1分のビジネスヨガって?

株式会社ECOTONE代表取締役社長 Wellulu編集長

堂上 研

1分がもたらす価値

僕がWelluluの編集長になって3年。大阪のNTT西が運営するQuintbridgeで女性起業家のアワードがあった。そこに誘って頂き、素晴らしい経営者や起業家とお会いできた。その中で、関西弁で身体の隅々までをケアされている小林真沙衣さんに出逢った。

早速、僕は彼女にWelluluで対談させて頂くことにした。この出会いから、大阪から東京に来る度にご連絡頂き、お話しさせて頂いている。そんな中、本を執筆されたとのことで連絡を頂き、「1分」にこだわった日常の習慣をつくる本を献本頂いた。

成果を出し続けるために、本当に必要なものは何か?

日々プレッシャーとストレスと向き合いながら働くビジネスパーソンにとって、これは永遠の問いかもしれない。かつては「限界まで自分を追い込むこと」こそが美徳とされた時代もあった。僕も、広告マンたるもの寝るのも惜しんで仕事すべきと考えて仕事中心の生活を送っていた。

けれども、年を重ねたこともあるかもしれないが、激動の現代において真のパフォーマンスを生み出す源泉は、追い込みではなく「心身のコンディションの最適化」にある、と感じていた。Welluluの対談を通して、そう変化していた中、今回の本に出会った。

健康経営アドバイザーであり、インド中央政府公認ヨガ指導者でもある小林 眞咲惠(こばやし まさえ)さんの『パフォーマンスを高める1分ヨガ』が、全てのビジネスパーソンの習慣化のために読んで欲しい1冊とあり、ここに紹介させていただきたい。

外資系企業の役員秘書として10年近く経営陣を支えてきた小林さんだからこそ辿り着いた、伝統と科学が融合する「1分ヨガ・メソッド」。本書の魅力を紐解くとともに、僕自身が日頃親しんでいるピラティスでの実践・身体感覚と交差させながら、働く人のウェルビーイングについて考えてみたい。

『パフォーマンスを高める1分ヨガ』が解き明かす、伝統と科学のシナジー

本書を著者の小林さんは約15年間にわたる外資系企業での勤務経験があり、そのうち約10年間は緊張感溢れる役員秘書として経営層のサポートに従事されていたとのこと。これは確かに落ち着く時間がないのかも。ビジネスの最前線で「一瞬の判断が成果を左右する」世界を間近で見てきたからこそ、彼女の言葉にはリアリティがある。

2021年、亡き恩師の遺志を継いで起業された小林さんは、インド中央政府公認S-VYASA大学にて4年間にわたり伝統的なヨガの智慧を体系的に学ばれた。さらに、厚生労働省「『統合医療』に係る情報発信等推進事業」に基づく「eJIM(イージム)」でのヨガ分野の構造化抄録作成や、PHR(パーソナルヘルスレコード)を活用した企業との実証実験など、ヘルスケアの科学的アプローチにも深く携わられていたとのこと。

「伝統の智慧」×「科学的根拠」×「ビジネス現場のリアル」

この3つが高度に結実したのが、本書で紹介されている「1分ヨガ・メソッド」である。ヨガと聞くと、「マットを敷いて、専用のウェアに着替えて、1時間みっちり行うもの」というイメージを持っていた。実際、Welluluでやってみた「よりみちヨガ」は僕にとって15分も長く感じるものだった。多忙を極める人にとって、そのハードルは思いのほか高いものであり、習慣化には無理があると感じていたのである。実際、僕はパーソナルジムの筋トレも、よりみちヨガも、ある程度時間と体力を拘束されるものは、ことごとく習慣化に失敗している。今のところは、ピラティスは1ヶ月は続けられているが、今後どうなるか分からない。

小林さんが提唱する「1分ヨガ」は、デスクワークの合間や移動時間、プレゼン前のわずかな隙間時間に実践できる超実践的プログラムである。

脳科学や生理学の知見に裏打ちされた呼吸法やアライメント(姿勢の調整)は、たった60秒で自律神経に働きかけ、過度な緊張状態(交感神経優位)から「適度なリラックスと集中が同居する状態」へと心身を導いてくれる。

本書は単なるポーズ集にとどまらず、「なぜ今、働く人にこの調律が必要なのか」という本質的な問いから丁寧に解説されており、ビジネス誌『企業実務』での掲載やメディア連載で支持される理由が凝縮されていた。

ピラティス体験を通じて実感した「心身の調律」という共通言語

本書を読み進める中で、僕は自分自身の「ピラティス体験」と強く重なる感覚を覚えた。背骨から足先までの骨の位置を確認しているだけの時間だが、マシーンを使い心地よいマインドフルネスの時間になっている。

僕は、Welluluを通して自分身体のメンテナンス、コンディショニングのために呼吸を整え、ピラティスで身体の部位を感じるように取り入れるべき動き出している。

ヨガが呼吸や精神の統一、エネルギーの調律を重視するのに対し、ピラティスはインナーマッスル(深層筋)の強化や骨格のアライメント補正に重きを置く側面がありますが、両者が目指す根底のゴールは同じだと思う。

それは、「自分の身体と心に意識を向け、本来のニュートラルな状態を取り戻すこと」であり、「無自覚な力み」に気づく瞬間である。

日々の仕事に没頭していると、僕たちは知らず知らずのうちに体に力が入っている。猫背になり、骨盤が立っていない。パソコンに向かいながら呼吸が浅くなり、肩が上がり、顎が前に出る。この「微細なストレスの蓄積」が、疲労感や集中力の低下、ひいては意思決定の質の低下を引き起こしていることに、今さら気づいたのである。

僕がピラティスのセッションで最も感動するのは、「あ、自分はいまこんなにも無駄な力が入っていたんだ」と気づく瞬間だ。筋肉で動くのではなく、骨が動いている感覚。正しい骨盤の位置を意識し、深い胸式呼吸を繰り返すことで、散らばっていた意識が自分の中心(コア)へと戻っていく。セッションが終わった後の頭の冴え渡る感覚や、視界がクリアになる感覚は、まさに「心身のチューニング(調律)」そのものだ。実際、まだ1ヶ月だが、背筋が伸びた感じがする。

小林さんの『パフォーマンスを高める1分ヨガ』でも、この「気づき(アウェアネス)」の重要性が強調されていた。

1分間、自分の呼吸に意識を向ける。
1分間、凝り固まった背骨を整える。

このわずかな「立ち止まり」こそが、無自覚な力みをリセットし、再び高いパフォーマンスで走るための「滑走路」となるのだ。ヨガであれピラティスであれ、アプローチの手法は違えど、「自分の身体を客観的に観察し、整える」という習慣を持つことが、いかに現代のビジネスパーソンにとっての武器になるかを再確認した。

「追い込む」から「ととのえる」へ——持続可能なウェルビーイングの形

かつて、ビジネスにおける成功哲学の多くは「努力の量」や「忍耐」にスポットが当てられていた。けれども、今のAIと共存する社会は、不確実性が高く、常に変化に晒されている。自分を追い込み続けるだけのスタイルは限界を迎えてしまう。

小林さんが本書の中で投げかける「成果を左右するのは、自身を追い込むことではなく心身のコンディションにある」というメッセージは、まさにこれからの時代における「ウェル・ワーキング(Well-Working)」の真髄だ。

組織と個人のウェルビーイングを高めるために
現在、多くの企業が「健康経営」や「ウェルビーイング」の推進に乗り出している。けれども、最近の研究で、強制的なウェルビーイングはウェルビーイング労働と言い、より疲弊するtのレポートも上がってきた。制度や仕組みを整えるだけでは、現場の働く一人ひとりの活力向上にはつながりにくいという課題もある。

『パフォーマンスを高める1分ヨガ』は、個人が今すぐ始められるやりやすいセルフケアの習慣化であると同時に、組織のカルチャーを変える可能性を秘めている。

会議の冒頭にチームで1分間の呼吸法を取り入れる、あるいは業務の合間にマイクロブレイクとして身体をほぐす。そうした小さな習慣の積層が、心理的安全性を高め、チーム全体のパフォーマンスを引き上げていくはずである。

実際にPHR(パーソナルヘルスレコード)などのデータを活用した実証実験にも参画されている小林さんの取り組みは、感覚論になりがちな「ととのえる」という行為を、客観的・科学的に証明していく素晴らしい試みだった。

今日から始める、1分の心身調律
小林 眞咲惠さんのご著書『パフォーマンスを高める1分ヨガ』は、多忙な日常に追われ、自分の心身の声に耳を傾ける時間を失いがちなすべての人に向けた、温かくも力強い「処方箋」となるだろう。

僕も、日々の1分ヨガを習慣化していきたいと思う。疲れているのに眠れない。重要局面で本来の力を発揮したい。長期的・持続的に成果を出し続けたい。ぐっすり眠りたい。日常のパフォーマンスを上げたい。そんな人はたくさんいらっしゃるだろう。

素晴らしいご著書、心より感謝申し上げます。

【書籍情報】
タイトル:『パを高める1分ヨガ』
著者:小林 眞咲惠(健康経営アドバイザー / インド中央政府公認 ヨガ指導者 Level Ⅱ)

堂上 研 株式会社ECOTONE代表取締役社長 Wellulu編集長

株式会社ECOTONE代表取締役社長
ウェルビーイングメディアWellulu編集長
情報経営イノベーション専門職(iU)大学教授
日本イノベーション協会 理事
私生活では、3人の子供の父。趣味は、スポーツとアート。

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