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【中田航太郎氏】健康という資産を守り、楽しく生きる。病を未然に防ぐ「予防医療」とは?

人生100年時代といわれるようになり久しいけれど、いつまでもアグレッシブに動くためには、心身のメンテナンスは欠かせない。しかし、私たちが病院に駆け込む時の多くは、すでに病気の症状が出てからだ。

そんな従来の医療に疑問符を抱き、健康を守るための相棒サービスとして登場したのが、個別予防ケアプラットフォーム「Wellness」。個人の生活習慣やエビデンスに基づき、心身を丈夫に保つコツと、病を未然に防ぐための対処法を専属の医師が教えてくれる。

「予防医療」という日本ではまだなじみの浅い分野で、セルフケアの底上げに奔走する中田航太郎さんに、Wellule編集部の堂上研が話を伺った。

 

中田 航太郎さん

株式会社Wellness 代表取締役

東京医科歯科大学医学部卒業後、初期研修を経て救急総合診療科医。予防医学の普及と医療アクセシビリティ向上を目指し、2018年6月に株式会社Wellnessを創業。「世の中から防ぎ得た死や後悔をなくす」をビジョンにプロダクトを展開している。
https://company.wellness.jp/

堂上 研

Wellulu編集部プロデューサー

1999年に博報堂へ入社後、新規事業開発におけるビジネスデザイン ディレクターや経団連タスクフォース委員、Better Co-Beingプロジェクトファウンダーなどを歴任。2023年、Wellulu立ち上げに伴い編集部プロデューサーに就任。

ホリスティックな医療を目指して起業

堂上:今日は中田さんが取り組んでいる「医療予防」について、そしてプライベートの話や、生きがいなどもパーソナルなところもおたずねしていきますね! よろしくお願いいたします。まず、中田さんは医師であり起業家なんですよね?

中田:よろしくお願いします! ドクターとして勤務をする中で課題を感じ、事業を興しました。

堂上:お医者さんとしては、どのくらいの期間働かれたのですか?

中田:今も医師としての職務もしていますが、病院に所属していたのは4年間です。

堂上:診療の専門は?

中田:救急総合診療科にいました。内科の領域から事故の外傷、脳梗塞まで幅広く診ていました。

堂上:総合診療という科があるんですね。

中田:要は救急ですね。どんな状態か分からないところから診療がスタートします。

堂上:専門とする科を選ぶものではないんですか?

中田:今までの日本はスペシャリストになることを重宝してきました。

堂上:そうそう。僕の中では整形外科や眼科といったように、ピンポイントで診療をするイメージです。

中田:日本の医療は、そんな風に細分化され過ぎてしまったんですよ。ホームドクター制度のある欧米では、不調があるとまずその主治医に相談をします。状況を聞いた医師が、疾患の潜む可能性を感じたら、適切な診療科とドクターを紹介してくれます。

片や日本では、昔ながらのかかりつけ医というのがどんどん薄れてきて、第一段階で目がかすむなら眼科、女性ならお腹の痛みは婦人科に行く、というように振り分けられてしまいました。でも、それって確実ではないですよね。間違った科で診療を受けるというケースも往々にしてあるわけです。僕は特定の臓器というよりも、ジェネラルに診療をしたかった。だから、総合診療科へ進んだんです。

幼少期に医師になることを決意

堂上:総合診療科へ進まれてから、どんな課題を解決しようと考えて、今の事業を立ち上げたんですか?

中田:もっと、全人的に診察がしたかったんです。

堂上:なるほど。そもそも、医師を目指したきっかけは何だったのでしょうか?

中田:4歳の頃に発症した喘息を治療してくれたドクターがすごく親切で、診察で会う時間が大好きでした。先生みたいになりたい! という憧れから、医師の道を志すようになったんです。医学部に進学して、5年生の時に臨床実習で配属された心臓血管外科での体験も、ひとつの契機になっています。

堂上:具体的に伺ってもいいですか?

中田:もちろん。夕方5時ごろに不安定狭心症を抱えた経営者の男性が運ばれてきました。夜7時から緊急オペがスタートし、終了したのは深夜2時。その間、家族だけでなく社員も泣きながら待機していました。幸いにも一命は取り留めて、ハッピーエンド。そして術後、その患者さんの病室に毎日通って、色々と話を聞いたんです。

堂上:すると?

中田:「数カ月前から不調はあったけれど、多忙を理由に病院へ行くのを後回しにしていた」と教えてくださったんです。さらにその方は、2〜3歳で川崎病を発症していたことも知りました。そもそも川崎病にかかっていると心臓の疾患になりやすく、定期的に診察が必要です。でも、10年くらい受けていなかった。さらに、会社の健康診断でD判定が出ても再検査をしてないことが分かりました。その結果、いきなり倒れて救急車で運ばれることになったんです。

堂上:予兆があっても、ほったらかしにしていたんですね。

中田:そうです。そして、我々医者は、今のモデルだと病院で待つことしかできません。でも、その前段でもっと介入していたら、いろんな負担が減らせます。先ほどのエピソードでは、患者さんの胸には消えない傷跡が残りました。家族や社員の心理的ダメージも大きかったはずです。さらにいうと、10人くらいのスタッフが夜に残り、人工心肺を作動させた。これだけで数千万円の医療費がかかっています。これでは、誰も幸せじゃないですよね。

でも、医療現場では瀬戸際で命が救われたという部分がフォーカスされ、幸せなストーリーになっています。そうではなく、どうすればこの患者さんのような人が、1〜2年早く医師と出会えるかを考えたほうが、助かる人が圧倒的に多いと気づきました。

患者との「対話」から予防医療に目覚める

堂上:それが今の事業につながっているんですね。

中田:はい。このことをきっかけに、予防医療に興味を抱きました。そこで学生時代は、とにかく予防医療のプロを探し回って、勉強をしたものです。とはいえ、臨床をしないと分からないので、自分が主治医となって患者さんと向き合う経験を積みました。

中田:そうすると、なぜもう少し早く僕の所に来なかったんだろう、という思いが募るわけなんです。病気になる前ならいくらでも選択肢があったのに、病気になってしまってからではできることが限られてしまいます。ただ、健康な時って医者と触れ合う機会ってほぼないじゃないですか。

堂上:そうですね。健康診断を受けても、そのあと病院に行くかと聞かれたら、自覚症状がなければ、実際は忙しいとかを理由に行かない人も多いでしょうね。

中田:そうなんです! そもそも健康診断で見つけられる病気は限られています。だから元気なうちから医者を持てるプロダクトがあればいいと思ったんです。

堂上:そうして「Wellness」を立ち上げられたと。具体的にはどんなサービスなのでしょう?

中田:「予防医学の力で、防ぎえた後悔をなくす」というビジョンのもとに、パーソナルドクターがいます。誰しもがいつかは必ず迎える臨終の際に、やり残したことがない状態であることが、僕らの目指すゴールです。そのために予防医療を提供しています。医師は病気というマイナスをゼロにする存在だと思うんですけれど、僕らは人生をプラスにするための伴走者。治療ではなく健康維持のために寄り添うのです。

堂上:マイナスをゼロに戻すのではなくキープする存在、ということですか!

中田:そうです。もしくは、プラスにも持っていきます。

健康に投資をする理由は、そのほうが人生が楽しいから

堂上:2つの視点で伺いたいのですが、予防医療を促したとしても、今の日本の医療保険制度は、病気になった時に3割もしくは1割負担で治療を受けられます。だから、保険で賄えないトピックスに出費する必要がないと考える人もいますよね。また、そもそもコストをかけなくても自分は大丈夫だと思っている。その辺りのマインドは、コロナを経て変わってきているのでしょうか?

中田:日本人は、米国は皆医療保険制度ではないから予防医療に力を入れている、と誤解をしています。僕はアメリカに住んでいた時期もあるのですが、向こうの経営者でそういうふうに答える人はほぼいなくて。

もっとシンプルで「元気なほうが人生楽しくて、事業も上手くいくよね」という思考なんです。彼らが健康に投資をするのはパフォーマンス維持のためで、病気になった時にお金がかかるのが嫌だという理由ではないんですよ。

堂上:自分たちが、よりよく生きるための出費なんですね。その感覚を抱く日本人は少なそうです。

中田:医療保険制度ではなく、カルチャーの問題ですよね。だから潮流を作ればいくらでもポテンシャルはあります。アメリカの友人や経営者と、CEOの役割はファイナンス、マネージメント、ヘルスケアだとよく話しています。でも、日本のトップはヘルスケアをないがしろにしている人が多い印象です。だからこそ医師という立場で啓蒙していきたい。

堂上:僕がウェルビーイングの事業共創をしよう決意して「Wellulu」を立ち上げたきっかけに、47歳で他界した兄の存在があります。それまで健康診断もきっちりと受けていたにも関わらず、急に心肺停止となりました。緊急搬送で1週間程度入院をしたものの、そのあと自ら心臓が動くことはなかった。ちょうどコロナ禍でもあり見舞いも制限され、家族葬となりました。仕方のない話なのかもしれないですけれど、僕としてはなにかしら予兆はあったんじゃないかと諦めきれなくて。

毎日の食事や歩行の速度、どのくらい喋ったかなど、些細な日常を記録するシステムがあったら、心臓が止まる可能性も予測できたような気がしています。そうすれば、失われなくても済む命があると。その仕組みを構築したいと考えたものです。そしたら、今日、まさに描いてたことを実行している中田さんと会えた。もっと早く知りたかったな。

中田:そうだったんですね。これまで、数百人の経営者を担当してきました。堂上さんのおっしゃるように、自覚症状のないところからも、聞き取りやデータ管理によって病気の早期発見につながったケースもありますね。たとえば、安静時に時々胸が痛くなるけれども数分経てば元に戻るので放っておいた、という話を耳にしたので検査を受けてもらいました。そうしたら冠攣縮性狭心症だと判明し、いつ心筋梗塞を起こしてもおかしくない状態だったんです。

堂上:それはコレステロール値の高さや、脂質異常などに表れてたりするんですか?

中田:そういうケースもありますし、誰が見ても「健康」だといわれる人でも潜んでいることもあります。

堂上:僕の兄みたいなパターンですね。それって人間ドックで見つかるものなのでしょうか。

中田:通常の人間ドックでは難しいかもしれません。一般健康診断は、マスにアプローチをしているものなので、一般的な疾患に対する検査をします。その人特有のリスクを把握していないので、分かるはずもないんです。だから、人間ドックでは本人と家族の既往歴などを知っておく必要があります。同時に僕は、患者さんには健康診断や人間ドックの罠にハマっている人が多いとも説明をしています。

堂上:受けていることで、自分は大丈夫だと安心するからですか?

中田:検査が自分にとって最適であったか、という視点が抜けているからです。たとえば無自覚で心臓にリスクがあった人がいたとします。他の項目でA判定が出たとしても、健康を保証できるものではありませんよね。ただ、本人は症状がないので気づくことができないから、心臓の検査にはつながらない。そういう取りこぼしがないように僕たちがいます。

「Wellness」では、個々人の健康診断結果、歩行や睡眠の記録、家族の病歴、服用中の薬やサプリメントといったデータをアプリに連携し、管理をします。それに基づき検査の推奨をしますし、「今は行く必要がない」とアドバイスすることもありますよ。

人生の航海を共にするライフクルーになる

堂上:「Wellness」は、利用者の方とのコミュニケーションも密に取っているんですよね?

中田:もちろん! また僕たちは予防医療のエビデンスを集約し、ドクター間で共有しています。というのも、医師免許は一度取得をすると生涯有効なんですよ。日ごとに進歩する医学の知識をアップデートしていないと、学生時代で止まったままになってしまう。それではダメですよね。

堂上:聞けば聞くほど、Wellulu編集部のメンバーも加盟したくなりますね! 費用が気になります。

中田:いくつかコースを用意しています。もっともベーシックなのは1カ月3万円です。

堂上:繰り返しになりますけれど、夢に描いたプランを実現されている方に初めてお会いできて、本当に感慨深いです。

中田:僕らはライフクルーでありたいんです。人生という航海にドクターも同乗させてほしい。漫画の『ワンピース』にたとえるならルフィを支えるチョッパーです。

堂上:すべてのお医者さんがライフクルーになったら最高ですね。実務的な話として、コレステロール値を下げるためには、生活習慣の改善が必要となりますよね。ダイエットなのか運動なのか、手段は色々あるんでしょうけれど、それを改善させるために導く仕掛けもあったりするのでしょうか?

中田:その人が興味のありそうな選択肢と、それに取り組むことで起こる変化をデータ化したものと、さらに何もしなかった場合のリスクをお伝えします。可視化すると分かりやすいし、心に響きますよね。

堂上:コーチングをしてくださるんですね。

中田:一緒にPlan(計画)、Do(実行)、Check(測定・評価)、Action(対策・改善)を回していきます。従来の仕組みだと点のつながりでしたが、「Wellness」では線で関わっています。仮にプランAがダメでもBへとすぐに切り替えられます。

ハワイでトライアスロンに初挑戦

堂上:ここで少し、プライベートなことを聞いてもいいでしょうか。中田さんがワクワクする瞬間はどんな時ですか?

中田:僕は知的好奇心が旺盛で、新しいものとの出会いや、新しいことに挑戦をしている時にワクワクします。この前、ホノルルでトライアスロンにチャレンジしてきました!

堂上:完走されたんですか⁉

中田:はい、ゴールできました! ちなみに今日のアロハシャツは、その時に購入したものです。

堂上:すごいなー。アロハシャツはいつも着ているわけではなかったんですね(笑)。

中田:ハワイ大学に留学していた頃は、いつもアロハでしたよ! ハワイでは正装ですし、普段からスーツは着ずにラフな格好をしています。

堂上:いいですね。この対談を通じて、いろんな経営者の方などにお会いします。好奇心旺盛で、そしてトライアスロンをされている方が多いんですよね。僕なりに紐解くと、新しいものが好きで、それに挑戦している状態にウェルビーングを感じているのではないかと。

中田:たしかにそれはあるかもしれません。あと体験してみて分かったのが、やっぱりデータですね。「ここを改善したら2分はタイムが縮むな」など、プランを組み立てていきますよね。それって、経営戦略に通じるものがありそうです。

堂上:なるほどね。もともとスポーツはされていたんですか?

中田:柔道、バスケ、あとは筋トレもしています。ひとつの種目を極めるのには興味がなくて、色々したい。そしてそれぞれで80点を目指しています。

堂上:自身の管理もばっちりですね!

中田:自分ができてないと、語れないですから。でもお酒も飲むし、トレーニングは辞めておこうという日もありますよ(笑)。

堂上:さすがです。今日はとても刺激を受けるお話を聞けて楽しかったです! いつか一緒に仕事しましょう!というか、みんなが受けるべきですね! ありがとうございました。

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