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【大分県】健康寿命日本一を目指して。健康づくり支援課が目指す「楽しい!おいしい!健康ライフ」とは?

「健康寿命日本一」を目標に掲げ、さまざまな団体と共に地域の健康増進や健康経営の促進につながる取り組みをおこなっている大分県。そこで今回、大分県健康づくり支援課の吉冨さん・吉津さん、別府市健康推進課の末房さんにインタビューを実施して、どのように地域住民の健康増進活動をおこなっているのかお話を伺いました。

吉冨 豊子さん

大分県福祉保健部健康づくり支援課 地域保健推進監

保健師として、県内各地の保健所や本庁に勤務し、健康づくり・母子保健・感染症・精神保健対策等に従事。現在は、県統括保健師として県下保健師の人材育成・組織横断的な保健活動の推進を担う。

吉津 聡さん

大分県福祉保健部健康づくり支援課 健康寿命延伸班課長補佐(総括)

栄養・食生活、身体活動、健康経営事業所、歯・口腔の健康など、県民の健康増進に関する様々な事業の企画・実施の総括を担当。

末房 日出子さん

別府市いきいき健幸部 健康推進課 課長補佐兼成人保健係長

1996年別府市役所に保健師として入庁。入庁後ほとんどの期間、健康推進部門に在籍。市民が自らの状況に応じた健康づくりにより、健康な身体とこころを維持し、幸せを実感できるまちを目指し住民とともに歩んできた。現在は健康・医療に関わる様々な企業や団体と、別府市の財産である温泉を健康づくり積極的に活用できるように取り組んでいる。

本記事のリリース情報

男女揃っての健康寿命日本一を目指す大分県の取組がWebメディア「Welulu(ウェルル)」に別府市の取組と併せて紹介されました。

「安心・活力・発展」をキーワードに、健康寿命日本一を目指す

──大分県健康づくり支援課の活動に関してお伺いしたいのですが、まず大分県が「健康寿命日本一」の目標を掲げた経緯について教えていただけますか?

吉冨さん:「安心・活力・発展」を基本目標とする大分県の長期総合計画の政策のひとつとして、生涯現役を目指して健康寿命日本一を目標に掲げたというのが発端になります。県知事をはじめとし、部長なども入るトップレベルの会議で、「健康寿命日本一」を実現するためにはどうしたらいいか、健康を目指して何ができるのかという推進会議が立ち上がり、活動がスタートしました。

──令和3年12月の発表では、男性の健康寿命が73.72歳で全国一位になっていますよね。

吉津さん:そうですね。平成28年度の調査では、男性が全国36位、女性が全国12位だったのですが、この年に「健康寿命日本一おおいた創造会議」が設立され、健康寿命を延伸するための具体的な取り組みが始まりました。

──その取り組みが、良い結果につながったのかもしれませんね。「健康寿命日本一おおいた創造会議」の具体的な役割や活動について教えていただけますか?

吉津さん:平成28年6月に設立され、県内の大学、企業、医療福祉関連団体など、39団体が参加しています。この会議では、知事や部長を含むトップレベルのリーダーが年に2回集まり、健康に関する情報共有や企業・団体間の連携強化を図っています。また、この会議は健康寿命を高める機運を醸成するためのプラットフォームでもあり、健康支援に取り組む企業もオブザーバーとして参加しています。健康づくりのための具体的な事例の共有や、新たな連携の機会を生み出す場として機能しています。

また、さまざまな団体や企業間のマッチングの機会も提供しています。多様な団体が関わり、県民全体の健康増進に対する関心を高め、県民総ぐるみの運動を推進する方向に進むための重要なプラットフォームです。

親しみやすいアプローチで健康意識を高めるきっかけに

──続いて、大分県民の方々が参加できる取り組みについても教えてください。

吉津さん:10月を「健康寿命延伸月間」として住民の方々を巻き込んだ健康増進活動を推進しています。この期間中は、市町村や企業が健康増進のためのイベントを開催したり、県ではキックオフイベントとして健康づくりのためのフォーラムを開催したり、駅前で街頭啓発するなどのキャンペーンを実施しています。このような活動を通じて、県民の健康づくりに対する意識が高まっていると感じています。

末房さん:別府市では、CKD(慢性腎臓病)対策として、検診を受けていない人が多いこと、若年層の肥満問題に着目し、これらの課題に対処するためのイベントを開催しています。具体的には、多くの方々が訪れる商業施設「ゆめタウン別府」で健康イベントを行い、別府市医師会、別府市薬剤師会、大分県検査技師会、大分県栄養士会などと協力しさまざまな健康関連ブースを設置しました。また、ゆるキャラの「べっぴょん」と共に健康宣言を行うなど、親しみやすいアプローチを取り入れ、特に若年層や壮年期の人々に対して健康意識を高めるきっかけを提供しました。

──このイベントの参加者の反応はどのようなものでしたか?

末房さん:参加者からは非常に好評で、健康に関する意識が高まったという声が多く聞かれました。子ども連れの若い世帯には、カゴメ社提供の「ベジチェック」という機械を用いて野菜の摂取量を測定するブースが人気でした。「自分の野菜不足がわかった」、「今日は野菜を買って帰ろう」といった声や、「今まで検診に興味なかったけど行かんといけんね」という声もあり、若い人の健康意識を高める機会にもつながりました。普段健康関連の取り組みをやっても来ないような若い方や壮年期の方も来てくれるため、継続していきたいイベントのひとつです。

──健康寿命延伸月間で開催されるフォーラムについても教えていただけますか?

吉津さん:記念講演や健康関連企業のブース設置などが行われています。例えば、血管年齢の測定や減塩商品の試供品配布など、参加者が直接健康を感じられる体験を提供しています。近年はコロナの影響もあり人数制限を設けていましたが、今年度は100〜150人の参加者を受け入れることができました。これらのフォーラムは、参加者の健康意識を高め、健康寿命の延伸に向けた取り組みを促進する重要な機会となっています。

約9万人が利用!スタンプラリーなどゲーム要素を取り入れた健康アプリ

──健康アプリ「おおいた歩得(あるとっく)」について教えていただけますか?

吉津さん:「おおいた歩得」は大分県の健康増進アプリです。健康に無関心な層にも利用してもらえるアプリにするため、何度も試行錯誤を重ねて平成30年から正式に運用を始めました。現在約9万人が登録しており、歩数のカウントや健康情報の登録・確認などができます。

特徴的なのは、バーチャルウォーキングやスタンプラリーなどのゲーム要素を取り入れている点です。バーチャルウォーキングでは、特定の距離を歩くことでバーチャル上の目的地に到達し、ポイントを獲得できます。また、スタンプラリーでは、特定の場所を訪れてスタンプを集めることで、大分県独自の温泉手ぬぐいなどの賞品が当たるチャンスがあります。

また、市町村のイベントやウォーキング大会、検診などに参加するとポイントが加算される仕組みもあり、最近だとグループ対抗で健康ポイント数を競いあう「職場対抗戦」企画で盛り上がりました。2000以上が参加してくれ、職場内の健康意識を高めたり、健康無関心層を巻き込む良い機会となりました。

末房さん:「職場対抗戦」の期間に温泉腸活ミッションめぐりなどのイベントを別府市でも開催したところ、市外から多くの方々が訪れてくれました。健康促進だけでなく、地域活性化にもつながる企画でしたね。

──アプリの運用以外にも、何か実践的なアプローチなどはおこなっていますでしょうか?

吉冨さん:はい。「生涯健康教育21」計画の一環として、栄養面での取り組みにも力を入れています。具体的には、食塩摂取量の削減や野菜摂取量増加を目指しています。県民の健康づくりを応援する飲食店・スーパー・コンビニ・総菜店などを「食の健康応援団」として登録し、誰もが自然と健康に良い食事を摂取できる環境を整えています。

──飲食店も一緒になって取り組んでいるんですね。スーパー・コンビニも含まれているとは…。

吉冨さん:また、食事のおいしさと減塩を両立させることを目的にした「うま塩プロジェクト」に取り組んでいます。減塩料理あまりおいしくないというイメージを払拭するため、「旨み」を持つ食材を「上手く」活用し「美味い」塩分控えめの「うま塩レシピ」を考案発信しています。

── 野菜摂取に関する「まず野菜もっと野菜プロジェクト」についても教えていただけますか?

吉津さん:はい。「まず野菜もっと野菜プロジェクトでは、野菜摂取の促進に力を入れています。キャラクターや動画を使用して、スーパーマーケットなどで野菜摂取の重要性を啓発しています。また、野菜の日に合わせて、スーパーマーケットや栄養士会、食品関係企業と協力して、野菜の啓発イベントを開催しています。産官が連携して取り組むことで、栄養・食生活の面でも、地域全体で自然と健康になれる環境づくりを進めています。

保健所と市町村が連携し、職場環境改善に向けた施策も

── 心の健康に関する取り組みもおこなっているとのことですが、詳しく教えていただけますでしょうか?

吉冨さん:大分県では、職場の健康づくり支援の一環として、心と体の職場環境改善アドバイザーを派遣しています。この事業は、健康経営に取り組んでいる県内約2,400の事業所を対象に、作業療法士や理学療法士、公認心理などの専門家派遣するもので、彼らは保健所と協力しながら、事業所の健康管理だけでなく作業管理などに関するアドバイスを行っています。

── アドバイザー派遣に対する企業の反応はどのようなものですか?

吉冨さん:アドバイザーの派遣は企業からの要請は多くはありませんが、受けた企業からは肯定的な反応をいただいてます。多くの企業は健康アドバイスを受ける機会が少ないので、新鮮な情報として受け止められていますね。また、物理的な作業環境の改善提案や心理面のサポートなど、身近な課題に対応したアドバイスが特に評価されています。特に50人未満の小さい事業所は、保健師や医師の配置義務がないため、なかなか助言が受けられない状況にあります。県としてはできるだけ小規模な事業所にアドバイザーを派遣して、効果が出せるといいなと考えています。

── 大分県における市区町村との連携について詳しく教えていただけますか?

吉冨さん:大分県では、保健所と市町村が直接連携し、健康支援の取り組みを行っています。この連携には保健所も重要な役割を果たしており、地域保健と職域保健を結びつける形で、事業所への健康支援を実施しています。市町村が提供する保険サービスなどとも連携し、保健所と市町村が共同で様々なイベントを進めています。

── このような連携は、他の市町村でも同様に進められているのでしょうか?

吉冨さん:はい。大分県内では保健所と市町村が密に連携し、さまざまな健康支援活動をおこなっています。各市町村で独自のニーズや課題に応じた取り組みが進められており、県としてもこれをサポートしています。このような体制により、市町村と保健所が協力し合って、住民の健康増進に取り組んでいます。

温泉や和食…。地域特有の文化を楽しめる健康×観光スポット

── 今後の大分県の健康増進計画について、どのような取り組みを考えられていますか?

吉津さん:現在、大分県では次の健康増進計画の見直しと評価の段階にあり、今後の取り組みを詰めているところです。特に野菜の摂取量や運動量の改善が必要であり、自然に無理なく楽しく健康作りに取り組むための仕組みが重要と考えています。また、「おおいた歩得」をもっと活用できるようにすることも1つの課題です。現在の取り組みを継続しながら、時代に合わせて形を変えていくことも考えており、より多くの人が参加しやすい方法や外向けにわかりやすい方法を模索しています。

── 健康増進の取り組みにおいて大分県内の市町村で特色などは出ていますか?

吉冨さん:そうですね、例えば別府市では温泉を活用した健康増進活動がありますが、他の市町村もそれぞれ特徴的な取り組みをしています。

── ありがとうございます。別府市の温泉に関連した健康増進の取り組みについて、詳しく教えていただけますか?

末房さん:別府市では毎年11月に、温泉の様々な魅力と効果を検証し、新たな可能性を発見するシンポジウム「別府ONSENアカデミア」を開催しています。

別府ONSENアカデミアでは、温泉の効果を検証する取り組みとして、温泉入浴前後の腸内細菌叢の変化を解析し、温泉入浴がどのような影響をもたらすかなど、健康に関する実証実験も行っています。

別府ONSENアカデミアは、温泉の健康効果に関する理解を深めることができるだけでなく、一般の方々が温泉について学び、自分に最適な温泉の活用方法を見つけることができるようになることを目指しています。また、温泉に関する新たな発見は、別府市の観光魅力を高めることにも繋がっており、地域全体のウェルビーイングの向上に貢献しています。

Wellulu編集後記:

大分県の健康づくり支援課による健康増進の取り組みをお伺いして、「健康寿命日本一」に向けた取り組みの奥深さと、地域に根差した活動の多様性を垣間見ることができました。生涯現役を目指し、部局を越えた協力体制を築いている点が印象的で、健康アプリ「おおいた歩得」をはじめとする健康促進プログラムの取り組みは、幅広い世代へのアプローチを行っていることが明らかになりました。大分県の各市町村においても、それぞれの地域特性を活かした健康増進活動が展開されており、今回のインタビューを通じて、楽しく健康で充実した生活を送る大切さを改めて感じることができました。

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