豊かな自然に美しいビーチ、おいしいフルーツにご当地グルメ…、観光地としても高い人気を誇る宮崎県。今回は、宮崎県総合政策課・百枝さんと観光推進課の重信さんにインタビューを実施しました。県民への意識調査を基に「宮崎県民らしさ」を探るとともに、これからのビジョンについてもお伺いしました。また、令和元年から始まった「デトックス・トリップ宮崎」プロジェクトの背景や、地域住民を巻き込んだ新たな観光体験の提供など、今気になる宮崎県のコトをいろいろ聞いてきました。
百枝 新也さん
宮崎県総合政策部総合政策課 企画担当 主査
重信 美紀さん
宮崎県商工観光労働部観光経済交流局 観光推進課国内誘致担当 主事
国内からの観光客を誘客するため、働く20~40代の女性をターゲットにした「デトックス・トリップ宮崎」や県内の観光情報の発信などを担当。
本記事のリリース情報
デジタルメディア「Wellulu」で「デトックス・トリップ宮崎」など宮崎県の取り組みが紹介されました
家族想いな人が多い?意識調査に見る「宮崎県らしさ」とは?
──本日はお時間いただきありがとうございます。まず「宮崎らしいゆたかさ」というところで、百枝さんご自身の実感をお聞かせいただけますか?
百枝さん:私は隣の鹿児島県の出身で、大学入学の際に宮崎県に来ました。大学卒業時にまた地元の鹿児島に戻って就職後、数年経って宮崎県の職員になったんですね。宮崎と鹿児島両方に20数年ほど暮らしたのですが、その中で私が感じる宮崎らしさは一番に、「穏やかで優しい県民性」かなと思っています。
──「穏やかで優しい県民性」素敵ですね。具体的に何かございますか?
百枝さん:民間の意識調査等で、多様なデータが出ています。特に県民性を表すような家族についての項目が全国でも上位です。例えば、「家族を大切にしたい」と考えている方が88%で全国2位、「家族の仲がいい」が76%で全国3位。「夫もよく家事に参加している」が47%で全国5位です。さらに、「家族との時間にお金をかけたい」は44%で全国3位と、身近な家族を大切にしながら仲もいいと言うのが特徴です。
──家族を大切にする姿勢がベースにあるのですね。暮らしやすさについても何かありますでしょうか?
百枝さん:特徴的なのは「物価の低さ」が全国トップ、また「公園や住宅、道路面積が人口一人当たりに対して広い」ので、暮らしやすさにもつながっているのではないかと思います。日本最大級の「ひなた宮崎県総合運動公園」も有名ですね。通勤通学時間は往復で平均56分で全国最短です。これは、夫の育児・家事時間にも関連しているのではないかと考えています。また、日照時間が長いことも宮崎の特徴で、気候からくる心のゆたかさといったポイントもあると思います。実際にプロ野球やJリーグのキャンプとしても活用されているのは、気候も大きな要因です。
──物価や土地の豊かさ、気候や通勤時間の短さはまさに心のゆたかさに直結しそうですね。方言も特徴的で、県民が誇りを持っていると伺いました。
百枝さん:はい。「方言のかわいさが自慢」と答えた方が21%で、昨年全国2位でした。実際に同じ九州であっても他県の方から方言についてポジティブな声が挙がることが多いですね。私が鹿児島から宮崎へ来たときも、いつも通りの会話のつもりが「怒っているの?」と宮崎県出身の友人に言われたことがありました。宮崎の方言は様々ありますが、県民性を示すような「温かい」ものが本当に多いですね。
──一方で、宮崎県の課題として感じていらっしゃる部分はありますか?
百枝さん:地域交通網の維持は、大きな課題と捉えています。人口減少に伴い、バスや電車の利便性を維持するのが難しくなってきています。本県は東西南北に広い地形のため、中山間地域と海沿い地域間の交通格差もあります。今後の地域交通のあり方については、常に課題意識を持っているところです。
また、人口減少については、若い世代が進学や就職のタイミングで県外へ出てしまう状況がデータ上で明らかになっておりますので、「県に残ってもらう。または将来戻ってきてもらう。」そして、「県外からの移住を促進する。」等を念頭に置いた施策を進めることが必要です。
伝統文化を未来へ!宮崎独自の価値をつくる人材と地域の絆
──総合計画の基本理念に「安心と希望ある未来」を掲げている背景を教えてください。
百枝さん:コロナ後の変化を踏まえ、2040年を展望して「宮崎県総合計画2023」を策定しました。この中で、楽しさや幸せを実感できる社会の構築を目指し、「安心と希望ある未来」を基本理念にしました。人口減少の中で、一人ひとりが生き生きと活躍できる社会、安全安心で心ゆたかな生活、そして力強い産業と魅力的な仕事がある社会を目指しています。
これには、「サステナビリティ」「デジタル・先端技術・イノベーション」「人材力」「地域力」「きずな・つながり」の5つの要素が重要です。宮崎県独自の魅力や価値を生かし、新たな価値を創造していくことが目標です。
──重要な要素のひとつに「人材力」が含まれていますが、具体的にどういった人材の育成を目指しているのでしょうか?
百枝さん:宮崎県民は共感力が高く、周囲の意見を尊重する特性があります。これを生かしながら、進取の精神を持ち合わせた推進力を育てることが大切です。県民性を活かしながらも、推進力を強化し、魅力ある地域を作ることが目標です。また、移住者の増加や関係人口の拡大も重要なポイントです。これについては、庁内の関係各課が多様な施策を推進しているところです。
──県民性や個性を活かしながら、というのがポイントなのですね。「きずな・つながり」に関する取り組みについても教えていただけますか?
百枝さん:各地域において、地域おこし協力隊の方々を中心に、小中学校や公民館などを活用し、全世代的な交流活動等を促進しています。また、伝統行事や文化の保存にも力を入れており、「神楽(かぐら)」については、県が中心となり、伝統芸能の継承や世界無形文化遺産登録を目指して活動しています。地域の伝統と文化を守りつつ、未来に繋げていくことを目指しています。
地域住民が主体となって開発する「デトックス・トリップ」
──続いて、宮崎県が力を入れているプロジェクト「デトックス・トリップ宮崎」について教えてください。
重信さん:令和元年度から始まったプロジェクトで、首都圏の20代から40代の女性をターゲットにしています。プロジェクトを始める前に対象となるターゲット層に対して、ヒアリングやニーズ調査を行いました。その結果、宮崎のパワースポット、神話などにまつわる神社、自然、グルメ、絶景などが魅力と感じられていることが分かりました。
これらを総括する言葉として「癒し」が挙げられ、様々なワードの中から「デトックス」という言葉を選びました。宮崎観光がリフレッシュや癒しをもたらすことが「デトックス」というコンセプトにつながっています。
──「デトックス・トリップ宮崎」の取り組みや工夫している部分について教えてください。
重信さん:モデルコース選定には、各地域での座談会やワークショップを行いました。観光事業者、行政関係者、移住者などが参加し、実際に住んでいる方ならではの視点でおすすめの場所をピックアップしました。そのため、宮崎に来るのが初めての人であっても満足いただける場所を選定できていると思います。
──宮崎の魅力に関する新たな気付きや特徴はありましたか?
重信さん:このプロジェクトを通じて、宮崎の魅力について再考する機会がありました。自然、グルメ、神社仏閣など、宮崎の特徴や魅力を再認識し、それを活かした魅力的な内容を提供していく方針になりました。地元の方と実際に話し合う機会を設けることで、「宮崎の良さ」や「宮崎らしさ」を再認識できたことが何より大切な機会になったと思っています。
──地元の様々なステークホルダーの方と話し合いの上、地域を再解釈していくのは、とても大切なプロセスですね。
地元の特色を活かしたお土産開発も
──お土産もとても素敵なものが多く見られますが、お土産の開発にも地元の方が関わっているのでしょうか?
重信さん:はい、パンフレットで紹介しているお土産の中で一部、地元の方々に関わっていただき、開発したものもあります。県内有数の米どころのえびの市で、地元産のお米を使用した「ノカイドウの蕾」という甘酒クッキーを、えびの市の京町温泉旅館組合「みなほ会」女将さんたちと一緒に開発しました。こちらは、世界中でえびの市のえびの高原にしか自生していない「ノカイドウ」という植物をモチーフにしたお土産品で、道の駅など(えびの市内限定)で販売されています。
──お土産品の開発はどのように始まったのですか?
重信さん:えびの市の観光資源の磨き上げを行っていた中で、「えびの市ならではのお土産が少ない」という課題が浮上しました。そこで市役所に紹介していただいた、みなほ会に声をかけて「ノカイドウの蕾」の開発が始まりました。
このように、モデルコースやお土産など、積極的に地元の声を反映した企画を行っています。特に、デトックス・トリップの立ち上げ当初は、地元の声を反映して企画を進めていました。ただ、コロナ禍で対面での座談会やワークショップが難しくなりましたが、今後は再び地域と協力して企画を進めたいと考えています。
地元の特色を活かしたお土産開発も
──HPを拝見したところ、期間限定の「デトックスプラン」もありますが、具体的な内容とこだわりについて教えてください。
重信さん:デトックスプランでは、各宿泊施設様や旅行会社様にご協力いただいて、それぞれが考えた宮崎でリフレッシュできるオリジナルのプランを提供しています。例えば、岩盤浴体験であったり、旅を収めていただくためのチェキの貸出などがあります。昨年は、オリジナルのポストカード、パンフレット、県産のお茶と入浴剤をセットにしたプランを提供しました。
今年は、県内のお茶屋さんに協力してもらい、宮崎県内の4つのエリアのお茶をブレンドし、ゆず、ミント、松の葉を加えたオリジナルデトックスティーを制作しました。パッケージもこだわっていて、宮崎らしい自然の姿や高千穂峡をイラストレーターさんに表現いただきました。宿泊いただいた方に、旅行中はもちろん、旅から帰った後も宮崎の癒し体験をしてもらえたら、という想いでこちらをお渡ししています。
──デトックス・トリップに今後どんな方に参加してほしいですか?
重信さん:デトックス・トリップの主なターゲットは、働く20代から40代の女性にしていますが、このコンテンツは、性別や年代を問わず、宮崎県の様々な魅力を詰め込んだもので、忙しい日常から離れてリフレッシュしたい方々に最適です。心も体もリフレッシュできるような体験を提供しており、県内外の方々に宮崎の癒しを体験してもらいたいと考えています。
また、特に若い世代に宮崎を経験してもらい、リピーターになってもらうことも目指しています。宮崎は飛行機でのアクセスも良いので、一度来ていただくことで来訪ハードルを下げ、その後も恋人と、友達と、家族と、さまざまなライフステージで訪れてもらうことを期待しています。
──百枝さん、重信さん、本日はありがとうございました。
運気アップ・サウナ・自然を堪能 etc… 【厳選】宮崎 デトックス エリア&スポット
最後に、8エリアのモデルコースを紹介している「デトックス・トリップ宮崎」にも含まれている、宮崎県のおすすめウェルビーイングスポットをご紹介。今記事では【宮崎・青島エリア】、【高千穂エリア】、【日南エリア】の3エリアからピックアップしています。
宮崎・青島エリア
宮崎空港から市街まで約15分と好アクセスの宮崎・青島エリア。周囲1.5kmの島そのものがパワースポットといわれる青島神社は必見!サーフィンやSUPといったマリンスポーツも楽しめるエリアです。なかでも「青島神社」は干潮時に現れる海岸線の波状岩は天然記念物に指定されており、「鬼の洗濯板」とも呼ばれます。青島全体をぐるりと取り囲み、どこから見ても荘厳。自然のパワーを感じます。
また、2024年春グランドオープンの注目スポット「AOSHIMA PICNIC CLUB」は、17万㎡の広大な公園と海を見渡す大自然に、地産地消の食材を使ったレストランやオーストラリアがルーツのカフェ、車中泊を楽しめるエリアに、海を見渡せるプライベートサウナも!思い思いの体験で宮崎を堪能できます。
高千穂エリア
約7kmにわたる高絶壁、17mの高さから水面に落ちる真名井の滝もある「高千穂峡」で有名な高千穂エリアは、全国的にも屈指の聖地。天岩戸神社や天安河原、高千穂神楽など神話ゆかりの神社や史跡もあり、豊かな自然にパワーをもらえます。また、漫画アニメ「推しの子」の舞台になったと言われている「荒立神社」は、芸能にご利益のある神社として有名。神社入口には「七福徳寿板木」という七回叩くと御利益があるという板木が何か所かにあり、参拝客の方が叩いている音が心地よく響き渡ります。
その他にも、夜神楽の一部を抜粋し1時間ほど鑑賞することができる「高千穂神社」、農家さんの家に実際に泊まって、農業体験や郷土料理作り、地元の方とのお話を楽しむなどリアルな暮らしを体験できる農家民泊(農泊)は特別な経験ができます。
日南エリア
宮崎県の南部に位置する日南市は、豊かな海と山に囲まれ、海の幸・山の幸ともに欲張れるエリア。美しい日南海岸のドライブは解放感いっぱいで気分爽快!
おすすめスポットとしては、夫婦円満・安産祈願の御利益運で親しまれている「鵜戸神宮」、イースター島の許可を得て作ったモアイ像が並んでる「サンメッセ」、焼酎作りやオリジナルラベル作りができる「焼酎道場」など、宮崎でしか見ることができない景色が広がります。
<デトックス宿泊プランは、2024年3月15日まで受付中!>https://www.kanko-miyazaki.jp/detoxtrip-miyazaki/
編集後記:
今回の取材で、宮崎県の「穏やかで優しい県民性」が強く印象に残りました。百枝さんの言葉を通じて、宮崎県民が家族を大切にし、互いに深い絆で結ばれている様子が伝わってきます。意識調査の結果が示す通り、家族を大切にする姿勢、物価の低さや広い公園、住宅地、そして日本最短の通勤時間などは、県民の心の豊かさにも関与していると思います。
特に注目すべきは、「デトックス・トリップ宮崎」というプロジェクトです。地元住民が主体となり、モデルコースの選定や地元の特色を活かしたお土産開発に取り組んでいる点は、地域の魅力を最大限に引き出しています。このような取り組みが、宮崎県の魅力を内外に伝え、訪れる人々に新たな癒しの体験を提供しているのでしょう。宮崎県の豊かな自然と文化、そして人々の温かさが、訪れる人々にとって忘れがたい思い出となり、宮崎ファンを増やしていることでしょう。
大学卒業後、地方銀行に4年余り勤務し、平成16年に県立学校の教員として採用される。以後、県教委等での勤務を経て令和4年より現職。県総合計画の推進に向け、主に宮崎県で暮らす魅力を中高生向けに発信する出前講座等を担当。