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【青森県】少子高齢化問題に向けて!楽しく地域を活性化する「地域共生社会」の実現へ

少子高齢化が進むいわゆる「2025年問題」については、以前から大きな課題と捉えられており、青森県では独自の体制を整え、地域共生社会の実現に向けて積極的な取り組みを進めています。健康福祉部の浅田さんによると、「専門職の皆さんや地域住民も一緒になって連携を強化し、楽しみながら地域の活動を活発化していくことを重視している」とのこと。地域共生社会の推進に向けて、具体的にどういったアプローチを展開し、住民一人ひとりが安心して暮らせる環境を目指しているのか?詳しくお話を伺いました。

浅田 英輔さん

健康福祉部健康福祉政策課

児童相談所児童心理司の経験を経て県庁に異動。地域共生社会の推進にかかわる取組みの企画・運営に携わる公認心理師。

本記事のリリース情報

ウェルビーイングに特化したWebメディア「Welulu」の取材を受けました!

医療・介護連携の課題から生まれた「地域共生社会」の推進

──青森県における地域共生社会の推進についての背景を教えていただけますか?

浅田さん:青森県は、全国的にみても少子高齢化や人口減少が深刻であり、特に都市部以外において医療や福祉サービスの不足が顕著となっています。

例えば、弘前大学のある弘前市では比較的医療機関が多いですが、他の地域では病院も少ないですし、医師、看護師、保健師もケアマネジャーも介護福祉士も不足している状況です。このような背景から、医療だけでなく、福祉の面でも住民や地域の専門職が力を合わせ、それぞれができることをやっていく体制をつくっていかなければならないと考えました。

──地域住民の協力が重要な役割を果たしているのですね。

浅田さん:はい、まさにそうです。病気や怪我をしたら病院にいきますし、介護が必要な人は介護サービスを利用します。そこで医療と介護が適切な連携体制を作り、スムーズに地域の生活に戻っていけるよう支援することが大事です。でも、地域で暮らすということは、当然ですが医療と介護以外の部分がたくさんある。医療と介護がつながり、そして地域ともつながっていくことが重要であるといえます。

──「医療介護連携」について、青森県が取り組んでいる具体的な事例について教えていただけますか?

浅田さん:はい。厚生労働省が指針を示している医療介護連携体制については全国的に取り組みが進んでいますが、青森県では県内6圏域において入退院時の調整ルールを策定しました。退院後に介護サービスの利用が必要な患者さんには、在宅介護へのスムーズな移行のために退院前カンファレンスをすることなどが含まれます。

──青森県内の各地域での取り組みはどのようになっていますか?

浅田さん:県内の6圏域において、それぞれ入退院調整ルールがあります。県がルールを押し付けるのではなく、地域の医療・介護関係者が集まり、実際に必要とされるルールを話し合って策定しています。これにより、それぞれの地域の実情に合った連携が可能になっています。

地域共生社会の構築には、様々な専門職による多職種連携が鍵となっています。例えば、入院病棟の看護師とケアマネジャーが顔を合わせることで、より深い情報共有が可能になります。これは、紙上のやり取りだけでは得られない、生きた情報の交換となり、より実際の生活に適したサービスの提供ができるようになります。これには、薬局の薬剤師や理学療法士、作業療法士等々多くの方々が加わることで、さらによい支援体制となっていきます。

取り組み①:「多職種連携」で多様なニーズに対応

──多職種連携強化に向けた具体的な取り組みはありますか?

浅田さん:多職種連携強化のための研修会を定期的に開催しています。職種が異なると、使っている専門用語も違いますし、文化も違います。顔を合わせ、ちょっと仲良くなることで、互いの役割や知識を共有し、少し理解しあえる関係になります。。こうした取り組みにより、関わる専門職の人々が積極的にかかわり、自ら学び合い、協力体制を築く動きが広がっています。開催している研修会には、いろいろな分野の専門職の方が参加されるようになってきています。

──この連携によって、参加者の取り組み方に変化はありますか?

浅田さん:はい。たとえば、何か問題が発生した際に「この問題は誰に聞けばいいか」「こないだ研修会で仲良くなったあの人にちょっと電話してみよう」などができるようになります。異なる職種の専門家がお互いを知り、直接コミュニケーションを取れることで、困りごとへの対応が迅速かつ効率的に行えるようになりました。また、多職種が連携することで仕事のやりがいも増していると感じています。これは、地域共生社会の構築に向けた大きな一歩だと考えています。

また、多職種連携研修会の一つとして、さまざまな講習会を行なっていますが、青森県は県民性もあってか、「ファシリテーターが苦手」な人が多いんです。なので、参加者皆の意見を吸い上げながら適切に会議を進められるファシリテーションを学ぶ機会を提供しています。仕事の上でいろんな話し合いがありますが、スムーズに建設的に意見を言い合えたら、よりよい青森県になるのではないかなと考えています。

──他にも多職種連携強化によって見えてきた影響はありますか?

浅田さん:困りごとが起きているご家庭の中には、いろいろな問題が同時に起きている場合もよくあります。地域包括支援センターが対象とするのは高齢者ですが、家庭を訪問してみたら、障害のある家族がいたり、引きこもりの息子さんがいたり、子どもさんの不登校で悩んでいたりします。そういったときに、ケアマネジャーが障害相談や子育て支援の担当者とつながっていると、支援につなげやすくなります。そういった支援者同士のつながりは、まだまだですが、できてきている感触はあります。

高齢者についても、みんな介護問題で困っているのではなく、趣味や集まりの機会を求める人々もいます。多職種連携だけでなく、地域の皆さんと一緒に取り組むことで、より地域が元気になっていくのではないかと考えています。

取り組み②:「市町村を支援する」独自の体制を構築

──青森県独自の「ゼロSC」取り組みについても、詳しく教えていただけますか?

浅田さん:「ゼロSC」は、「第0層生活支援コーディネーター」のことで、市町村の地域作りをサポートするために始めた取り組みです。介護保険の仕組みのなかで、「第1層生活支援コーディネーター」は 市町村圏域を、「第2層生活支援コーディネーター」は生活圏域をサポートする役割とされていますが、青森県独自に、圏域をサポートする役割として「第0層生活支援コーディネーター(ゼロSC)」を設置しました。

市町村役場の方々はとてもいそがしくて、新しい事業や地域を良くするために考えなければいけない取り組みに手が回らない状況があったので、県が、市町村と一緒に地域の課題に取り組む体制が取れるとよいのではないかと考えました。令和5年度から6圏域に「ゼロSC」を配置し、市町村の相談に乗ったり、会議での助言を行う役割を担っています。

──「ゼロSC」の担当者は、どのような背景を持った方々ですか?

浅田さん:「ゼロSC」は、地域でさまざまな活動をしている人たちにお願いしています。コワーキングスペース運営や地域作りに関わる会社の方や、介護事業所を運営しながら地域作りに力を入れている方々などです。既に様々な活動をしている方々なので、とても頼りになります。

──これまでの「ゼロSC」の活動で、特に印象に残っている事例はありますか?

浅田さん:まだ始まったばかりで多くの事例はないのですが、ひとつよい流れができているところがあります。第1層や2層のコーディネーターって、最初「なにすればいいかわからない」ということがよくあります。それについて、私が継続的に「なにができるとよいだろう」ということを一緒に考えてきた段階でゼロSCに引継ぎ、「今度は地域に必要な取組みを具体的にしていこう」となっているところがあります。県と市町村とゼロSCがうまくつながれたケースだなと感じています。これから、交通手段の問題や買物の問題などを具体的にどうしていくのがよいかということが進んでいくと思います。

取り組み③:楽しみながら「住民の活動を活発化」する

──他にも何か地域共生の取り組みはございますか?

浅田さん:「見守りさん養成講座」というプログラムがあります。主に地域住民を対象に開催しているもので、コミュニティナースの方を講師として、ほどよい「健康おせっかい」について学びながら、そこに暮らす人たちができることはなにか、と考えるものになっています。

また、「活動連携ワークショップ」では、見守りさんの学びを活かし、地域での実践的なアクションプランを考案します。これは、参加者の皆さんが自分がやりたいこと、できることを考えてもらうことを中心にしており、あわせて参加者同士のつながりを深めることも大事にしています。

──「活動連携ワークショップ」では、具体的にどのような内容が話し合われているのですか?

浅田さん:ワークショップでは、様々なアイデアが自由に飛び交います。例えば、コーヒー屋台を開きたいという方もいましたし、地域の若者を巻き込んだイベントをやりたい、花が好きだから花壇づくりをしたら高齢者の方も参加してくれるのではないかなど、多岐にわたります。これらのアイデアは地域のためになにかしたいという気持ちと、自分が楽しいことをやりたいということを大事にしています。

──地域づくりに対して、県としての支援はあるのですか?

浅田さん:私が担当している事業では、直接的な補助金の提供よりも、住民の主体性を尊重し、良好な交流とアイディアの共有の場を提供することに重点を置いています。ワークショップ参加者間での情報共有や進捗状況の共有のためのオープンチャットのようなツールも活用されていて、一度のワークショップに留まらず、継続的な関わりを重視しています。

これまでの関わりで見えた、住民主体の難しさと大切なこと

──地域の方々の主体性をサポートするような関わり方をされているんですね。一方で、「地域共生社会」の実現に向けて課題に感じている部分や今後取り組みたいことはありますか?

浅田さん:地域共生社会の実現に向けて、地域の方々が主体的に活動していることがみえてきたことは、大事なことです。しかし、課題もあります。特に、県の取り組みが長期にわたるものであるため、わかりやすい成果がみえにくいところがあります。

また、職員の異動などにより、構築された人間関係や知識の継承が途切れがちになることも課題です。地域の方々や市町村職員がより元気になるためには、これらの課題に対応し、地道な取り組みを継続していくことが重要だと感じています。

──地域共生社会において、担当してきた経験からの気づきはありますか?

浅田さん:当初は県は市町村役場や住民に「やらせなければならない」という思いがありましたが、実際にはすでに積極的に活動している人が多くいることに気づきました。

このような人々に注目し、応援し、その活動を広く発信することで、他の住民も参加しやすくなります。また、地域住民との直接的な交流や、役場との関わり方の難しさも実感しています。県でも市町村でも、役所が関与することで形式ばったものになりがちですが、行政側も住民と一緒に考える姿勢を示して、共同して取り組んでいけるようになることがとても重要だと考えます。

──「地域住民と一緒に取り組み」というのが青森県の軸となる姿勢かなと思うのですが、難しさはありますか?

浅田さん:役場職員や県庁職員としての立場が、時に地域住民との間に壁を作ってしまうことがあります。住民は役場が主催すると、何か仕事を押し付けられると感じたり、自分たちの意見を出しにくいと感じることがあるようです。また、座談会が役場に対する不満の場になることもあります。「そうではなく、みなさんの意見を聞く場ですよ」「一緒に考える場ですよ」ということを伝えることが、なかなか難しいと感じています。

──県の立場から地域共生社会を実現するために、今後どのようなことに取り組んでいきたいと考えていますか?

浅田さん:地域共生社会を推進するために、私たち行政は、住民を尊重し、同じ立場で一緒に作り上げていく姿勢が重要です。地域の皆さんが行政をうまく利用し、自分たちに必要なことに取り組めるよう支援していきたいです。また、地域における良い事例や有意義な関わりを広め、「自分もやってみたい」と思えるようにしたいと思います。

──ありがとうございました。地域共生社会を目指す中で、住民、行政、専門職が互いに協力し合いながら、それぞれの役割を果たしていくことの重要性を学ぶことができました。住民主体の活動と行政のサポートが組み合わされることで、より豊かで活気のある地域社会が実現していくことを期待しています。

刺激的な芸術体験に自然の癒し…、ゆっくり巡りたい青森県のウェルビーイングスポット

──最後に、青森県で浅田さんおすすめのスポットを教えてください!

浅田さん:「青森県立美術館」には是非一度足を運んでほしいです。青木淳による斬新な建築デザイン、菊地敦己の統一されたシンボルマークやサイン、ミナ・ペルホネンの制服デザインなど、美術館の隅々にまでこだわりが感じられます。

マルク・シャガールによるバレエ「アレコ」の舞台背景画を展示するアレコホールは圧巻です。縦横21m、高さ19mの四層吹き抜けの大空間に設置されたこの作品は、シャガールの色彩の魔術が存分に発揮された舞台美術の傑作として知られています。

また、青森出身の奈良美智の《あおもり犬》や、版画家の棟方志功の作品も是非一度みてほしいです。三内丸山遺跡もすぐ近くにあるので、自然と歴史が融合した環境の中での芸術体験を楽しんでもらいたいです。

──世界的に有名な作家さんの作品だけでなく、遺跡も一緒に楽しめるんですね。他にもおすすめのスポットはありますか?

浅田さん:豪雪で有名な「酸ヶ湯(すかゆ)温泉」も一度いってみてほしいです。江戸時代から続く歴史ある湯治場で、八甲田連峰の西麓、標高約900mの高地に位置しています。四季折々の八甲田山の絶景を楽しみながら温泉を満喫できます。特に有名な大浴場「ヒバ千人風呂」に入ってみてください。

また、近くにある全長360メートル、アーチ支間長255メートルの日本一の上路式アーチ橋「城ヶ倉大橋」もぜひ訪れてみてほしい場所です。冬季は通行が困難になることもありますが、日の入りのタイミングには特に美しい夕焼けを楽しむことができます。夏の新緑、美しい紅葉、冬の雪景色など、四季を通じて八甲田山の絶景を眺めることができます。

もう一つ、八戸市にある「八食センター」もおすすめです。地元の人々にも人気な市場で、お寿司を食べたり、新鮮な海産物を購入してその場で焼いて食べることもできます。子供たちが遊べる「くりやランド」という施設もあり、家族連れにもおすすめのスポットです。

──アートあり、自然あり、温泉あり、そしておいしい食事まで。魅力的なスポットをご紹介いただきありがとうございます。

浅田さん:青森県は広いので、県内をしっかり観光しようと思ったら数日は必要です。四季がそれぞれ楽しめますので、何回も訪れて、ぜひいろいろな地域を巡ってもらえると楽しいと思いますよ。

Wellulu編集後記:

青森県における地域共生社会の推進は、少子高齢化や人口減少という厳しい課題に直面している中での重要な取り組みです。医療と介護の連携強化、多職種連携による多様なニーズへの対応など、青森県は地域の課題解決に向けて多角的なアプローチを進めています。

さらに、住民が主体となって参加するワークショップや「見守りさん」プログラムは、地域住民の積極的な関与を促し、地域の結びつきを強化しています。これらの活動は、住民一人ひとりが地域の一員として自覚を持ち、共に支え合う社会を形成するために不可欠です。

青森県の地域共生社会への挑戦は、他の地域にとっても参考になる事例であり、今後の展開に注目が集まります。住民、行政、専門職が協力し合いながら、それぞれの役割を果たしていくことが、地域共生社会の実現には欠かせないということを、この取材を通じて改めて感じました。

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