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次代の“芸術文化共創コミュニティ”とは? 「直島芸術生態系vol.0」の体験〈中篇〉

直島芸術生態系

香川県の瀬戸内海に浮かぶ小さな島のひとつ、直島。1990年代以降は現代アートの聖地として知られ、国内外から多くの旅行者が訪れています。瀬戸内海の島に、世界中の子どもたちが集える場を作りたいという思いから「直島国際キャンプ場」をスタートし、その後ベネッセアートサイト直島が築き上げてきたこれまでの30年、そして、これからの100年後、あるいは200年後の直島の姿とは。ウェルビーイングを実現するアートやローカルの可能性とともに、この島の未来図について考えていきます。

2023年9月17日(日)・18日(月・祝)の2日間にわたり、直島および豊島の一部地域において、国内のアーティストやクリエイター、起業家、有識者、専門家といった多様なジャンルの人々が集う実験的な集まり「直島芸術生態系vol.0」が開催された。発起人は、福武財団理事長・ベネッセホールディングス取締役の福武英明氏。そこにはどのような意図や思いがあったのか。さまざまなプログラムを巡りながら、多様なバックグラウンドを持つ参加者と共にした時間を振り返る。

前編・後編記事はこちら

次代の“芸術文化共創コミュニティ”とは? 「直島芸術生態系vol.0」の体験〈前篇〉
次代の“芸術文化共創コミュニティ”とは? 「直島芸術生態系vol.0」の体験〈後篇〉

豊島という場所で、「豊かさ」を問う。“歩行禅”プログラム体験/豊島美術館

直島からフェリーで豊島へ。向かった先は、唐櫃地区の小高い丘にある「豊島美術館」。水滴のような形を想起させるこの美術館はは、アーティスト・内藤礼氏と建築家・西沢立衛氏によるもの。広さ40×60m、高さ4.5mの柱が1本もないコンクリート・シェル構造で、建物の開口部からは光や風、雨などが入り込み、時間の経過とともに自然と呼応する有機的な空間です。内部では、いたるところから水が湧き出て滴が伝う様子が見られ、一日をかけて「泉」が誕生する作品「母型」を鑑賞することができます。

今回は、一日が始まる瞬間、何もない空間に水が生まれ出る瞬間を鑑賞するという「朝の特別鑑賞プログラム」体験に加え、今回の参加メンバーの一人である「両足院」副住職の伊藤東凌氏による“歩行禅”とのコラボレーションといったスペシャルな鑑賞プログラムを体験させていただきました。豊島美術館までの棚田と海が見えるアプローチを静かにゆったりと歩きながら、島を体感できるランドスケープとともに、作品へと誘われていきます。

直島芸術生態系

直島芸術生態系

美術館に到着すると、伊藤東凌氏による歩行禅のお話がありました。歩行禅とは、いわば“歩く瞑想”のようなもの。

「ここでは、無言でゆっくりと歩いていただきます。意識していただきたいのは、姿勢、動作、呼吸の3つです。姿勢はできるだけ体をまっすぐにしていただき、歩くときにお腹を緩めずにぐっと締め続けてください。それから、肩甲骨を少し後ろに引き寄せて、両肩の延長上にちゃんと耳がきている状態。手の位置は、指先を揃えて右手をお腹の上に、その上に左手を置きます。これが基本の形です」

直島芸術生態系

直島芸術生態系

プログラム体験

美術館の中を歩行禅でゆっくりゆっくり歩いていきます。自然の中でひとりひとりの点が、線としてつながり、地と空の間に溶け込むような感じで進んでいきます。

「形ができたら、一歩ずつゆっくりと歩いていきます。体重移動を楽しむように、丁寧に。両足でしっかりと自分の体重を感じながら、じわじわとかかとから着地していって、徐々につま先へと重心が移動していくような感じです。

理想は、呼吸の力で体を運んでいるようなイメージです。息を吸ったときに足が持ち上がって、足を下ろし始めたら息を吐き始める、といったように。自分の意識の中で、体重が乗っていく、シフトしていくのをできるだけ感じ取ってみてください。姿勢と動作だけでも意識を使い分けなきゃいけないのと、さらには呼吸もあるのでなかなか難しいと思いますが、できるだけ意識してやってみてください。

空間の中では、前後の人と一定の距離を保つようにしながら、皆さんで円を描くようにぐるぐると歩いてみましょう。歩行禅は10分間ほど行います。その後は心ゆくまで自由に作品を鑑賞してください。それでは参りましょう。まず一歩目は左足から」

内藤礼 「母型」
内藤礼 「母型」2010年 写真:森川昇
内藤礼 「母型」
内藤礼 「母型」2010年 写真:森川昇

「母型」の中で、今回集まったメンバーがひとつの輪になりました。呼吸を整えて、姿勢を意識して、心を無にしながら、ゆっくりゆっくり歩き続けます。朝のゆったりした時間に、空の動きを感じつつ、自分と対話しながら、前にいる人と後ろにいる人を意識します。

歩行禅が終わったあと、輪の中心に向かって一礼をします。すると30人ほどの参加メンバーがそれぞれ自分の気持ちのままに、自分の好きな場所に行きました。そのままの場所に座り込む人もいれば、寝転がる人もいました。

目を閉じてじっとしていると、今見えている空の中で動く雲の動き、風を感じます。静寂の中で、ちょっとした布が擦れ合う音、裸足で歩く音でさえも、感じ取ることができ、音や呼吸が響きあうことで、この世界には、自分ひとりだけでなく、他者と共に生きていることを感じさせてくれます。

地面からは、水滴が生まれ、その水滴が何かに向かって流れ出していく。すると、違う水滴と合流して、大きな水滴になります。まるで、水自体が生き物のように、ゆっくりゆっくり呼吸しているような感じでした。

私たちの生きているこの地球で、自然と一体となって共生する感覚でした。自分と向き合い、他者と向き合い、自然と向き合うことにより、お互いがお互いを意識しあい、共存していくことがウェルビーイングな生活に一歩近づくことができると実感させていただきました。

歩行禅があったからこそ、私たちは「つながり」を感じることができました。ここから未来は、どういうものにつながっていくのか、浄化した心の中に、新たなセレンディピティを期待している自分がいることに気づかされました。

豊島の風景
豊島の風景

ローカルを繋ぐARTとEATの関係性。「UDON HOUSE」のうどん作り体験/豊島エスポワールパーク

直島芸術生態系

直島芸術生態系

うどん作り体験

豊島美術館でのプログラム鑑賞後は、「UDON HOUSE」によるうどん作り体験が「豊島エスポワールパーク」で行われました。今回の「直島芸術生態系Vol.0」の最後のプログラムです。集まったメンバーで、何かいっしょに体験できることがあるといいよね、という話から「うどんづくり体験」をしたのです。

香川県三豊市を拠点に、讃岐うどんの歴史と文化を伝える体験型宿泊施設を運営している「UDON HOUSE」は、うどんを打たないと泊まれない、というユニークな宿泊施設。香川県といえばうどんが有名ですが、よりディープかつローカルなうどん文化を体験してもらうべく、さまざまな体験プランやプログラムを展開しています。

香川県の一世帯あたりのうどん消費量は、全国平均の約7倍?コンビニよりもうどん店が多い?といった話題から、メニューの種類や注文スタイル、お会計のタイミングなど、初めての人にとっては全てがエンターテインメントであるという、香川県ならではのうどん店の話まで。子どもから大人まで幅広く愛される「うどん」という食文化を、多くの人に楽しく伝えようとする姿勢が伝わってきました。

うどんづくり体験

うどんづくり体験

自らの体となる食べものを、自らの手で作ること。料理はもっとも日常的でクリエイティブな行為であり、私たちにとって食べることとは、もっとも身近なコミュニケーションであるかもしれません。うどんを作っているときや食べるときの皆さんの表情が、それを物語っています。参加者のひとりが「うどんって、こんなにおいしいんですねえ」としみじみと呟いていたのが印象的でした。

「直島芸術生態系Vol.0」は、2日間のプログラムで無事終了しました。今回、直島と豊島の一部分に触れただけですが、この2日間を通して参加したみなさんが何を感じ、今後の生活にどういうアクションを起こしていくか楽しみで仕方がありません。

今回、福武英明氏が何を想像して、何を創造したいのか。次の30年、次の100年をを見据えて、多様な人たちが集まる新たな生態系をつくっていくための何かが埋まっているような気がします。後編で、その解につながるヒントを探りたいと思います。

うどんづくり体験

うどんづくり体験

〈Information〉

豊島美術館
UDON HOUSE
豊島エスポワールパーク

前編・後編記事はこちら

次代の“芸術文化共創コミュニティ”とは? 「直島芸術生態系vol.0」の体験〈前篇〉
次代の“芸術文化共創コミュニティ”とは? 「直島芸術生態系vol.0」の体験〈後篇〉

編集部日記

直島から、自分と向き合う(2023.09.17)/Wellulu 編集部プロデューサー堂上 研
直島ウェルビーイング体験記(2023.09.19)/Wellulu 編集部プロデューサー堂上 研

リリース情報

直島が舞台の芸術文化共創コミュニティの体験記事が公開されました。

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