「生き生きと働く」ことは、多くの人にとって理想でありながら、日々の忙しさの中で見失いがちなテーマでもある。時間に追われ、成果に追われ、気づけば「働くことを楽しむ」という感覚そのものを忘れてしまってはいないだろうか。
こうした課題意識のもと、株式会社ECOTONEはスマートソーシャル株式会社と業務提携を結び、働く人が自分らしくワクワクしながら働ける「ウェルワーキング(※)」な環境づくりを支える新たなソリューション開発を進めている。そのプロジェクトの顧問を務めているのが、かつて株式会社リクルートに勤め、数々の組織・人材課題に向き合ってきた森本淳さんだ。
今回は、森本淳さんと「Wellulu」編集長・堂上研が対談。少年時代のエピソードから、リクルート時代のマネジメント論、そしてこれからの日本に必要な「シニア人材の適材適所」の構想まで、私たちが「生き生きと働き続けるためのヒント」を紐解いていく。
(※)ウェルワーキング(Well-working)とは
「Wellulu」では「一人ひとりが自律し、自分らしい目的や価値観を持って、生き生きと主体的に働いている状態」と定義。

森本 淳さん
クラウドサービスアライアンス責任者/AI企業、RPA企業、IT企業顧問・アドバイザー

堂上 研
株式会社ECOTONE 代表取締役社長/Wellulu 編集長
1999年に博報堂へ入社後、新規事業開発におけるビジネスデザインディレクターや経団連タスクフォース委員、Better Co-Beingプロジェクトファウンダーなどを歴任。2023年、Wellulu立ち上げに伴い編集長に就任。2024年10月、株式会社ECOTONEを立ち上げる。
仕事を「ロールプレイングゲーム」に変える思考法

堂上:現在、株式会社ECOTONEはスマートソーシャル株式会社と業務提携を結び、働く人が自分らしくワクワクと働ける環境づくりを支える新たなソリューション開発を進めています。本日は、その開発の顧問を務めていただいている森本淳さんにお話を伺います。よろしくお願いいたします!
森本:こちらこそ、よろしくお願いいたします!
堂上:今回は「淳さん」とお呼びさせていただきますね。以前から、淳さんは「好奇心の塊のような方だ」と感じていました。その好奇心と「人生を楽しむ」バイタリティは、昔からお持ちだったのでしょうか?
森本:私は次男として生まれたので、昔から「いつか実家を出ていくんだろうな」という気持ちがありました。しかし、兄が実家を継いで独り立ちしたときに、「もう誰も自分のことを甘やかしてはくれないんだ」と気づかされたんです。
そこから、「自分で自分の人生を楽しんで生きていくしかない」という考えが、私の人生のベースになりました。
堂上:淳さんの「楽しむ力」の原点が見えてきたように思えます。少年時代はどんなお子さんだったのですか?
森本:子どもの頃、一番楽しかったのは「モノづくり」でしたね。
堂上:いいですね。僕も「モノづくり」は、小さい頃から好きでした。広告会社に入るのも、なんとなく「モノづくり」に近いものを感じていました。淳さんは、具体的には、どんなものを作っていたんですか?
森本:プラモデルです。完成したおもちゃを買ってもらうより、一人でコツコツと組み立てるのが好きでした。ほかにも、トランシーバーを自分で作ってみたり、自転車を分解してみたり。
堂上:自転車を分解ですか! 子どもごころを研究していたときに、「つくっては、壊し、つくっては、壊す。この繰り返しが、なんの目的もなくやっていることを楽しめる」と聴いたことがあります。自転車の分解は、元に戻せなくなったりしませんでしたか?
森本:そうなんです、いざ分解すると元に戻らなくなっちゃって(笑)。でも、あの頃に「自分の手で組み立てる」というプロセスを経験できたことは、今振り返っても大変価値のある経験だったと感じています。
堂上:「自分の手で組み上げる」という楽しさは、その後の淳さんのキャリアにも通じるものがありますね。淳さんはこれまで、どのようにキャリアを歩まれてきたのでしょうか?

森本:C言語のシステムエンジニアとしてキャリアをスタートし、その後、転職して株式会社リクルートに入社し営業から商品企画、事業企画その他の役割を6事業部で経験しました。入社当時は競争社会の真っ只中で、「大きな組織の中で凡庸な存在にはなりたくない」という強烈なハングリー精神があったんです。
20代の頃から「こんな自分でありたい」というイメージを紙に書き、部屋の壁に貼って実現に向けたイメージトレーニングを日々していましたね。
堂上:若い頃から軸をブラさずに突き詰めているんですね! では、その「楽しむ力」は、具体的にどうすれば身につくのでしょうか。多くのビジネスパーソンが日々の仕事に追われ、楽しむ余裕をなくしてしまっているように思います。
森本:「どうせやるんやったら、楽しんだ方がええやん」というシンプルな思いが私の原点なんです。「嫌だな」と思いながら仕事をするのと、「これ、おもろいな」と思って仕事をするのとでは、結果がまったく違ってきます。
また、言われてやるのではなく、自分から手上げして「自分がやります!」といった方がやらされ感もないですよね!
自分で考えて工夫するからこそ、そこに「自己流」が生まれて面白くなる。私は、仕事を「ロールプレイングゲーム」だと思っているんです。
堂上:そこに楽しみ力があるんですね。仕事が「ロールプレイングゲーム」。いいですね。経営も仕事も、自分の「好き」と組み合わせて考えるとゲーム感覚で楽しめます。僕は、サッカーの戦略や戦術を、経営の戦略と戦術と組み合わせることが多いです。
森本:与えられた指示をこなすのではなく、「どうすれば最短で、より良いアウトプットを出せるか」という攻略法を脳内で徹底的に組み立てるんです。
このゲーム感覚のサイクルを自分で回せるようになると、「次はこう工夫してみよう」という主体性が生まれて、仕事がどんどん面白くなっていきます。
役員会でのプレゼンに関しても、あらゆることをロールプレイングゲーム的に想定して挑むので、決裁が難なく通るようになるんです。
「時間」をデザインする。余白から生まれるウェルワーキング

堂上:淳さんとお話ししていると、仕事もプライベートも常に全力で、ものすごく濃密な時間を過ごされていると感じます。ウェルビーイングの中でも「時間の余白」をどう扱うかはとても大事な要素だと思っています。淳さんにとって「時間」とは、どのような存在なのですか?
森本:私は、人生で平等に与えられている物であり、かつ唯一どうしても取り返しがつかないのが「時間」だと思っています。過ぎ去った時間だけは、どんなにお金を積んでも絶対に戻ってきませんから。
堂上:本当にその通りですね。時間は、有限だからこそ、「イマ、ココ」を大切にしたいと思います。僕もよく「今を大切に生きることが、明日の今に繋がっていく」と思って生活しています。
森本:だからこそ、私は1分1秒を大事にしたいんです。誰かと話している瞬間も「どう話せばお互いにとって最善の着地になるか」、常に頭をフル回転させています。
堂上:「時間を大切にする」という意識は、日々のビジネスにおいて、具体的にどう表れているのでしょうか?
森本:例えば、会議は通常「1時間」と設定されがちですが、私は必要な時間次第で「45分」などに短縮するようにしています。
堂上:1時間をただ漫然と過ごすのではなく、あえて「制限時間」を設けるわけですね。
森本:そうです。会議を45分に短縮するためには、徹底的な「事前準備」が欠かせません。限られた時間の中で最良のアウトプットを出すために、何を用意しておけば最短でゴールにたどり着けるか、事前に深く思考しておくんです。
会議を60分から45分に短縮することで、60分なら8時間で8回しかできない会議が、45分では10回以上できてしまいます。2つ以上会議が増えることで生産性も上がります。
堂上:面白いですね。僕は何度か45分会議にしようと試みましたが、結局60分単位でスケジュールに入れてしまい、12時間連続Zoomとか、呼吸困難になるかと思うこともありました。
そうした中で、今の若い世代の働き方を見ていると、残業規制などで時間が制限される場面が増えています。このタイムマネジメントの発想は、今の時代こそより重要になっていますね。
森本:私自身、30代前半は会社に寝泊まりし徹夜で働いていた貴重な経験があります。ただ、その経験が大きな財産になっているからこそ、今、ギュッと凝縮した働き方ができているんだと思います。

堂上:先ほど、ウェルビーイングな状態をつくるためには「時間の余白」がとても重要とお話ししました。うまく「時間と対話」して、「時間に追いかけられない」工夫や環境づくりが大切な気がします。実際、締め切りに追われたり、時間が足りなくなって徹夜したりすると、生産性を落としてしまいます。淳さんを見ていると、まさにこの「時間の余白」を自らデザインしているように見えます。
森本:おっしゃる通りで、私はあえて予定を絶対に入れない「余白の時間」を意識的につくっています。スケジュールを目いっぱい入れるのではなく、10~20%の余白を空けておくようにしているんです。
堂上:やはり、意識して余白をつくっているんですね! 余白がないと、人間の集中力も落ちてくると思います。サボっているのではなく、ある程度の「脳を休ませて、次のエネルギーを補充している」状態ですね。
森本:スケジュール帳が予定でびっしり埋まっていると、常に何かに追われているような感覚になって、精神的なゆとりがなくなってしまいます。また、突発的な出来事に対応することもできなくなってしまい、ストレスも溜まります。そんな状態では仕事にワクワクなんてできませんよね。
時間に余白があるからこそ、「こういう企画をやってみたら面白いんじゃないか」という新しいアイデアや妄想を膨らませる心の余裕が生まれてきます。
堂上:確かに、何かに追われているときにクリエイティブな発想は生まれませんよね。僕らはよく、会議で雑談をするようにしています。この雑談が、ある意味「余白」な感じもします。たまに雑談が盛り上がり、時間に追われることもありますが……。
森本:私にとっては仕事も趣味も遊びも、すべて「楽しむ」という一つの線でつながっているんです。全部が趣味のようなものだからこそ、自分の意思で時間をコントロールし、余白を確保する。
その余白の中で「自分がやりたいこと(Will)」と「できること(Can)」を整理し、主体的に動いていく。それこそが、働く人が生き生きと輝ける「ウェルワーキング」な環境の土台になるのだと、私は確信しています。
組織の心理的安全性を生む「自己承認」と「自己開示」

堂上:淳さんのように前向きに、そしてウェルビーイングに働くためには、自分自身の「心のコンディショニング」も非常に重要になってくると感じます。淳さんはご自身やメンバーのメンタルマネジメントにおいて、何を大切にされていますか?
森本:私は、若い人や後輩たちに「とにかく自分を絶対に褒めてあげてください」と、いつも言っているんです。
堂上:それは良いですね。「自分を褒める」ことは、それこそウェルビーイングのはじまりだと思います。
森本:昔、マラソンランナーの有森裕子さんがオリンピックでメダルを獲得したとき、「自分で自分を褒めたい」という言葉が流行語になりましたよね。
私自身、40代になってからフルマラソンを走り始めたのですが、最初のフルマラソンを完走した瞬間、「自分を褒める」という言葉の本当の意味と重みが心の底から理解できたんです。
堂上:実際にフルマラソンを走ってみないと気づかないですよね。具体的に、何に気づかれたのでしょうか。
森本:4時間も5時間も走り続けていると、途中で何度もくじけそうになります。足がつったり、転びかけたり。本当に辛くて苦しい葛藤と、ずっと一人で向き合い続けるわけです。
そのとき、自分がどれだけ葛藤し、どれだけ努力して一歩を踏み出したかは「本人以外は誰も知らない」んですよね。
堂上:誰にも見えない、自分だけの闘いと努力があるということですね。
森本:そうです。だからこそ、自分の努力を一番よく知っている自分自身が、「今週はこれだけ頑張ったな」と認めて、褒めてあげてほしい。この一歩こそが、自分自身のウェルビーイングな状態をつくるための出発点になるのではないでしょうか。
堂上:「自分を承認する」というのは、他者とのコミュニケーションはもちろん、マネジメントや子育て、スポーツの現場にも共通する大切な視点ですね。これは、日本人は、意外と下手なのかもしれません。なかなか自分を褒めるという習慣はないかもです。
森本:仕事も同じですよね。ただ叱るのではなく、その人が取り組んだ挑戦や努力を周囲もしっかり「観察」し、本人が自分自身を褒められるような関わり方をしていくこと。それが、生き生きと働ける環境づくりには欠かせません。
堂上:おっしゃる通りだと思います。観察から内省、そして客観的に自分を見て、自分と対話して自分を褒めてあげる。ここで活力がみなぎっていくのかと思います。

森本:もう一つ、ウェルビーイングに働ける組織をつくる上で大切なのが「自己開示」です。相手の「素」の部分がわかると心理的な安心感が生まれ、お互いの距離が一気に縮まります。
堂上:人のプライベートや素顔、いわゆる「B面」を見せることで、強い信頼関係が生まれるわけですね。僕も、ウェルビーイングな環境をつくる上で、キーワードは「OPEN & RESPECT」と言っています。自分の弱さも出すことで、より多くのサポートしてくれる人がいる。そこで相手の立場に立って、困っている人がいれば助け合う。そこに、ありがとうが生まれると、良い組織、良い会社環境になると思います。
森本:私が一緒に働きたいと感じる人物像を考えると、やはり「嘘がなく、まっすぐな人」なんです。
自分の弱みやこだわりも含めて、ありのままの「素」をさらけ出せる組織には、自然と人が集まってくる。そうしてお互いを助け合える最高のチームになっていくのだと実感しています。
堂上:ECOTONEという会社を経営をさせてもらっていて、最後は「素直」な人に、人は集まってくると感じています。とはいえ、僕は「素」を出しすぎて、まわりの人にちょっと迷惑かけてるような気もします(笑)。
50代・60代を日本の「宝」に。「シニア人材バンク構想」が描く適材適所の未来

堂上:ここまで、淳さん個人の「働く楽しさの哲学」や、チームの心理的安全性を生むコミュニケーションについて伺ってきました。最後のテーマとして、淳さんがこれから未来に向けて成し遂げたいこと、描いている社会のビジョンについてお聞かせください。
森本:根っこにあるテーマは、20代の頃からまったく変わっていません。「人々が生き生きと働き、暮らせる社会をどう創るか」ということです。
今、日本は深刻な人手不足と言われていますが、私が感じているのは、50代・60代のベテラン世代の扱いが「もったいない」ということなんです。
堂上:確かに、役職定年を迎えたり、60歳の定年を過ぎたりした途端に、企業内での扱いがガラリと変わってしまうケースは多いですね。
森本:私自身は53歳でリクルートを退職して独立しましたが、幸いにも当時の給料水準をキープして働き続けることができました。ただ、大企業であっても60歳を超えると給料が半減し、5年でおしまい……というのが現実です。
堂上:優秀なベテラン層のスキルが、うまく社会に循環していないのですね。その現状を打破するために、淳さんは具体的にどのような構想をお持ちなのでしょうか?
森本:50歳になった時点で、それまでの実績や仕事内容、給与水準をきちんとデータベース化する構想です。その上で、その人の行動特性(コンピテンシー)や強みを、客観的に評価・可視化していきます。
堂上:シニア世代の「人材バンク」のような構想ですね! これから、日本をはじめとする国々は高齢化が進み、労働人口が減少していくのは事実です。そんな中、何歳になっても自分たちが「好き」と「スキル」を組み合わせて、ワクワク働ける場がたくさんあれば、もっと生きるように働くことができますね。
森本:適切なマッチングを通して、ベテラン人材を適材適所に配置していく仕組みが、これからますます必要になってくると考えています。
堂上:30代・40代のうちから「いろいろな経験をする環境」を社会全体で整えていくことが、結果的に50代・60代でのセカンドキャリアのウェルビーイングに直結するわけですね。
さらに、今の時代において終身雇用ではなく、越境して働ける環境が望まれていくのではないでしょうか。副業や転職が当たり前になる時代は近いと考えています。
森本:もう一つ大事だと考えるのが、50代・60代の働くモチベーションのシフトです。若い頃のように「お金を稼ぐために働く」というフェーズを過ぎたら、次は「誰かの役に立ち、喜んでもらう実感」のために働く。ベテランが組織の中で生き生きと働いている姿を見せることで、若い世代にも良い影響を与え、組織全体、ひいては日本全体が良くなっていくのだと思います。
堂上:まさに私たちが目指す「ウェルワーキング」な社会の循環です。淳さんの描く大きな構想とともに、僕たちも一緒に日本を面白くしていきたいです!
森本:ぜひ、一緒にやりましょう! 日本にはまだまだ、価値があるのに眠っているシニア人材という「宝」がたくさんいますから。みんなで生き生きと働きましょう!
堂上:最高の未来図が見えました。淳さん、今日は本当に素晴らしいお話をありがとうございました!
堂上編集長後記:
僕は、博報堂に入社したときに、最初の部署の部長から「堂上は、3年後どんな博報堂マンになりたいのか?」と尋ねられて、無邪気に「3年後、僕は博報堂にいるか分かりません」と答えた。
僕は、起業したかったのもあるし、転職もあるし、デザインや絵画の勉強もしたかった。就職氷河期だった時代に、採用してくださった会社に対して、失礼なことを言ったな、と後で反省したが、その頃の僕は、そんな感じだった。
ところが、広告の仕事はチームで広告をつくり上げていくことが楽しかったし、最初に配属されたチームの先輩たちが、僕は大好きだった。毎晩一緒にご飯を食べ、週末まで一緒に遊ぶ。そして、僕が失敗したことに対しても、最後はちゃんとフォローしてくださる。
結局、仕事は「誰と働くか?」が大切だと気づかされた。そして、ウェルビーイングに働ける環境は、自分でつくっていくしかない。楽しみ力を持って挑戦していると、フロー状態になり、成長を実感する。そんな環境の中、今のECOTONEの挑戦も応援してくれている。
僕は、博報堂が好きだ。だからこそ、僕はウェルビーイングに働けている。淳さんと会って、お話しして、ウェルビーイングは自分の好きを仕事の中で見つけることからだと気づかせていただきました。ありがとうございました。
Welluluの新たな取り組みを通して、世の中の働く人たちがウェルビーイングになるように尽力します。

システムエンジニアとしてキャリアをスタートし、1988年に株式会社リクルートに入社。約31年間にわたり、営業からインターネット事業まで幅広く経験。リクナビ、住宅情報、ゼクシィ、ホットペッパーなど、数々のWebサービスの企画・立ち上げ、事業推進に携わる。2019年にリクルートを退職後、人材・IT領域などで経験を積み、2021年に独立。現在はAI、RPA、クラウドサービスなどの企業で、事業開発やアライアンス、組織・人材育成の支援を行っている。