ウェルビーイングな組織をつくる良いリーダーは?
先日、あるチームのマネジャーと雑談をしていて、ふと「うちは、組織がバラバラで、僕の言うこと聴いてくれないんです。堂上さんにとって、いいリーダーって何ですか」と聞かれた。
正直な話、僕は良いリーダーじゃないから、自分を棚にあげて、なんて答えるべきか言葉に詰まった。いろんな経営の本や、リーダー論はたくさん知っている。けれども、ウェルビーイングという視点で見たら、本当にそれが良いリーダーか?? 実績とか、決断力とか、カリスマ性とか、そういう言葉はいくらでも浮かぶ。でも、それを言った瞬間に「なんか違うな」と思う自分がいた。しばらく考えて、僕の口から出てきたのは、もっと地味な言葉だった。「観察と内省ができる人、じゃないですかね」と。これは、先日のホースローグで学んだことだ。
自分を、少し遠くから見られるか
いいリーダーだなと思う人には、共通して「自分を鳥の目と虫の目で観察できている」ところがある気がする。会議中にイラッとした瞬間、「あ、いま自分イラッとしてるな」と気づける。焦っているとき、「これは焦りからくる判断だな」と一歩引いて見られる。感情そのものを消すわけじゃない。ただ、感情に飲み込まれる前に、もう一人の自分が斜め上から見ている感じ。
これは才能というより、たぶん習慣なんだと思う。僕自身、経営をやっていると、うまくいかない日はどうしても視野が狭くなる。数字だけ、目の前のトラブルだけが視界いっぱいに広がってしまう。そういうとき、「今日の自分、ちょっと視野が狭いな」と気づけるかどうかで、次の一言がまるで変わる。俯瞰できる人は、部下に対しても、自分に対しても、フェアでいられるのだと思う。
弱さを見せられる、正直さ
もうひとつ、いいリーダーに共通するのは、知らないことを知らないと言えることだ。
「それは僕もわからないから、一緒に考えよう」「これ苦手なんだけれど、誰かできる?」と言えるリーダーの下では、チームのメンバーも安心して本音を言える。そして、そこには「ありがとう」が生まれる。逆に、わからないことを取り繕おうとするリーダーの下では、いつのまにか全員が「わかったふり」をするようになる。心理的安全性という言葉がよく使われたけれど、結局それをつくるのは制度じゃなくて、リーダー自身の正直さなんだと思う。
結果より、プロセスと成長に目がいく
いいリーダーは、結果だけでなく「その人がどう変わろうとしているか」を見ている気がする。
先月出た数字がすべてではなく、半年前と比べてこの人はどこが伸びたか、何に挑戦しようとしているか。そこに目を向けられる人の下では、メンバーは失敗を恐れずに新しいことを試せる。挑戦している人は、ウェルビーイングだと僕は思っているのだけれど、それを実感できるかどうかは、リーダーが何を見て、何を褒めるかにかかっている。実際、挑戦して失敗する人や越境して動いている人は、めちゃくちゃ成長している。そんな環境をつくるのもリーダーの仕事である。
感謝と賞賛を、ちゃんと言葉にする
そして、いいリーダーは「ありがとう」や「よかったよ」を、ちゃんと声に出す。
思っているだけでは伝わらない。忙しさにかまけて、感謝や賞賛を心の中にとどめたままにしてしまうことは、僕にも身に覚えがある。でも、それをきちんと言葉にして渡せる人の周りには、不思議と人が長く残る。感謝や賞賛は、コストのかからない最強の福利厚生なんじゃないかと、僕は本気で思っている。先日、ECOTONEの社員が「堂上さんは、いつも『ありがとう』と言葉にしてくれて嬉しいです」と言ってもらえて、僕も嬉しかった。これは僕はできているだろう。
何をしても、なぜか周りに人が集まる
そして最後に、これはうまく言葉にするのが難しいのだけれど、いいリーダーには、なぜか人が集まってくる。
肩書きでも、権力でもなく、そこに「愛」があるからなんだと思う。人を試すためではなく、その人がうまくいってほしいという気持ちで見ている。だからこそ、そのリーダーの周りには自然と人が寄っていく。正直、僕はまだまだこれができているとは言えない。忙しさにかまけて、目の前の仕事に追われている。だからこそ、このタイプのリーダーに出会うと、自分の至らなさごと、はっとさせられる。
これは実際に、僕らのECOTONEであった話。僕は、スタートアップの経営者として属人的に「自分がやってしまう」環境にあった。そんな中、Welluluでたくさんの方とお会いして、観察と内省を通して、自分でやったほうが早い場面でも、あえて仲間に任せてみた。「これ、僕がやった方が確実に早いんだけどな」と思うようなことでも、「やってみる?」と渡す。すると、主体性が生まれ、どんどん成長していく仲間の姿を見ることができた。そうやって人に任せて、失敗に寛容になれば、そのチームには「この人となら挑戦できる」という空気が生まれてくる。僕はまだまだできていないことが多く、良いリーダーになり切れていないけれど、もう少し俯瞰にいる堂上のアドバイスを信じよう。
あかんリーダーとは?
一方で、「あかんリーダー」にも共通点がある。こっちも一回まとめてみよう。いろいろな経営者、管理職、リーダーにお会いして僕が感じた「あかんリーダーとは?」
自分のことしか興味がない
まず、自分の保身が最優先になっている人。何かトラブルが起きたときに、最初に出てくる言葉が「誰の責任か」になる人。チームのことより先に、自分がどう見られるかを気にしている。これは口に出さなくても、なぜか伝わってしまう。メンバーは驚くほど敏感に、リーダーの視線がどこを向いているかを察知する。
数字しか見ないマイクロマネージメント
次に、数字だけで人を見てしまう人。もちろん数字は大事だ。事業をやっている以上、向き合わないわけにはいかない。でも、数字の背景にある「なぜその数字になったのか」「その人はどんな状態でその数字を出したのか」を見ずに、結果だけで詰めてしまう。これをやられ続けると、人はだんだん、数字のためだけに動くようになる。数字はよくなるかもしれないけど、チームの熱量はゆっくり死んでいく。
KPIが流行ったあとによく出てきた気がする。成果のために、結果だけが全てと考えて、数字の根拠がないものは、石橋を叩いて渡らない。つまり挑戦しないからリスクしか見ないで何も生まれないのである。
短期的視点でしか考えられない
そして、目先の反応で発言してしまう人。会議で誰かが持ってきた提案に対して、深く考える前に「それ違うんじゃない」と口が先に動いてしまう。半年後、1年後にどうなるかより、今この瞬間、自分がどう反応したいかが優先されている。これも一種の「内省の不足」なんだと思う。自分の反射神経を、意思決定だと勘違いしてしまっている状態。この場合は、自分の評価を気にしてるという1番目にも繋がっている。
睡眠が下手な人
四つ目は、これも僕自身もできたり、できなかったり。睡眠が下手なリーダー。夜遅くまで仕事をして、それを頑張っている証拠のように見せてしまう人。寝不足のまま出社して、些細なことでイライラをぶつけてしまう人。睡眠不足の頭で下す判断は、たいてい視野が狭く、他責的で、感情的になりやすい。僕も寝不足の日に送ったメッセージを、翌朝読み返して赤面したことが何度もある(正直、いまでもある)。
ある企業の経営者に「ウェルビーイングな会社を目指す」ということで、研修を行う機会があった。そこでびっくりする発言があった「俺は3時間しか寝ていない」(実は昔の僕もそうやって寝てない自慢をしていた) 寝ずに働いているアピールである。
本人は気づいていないことが多いのだけれど、チームからすると、これがいちばんしんどい。頑張っているのに、なぜか周りを消耗させてしまう。高市首相の睡眠の話も「もっと寝てくれないと、株式会社ニッポンが、ウェルビーイングじゃなくなる」として見てしまう。僕の内省も含めて、睡眠は大切にしたい。
自分の意志を出さない
そして五つ目、忖度をして、自分の意志がない人。上には従順で、周りの顔色をうかがい、誰にも嫌われない発言しかしない。一見、波風を立てない優しいリーダーに見えるのだけれど、いざというときに「自分はこう思う」がない。チームが本当に迷っているときほど、その不在は響く。何を信じて進めばいいのか、誰も指針を持てなくなる。
実際に仕事をしていて、あるリーダーは、指示を出すたびに「これって、結局あなたの成果につながるからじゃないですか?」とメンバーに感じられてしまっている雰囲気を感じ取った打ち合わせがあった。本人にそのつもりはなかったのかもしれない。でも、日々の言動の端々から、チームのためというより自分の評価のための動きだということが、じわじわと伝わってしまっていた。最後には「この人の言うことは、話半分に聞いておこう」という空気がチームに漂うようになった。一度そう思われてしまうと、どれだけ正しいことを言っても、もう届かない。
もうひとつ、睡眠が下手なリーダーの話。忙しさで削るのはいつも睡眠時間で、本人は「みんなのために頑張っている」つもりだった。でも、寝不足が続くと、自分の感情を一歩引いて見る余裕がなくなっていく。ちょっとしたことでイライラが顔に出て、あるとき会議中に感情が爆発してしまった。マインドフルネスというほど大げさな話じゃなくても、自分の心を静かに観察する余白が、睡眠不足で消えてしまっていたのだと思う。それ以来、チームの空気はどこかぎくしゃくしたままだった。
リーダーのウェルビーイングは、チームのウェルビーイングだ
こうして並べてみると、いいリーダーとあかんリーダーの違いは、能力の差というより、「自分自身とどう付き合えているか」の差なんじゃないかと思えてくる。
観察できる人は、自分にも他人にもフェアでいられる。感謝や賞賛をちゃんと言葉にできて、人に任せる愛のある人の周りには、自然と人が集まる。逆に、保身や忖度、目先の反応、そして睡眠不足に飲み込まれてしまう人は、悪気がなくても、じわじわとチームの信頼と安心を奪っていく。
僕は、リーダーシップというのは特別なスキルの前に、まず「自分の状態を整える技術」なんだと思っている。主観的ウェルビーイング21因子でいう「良質な睡眠」や「新しい発見」「感謝・賞賛」は、実は真っ先にリーダー自身に返ってくるべきものなのかもしれない。ウェルビーイングなリーダーがひとりいるだけで、チームの空気は驚くほど変わる。
まずは、今夜ちゃんと寝ることから始めようと思う。もっとみんなを信用して任せていけば良いのだ。(でも、仕事が楽しいから、やってしまう。。このジレンマはまだ解消できていない。)
堂上 研 株式会社ECOTONE代表取締役社長 Wellulu編集長
株式会社ECOTONE代表取締役社長
ウェルビーイングメディアWellulu編集長
情報経営イノベーション専門職(iU)大学教授
日本イノベーション協会 理事
私生活では、3人の子供の父。趣味は、スポーツとアート。