺っていきたいのですが、まずは前島さんご自身のことについてお聞かせください。前島さんは、どのようなときに「楽しいな」「ウェルビーイングだな」と感じられますか?

前島:趣味の自転車に乗っているときや、サッカー観戦をしているときは、まさにウェルビーイングな状態かもしれないですね。

堂上:おっ! 実は僕もサッカーが大好きなんです。いつ頃から興味を持たれたのですか?

前島:子どもの頃は野球少年だったのですが、2002年のW杯(2002 FIFA ワールドカップ 韓国/日本)で国中が盛り上がったのを機に、サッカーを観るようになりました。子どもから「スタジアムで試合を観てみたい」と言われたのがきっかけで、地元のJリーグクラブの試合に足を運ぶようになったんです。そこですっかり魅了されてしまい、今ではシーズンチケットを購入して毎試合のように通っています。

堂上:僕はずっとプレーしてきたサッカー少年なのですが、サッカーというスポーツはスタジアム全体で圧倒的な一体感を共有できるところが大きな魅力だと思います。もう一つの趣味である自転車には、どのようなきっかけで出会われたのですか。

前島:実は、サッカー観戦の話とつながっているんです。チームがJ1に昇格して人気が高まるにつれて、スタジアムの駐車場が満車で停められなくなってしまって。電車で通うには少し不便な距離だったのでどうしようかと悩んでいたとき、ちょうど子どもが高校進学のタイミングで「通学用の自転車がほしい」と言い出したのです。

それならばと一緒に自転車店へ出向き、私もスポーツ自転車を購入したんです。走り始めてみると、次第にその楽しさを感じるようになりました。今では自転車そのものが大切な趣味になり、先日も株主総会が無事に終わった翌日に、社内の自転車仲間と「しまなみ海道」を走ってきたところです。

堂上:しまなみ海道の風をきって走るのは、最高に気持ちが良いですよね!

ウェルビーイングの観点から見ても、運動による身体への好影響はもちろんですが、自分が夢中になれる環境やコミュニティを、仕事以外に複数持っておくことは極めて重要です。前島さんにとって、自転車やサッカーがまさにその「サードプレイス(第3の居場所)」になっているのですね。

前島:以前は完全に仕事一辺倒の生活を送っていましたから、もしあのとき自転車に出会っていなければ、休日はどのように過ごしていたのだろうと時々考えます。

堂上:前島さんは乃村工藝社に中途入社されたとお聞きしています。経理や財務、人事といった経営管理の領域には、昔から関心があったのですか?

前島:いや、全くそんなことはありません(笑)。若い頃は 「これがやりたい」という強い動機や夢を持っていませんでした。

前職では経理として社会人のキャリアをスタートしたのですが、もともと経理に興味があったわけではありません。就職にあたって専門知識があったほうがよいというアドバイスを受け、簿記の勉強を始めたことがきっかけです。その一言が転機となり、結果として経理の道に進むことになりました。

堂上:これまで「Wellulu」を通して多くのビジネスリーダーにお会いしてきましたが、幼少期から強い意志や目標を持たれている方が多かったので、前島さんのような等身大のストーリーは非常に新鮮で、救われる読者も多いと思います。「行雲流水」という言葉のように、雲の行くまま、水の流れるままに、目の前の自然な流れに身を任せて歩んでこられたのですね。

前島:私は本当に、人との縁と運だけが良い人生だなと思っています。

堂上:ですが、運が良い人というのは、ウェルビーイングにおいて理にかなっているのです。運を良くするためには、「運を運ぶ」と書くように、自ら行動を起こす必要があります。

前島さんも、人のアドバイスで簿記を学んでみたり、お子さんの言葉をきっかけにスタジアムや自転車屋さんへ行ってみたりと、必ず自ら小さく行動されていますよね。その行動の積み重ねの先に、良い運や縁が巡ってきているのではないでしょうか。

前島:どうなのでしょうね。ただ私自身としては、これまで出逢ってきた素晴らしい人々とのご縁のおかげで、ここまで来させてもらったという感覚がとても強いです。

堂上:飾らない自然体なあり方だからこそ、周囲の仲間たちも「前島さんを支えたい」と自然に思うのかもしれませんね。

前島さんは常日頃から「人財が宝」「社員のために投資をする」という温かいメッセージを明確に発信されています。そうした「人」をどこまでも大切にする姿勢が、周囲に深く伝わっているのだと思います。

乃村工藝社へ転職を決められた理由は何だったのですか?

前島:それもやはり、面接などで出逢った「人」の魅力や、社内に漂う温かい雰囲気が決め手でした。前職が規律の厳しい機械メーカーでしたので、当時の乃村工藝社はずいぶん自由でクリエイティブな社風に映りました。実際に当時は、今ほど仕組みや制度が整っていなかった分、良い意味での「心地よい緩さ」がありましたね。

堂上:近年、Z世代を中心とする若手層は、事業内容(何をしているか)だけでなく、「誰と働くか」を最重要視して企業を選ぶ傾向があります。前島さんはまさにその価値観を先取りされていたのですね。

実際に飛び込んでみて、働きやすさはどのように感じられましたか?

前島:想像していた通り、働きやすさや社風の良さは肌で強く感じました。「働きがい・働きやすさ」という項目は、当社の社内調査でも常に非常に高いスコアを維持しています。私だけでなく多くの社員が同じように感じているのだと思います。

コーポレート部門としては、この素晴らしい風土をさらに伸ばしていくために、現在さまざまな環境づくりに取り組んでいます。

堂上:安心して働きやすい環境があること、そして仕事そのものを心から楽しんでいる仲間が近くにいることは、ウェルビーイングな職場づくりにおいて絶対に欠かせない要素です。

ウェルビーイングは、幸せな人から人へと波紋のように伝播していくもの。社内はもちろん、クライアントやステークホルダーへも必ず伝わっていきます。今日はぜひ、乃村工藝社が実践するウェルビーイングの秘訣を深く紐解いていきたいと思います。

人財を「宝」として育む組織のスタンスと、新たな育成プロジェクト

堂上:前島さんは2017年に人事部長に就任されています。一般的に人事の視点と言うと、労務管理をはじめとして社員を一定の枠組みに「管理」しなければならない側面もあるかと思います。前島さんは、現場の「働きやすさ」と組織としての「管理」の両輪を成立させるために、どのように取り組まれたのでしょうか。

前島:社員の健康や命を守るための労働時間管理というのは必要ですが、「管理」以外の別の視点も必要だと感じていました。

というのも、人事としてさまざまな社員と面談を重ねるなかで、彼らの口から出てくるのは「もっと成長したい」「お客様の期待を大きく上回るために、さらに質の高い準備をする時間がほしい」といった、驚くほど前向きで向上心に溢れた声ばかりだったのです。

そこで、社員の健康をしっかり守りながらも「働きがい」をどこまでも追求できるように、そして多様なライフスタイルに合わせた働き方を実現できるようにと制度を整えていきました。それが、コアタイムを設けない「スーパーフレックスタイム制度」の導入です。同時に、サテライトオフィスの契約を進めるなど、働く場所の多様化も一気に推進しました。

前島:2019年からは、これらを「働きがい」「働きやすさ」「人財の確保・育成」という3つの柱に整理し、2021年2月に「働き方改革総合計画」を発表しました。個人の強みを活かすための自発的な学習機会の提供にも力を注ぎました。

会社が大きく変化していく大切なタイミングのときに人事に携わることができ、私にとっても非常にやりがいが大きい時間でしたね。

堂上:素晴らしいですね。ただ、時代の変化とともにコンプライアンスやガバナンスなどの新たなルールが増え、結果として現場の自由度が奪われてしまうケースも少なくありません。そのあたりの「自由と規律」のバランスは、どのように取られているのですか?

前島:以前に比べると 組織的に動けるようになったことは良い点だと思いますが、自由とのバランスは常に意識しています。

つい先日から配り始めた冊子があります。これは私たちの組織におけるコミュニケーションのベースとして「Do(すべきこと)」と「Don’t(すべきでないこと)」を明確に記しています。

人々に歓びと感動を届ける「幸せな空間」を創造するためには、それをつくる私たち自身が多様性を認め合うチームでなければなりません。しかし、個性がバラバラなメンバーがチームとして最大限のパフォーマンスを発揮するためには、最低限の共通ルールも必要になります。「何を守るべきで、どこからを自由にするのか」。誰もが直感的に理解できるように、一冊の形にまとめました。

堂上:これはわかりやすいですね! かつての日本社会は画一的な価値観で語られることが多く、「言葉にせずとも空気で伝わる」という部分が多かったように思います。しかし、価値観がこれだけ多様化している現代だからこそ、組織のスタンスを明確に言語化し、共通認識を持つことの重要性が高まっていますよね。

実は先日、弊社の若手社員から「企画をチェックしてほしい」と言われたので、内容を見て「すごく良いね!」とフィードバックしたんです。そうしたら、「もっとどこをどう改善すべきか具体的に指摘して、自分と深く向き合ってほしい」と言われて驚きました。育てる側にも、圧倒的な向き合う力と言語化能力が求められている時代なのだと感じます。乃村工藝社はクリエイター集団ですから、昔ながらの職人気質な方も多いのではないですか?

前島:昔は 「背中を見て学べ」というスタイルの上司も多く、配属された現場によって、若手社員が身に付けられるスキルや経験にばらつきが生じてしまうという課題がありました。また、社内の中間世代が少なく、世代間のギャップが大きいという人員構成上の特徴もあります。

そこで、教育を現場任せのOJTだけに頼るのではなく、会社全体で均一かつ体系的な学びを提供するために、2026年から職種別スキルの向上の取組みの一つに 「プロダクトアカデミー」という新たな育成プロジェクトを本格的にスタートさせました。

その他にも、社員一人ひとりが自らの興味やキャリアプランに合わせて、主体的にプログラムを選択できるような研修制度を数多く充実させています。

堂上:ちなみに、社員の皆さんのなかで特に人気のプログラムはありますか?

前島:「論理的思考(ロジカルシンキング)」の講座は、毎回とても人気がありますね。クリエイティブな発想を形にするためにも、ビジネスの基盤となる論理的な組み立ては欠かせませんから、職種を問わず多くの社員に学んでほしいと思っています。

堂上:クリエイティブを体系的に学び、自分の中で整理することで、新しい気づきが生まれるのでしょうね。会社が社員の未来を本気で想い、どのような環境を用意してあげられるかを徹底的に考えて実践する。そして、それを固定化せずにアジャイル(俊敏)に変え続けていく姿勢そのものが、社員の皆さんにとって最高に幸福な環境だと感じます。

前島:ありがとうございます。若手社員たちが、「自分が将来どうなりたいか」を自身のキャリアを丁寧に棚卸ししながら、ワクワクした未来を描いていけるような組織であり続けたいですね。

部署の垣根を越えて対話が広がる場所「RESET SPACE」

堂上:今日お伺いしているこの「RESET SPACE」も、そこにいるだけでクリエイティビティが自然と刺激されそうな、素敵な空間ですよね。

前島:ありがとうございます。実はこのスペース、会社がトップダウンで作ったものではないんです。「どんな場所を作ったら会社の価値が向上し、社員の働き方がより良く変わるのか」を、現場の社員たち自身がボトムアップで徹底的に考え、企画して誕生した空間なんですよ。

堂上:一人ひとりが自らの考えを静かに整理する場所もあれば、誰かとフラットに対話する場所、あるいは他の領域へと越境する場所など、さまざまな役割を持つ空間が心地よくごちゃ混ぜになっているのが非常に魅力的だなと感じました。

ウェルビーイングの視点から見ても、多様な人たちと日常的に混ざり合うことは極めて重要です。同じ色がどれだけ合わさっても同じ色しか生まれませんが、多様な色が交じり合えば、そこには見たこともない新しい美しい絵が出来上がっていきますからね。

前島:自分の所属する部署のなかだけにとどまらず、組織の「縦・横・斜め」それぞれのコミュニケーションを生み出す機会をいかにデザインするかは、企画段階から非常にこだわった部分ですね。

堂上:実際にこのスペースが誕生したことで、社内の雰囲気や社員の皆さんの行動に変化は感じられますか?

前島:物理的な「場所」がそこにあるだけで、これほど対話が自然と増えるものなのだなと、日々大きな手応えを感じています。もちろん、ただ場所を用意しただけではなく、コミュニケーションが生まれやすくなるための「運用の仕掛け」も重視しました。

例えば、このスペースはどれだけ大きなイベントであっても、全面を「貸切」にすることはできないルールにしています。そのため、仮にここで社内セミナーをやっていたとしても、周囲に対してフルオープンな状態なんです。近くを通りがかった別の部署の社員が「お、面白そうなことを話しているな」とふらっとやってきて耳を傾けたり、飲み物を淹れにきたついでにそのまま輪に加わったりしています。

堂上:それは面白い仕掛けですね。偶発的な出逢いや交流が次々と生まれそうです。特に中途入社されたばかりの社員の方にとっては、社内の人脈を緩やかに広げていく上でも効果的な場所になりそうですね。

前島:普段からも、部署や仲間内での懇親の場としても活用されていますが、2025年には、社内表彰制度の受賞プロジェクトのナレッジを共有するセミナーが終わった後に、受賞メンバーと他の社員がフラットに交流できる「ひろがるBAR」を複数回開催しました。「ひろがるBAR」は、部署や立場を越えたコミュニケーションを活性化するネットワーキングの場です。社員からも「人とのつながりや視野がひろがった」といった声があり、新たな気づきや関係づくりのきっかけになっていると感じています。

日常の風景としても、昼休みに同僚同士で卓球をしたり、支店から出張に来た社員が他部署のメンバーとランチをしたりといった光景が見られますよ。

「ひろがるBAR」開催時の様子

堂上:僕も飲んで帰りたかったです(笑)。ただ人が集まる場所というだけでなく、組織の血流を良くするための最高の装置になっていますね。社員の皆さんの満足度やエンゲージメントも、かなり向上しているのではないでしょうか。

前島:イベント会社という側面もあるので、イベント好きな社員は多いですね。フラットに交流する場が生まれているように感じます。

堂上:「社員がウェルビーイングな状態で働いていると、そのクリエイティビティは300%向上する」というデータがハーバード・ビジネス・レビューなどでも発表されています。一人ひとりが持つポテンシャルや創造性を最大限に発揮してもらうために、いかにワクワク、生き生きと働ける環境を整えるか。その本質にどこまでもこだわられているのが伝わってきます。

前島:そこは、コーポレート部門としても非常に気を配っている部分です。私たち乃村工藝社にとって、人財こそが唯一無二の「宝」であり、最大の生命線。一人ひとりの人財の輝きによって、提供する事業や空間の質が決定的に変わります。

だからこそ、彼らが自らの能力を最も心地よく発揮できる環境をどうデザインしていくかは、経営にとっても極めて重要です。

高いエンゲージメントの背景。自ら未来を創り出す風土

堂上:社員が自発的に新しいことへ挑戦する風土をつくるためには、挑戦の裏側にある「失敗を許容する文化」も必要だと思います。そういった安心感を与えるためのメッセージや仕掛けも、意識的に取り組まれてきたのですか?

前島:私たちが「働き方改革総合計画」を策定したとき、最も大切にしたのは「会社が約束すること」と「社員にやってほしいこと」の2つを、お互いの約束として明確に掲げることでした。

会社が約束することは、一人ひとりが一流であり続けられるような、柔軟で多様な働きやすさを提供すること。そして、それを受け取った社員にやってほしいことは、自らのクリエイティビティを信じて、臆せず新たな「挑戦」をしてほしい、ということです。

堂上:僕が外部から拝見していても、乃村工藝社という組織には、一人ひとりの挑戦のマインドが自然体で息づいているのを感じます。社内でも、そういった挑戦を称賛する文化が深く評価されているのではないですか?

前島:そうした手応えは数字にも表れています。2025年11月にグループ全社員を対象に実施した「働き方アンケート」では、「総合的にみて『働きがいのある会社』だと言える」と答えた社員が71%に達しました。

さらに、「総合的にみて『働きやすい会社』だと言える」が62% 、「私は、この会社で長く働きたいと思う」という回答も60%という結果が出ているんです。

堂上:それは非常に高い数値ですね! これまでさまざまな企業のウェルビーイングな組織づくりに伴走してきましたが、これほど全社的な納得感とエンゲージメントが揃っているケースは、誇るべき実績だと思います。

前島:ありがとうございます。これらの数値はいずれも毎年着実に向上しています。これまでの地道な研修制度の拡充や、2018年にオープンした「RESET SPACE」・2021年にオープンした「RESET SPACE2」をはじめとする働く環境づくりが、社員の心にしっかりと届いている結果なのかなと、素直に嬉しく受け止めています。

コミュニケーションスペース「RESET SPACE(リセットスペース)」、「RESET SPACE_2(リセットスペース2)」

堂上:社員の皆さんがこれほど「自分ごと」として組織を信頼できているのは、会社の事業運営にも、多くの社員が実際に深く関わっているからだとお聞きしました。

前島:おっしゃる通りです。中期経営計画の発表会や浸透施策には多くの社員がプロジェクトに関与しました。また過去には、働きがい向上のため「これからの乃村工藝社の未来について、私たちが大切にしたいことは何だろう」という対話の機会を実施しました。タウンホールミーティングや、社長と若手社員のランチ会なども通じて、現場の社員たちとの対話の機会をたくさん作っていったこともあります。

堂上:まさに「人間尊重」という経営理念が、お題目のスローガンではなく、プロセスそのものに宿っているのですね。僕は当時の社長にアポなしで突撃してお茶していた時期があって、秘書に怒られていたのですが(笑)、経営者が、現場の社員と会話をする、生の声を聞くというのはとても重要だと思います。以前、「Wellulu」で楽天グループ株式会社に取材させていただいた際にも、毎週月曜日の朝会で三木谷社長に直接質問をできる機会があるというお話がありました。

経営者が現場一人ひとりの生の声にじっくりと耳を傾けるという姿勢は、組織のウェルビーイングにおいて非常に重要な価値を持ちますよね。

前島:私たちの組織を見渡してみても、経営計画に限らず、現場のボトムアップから自然発生的に生まれていく制度やアイデアがとても多いように思います。「RESET SPACE」もその一つです。ほかにも、2022年に設立された研究開発組織「未来創造研究所」 や、2025年2月に開設したその活動拠点である「Creative Lab.」も、まさに現場の情熱から生まれました。

オープンイノベーションをテーマにした数々のオフィス空間をお客様に提案し、手がけてきた乃村工藝社だからこそ、自分たちの実験の場としてのこだわりと遊び心が、たっぷりと詰め込まれているスペースです。

未来創造研究所の活動拠点 Creative Lab.

先人が築いた信頼を未来へ。ノムラマインドが紡ぐ幸福のスパイラル

堂上:これまで、人財を「宝」として育むための素晴らしい取り組みの数々を伺ってきました。前島さんがこれからの乃村工藝社の未来に対して、今一番望まれていることはどのようなことでしょうか。

前島:当社は2026年で創業134年目を迎える企業であり、ありがたいことに今日まで着実な成長を積み重ねてきました。

企業が今後も成長し社会へ貢献し続けること、つまり「ゴーイングコンサーン(企業の継続性)」を前提としたとき、私たちは健全な利益成長を継続させていく責任があります。

その持続的な成長のために「今、コーポレート部門として何ができるか」という問いを私は常に自分自身に投げかけています。そしてその答えは、結局のところすべて「人財」に行き着くのです。いかに人財を成長させ、それぞれのフィールドで遺憾なく活躍してもらうか、それに尽きます。

実は、私たち乃村工藝社の人間は、とても幸福な環境に置かれていると感じています。それは、これまで長い歴史のなかで先人たちが命懸けで築き上げてきてくれた、圧倒的なブランド価値とお客様からの信頼という恩恵を、今の私たちが受け取っているからです。その揺るぎない信頼があるからこそ、さまざまなお客様から、クリエイターとして非常にチャレンジしがいのある素晴らしいお仕事を日々いただくことができています。

今度は私たちがその期待に全力で応え、お客様から高い評価をいただき、また次の素晴らしいお仕事へとつなげていく。この幸福な循環のスパイラルを、次の世代のためにも絶対に止めてはならないと考えています。

堂上:だからこそ、社員の皆さんが前を向いて歩める「働きがい」と「働きやすさ」の環境づくりに、継続的に投資をしてこられたのですね。前島さんたちのその確固たる覚悟があるからこそ、今後もその文化が受け継がれ、新たな挑戦が生まれていくのだと確信しました。

ちなみに、そうした「乃村工藝社らしさ」というDNAは、どのようなところから生まれてくるものだと思われますか?

前島:私たちには、経営理念やミッション・ビジョンのほかに、全社員が共有している「ノムラマインド」という大切な行動指針、価値観があります。

それは、「不断の向上心」「感謝する心」「クリエイティブな精神」「強いチームで仕事をする自覚」「付加価値の高い仕事をしている自負」、そして「随所に主となる意欲(主体性)」という6つの言葉です。これらは常日頃から共通言語として語られているため、社風として非常に深く根付いています。

実際に社内で理解度を調査したところ、実に85%にのぼる社員が、このノムラマインドの本質を深く理解し、共感しているという結果が出ました。一人ひとりが個の専門性を発揮しながらも、チームで大きな仕事を成し遂げようとするとき、誰もがこのマインドを胸の真ん中に置いて動いてくれています。

堂上:85%という数字は、素晴らしいですね! 経営陣がメッセージを発信するだけでなく、現場の一人ひとりの社員にまで行き渡っているのが、乃村工藝社の一番の強みなのだと感じます。

これまでの日本のビジネスシーンでは、顧客からの要望をどこか受動的に受け止める姿勢が多かったように思います。しかし、乃村工藝社のように「主体性」や「挑戦心」がどこまでも尊重され、それが空間を通じて社会のウェルビーイングへと還元されていく風土は、これからの時代において理想的な企業のあり方だと思います。本日は本当に温かく刺激的なお話を、ありがとうございました!

乃村工藝社の関連記事はこちら

【三菱地所×乃村工藝社×リンレイ】地球のウェルビーイングを見据えたSDGsな新製品。共創によって実現した開発ストーリー

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