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技術と対話で働く人のウェルネスを実現する <『Healthtech Summit 2024』イベントレポート>

2024年12月12〜13日、室町三井ホール&カンファレンスにて、医療・ヘルスケア分野における最新テクノロジー(ヘルステック)と、それを活用した先進事例を紹介するグローバルカンファレンス『Healthtech Summit 2024』がメドピア株式会社とアルフレッサ株式会社共催のもと開催された。
※アーカイブ配信はこちらから(公開期間:2025年1月31日まで)

働き者が多いと言われる日本で、また働き方が多様化する現代において、忙しいビジネスパーソンが効率的に、かつ楽しく、心身ともに健康に生きるためにはどんな習慣やツールが必要なのか。

本記事では、各企業で人々の健康とウェルネスを推進する事業を展開している3名によるデモの様子と、産業医として活躍する傍ら株式会社Keep Healthの代表取締役として企業の健康経営の支援に取り組んでいる川島恵美氏をパネリストに迎え行われた『Well-beingに実現するワクワクする世界』トークセッションの様子をお届けする。

 

川島 恵美さん(パネリスト)

株式会社Keep Health 代表取締役/医師

産業医科大学卒業、初期研修修了後は滋賀医科大学産科学婦人科学講座にて後期研修を行う。産業医科大学産業医実務研修センターで産業医としての修練を修了した後に、産業医として企業に勤務。就労女性の健康支援をライフワークとしながら、産業医としての経験や知識を活かし企業の健康経営を支援する取り組みも行っている。

萩原 悠太さん(デモワー)

株式会社PREVENT 代表取締役

名古屋大学医学部卒業後、同大学院にて「オンライン心臓リハビリテーションの実用化」に向けた研究に取り組む。2016年、アカデミアの知見を社会へ還元しようと株式会社PREVENTを創設。理学療法士として、動脈硬化性疾患の健康づくり支援を手掛けている。

中田 航太郎さん(デモワー)

株式会社ウェルネス 代表取締役医師

東京医科歯科大学医学部卒業後、初期研修を経て救急総合診療科医。予防医学の普及と医療アクセシビリティ向上を目指し、2018年6月に株式会社ウェルネスを創業。「世の中から防ぎ得た死や後悔をなくす」をビジョンにプロダクトを展開している。

楠富 智太さん(デモワー)

VIE株式会社 取締役COO

防衛大学校首席卒業後。防衛省で幹部自衛官として国防に従事。2014年より株式会社ABEJAに参画。マーケティング、コンサルティング、CSを担当。その後、株式会社博報堂にて、飲料、日用品メーカーのマーケティング、PRに関わる。現在、VIE株式会社にて取締役COOとして事業全般を担当。
https://www.viestyle.co.jp/

堂上 研(モデレーター)

株式会社ECOTONE 代表取締役社長/Wellulu編集長

1999年に博報堂へ入社後、新規事業開発におけるビジネスデザインディレクターや経団連タスクフォース委員、Better Co-Beingプロジェクトファウンダーなどを歴任。2023年、Wellulu立ち上げに伴い編集長に就任。2024年10月、株式会社ECOTONEを立ち上げる。

目次

生活習慣病リスクを減らす健康づくりプログラム『Mystar』

堂上:ウェルビーイングの実現には、体と心、そして社会的なつながりも含めた「健康」が欠かせません。今回はそれらを実現するために事業を展開している3社をお迎えして、各社の取り組みについて伺いながら、産業医の川島さんも含めて「ウェルビーイングな社会」について語り合えればと思っております。

まずご紹介するのは、株式会社PREVENT(プリベント)の萩原さんです。どうぞよろしくお願いします。

萩原:私たちは、主に高血圧や糖尿病、脳梗塞、心筋梗塞などの疾患を持つ方を対象に、企業の健康保険組合や自治体の国保などを通じた保健事業として、健康づくりのプログラム『Mystar』をスマートフォンアプリという形で提供しています。

キーとなるのは、医療専門職と行う2週間に1回の電話面談です。ここでコミュニケーションを取ることで、行動変容を支援していきます。また、アプリ上では前回の面談の振り返りとして、どんな話をしたのか、どんな目標を立てたのかを把握でき、さらにTODOという形で目標を管理することも可能です。

これらに加え、歩数や食塩摂取量、睡眠時間、体重、血圧などを記録できるライフログ機能、食事の写真をアプリに載せることで医療専門職からフィードバックがもらえる機能、医療専門職と直接やり取りができるチャット機能も備わっているため、日頃の行動に対する細かなコメントをもらうことができます。

萩原:『Mystar』を利用した6カ月のプログラムのエビデンスは、すでにいくつかの国際論文(※1,2)で報告しております。
※1:National Library of Medicine © 2022 日本循環器学会
※2:National Library of Medicine ©三木孝浩、山田純矢、石田晋平、作井大介、金井雅史、萩原雄太

今回は、まだ社内検討データ段階ですが、その後の中長期の結果についてデータを持ってきました。Mystarでは、参加者を保険者の有するレセプトや健診データ医療データを活用して脳梗塞や心筋梗塞のリスクが高い方から抽出を行います。過去の『Mystar』参加者約4,000名と、非参加者4万名の健康を2年間追跡し、疾病発症や医療費などを評価したところ、参加群は非参加群に比べて脳梗塞や心筋梗塞などでの入院の割合がかなり低かったことがわかりました。また例え入院したとしても、入院日数や入院費をかなり抑えることができた、つまり、重症化率を抑えられることがわかったのです。

堂上:萩原さん、ありがとうございました。実は僕、健康診断で毎年コレステロールと肝脂肪を指摘されていて、お医者さんから「暴飲暴食はやめてくださいね」と言われるんですが、そんな僕のような人にとって、このアプリは自己管理にもなるというイメージでしょうか。

萩原:はい。自己管理にもなりますし、医療専門職の方が堂上さんのログを見たうえで「こうしたほうが良いですよ」というコメントをくれます。同じ生活習慣病でも、アプローチの仕方は一人ひとり異なります。生活習慣と病態を見たうえで、医療専門職が改善すべきところに優先順位を付けてお伝えできることは、1番のポイントだと思っております。

堂上:素晴らしい。ぜひ皆さんに使っていただきたいサービスですね!

パーソナルドクターと健康データの一括管理で戦略的な『予防医療』を実現

堂上:続いて、株式会社ウェルネスの中田さん、よろしくお願いいたします。

中田:弊社は「世の中から防ぎ得た死や後悔をなくす」ことを目的に、パーソナルドクターという新しい概念を作っている会社です。医療の分野では病気の治療にフォーカスされがちですが、私たちはウェルネス、ウェルビーイングを実現させるために、主に「予防医療」を活用していきたいと思っております。

現代社会において死因に多い癌や心臓病、脳卒中はわかりやすい症状が出ないことがほとんどです。だからこそパーソナルドクターが健康なうちから一緒に伴走し、戦略的に予防のためのアドバイスを実現します。

そのために我々が提供しているベネフィットは主に2つです。1つ目は、定期的な面談と定期的なメディカルチェックによるデータを活用しながら、一人ひとりにパーソナライズされた予防戦略を作って、確実な早期発見や発症予防に結びつけること。2つ目は、万が一体に不調が出た際、365日いつでも担当ドクターとコミュニケーションを取れて、必要に応じて最適な医療アクセスができるようサポートすることです。これらにより、忙しいビジネスパーソンでも限られた時間の中で戦略的に予防を実現できるサービスになっております。

中田:サービス上では自分のあらゆるヘルスケア情報を管理でき、これをもとに定期的にパーソナルドクターと自分の健康について話し合ったり、必要に応じて薬などのソリューションを購入したりすることもできます。病院に眠ってしまいがちな画像データもクラウド上に集約できますので、いつでもセカンドオピニオンを取ることも可能です。

現在は月額3〜5万円のサブスクリプション型のサービスとして、経営者の方を中心に600名以上の方にご利用いただいておりますが、今後はさらなるサービス拡充を目指しています。

堂上:日々のなかでのちょっとした変化でも、自由に365日お医者さんに相談できるということですよね。それってすごいことじゃないですか! しかも過去の病気のデータなどが蓄積されていると、「こういった可能性があります」と言ってもらえるわけですよね。

中田:データがあるかないかは、ものすごく大きな違いなんです。つい先日も「お腹が痛い」という相談があったのですが、その方の過去データや症状の経過から治療が必要な病気を早期に見破ることができました。

堂上:早期発見につながるのは大きいですよね。

中田:特に経営者の方の場合、朝から夜までびっしりスケジュールが埋まっていることも多いですから、それが終わってから病院に行ったら重大な病気で何週間も入院することになった……なんてこともよくあります。だからこそ、心理的・物理的な気軽さは大事ですよね。

川島:ちなみに、ウェルビーイングに生きるためには心のケアも欠かせないと思うのですが、精神的な不調も相談できるのでしょうか?

中田:もちろんです。パーソナルドクターとは信頼関係も出来ていきますから、実際に精神的な相談をされる方もいます。精神科専門医の診断が必要となれば、適切な医師を紹介することになりますが、まずは受け皿としてあらゆる相談をできるようになっているんです。定期的な面談のなかでもパーソナルドクターが精神面も含めていつもと違う感じがしないかをしっかりチェックします。

堂上:素晴らしいですね! 中田さん、ありがとうございました。実は中田さんには『Wellulu』にも登場いただいたことがあるので、ご興味のある方はぜひご覧ください。
※中田さんのインタビュー記事はこちら

音楽で脳波をコントロールする『VIE Tunes Plus』

堂上:最後は、VIE(ヴィー)株式会社の楠富さんです。よろしくお願いいたします。

楠富:VIE株式会社は、「エンタメを薬にする」を掲げ、ヘルスケアやメディカルの領域での研究開発や、脳に影響を与える音楽やイヤホン型脳波計を開発・提供しているスタートアップです。

『VIE Tunes(ヴィー チューンズ)』では“ニューロミュージック”といった「ととのう」「集中する」ための音楽を提供しています。これらは弊社のニューロサイエンティストが研究開発を重ねており、実際にストレス値が減るなどのエビデンスもあります。

また、本日初公開となるこちらの脳波計と連携する『VIE Tunes Plus』では、イヤホンを耳に装着することで脳波を取得できるようになっています。また『VIE Tunes』と同じようにニューロミュージックを聴くことでき、さらにニューロミュージックを聴く前後で“覚醒スコア”というものを測ることが可能です。

実際、僕の脳波を使ったデモをお見せします。覚醒スコアというのは、弊社が過去データとして集めたデータをもとに、集中しているときを100、リラックスしているときを0として作成した指標です。今日のような状況のなかで覚醒スコアを下げるのは難しいのですが……(笑)。これにより、忙しく流れる毎日のなかで、ちょっとした隙間時間を見つけてコーヒーを飲んでいるようにリラックスしたり、エナジードリンクを飲むように集中したりすることが可能になります。

堂上:たしかにこの場でリラックスするのは難しいですよね(笑)。ウェルビーイングを実現するためには、ちょっとした時間の深呼吸などで脳の状態をリラックスさせることは大事なことですね。それを科学的に実現させている素晴らしいサービスだと思いました。価格はどのくらいなのでしょうか。

楠富:現在は約4万円です。今後も新しいモデルなど開発する予定ですが、医療機器よりも手軽に日常使いできるサービスの提供を目指しております。

堂上:素敵ですね。ストレスが溜まっていると感じたり、イライラしてると思ったりしたときに着用して、自分のなかで「ととのう」というのが目的……ということでしょうか?

楠富:はい。まずは自分の内面状態に向き合うきっかけになったらと思っております。将来的にはヘルスケアやメディカルの領域で活用できるよう、製薬企業様と中枢系の脳に関わる疾患に関する研究も進めております。

堂上:なるほど。以前ウェルビーングの実証実験で、働いてる方の約300名に40日間、毎日のストレスや睡眠状態、食事を記録させていただきました。すると、特に40代男性が平日のストレスで土曜日に不調になる方が多いことがわかったんです。そういった不調を防ぐためにも、『VIE Tunes Plus』などを使って、日常の中でちょっとしたリラックス時間を作るのはすごく大切だとあらためて感じました。

川島:最近だと在宅勤務も増えて、昼休みも休まず働いて、ぱっと昼食を食べるだけで終わったりする方も多いと思うので、そんな方にもピッタリですよね。私も早速使ってみたいと思いました!

習慣化に必要なキーワードは、楽しさ・日常感・コミュニティ

堂上:ここからは、パネルディスカッションに移らせていただきます。まずみなさんにお伺いしたいのが「習慣化」についてです。いくらウェルビーイングを実現するサービスだったとしても利用者さんがご自身で継続して使わなければ意味がないと思うのですが、そのあたりはどんな工夫があるのでしょうか。楠富さん、いかがですか?

楠富:おっしゃるとおりで、ヘルスケアのサービスは習慣化が重要なポイントとなります。楽しくないと続かないと思うので、弊社としてはやっぱり「エンタメ性」を大切にしていますね。

堂上:楠富さんご自身は習慣化のために何か意識していることはありますか?

楠富:意識して「間」を取るようにしています。朝に瞑想する時間を取ったり、ツールを使って管理したり……。でも、プロダクトを作る側にいなかったら自分でもできていなかったと思います(笑)。

堂上:素晴らしい。きっかけは大事ですよね。何か新しいことにチャレンジして自分にとってそれが良いことだと気づければ、次にもつながりますもんね。中田さんは、健康的な体を維持するために医師として患者さんにアドバイスしていることはありますか? ご自身の習慣についてもぜひ伺いたいです。

中田:仕事でもプライベートでも、スケジュールに組み込むことを意識していますね。「必ずこれをやる時間」「この日は休む日」と決めておくことで、習慣化できている気がします。

堂上:いいですね。僕は週に1回パーソナルジムに通うようにしたんです。ついついサボってしまいがちなのですが、スケジュールに入れておくと習慣化になりますよね。

中田:ただスケジュールに入れていたのにできなかったという失敗体験があるとそこでもう終わってしまうことが多いので、楠富さんがおっしゃっていたように、いかにそのスケジュールに入れた時間を楽しくするかということが大事ですよね。弊社のサービスでも会員さん同士で仲良くできるコミュニティも作っていて、それが「楽しい」にもつながっているようです。

堂上:素晴らしいですね!

堂上:萩原さんはいかがですか?

萩原:僕たちのプログラムは疾病管理がメインなので、医療専門職側が病気の知識や経験などを重視しがちなんですが、社内研修ではコミュニケーション技法に注力しています。利用者さんにいかに習慣化してもらえるかというところを、コミュニケーションでアプローチするんです。

堂上:なるほど、良いですね! ちなみに、習慣化のために萩原さんご自身が工夫していることは何かありますか?

萩原:僕も最近ジムに通っているんですが、会社があるビルのジムに入会して日常に組み込むようにしました。スケジュールに入れるのに加えて、「続けやすい環境」というのも大事ではないでしょうか。

堂上:たしかに日常のなかに環境を整えて組み込むこともすごく大切ですね。川島さん、生活習慣病の方にはどんなアドバイスや指導をしていますか?

川島:産業医として面談する際は、あくまでもその方の一面しか見ていないという前提を意識するようにしています。習慣化のためにスケジュールに入れたとしても、例えば子どもの発熱など、予定していたことができない方も多いと思うんです。働いているその人だけを見ていると「どうしてできないの?」と思いがちなのですが、私たちが見えているのはあくまでもその人の一面だけ。だから、産業医という立場ではあるけれど、働いているその人、ではなく、その人の生活背景も考えたうえで何ができるのかを一緒に考えます。そうして、「通勤時には階段を使いましょう」「大股で歩きましょう」「ご飯を小盛りにしましょう」というように、家を出て帰るまでに何ができるかを考えて指導します。

堂上:なるほど。過去に我々がリサーチしたデータによると、実は健康を意識して行動できる人というのは日本人だと10%未満らしいんです。そういった意味でも、みなさんがおっしゃっていた「いかに日常に組み込んで楽しむかどうか」はとても重要ですよね。

そこに加えて、インセンティブの設計も僕は重要だと思います。「これを頑張ったら〇〇がもらえる」というのは大きなモチベーションになりますよね。あとは、中田さんがおっしゃっていた「コミュニティ」も欠かせません。データを連携することで専門家からアドバイスをもらえたり、仲間同士で会話ができたりすると外圧が働いて、「何とかしなきゃ」と思えることもあると思うんです。

みなさんのサービスはウェルビーイングを実現するためのそれらの要素がすべて詰まっていて、素晴らしいなとあらためて感じました。

デジタル×アナログの掛け算でパーソナライズされた医療を提供

堂上:健康についての注目が高まるなかで、「1日の摂取カロリーを1,600kcal以内にしよう」「健康のために一万歩歩くのが良い」といった基準みたいなものもあると思いますが、なかには2,000kcal摂ってもいい人もいれば、1日5,000歩で十分な人もいますよね。こういった「パーソナライズド」という視点についてはみなさんどう思われますか?

楠富:弊社のサービスで言うと、そもそも脳の状態というのは個人によってかなり差があります。今は自分のデータを学習させるということをやっていますが、パーソナライズドの視点は脳に関しても一大テーマのひとつですね。

堂上:先日、睡眠中の脳波を分析する実験に参加したんです。お酒を飲んだ日、昼寝をしているとき、睡眠不足の日……と、色々なパターンの脳波を取得して、どの状態が僕にとって一番良いかを分析してもらいました。同じように、寝ている間だけでなく日常のなかで手軽に脳の状態がわかって、その時々に合わせた音楽を提供できるのは素晴らしいですよね。中田さんはいかがでしょうか?

中田:僕らはパーソナルドクターという概念を提唱しているので、パーソナライズドに関してはかなり研究をしております。医療的な面でデータを蓄積・可視化してその人に合ったケアを提供するのはもちろん、僕らがもっとも大切にしているのはゴールの設定です。

医療の現場だと、医師のなかで「この数値をいくつ以下にする」というゴールが決まっていることが多いんです。一方で、僕らは利用者さんが何を求めているか、何歳まで生きたい、どういう人生を送りたい、今は何に熱中しているのか……などを徹底的にヒアリングします。その人が大事にしてる価値観によって、プランやケアを提案しているんです。生活習慣の指導でも、例えば一律に「お酒は避けましょう」と言うのではなく、「週に5日の会食をやめずにどう改善していくか」を重視しています。

堂上:そこまで親身にやってくださるんですね! ますます利用したくなりました。萩原さんはいかがでしょうか。

萩原:弊社では指導の仕方が体系化されていて、「高血圧の人は塩分を6g以下にしないといけない」などのガイドラインがあります。ただこれは疫学や公衆衛生のビックデータから得られたエビデンスで、あくまで全体最適であって個別最適ではないんです。だからこそ、サービスを通じて大量のデータを蓄積していくなかで、より細かくグルーピングして指導できるよう分析を進めています。

堂上:なるほど、いいですね。データを見ながら自分に合った指導をしていただけるというのは、健康を維持するためのモチベーションにもなりますもんね。

萩原:そうですね。自分に合ったアドバイスをしてくれるというのは利用者の方から1番感謝される部分でもあるので、サービスとしても価値を発揮できてるポイントなのかなと思っております。

堂上:川島さんはいかがですか? 産業医という立場だと従業員さんと一対一で向き合うことも多いと思いますが、個人が頑張れる環境を整えるために、一人ひとりに寄り添ううえで意識していることはありますか?

川島:現段階では、オンラインでできることと対面でできることは、全然違うと日々感じています。対面でしか得られない情報もたくさんありますから、産業医としてはそこにも注意していこうと思っていますね。

例えば、以前なかなか眠れないという方に睡眠計測アプリを紹介したことがありました。ところが、そのアプリでは「十分な睡眠がとれている」という結果が出たんです。このように、データで言われていることと本人が心の中で思っていることが違うのはよくあることじゃないですか。

ただ、もちろんデータもものすごく重要なので、データは参考にしつつ、現実とのギャップを対面での会話を通じて微修正していくのが大事なのだと思います。

堂上:まさにパーソナライズされた医療ですね。データを鵜呑みにするのではなく、主観でどう感じてるのかもやっぱり大事ですよね。

病気を患っても誰もが豊かで楽しく生きられる社会を作りたい

堂上:最後にみなさんが、これからどういう未来をつくっていきたいかお伺いしたいと思います。まずは萩原さん、いかがでしょうか。

萩原:当社は、創業当初から一貫して「一病息災」というのを掲げております。無病息災、病気なく長生きするということももちろん大事ですが、病気を抱えた方でも、病気とうまく付き合いながらウェルビーイングに生きていける社会を実現する。この一端を担えれば良いなと思っています。

中田:僕は「ウェルネス」という社名通り、誰もが1回きりの人生を豊かに生きて、最後に「いい人生だった」と思えるような社会をつくっていきたいです。昨今、AIの進化も著しいですが、あくまでもデータは過去のものです。人との出会いによって価値観がガラリと変わることもありますし、そもそもウェルビーイングが人によって違うことを考えると、幸せのゴールが変わる可能性もあります。

そういった意味では、データをうまく活用しつつ、コミュニケーションのようなアナログな部分の価値と組み合わせながら、みんなが豊かでハッピーに生きれるような社会をつくれたら嬉しいです。また、ヘルスケアだけでなくウェルネスの目線の医者仲間を増やしていきたいとも思います。

楠富:VIE株式会社は、ブレインテックとエンタメの力で感性豊かな社会を作ることを掲げています。やはりいくらAIが発展したとしてもそれだけでは限界があると思うので、あえてエンタメという楽しさを踏まえてこのビジョンを実現しようとしています。これからもサイエンスの力によって見えてくるものは色々あると思いますが、それらに向き合いながら、人が豊かに生きられる社会をテクノロジーの力でサポートしていきたいです。

川島:ウェルビーイングという言葉は、世間ではまだまだ認知度が低く、内容まで理解できている人は僅かです。そんななか、本日ここに来てくださった方々が「自分は今、身体的・精神的・社会的に満たされているのか」を考えるきっかけになれば嬉しいです。

それと同時に、ウェルビーイングのためには人々がゆるくつながることも大事ですので、そういったつながりを増やす機会が増え、ウェルビーイングの認知度が上がる、そして自分を振り返る機会が増え、またつながりが増えていく……そんな社会になればいいなと思っています。そして、働くという導線のなかで産業医としての自分の役目を果たしていきたいと思っています。

堂上:みなさん素敵な展望を持たれていてかっこいいです! ウェルビーイングな社会を実現するためには、一人ひとりがどんな生活や未来を目指しているのかを、常に問い立てながら生きていくことが欠かせません。そうすることで、まずは自分がウェルビーイングな状態になり、ゆるいつながりで周りの方々に伝播させることで、ウェルビーイングな社会は実現するものだと思っています。

今日のご縁も大切に、僕もみなさんと一緒にウェルビーイングな未来を作っていきたいと思います。萩原さん、中田さん、楠富さん、そして川島さん、本日はどうもありがとうございました!

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