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【布川佳央氏×牛嶋洋之氏】生活習慣病に特化したオンライン保険診療サービスが描くウェルビーイングな社会

生活習慣病は、定期的に通院を伴うため時間の負担が大きいのが現状だ。特に仕事や家庭でタスクが盛りだくさんの40〜50代には重くのしかかる予定になる。

その煩わしさを解消するのが、オンライン保険診療診療サービス「ヤックル」だ。自宅にいながら診察と血液検査ができ、薬も届けてくれる(2024年9月から尿検査にも対応予定)。2023年12月にサービスを開始すると、ビジネスパーソンや病院から離れた場所に住む人々などを中心に、全国から利用者が増加しているという。

今回はサービスを提供している株式会社アルゴスの代表取締役である布川佳央さんと、取締役の牛嶋洋之さんにWellule編集部の堂上研が話を伺った。

 

布川 佳央さん

株式会社アルゴス 代表取締役

群馬県生まれ。地域に寄り添う歯科医師の父の背中を見て育つ。高校卒業後に海外放浪、介護福祉士、ITエンジニア、セキュリティコンサルタントを経て2023年にオンライン保険診療サービス「ヤックル」を立ち上げる。

ヤックル公式ホームページ

牛嶋 洋之さん

株式会社アルゴス 取締役

神奈川県生まれ。ITベンチャー企業で営業や採用経験を積んだ後に成長SaaS企業に就職し、経営企画でアライアンス業務に携わる。自身でも複数の企業支援を行う中、布川さんとの数奇な出会いによって「ヤックル」に参加。

堂上 研

Wellulu編集部プロデューサー

1999年に博報堂へ入社後、新規事業開発におけるビジネスデザインディレクターや経団連タスクフォース委員、Better Co-Beingプロジェクトファウンダーなどを歴任。2023年、Wellulu立ち上げに伴い編集部プロデューサーに就任。

医療業界のDX化を進めるために起業

堂上:今日はどうぞよろしくお願いいたします。早速ですが、自己紹介からお願いしてもよろしいですか?

布川:はい。私は布川と書いて「ぬのかわ」と読みます。現在43歳です。都内で子ども2人と妻の4人で暮らしています。

堂上:最初に年齢や家族構成を教えていただいたのは、初めてかもしれないです!

布川:そうなんですね!? こういう場でお話をしたことがなくて、ちょっと緊張しています。医療従事者の多い家系に生まれました。

堂上:ということは、医学部のご出身ですか?

布川:私は経営学部出身です(笑)。両親から「好きに生きなさい」と言ってもらい、高校を卒業してからは海外を放浪したり、介護福祉士やバーテンだったりさまざまな経験をしました。その後、ITエンジニアとしてネットワークなどのインフラ回りの経験を積み、セキュリティ専門の大学院を出て、直近ではセキュリティのコンサルタントをしていました。その間も家族や友人など医療従事者とのつながりはずっとあって、コロナ禍でオンライン診療が注目を浴びた時期に、通院が楽になるかもしれないと期待をしていたんです。というのも、恥ずかしながら、私自身が3つの生活習慣病を10年ほど患っておりまして。

堂上:えー! そんなふうに見えないですね。

布川:高血圧、高コレステロール、痛風です。多分、遺伝による部分が大きいかもしれませんが今も薬を飲んでいます。同じ薬をもらうために毎月予約をし、相当な時間を通院に割かなくてはいけない。その体験が、自分の中でものすごく課題感としてあったんです。

堂上:処方してもらわなくてはいけないですもんね。

布川:そうなんです。来院の予約をしたにも関わらず、診察や会計の待ち時間があると、なんだかんだで1時間以上は病院に拘束されるんですね。さらに今度は、薬をもらうために薬局で待つ。平日は仕事があるので、土曜日の午前中に行くからほかの予定が入れられないわけです。そういう生活を10年近く続けていて、どうにかならないものかと考えていました。他の業界ではDX化が進んでいるなかで、行政や医療は遅れていることに課題を感じていて。そして、コロナ禍を経てもそれは劇的には進みませんでした。であれば、自分が変えようと決心したんです。

堂上:かっこいいですね。自分と向き合うというのは、もうすでにウェルビーイングな話になってきました。ここで牛嶋さんについてもお聞きしていいですか。

牛嶋:はい! 牛嶋と申します。現在33歳です。3歳から15歳まで器械体操をし、それから7年間は自転車ロードレースや競輪をしていました。

堂上:オリンピック選手を目指していたとか?

牛嶋:そこまでは叶えられませんでしたが、国体や選抜大会には出ていましたね。22歳で引退し、今度はビジネスの世界で戦おうとITベンチャー企業に入りました。それからスタートアップに転職し、マーケティング、営業、採用、アライアンス部門で経験を積みました。ビジネスマンとして一定のスキルを身に付け、自身でも起業し、この先どう生きていこうかを考えているところで布川さんとの出会いがありまして、一緒に仕事することに決めました。

スマホの中にあるかかりつけ診療所

堂上:お互いの想いが重なって共同経営という形で株式会社アルゴスはスタートされているのですよね。そんな情熱を注がれている事業について教えていただけますか。

布川:もちろんです。私たちはスマホを慢性疾患のかかりつけ病院のようにしようと、オンラインの保険診療サービス「ヤックル」を運営しています。先ほども申し上げたように、通院にはどうしても時間を取られてしまいます。とはいえ、一般的なオンライン診療は口頭のみで成立するので、症状が見落とされることもある。

たとえば当事者は単なる腹痛だと思っていたが、じつは盲腸だったとか。オンラインだと触診がなく自己申告がほぼ全てになるので、拾いきれないことが多いのが現実です。迅速かつ安心して受診ができる環境を整えるために、COOの牛嶋とCMOの山本と3人で知恵を絞ったものです。

そこで自宅でできる検査キットを併用する診察はできないか、という結論に至りました。というのも、せっかくリモートで受診しても検査のために結局は通院が必要になります。これをセットにすれば、急変リスクの低い患者さんの場合はオンラインへシフトできるのではないかと考えました。

堂上:「ヤックル」では自宅で採血したものを送ると、症状を調べてもらえる。簡易人間ドッグのようなイメージですか?

牛嶋:そうですね! みなさん、オンライン診療と聞くと自由診療のAGAや美肌を対象にするイメージを持たれるかと思います。

堂上:そう! 僕もオンライン診療を事業にしようとした時期があって、いろいろと調べました。するとAGAやアトピーくらいしかオンライン診療では対応できないという結論に辿りついたんです。だから、どこまで安心して受診できるかを知りたいです。

牛嶋:コロナ禍の2020(令和2)年にオンライン診療のガイドラインが事務連絡で大幅に改訂されたことで、初診からオンラインでも受診できるケースが増えました。そうすると、オンライン診療の利用率が大幅にアップしたんです。自宅で受診して薬が届くのは、やっぱり便利ですよね。ただ保険診療の対象になる症状は、将来的に重篤化する可能性があったり、場合によっては入院や手術が必要なこともあります。僕たちはオンラインで最高の医療体験を届けたいので、「ヤックル」の開始にあたって安全性の担保は絶対条件でもありました。どこまでの疾患に対応できるかを徹底リサーチしたものです。

そうして​​糖尿病、高血圧、脂質異常症(高脂血症)、高尿酸血症(痛風)の慢性疾患に絞ることにしました。これらは患者さん自身がどんな病気かを理解し、服用する薬もわかっている。定期的な検査もあるので数値も確認できます。

堂上:生活習慣病の中でも4つに特化しているんですね。薬まで届けてもらえるんですか?

牛嶋:はい。インスリン療法にも対応しています。症状に応じて血糖を測る人もいらっしゃるので、血液検査は切っても切れません。そこで医療機器認定を取得した血液検査キットの検査メーカーとパートナーシップを結んで、患者様限定で雑貨として血液検査キットの販売をしています。

堂上:採血って個人でできるものなんですか?

布川牛嶋できます。

布川:注射器を腕にブスッと刺すというのはなかなかできませんけれど。サンプルを持ってきたのでお見せしますね。バネ式の小さな針が格納されているので指先に当てて採血します。

堂上:こんなにコンパクトなんですか!? これで血量は取れるものなのですか? 病院での検査だと試験管2〜3本分は取られますが、その違いはなんなのでしょう。

布川:検査項目の多さや測定する機械の問題で正確に計れなかった場合の予備という側面もあります。なので「ヤックル」が対象にしている疾患だと、このキットの量で十分なんです。

コア層である40〜50代のビジネスパーソンに対応できるよう夜間に開院

牛嶋:2023年12月に診療を開始し、現在はおよそ2,000名の患者様が利用してくださっています。たとえば北海道に住む83歳の女性は、雪道を運転して病院へ向かうのが怖いという理由から登録をされたようです。利用してくださる7割の方は都心部の40〜50代が中心、3割は医療アクセスの不便な地域で、離島の患者様もいます。

堂上:基本的なサポートとして医師の診療があって、症状に応じて薬を処方し、それが定期的に送られてくるんですか? 1回あたりの受診料も気になります。

布川:保険診療ですので定期発送ではなく、その都度診療をします。また患者さんの負担金額も、従来の物理対面病院との違いは配送料以外ほぼありません。

牛嶋:最近では病院が混んでいて、予約制のところも多いですよね。「ヤックル」のコア層のような40〜50代の方は、通院のために仕事を中抜けしたり、半休を取ったりして忙しい時間をやりくりしています。移動や待ち時間に割く負担も大きいです。また慢性疾患なので、医師と話す内容は1カ月くらいではそんなに変わりません。診察自体は1〜2分で終了するのに、前後にかかる時間が長い。それが「ヤックル」だと、自宅から診療が受けられますし、当日の登録でも受診が可能です。

堂上:薬が切れてしまった時にはどうなるんですか?

布川:2つの方法を用意しています。まずは病院からご自宅に直送する院内処方。これには1〜2日ほどかかります。次は院外処方で、私たちが患者様指定の薬局に処方箋をファックスしておくことで、保険証とお財布を持って行けば薬を受け取れるようになっています。

牛嶋:院内処方の薬は、ポスト投函もOKの箱でお送りします。受け取り先も指定できるので、事業所や出張先のホテルに発送することもできますよ。移動の多いトラックドライバーさんや、船乗りの方も利用してくださっています。

堂上:とても便利ですね。僕は定期検診で、いつもコレステロールと肝機能がDかE判定になります。その結果を受けてもまだ元気ですが、医師から「堂上さん、これはもう服薬をしたほうがいいです」と指導を受けているんです。でも人間ドックでは処方箋を書けないから、診療所を訪れる必要があって。それがやっぱり大変で、1回も行っていないんですよね……。

布川:お話を聞いてすごく心配になってきました。「ヤックル」でなくてもいいんですけれど、受診してほしい! 生活習慣病は、初期段階では自覚症状が出ないことが多いんです。

堂上:そうなんですよね。今は元気だからつい後回しにしてしまいます。ちなみに「ヤックル」はアプリをダウンロードすればいいんですか?

牛嶋:アプリではなくLINEから入れますよ。

堂上:すごく気軽で良いですね。

布川:はい。日本で約9,000万人が利用しているLINEだから高齢の方でも簡単に使えます。事前のWEB問診は24時間対応で、診療時間は年中無休で18〜22時となります(今後順次時間を拡張予定)。また、次回の予約をLINEでお知らせする機能もあります。さらには紙の診察券や次回予約日のお知らせを作って、薬をお送りする箱に同封しています。予約日のお知らせは、忘れないよう冷蔵庫に貼っておく方も多いようです。ちなみに裏面には担当医のコメントが記載されています。

牛嶋:現在、所属する医師は5名で、曜日で固定しています。これもオンライン診療では珍しく、かかりつけ医としての伴走が可能な提供体制を用意しています。5年後も安心して治療を続けられる場であることを目指しています。

堂上:僕みたいな通院が面倒だと思うタイプにはありがたいサービスですね。

布川:そうですね。引越しを機にかかりつけ病院を見直す中で、オンラインに切り替えた方もいらっしゃいますよ。

偶然の出会いからパートナーに

堂上:ところで布川さんは、今のウェルビーイング度を数値で表すとしたら、どのくらいですか?

布川:90です!

堂上:おぉ! めっちゃいいですね。じつは過去に調査した時に、40代男性のスコアが最も低かったんです。今日は年齢を教えていただいたのでお尋ねしてみました。ちなみにウェルビーイング度が高い要因はどこにあるのでしょう?

布川:2つあります。1つ目は仕事で、2つ目は家族です。時間の制約がある中で子ども達と計画を立てて遊ぶようになってからは、その密度が濃くなっています。じつは5年ほど前に、生活習慣病を克服した時期がありました。妻と結婚するにあたって出された条件だったので、週3でジムに通って厳しい食事制限もおこないました。おかげで数値は良くなり、夫婦にもなれたわけですけれど、取り組んでいる間はウェルビーイング度20くらいでしたね。主治医に相談すると「その状態のほうが負担が大きいから、適度に薬も少し飲んでバランスを取りながら人生を楽しみましょうよ」とアドバイスを受けまして、軌道修正をしたらウェルビーイング度も上がりましたね。

堂上:なるほど! 努力されたのですね。結婚という目標に向かって努力していたけれども、ウェルビーイング度が低いのは考えさせられますね。牛嶋さんはいかがですか?

牛嶋:同じくらい高いです。思い切り凹んだ時期に人生を見直して、優先順位の整理をしました。そこで、まずは自分が幸せでないと大切な人を幸せにできないと思い至るようになったんです。

堂上:それは『Wellulu』でもつねに挙がるトピックです! お二人はどんなご縁で出会われたんですか?

布川:私の妹が中目黒で歯科医院を開いておりまして、開院当初の患者さんが牛嶋だったんです。

牛嶋:クリニックの在り方に感銘を受けて、週に1度のペースで通っていました。そのうち院長(妹の夫)と意気投合し、僕の結婚式にも来ていただいたんです。そしたらその席で「ヤックル」の話を聞いて、興味を持ちました。

布川:起業にあたって、妹にいろいろ相談をしていたんです。特にマーケティングに強い人はいないものかと探しあぐねていました。

堂上:なるほど。妹さんがキューピッドだったんですね!

牛嶋:そうなんです。前職や、6つかけもちしていた副業でたくさんの経営者と会ってきましたが、布川さんのようにこんなに素直な社長を見たことがなかった。しかもそんな人が難しい領域で起業をしている。僕も賭けてみようと思ったんです。

布川:先ほども名前が挙がった山本という者もおりまして、妹も含めたメンバーで創業しました。山本は私たちの話をずっと静かに聞いてくれて、最後にパンっと良い意見を出してくれます。そういう役割分担です。

堂上:僕もいろんな経営者とお話をしているなかで素直さを持っている方に惹かれます。お二人ともウェルビーイング度が高いので、それを『Welullu』を通して伝えられるのはすごく嬉しいです。

心を通わすためにはオープンマインドでいることが重要

牛嶋:個人的に、ウェルビーイングに対する思いが強いのですが、一人ひとりがウェルビーイングについて考えて実践できるプレイヤーが増えれば、それを周りが受け取り、伝播する。そうすることで、自分らしく生きられる人たちがもっと増えると思います。だから僕は自分をハッピーにさせることに集中しています。

堂上:『Welullu』ではたくさんのウェルビーイングな人たちとお会いして、その人のアルファ波を広げていきたいという想いがベースにあります。今日もこうやってご縁をいただいてお話をするなかで、僕自身が感じていることと、みなさんのウェルビーイングを教えていただくことで、少しでもウェルビーイングを意識できるような環境をつくりたい。また、そういう事業が共創の中で生まれていくと、ひとつの産業にもなれると考えています。

みなさん本当に生き生きとされています。これからどういう生き方をするとウェルビーイングな人が増えるかという問いを立てながら企画を進める中で、僕にとってはこの時間こそがウェルビーイングでもあります。

最後に2つ伺いたいです。まずは今、何をしている時がもっともウェルビーイングを感じるか。そして未来に自分がどんな社会をつくっていきたいかを教えていただきたいです。

牛嶋:ウェルビーイングを感じるのは、心と心がつながる瞬間ですね。相手の感情に100%集中していると表情が解けるんです。その状態がとても気持ちいい。

堂上:それは自分から懐に入り込んでいるのか、それとも相手が心を開いてくれている状態のどちらでしょう?

牛嶋:相手がオープンになっている時ですね。けっこう、そこが好き。

堂上:そうしてもらうためにも、自分が開かないといけないですよね。

牛嶋:そうですね。人によってスピードは違いますけれど。自分がその姿勢を持っているとみなさん向き合ってくださる。オープンになった者同士の会話って気持ちいいんですよね。

僕は人間として「考える行為」を大切にしています。宇宙の歴史からすると人生は一瞬で、長くてもせいぜい100年くらいじゃないですか。そのなかで日本で生きていくと決めたなら、何が本質なのかをいつも考えています。だから当たり前と言われていることを一度も信じたことがないです。

堂上:小さい頃からそうなんですか?

牛嶋:そうですね。高校時代に家族の根幹を揺るがす出来事があって、勇気を出して父親に直談判をし、状況を好転させました。その経験のおかげで、自分が大事な人との対話によって変えられることはあるとわかったんです。だからその瞬間に、思いは素直に伝えた方がいい。恥ずかしがっている場合ではないんですよね。

堂上:相手とどう対話をするかってとても重要です。腹を割って話したり、勇気を振り絞って何かに挑戦するとか、そのきっかけをどういうタイミングで作れるかというのはウェルビーイングに影響します。すごく素敵なお話ですね。

無駄な通院負担がなくなる未来を夢見て

堂上:布川さんはいかがですか?

布川:まず、私の原動力は「どれだけ人のためになれるか」にあります。これは父の影響が大きいです。父は群馬県で歯科医院を開き、経営よりも地域の方にとっての最善を尽くしていました。歯科医師は視力が低下すると続けられなくなるので、74歳を迎えた昨年に引退をしたのですが、その時にたくさんの患者さんが顔を出してくださって、医院が花束やお菓子で溢れていたんです。そんな父の姿をずっと見て育ったため、困っている人に寄り添う仕事がしたいと考えるようになりました。

そういう視点では、セキュリティコンサルタントもやりがいはありました。ただ私の出番は、トラブルが起こった後が多いんですね。それがすごくもどかしくて。そこで日本の医療費に目を向けてみると、2023年は46.0兆円(※)と年を追うごとに記録を更新しています。内訳を見ると糖尿病、高血圧、脂質異常症(高脂血症)といった生活習慣病を放置し、がん、心筋梗塞、脳梗塞へと悪化している方の治療費が多くを占めます。そうなる前段階に、アプローチをしたいと考えたんです。それが健康寿命の延伸や、医療費の削減にもつながりますので。だから繰り返しお伝えしますけれど、堂上さんの状態は心配です。

※令和4年度 医療費の動向(厚生労働省)

布川:40〜50代でまさにこれからの方が何かのきっかけで大病となり、自分の行動範囲に足枷がついてしまうのってすごくもったいないし、社会的損失ですよね。未来の話としては、病にかからない人を増やしたいという想いがあります。

 

堂上:でも、そうすると「ヤックル」としては規模が縮小されるのではないですか?

布川:今はオンライン診療だけですが、ここが割合として少なくなることは社会的にとても良いことだと思っています。今後は診療だけでなく、予防のための三本柱である運動や食事にまつわる情報の発信や、コミュニティも形成していきたいです。

堂上:患者さんのコミュニティがウェルビーイングな生活を送るためのサポートをもう一度作り直せたら、より良い循環が作れるということですよね。

布川:そうです。私が70歳を迎える2050年頃には、医療が縮小される未来があるかもしれません。

堂上:先日、日本抗加齢医学会の理事長である山田秀和さんとお話をしました。その際に「PPK(ピンピンコロリ)」が当たり前になるような世界を目指されているとおっしゃっていて。「健康寿命」と「平均寿命」が近い状態になるのは、すごいウェルビーイングだと思ったんです。お二人がチャレンジされている事業は、まさに「PPK(ピンピンコロリ)」を作ろうとされているということですよね。

布川牛嶋はい。

堂上:僕は寿命は仕方ないと思っています。でも120歳まで生きられるなら、90歳から30年間寝たきりで過ごすより、120歳まで健康診断の結果がオールAで全うできる人が増えたら、すごいおもしろい社会になりそうじゃないですか。そういう環境をつくられているような印象を受けました。「ライフモデルキャンパス」という言葉があって、枝葉となる人生の彩りを設計していきます。でも、幹がぐらついているとそれは成立できない。幹は健康なカラダに当たると思うんですね。「ヤックル」はそのライフモデルを考え直せる機会ともなるような気がしました。

布川:医師の果たす役割も変わっていくと想定しています。今医師に求められているのは、疾患の治療が中心です。でも近い未来では食事や運動など、QOLを向上させるためのコンサルタントのような役目も担うようになると考えています。医療も含めて、その人にとってのベストを提案できる場所を目指しています。

堂上:これからが楽しみです。今日は貴重なお話をありがとうございました。

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