自分には無理だと諦めてしまう前に、少し立ち止まって考えてほしい。ポテンシャルを最大限に引き出してくれる「最高の居場所」に出会えていないだけかもしれない、と。
2026年、韓国三大モデルエージェンシー「GOST(ゴースト)」が日本に本格進出した。パリやミラノのランウェイで活躍するグローバルスタンダードのモデルを数多く輩出。韓国国内でわずか10年でトップクラスの地位を築き上げたエージェンシーが、今、日本の若者たちに熱い視線を注いでいる。
韓国のファッション業界人はすでに気づいているという。「日本人には、日本人にしかない魅力がある」と。それでも多くの日本人は、自分のポテンシャルに気づかないまま、世界への一歩を踏み出せずにいる。その壁は、才能の問題ではなく「環境」と「自信」の問題であると。
今回は、GOST JapanのCEO兼クリエイティブプロデューサーの古川雄一さん、GOST Japanプロデューサーの余慶尚子さんを迎え、「Wellulu」編集長の堂上が対談。広告業界からモデルの世界へと越境してきた古川さんの軌跡、GOSTがこの10年で築いてきた「人を育てる」哲学、そして日本人が世界へ羽ばたくために本当に必要なものとは何なのか、その熱い想いを存分に語り合った。

古川 雄一さん
GOST Japan CEO兼クリエイティブプロデューサー

余慶 尚子さん
GOST Japan プロダクションプロデューサー
広告代理店や外資系企業にて広告宣伝の仕事に従事した後、2007年に美容家へ転身。さまざまなメディアに出演するなど多岐にわたって活躍。韓国ドラマへの深い愛情をきっかけに、2020年より美容家としての活動と並行し、韓国俳優の広告キャスティングコーディネーターとしても仕事の幅を広げる。2026年GOST Japanのプロデューサーに就任し、モデルひとりひとりの可能性を引き出すことに情熱を注いでいる。

堂上 研さん
株式会社ECOTONE 代表取締役社長/Wellulu編集長
1999年に博報堂へ入社後、新規事業開発におけるビジネスデザインディレクターや経団連タスクフォース委員、Better Co-Beingプロジェクトファウンダーなどを歴任。2023年、Wellulu立ち上げに伴い編集長に就任。2024年10月、株式会社ECOTONEを立ち上げる。
「楽しくない仕事」なんてない。スポーツ一筋からクリエイティブのプロへ

堂上:古川さん、今日はお時間をいただきありがとうございます! 実は今回のご縁は、以前「Wellulu」に出演いただいた余慶尚美(活動名)さんからのご紹介がきっかけなんですよね。
韓国の大手モデルエージェンシー「GOST」の日本進出を軸に、今回は「人が輝ける環境づくり」について色々とお話を伺いたいのですが、まずは古川さんご自身についてお聞きしたいです。どのような学生時代を過ごし、どのような経緯でクリエイティブの世界へ入り、今に至っているのか、ぜひ教えてください。
古川:こちらこそ、よろしくお願いします。私は学生時代ずっとサッカーに打ち込んでいたんですよ。ただステージが進むにつれ、周りのレベルがどんどん高くなっていく。そこで自分の限界も見えてきて、「僕の進むべき道は広告やクリエイティブの領域にあるんじゃないか」と気づいたんです。当時は糸井重里さんたちコピーライターという存在がとても華やかに見えて。「広告の世界ならば一花咲かせられるぞ」と(笑)。
堂上:広告にもともと興味があったわけではなく、言葉への関心や直感からだったんですね。
古川:最初は全然(笑)。ただ、学生時代の授業で特に好きだった授業が「倫理社会」だったんです。言葉を使って、自分の考えをしっかり伝えることがとても好きで。言葉に対する興味はずっとありましたし、それで広告もよく見ていたっていうのはあると思うんですよね。
堂上:なるほど、言葉への関心が原点にあったわけですね。そこからどうやって広告業界に入り込んでいったのですか。

古川:まずはコピーライターの先生の事務所に潜り込んで、原稿や荷物を届けるところから始めたんです。コピーライターやデザイナーなど、さまざまなクリエイターが集まる青山の事務所が拠点で、そこから糸井さんや浅葉克己さんの事務所へ、自転車で荷物を届けに行ったりしました。
そういった現場を通じて、一流クリエイターたちの仕事に直接触れることができた。一流の仕事の現場を間近に見られて、とんでもなく刺激的な世界がたくさんあって、もう寝る間も惜しいぐらい面白かったんです。
堂上:まさに「フロー状態」ですよね。僕たちがウェルビーイングの話をするときに、フロー状態という言葉を使うんですが、寝ることも惜しいぐらい仕事に没頭している感じ。本来、仕事ってもっとワクワクできるものであっていいのに、ついつい大変なものになってしまいがちじゃないですか。
古川:私はそのときクリエイティブの仕事にすっかりはまってしまって、正直、60を過ぎた今もそこから抜け出せていないんです(笑)。周りからは「なんでそんなに仕事が楽しいの?」ってよく驚かれるんですよ。でも、楽しくてしょうがない。
むしろ「楽しくない仕事」って何なんだろうと思ってしまうくらいで。仕事は「自分たちで楽しくしないと!」と思うんです。楽しい場を作るとか、メンバーが楽しめるように仕掛けるとか。そういった人生の生きがいやワクワクする瞬間を、ぜひ皆さんにも見つけてほしいと思っています。
堂上:その「楽しくてしょうがない」という感覚は、チームで何かを共創するときに特に強くなるのですか?

古川:そうですね。私はコピーライターやデザイナーではなく、全体を形にするプロデューサーとして動いていたので、「チームで作り上げること」が自分の役割でした。
「人がいて自分がいる」。その前提で、自分が何をしてほしいのかをどうやって伝えるか、相手が心の中で思っているポテンシャルをどうやって引き出すか。みんなで一つのものを作り上げていくあの空間が、すごく……特に熱気のある撮影現場なんかは、もうたまらなく楽しかったですね。
堂上:その「仲間と一緒に場を作り、人の可能性を引き出す」という感覚こそが、今のモデルエージェンシー「GOST」の世界へとつながっていくわけですね。
古川:そうなんです。広告の仕事でもモデルを撮影する機会はたくさんありました。そこで培ってきた経験が積み重なって、今の「GOST Japan」の仕事にもつながっています。
GOST代表ハン・ワンヒ氏の原点と、日韓共通の“チームを愛する”カルチャー
堂上:GOSTという会社はどんな経緯で生まれたんですか。ハンさんがなぜモデル事務所を立ち上げたのか、古川さんから見てどう感じていますか。
古川:韓国のGOSTは設立から約10年を迎えました。代表のハンが32歳のときに立ち上げたのですが、当時はまだ業界での実績も人脈も十分ではなく、大きな後ろ盾があったわけでもない。それでも「一緒に夢を追いたい」という若い仲間たちが、彼を信じてついてきてくれた。「この人たちとだったら、きっといい会社が作れる」と思ったと、ハン自身もそう語ってくれています。
堂上:その原点について、後日あらためてハンさんご本人にもお話を伺うことができました。

―そもそも、ハンさんとファッションとの出会いはいつ頃だったのでしょうか。
ハン:中学生の頃からファッションにすごく興味があって、ブランドや服、アクセサリーが好きだったんです。実は日本の「MEN’S NON-NO」も定期的に買っては、日本のファッションスタイルを研究していました(笑)。
―中学生の時点で、すでに日本のファッションカルチャーに触れていたんですね。そこからどのようにして「演出家」という夢を持つようになったのでしょうか。
ハン:大学生のとき、偶然テレビでジョン・ガリアーノのショーを目にしたんです。あまりにも素敵で身動きひとつせずに見入ってしまい、ショーが終わったあともその余韻がずっと残っていました。その瞬間から、「ファッションショーの演出家になりたい」と本気で夢見るようになったんです。
―ひとつのショーが、人生を決定づける出会いになったわけですね。そこから演出家としてのキャリアが始まり、モデル事務所の設立へとつながっていくんですね。
ハン:はい。演出の勉強をしてアカデミーを修了したあと、実際に演出家として仕事を始めました。そうしてモデルたちと自然に接点ができていく中で、周囲から「マネジメントもすごく上手くこなせそうだ」という声を数多くもらうようになったんです。それがきっかけで、モデルマネジメントの道に進むことになりました。
―演出家としての視点があったからこそ、モデルの魅力を引き出す才能にも周囲が気づいた、ということでしょうか。GOSTという会社を立ち上げたときは、どのような思いだったのでしょうか。
ハン:2017年に設立したGOSTは、私が運営する初めての会社でした。30代前半という若さもあって、正直、本当にたくさん悩みましたし、考え抜いた末の決断でした。韓国のモデル産業をもっと若く、トレンディなものに変えたい。そして何より、モデルたちがより良いインフラの中で仕事ができる環境をつくりたい。その一心で立ち上げた会社なんです。
―まさに「環境をつくる」という点が、GOSTの原点にあったんですね。それはハンさんが「人を育てる」ということに向き合う姿勢にも、そのままつながっているように感じます。
ハン:そうですね。私は、人は誰しも生まれ持った長所があると考えています。「誰が誰を育てる」というよりも、それぞれの長所を最大限に引き出し、発揮できる方向性を示してあげることが、自分の役割だと思っているんです。特にモデルの場合、生まれ持ったフィジカルが7割以上を占めると考えています。演技、ポージング、ウォーキングなど、彼らのどんな能力を伸ばせるのか、どこが足りていないのかを見極めて訓練させることこそが、マネジメントの本質だと思っています。
―ハンさんから見て、日本人モデルの可能性についてはどう感じていらっしゃいますか。
ハン:日本人モデルには、本当に多くの可能性を感じています。実際、GOSTに所属して活躍している日本人モデルもいますし、韓国のファッション業界ではすでに、日本人特有の魅力に気づき始めているんですよ。例えば女性モデルは、クールな印象の中にもかわいらしさがある。ハーフの方も多く、美しい方が多い。男性モデルも、身長やフィジカルがどんどん良くなっていて、世界で活躍できる可能性を感じる方がたくさんいます。実際、銀座や渋谷を歩いていても、思わずスカウトしたくなるような子たちが増えていると感じますね。
―ハンさんご自身が、そうやって街を歩きながらポテンシャルを見出していらっしゃるんですね。日本人モデルが世界で活躍していくために、何が必要だと思いますか。
ハン:日本という枠にとどまらず、韓国やヨーロッパ、グローバルなニーズをしっかりと把握してほしい。グローバルな視点を持ちながら、日本人ならではの長所をきちんと表現できれば、活躍の場はもっと広がっていくはずです。
―GOST Japanを通じて実現したいことは何でしょうか。
ハン:今、グローバルで活躍するアジアモデルの状況を見ると、中国出身のモデルの活躍が目立ち、それに韓国が続いている状況です。でも、これから日本と韓国でその一角をしっかりと担っていけるチャンスもあると、私は感じているんです。
そのためにも、日本人モデルがGOSTを通じて世界基準で活躍できるよう、たくさんのことを伝えていきたい。モデルたちが互いに刺激し合いながら活躍することで、ブランドや企業にもクオリティの高いコンテンツやプロモーションを提供できると考えています。
GOST Japanには、クリエイティブや大手エンターテインメント企業で活躍してきた人材も参画してくれています。韓国での育成の場と、日本との交流拠点となる環境をつくっていくことも、これから重要になってくるはずです。
韓国人は、日本のファッションが本当に大好きなんですよ。モデルはもちろん、ブランドや企業の方々と共に成長していけること、そして若い世代が挑戦できる機会を、日本と韓国が一緒になってつくり上げていければと、私は心から願っています。

堂上:ハンさんの言葉から、GOSTという会社そのものが「誰かの可能性を信じる」という思想の延長線上にあるのだと、あらためて感じました。古川さんからご覧になって、ハンさんのどんなところが魅力ですか。
古川:誠実さと勢いですね。人の話に対して、聴く耳をすごく持っています。対面していて決して人を嫌な気持ちにさせない。人当たりはとても柔らかいんだけど、ちゃんと深い話をすると核心を突いてくる。
誠実なのは間違いないですし、それと同時にハン自身の野心もちゃんとある。「パリやミラノのファッションショーにモデルを出したい、韓国だけに収まりたくない」。そういうグローバルなビジョンを持っていて、私のやりたいこととも一致したんだと思います。

堂上:古川さんにとって、ビジネスやクリエイティブのパートナーとしての「韓国」は、どのような国ですか。
古川:韓国ってファミリーのようにみんなどこかでつながっていて、先輩後輩や仲間という連帯感がすごく強いんです。その「チーム」っていう雰囲気がすごく好きですね。
私のキャリアの初期、2002年の「FIFAワールドカップ 韓国/日本」をきっかけに、スポンサー企業の広告プロデュースを担当して、韓国側のチームと一緒に仕事をする機会が増えたんです。そのとき、韓国側のスタッフから「サッカーやってるよね」と声をかけてもらって、一緒にフットサルをやって、そこから一気にディープな仕事の信頼関係につながっていくこともあって。それが一つのチームで動く感覚と似ていて、私にとって心地よかったんですよね。
堂上:わかります。実は僕も、W杯の仕事で韓国のチームとご一緒したことがあるんですが、試合前に韓国側のスタッフ全員と杯を交わして、初対面の僕のことも仲間として迎え入れて一緒に盛り上がってくれたんです。「一緒に仕事をしている時点で、あなたももう仲間だ」とごく自然に言ってくださるんですよね。あの一体感や仲間を大切にする温かさは、ずっと忘れられないです。
古川:そうそう。一つひとつのことに対して親身になってくれるし、できないことは「できない」とはっきり伝えてくれる。余計な建前を抜きにして、フラットに話せる関係性が作れているっていうのが、すごく心地よかった。それが、私がGOSTの一員として一緒に挑戦しようと思った、一番の理由かもしれません。
グローバルへ羽ばたく若者のための“新たな受け皿”を

堂上:古川さんはGOST Japanに関わるようになる前、韓国の仕事をしながら日本のモデル業界に対して、どんな課題やジレンマを感じていましたか。
古川:正直に言うと、「日本のモデルで、世界で通用している人がどれだけいるんだろう」と思っていました。テレビ番組や雑誌も含めていろんな媒体を見ていると、「今の日本のモデルの体制や環境って、これで本当にいいのかな」という気持ちが湧いてきたんです。
堂上:その「いいのかな」と感じる部分を、もう少し詳しく聞かせてもらえますか。
古川:決して経験が浅いとか、そういうスキルの問題ではないんです。「世界に出るための自信」が足りてない。そして、目標となるべき指針がない。つまり、「自分はグローバルで活躍するんだ」という前提がそもそも育っていないんですよね。日本のマーケットの中だけを見て仕事をしていると、どうしてもそこで完結してしまうんです。
堂上:それはモデル業界だけでなく、多くの日本企業にも共通する課題かもしれません。韓国の企業は最初からグローバル目線で戦略を組み立てているのに対して、日本は業界全体として国内での活動が中心になりがちですもんね。
古川:韓国の場合は、常に新陳代謝をして世代交代が激しいので、若い世代がどんどん世界へ挑戦できる環境が街全体にありますよね。でも、日本は変化という意味では少なくて、そこがグローバルに対してうまくいっていない理由の一つだと思うんです。
ハンから見ると、「日本にグローバルへつながる受け皿がないから、みんなこっち(韓国)に来てしまう」と言っていました。今はK-POPや韓国ドラマなどの韓流コンテンツへのあこがれも根強い。世界を目指したい日本の若者が、GOSTのような韓国のエージェンシーに直接コンタクトを取ってくるケースが増えているんです。
そこで、「だったら日本にもその受け皿を一緒に作ろう」という話になり、GOST Japanの立ち上げに携わることになりました。
堂上:GOST Japanの役割というのは、単に韓国からノウハウや文化を受け取るだけでなく、日本側の強みを引き出して世界へ発信していくことでもありますよね。

古川:まさにその通りです。日本人には、日本人にしかない素晴らしい良さがある。グローバルマーケットのニーズを把握しながら、日本人ならではのグローバルスタンダードを作り出していきたい。冨永愛さんとか森星さんのように、世界のランウェイで活躍する日本人モデルがもっとたくさんいてもいいはずなのに、なかなか続かないというもどかしさが、私の中にずっとあります。
堂上:つまり、可能性のある子たちが「いない」んじゃなくて、彼らが世界へ羽ばたくための「場所」が日本になかった、ということなんでしょうか。
古川:そうだと思っています。可能性のある子がいるはずなのに、世界に出ていくためのやり方が分からなかったり、「自分には無理なのかな」と自信を持てずに諦めてしまったりしている。その環境の壁を、私たちの手で解消してあげたいんですよ。

堂上:その「世界へ直結する場所を作る」という情熱が、GOSTアカデミーの日本版設立へとつながっていくわけですね。
古川:韓国には、短期間で国内外のトップモデルを次々と輩出してきた優れた教育システムがすでにあります。その仕組みを日本でも活かしていくことが、日本人モデルの可能性を広げる一番の近道だと考えています。
一歩を踏み出す「ウォーキング」が自信を育てる

堂上:未来のトップモデルを育成する「GOSTアカデミー」では、具体的にどんな教育をされているんですか。
古川:GOSTアカデミーは、グローバルで活躍できるモデルを育てるための育成機関で、韓国国内でも数少ないプロフェッショナルな環境です。
そこで一番力を入れているのが「ウォーキング」なんですよ。パリやミラノのランウェイを意識したウォーキングを徹底してやる。ウォーキングの先生がよく「ウォーキングをちゃんとできると、自信につながる」と言っています。
正しく歩けるようになると姿勢も変わり、ポージングも自然とできるようになる。さらに今の時代は、SNSでの自己表現力にも直結していくんです。
堂上:余慶さんは韓国のアカデミーの現場を実際にご覧になっているんですよね。どんな印象でしたか。
余慶:アカデミーでは、毎日のようにウォーキングの授業があるのですが、最初の数週間は、一歩も歩かせないんですよ。まず重心の移し方など基本中の基本をひたすら練習して、それが身についてからはじめて歩き始めるんです。
授業の後半では、現役モデルの先生がついて、80分間ひたすらストイックに歩かせたりもして。ヨーロッパではデザイナーごとに歩き方や表情のディレクションが大きく異なるので、それに対応できる力を身につけるという考え方です。
また、ウォーキングが上手にできることが自信に繋がり、それがポージングなどに繋がっていく。だからこそ、ウォーキングをGOSTでは最も重要視しています。

堂上:その徹底した教育システムは、日本でも同じように展開することはできないんですか?
余慶:実は今、日本からGOSTのアカデミーに参加している19歳のモデルがいるんですよ。「美比(みなみ)(@yd1934_k)」という子なんですけど、日本でなかなかご縁がなくて、自信をなくしかけていた子だったんです。
でも、韓国のGOSTアカデミーに飛び込んで、韓国語も全く話せないのに日本人ひとり、多国籍の生徒たちの中でウォーキングをやり遂げて。久しぶりに会ったら、顔つきがガラリと変わっていました。自信がそのまま表情に溢れ出ていて、見違えるようでしたね。
古川:私が以前、まだ彼女の自信が育ちきっていない頃に撮影したときと比べると、今の彼女は表情からして全然違うんですよ。自信に満ち溢れていて。「あぁ、環境が人を変えるっていうのはこういうことなんだ」というのを、目の当たりにしました。
堂上:それはまさに、挑戦できる「環境の変化」が彼女のポテンシャルを引き出したんでしょうね。創業時、GOSTの経営陣は30代前半と若く、モデルとの距離が近いというのも、わずか10年ほどで韓国大手モデルエージェンシーに成長を遂げた大きな特徴だとお聞きしました。

余慶:そうですね。今でもスタッフたちが若いこともあって、本当に距離が近いんです。それこそ友人の延長線上というか、お兄ちゃんやお姉ちゃんのような立ち位置でフランクに交流していて。それに、ハン代表はなるべく一人ひとりのモデルに対して、ポジティブなメッセージを積極的に伝えているんです。
人って、誰かから本気で求められると、自分でも気づかなかったような力を引き出すじゃないですか。その「人間関係を命とすることで生まれた信頼と評判」こそが、GOSTがわずか10年でここまでトップクラスに昇りつめられた理由だと思います。
堂上:「求められると力が出る」という点は、 サッカーの指導現場でも同じですね。良い指導者って、試合中にはあえて細かく言わない。でも、試合後の一言がめちゃくちゃ上手いんです。自分の課題や強みに、選手自身が自律的に気づけるような声をかけられる人が、本当の意味での名指導者だと思っています。GOSTの環境には、まさにそれがあるということですよね。
余慶:本当にある。びっくりするくらい、当たり前のようにそれがあるんです。私は、美比(みなみ)の成長をずっと見ています。まだまだモデルとしてはスタート地点にも立っていませんが、それでもわずか2カ月半で、まるで別人のように輝き出したんですよ。
結果が出るまでの過程でも、GOSTは一人ひとりに徹底して寄り添い続けてくれる。それがGOSTの本当に素晴らしいカルチャーだと思います。
堂上:そのアカデミーの仕組みを、いよいよ日本でも作ろうとしているわけですね。韓国の成功しているメソッドを取り入れながら、日本人の奥ゆかしさとか謙虚さを生かした、オリジナルの環境を。
余慶:日本人は元々そうした素晴らしい内面を持っているわけですから、それを長所として生かしてあげながら、GOSTのグローバルな教育システムを入れたアカデミーを作りたい。今まさに古川さんと二人で、日本版のアカデミープログラムを一生懸命に構築しているところです。
AI時代に、リアルはもっと輝く――人が育つ環境を、全国へ
堂上:古川さんは今、何をやっているときが一番楽しいですか。
古川:一番楽しいのは、「人が成長していく瞬間」を一緒に体験できるときですね。社員でもモデルでも、できなかったことができるようになった瞬間が本当に嬉しい。社員や身近な人たち、モデルの方々もそうですが、私がこれまで培ってきたことやクリエイティブへの想いを、彼らにどんどん引き継いでいってほしいんです。
堂上:「人が育つ」って、一体どうやったら育つものだと思いますか?
古川:プレッシャーと喜びのバランスを、うまく提供していく感じではないですかね。まずは信じてちゃんとやらせてみて、うまくいったときには一緒に喜ぶ。そのサイクルの中で、自分の課題や可能性に「自分自身で気づいてもらう」ことが何より大切です。
言われて動くのではなく、自分で気づいて主体的に動けるようになるために、私たちがどう声をかけて導いていくか。GOSTでは最初からモデルの枠だけに留まらず、タレントや俳優、アーティストへと活動を広げられるよう、韓国の人気俳優事務所「VAST エンターテインメント」との業務提携なども進めています。そうやって本人の才能に合わせたディレクションとサポートの環境を作っていくことが、私の変わらないテーマですね。

堂上:余慶さんはプロデューサーの立場になってみて、今何が一番楽しいですか。
余慶:私は、こうして「人を育てる側」に回れたこと自体が本当に楽しいです。実は「自分は表に出る人間じゃないな」って客観的に気づいたのがだいぶ前だったんですよ(笑)。
そこから裏方に回り、ご縁あってGOST Japanの一員になりました。今は、「私、この子の才能をもっと引き出してあげたいなぁ!」という気持ちがどんどん強くなってきて。
先ほど話した美比(みなみ)のように、まだ自分の可能性に気づいていない子たちが、環境によって見違えるように羽ばたいていく姿を見ることが、今の生きがいです。
堂上:余慶さん、なんだか以前お会いしたときよりも、ずっと良い表情をされていますよね(笑)。誰かが育っていく姿を見て涙が出るというのは、それだけ本気でその人のウェルビーイングに伴走している証拠ですし、素敵な活動だと思います。
余慶:もう、そんなこと言って(笑)。輝く才能を持った人たちを全力でバックアップして、育てる側に回りたいと純粋に思っています。
堂上:古川さんは、これからAIがさらに広がっていく中で、モデルや表現者の仕事はどう変わっていく、あるいはどう価値を変えていくと思いますか。
古川:AIによる自動生成モデルのオーディションも始まっていますし、テクノロジーによってできることがどんどん変わっていくのは確かです。でも、私の中で一つだけ言えるのは、人間が「美しい」と感じるものは絶対になくならない。同じものが2つ並んでいたとしたら、きれいな方を選ぶし、そこにしかない「個性」があるものを選ぶ。AIには真似できない、ストーリーや生身の体温を持った人やものを、これからも作り続けたいんです。

堂上:「Wellulu」も、立ち上げから3年で月間70万人の読者が訪れるメディアに成長してきています。その伸びている最大の理由が、まさに「一次情報」を取りに行っているからなんですよ。AIで調べる人が増えているからこそ、人間の生身で経験したリアルな声、熱量のある対話のコンテンツが、結果として選ばれている。AI時代だからこそ、リアルの価値がますます増していくと日々実感しています。
古川:そうするとやっぱり、これからのAIとの差別化は「人とどう付き合ってきたのか」とか、「生身で何かを経験してきたか」という、リアルの環境の差になってくると思うんです。
堂上:ちなみに、GOSTのアカデミーは東京を中心に展開していくイメージなのでしょうか?
古川:私は地方にこそ、世界を目指したくてもチャンスの場所がなくて、手が届かないでいる才能が、たくさん眠っているはずだと思っているんです。地方創生という観点でも、アカデミーをいろんな都市で展開していって、若い世代が世界へ挑戦できる機会をどんどん世の中に提供していきたいなと考えています。
余慶:アカデミーに興味を持つ子は、地方にもたくさんいると思うんです。この「Wellulu」の記事を通じて、「私もやってみたい」「世界を目指してみたい」という子たちに、この想いが届いてほしい。まだ自分の可能性に気づいていない子たちが、一歩踏み出すきっかけになってほしい。その背中を優しく押すこと、それが彼らの「自信」を育てる第一歩だと思っています。
堂上:今日お話を伺って、GOSTが目指しているのは「人が輝けるための環境を作ること」なんだなという本質が伝わってきました。才能がないのではなく、環境の問題。その挑戦の一歩を後押しする場所が日本にできるのが、今から本当に楽しみです。今日はありがとうございました!
古川・余慶:ありがとうございました!

大学までサッカーに打ち込んだのち、広告業界へ転身。コピーライターの事務所に潜り込みキャリアをスタート。糸井重里氏、浅葉克己氏ら一流クリエイターたちの仕事に間近で触れながら、プロデューサーとしての経験を積む。その後、韓国との仕事を重ねる中でGOSTの代表ハン・ワンヒ氏と出会い、2026年のGOST Japan本格進出にともないCEO兼クリエイティブプロデューサーに就任。日本人モデルのグローバルな活躍を後押しすべく、日本独自のグローバルスタンダード作りに取り組んでいる。
https://gostjapan.co.jp/