湖池屋のプライドをかけたポテトチップス「湖池屋プライドポテト」が、2026年7月にリニューアルした。そのブランドを統括するのが、マーケティング本部マーケティング部3課課長の髙戸 万里那さんだ。
髙戸さんのモットーは「楽しむこと」。そのスタンスに基づいて、社内の反対を対話とまっすぐな熱意で乗り越えてきた。一瞬一瞬をどう大切に生きるか——仕事にも、子育てにも通じる姿勢が、湖池屋を代表するブランドを進化させ続けている。ポジティブにブランドを統括する髙戸さんの仕事観に迫る。

髙戸 万里那さん
楽しむことが、私の原動力

── 髙戸さんは、これまで商品企画に関わってこられたと伺いました。そもそも髙戸さんが、食品業界を選んだ経緯を教えてください。
髙戸さん:もともと「メーカーの商品企画でものづくりをやってみたい」と思っていたんです。就職活動で業界を選ぶときに、自分の好きなことを考えていたら、食べることに辿り着きました。
── 食べることが好きだったということでしょうか?
髙戸さん:食べることも好きなんですが、学生時代に飲食店でアルバイトをしていたときに、「お客様がおいしいものを食べているときの表情は幸せそうでいいな」といつも思っていたんです。
「食べる体験を通して幸せを届けられる人になりたい」と思って、食品業界を選びました。
── その中でも湖池屋を選んだ理由をお聞かせください。
髙戸さん:湖池屋は、カラムーチョやドンタコスなどのユニークな商品を生み出しているという印象があり、「面白そうだな」と思い、説明会に参加したんですね。
そのとき、楽しそうに事業を説明する生き生きとした先輩社員の姿を見て、「こんなふうに働きたい」と思い、志望しました。
── 会社の雰囲気や先輩社員の仕事の姿勢に惹かれたんですね!
髙戸さん:そうですね。シンプルに「仲間になりたい!」と思いました。
就職活動をしていた当時、出身の九州地方では湖池屋の商品が量販店にあまり並んでいなかったこともあり、入社後は「湖池屋の商品を、九州の多くの人に届けていきたい!シェアを伸ばしたい!」という野心を持って営業をしていました。
楽しみながら、大きなことを成し遂げたい

── 仕事をするうえで大切にしていることはありますか?
髙戸さん:楽しむことですね。商品に込めた気持ちはお客様に伝わると思っているんです。弊社の商品を通じてお客様に楽しい時間を過ごしてもらうためには、開発している側が仕事を楽しんでいる必要がある。
あとは、大きなことを成し遂げることですね。商品企画で大きなことを成し遂げることで、世の中に大きな幸せを届けたいと心から思っています。
── 「大きなことを成し遂げたい」というモットーはかっこいいですね!昔からそういった気持ちを持っていたのですか?
髙戸さん:はい。幼少期から目立ちたがり屋なのもあって、大きな成果を出したいと思っていました。
たとえば、学生時代に1年間ワーキングホリデーでカナダに行きました。11ヵ月ほど現地で働いて英語を話せるようになったあと、1ヵ月かけて一人でカナダを横断したんです。
今振り返ると、初めての海外にしては無茶な挑戦だったと思います(笑)。
── 培ってきた行動力がお仕事につながっているんですね。
こだわり抜いて辿り着いた、神業食感と複層的な味わい

── ここまでは、髙戸さんの入社するまでを伺いました。次に、現在担当されているお仕事の概要を教えてください。
髙戸さん:現在は、マーケティング本部マーケティング部3課課長として、湖池屋プライドポテトブランドの統括をしており、商品企画からテレビCM、SNS施策まで携わっています。
担当している湖池屋プライドポテトは、湖池屋の誇りをかけてこだわり抜いた商品なんです。
── 具体的には、どういったところがこだわり抜かれているんですか?
髙戸さん:まず、湖池屋プライドポテトの神業食感を生み出すための揚げ方にこだわりが詰まっています。
通常のポテトチップスは、スライスしたあとにじゃがいもをお湯で洗ってでんぷんを流してから揚げて、焦げにくくします。ですが、湖池屋プライドポテトはでんぷんを流さずに揚げて、うまみをしっかりとチップスに残しているんです。
最初は、この揚げ方で量産化をすると焦げやすくなるという課題があったんです。試行錯誤を重ねた結果、3段階の温度帯で揚げることにより、焦がさずにうまみを残したまま、パリッとした軽快な食感を生み出すことに成功しました。
── 3段階の温度帯というのは、温度を段階的に変えていくということでしょうか?
髙戸さん:そうです。最初は高温で揚げて、ポテトチップスの表面にうまみの膜を張る。その後、低温に下げてじっくりとポテトチップスの中の水分を抜いていきます。最後に、また温度を上げてサクッとした軽快な食感を作り出しています。
── 手間暇かけて揚げられているんですね!
髙戸さん:そうなんです!ポテトチップスは、切って揚げて味付けするだけのシンプルな商品だと思われがちで、そこまでこだわりが詰まっているとは想像しにくいかもしれません。ちなみに揚げるだけでなく、味付け前の工程にも工夫がありますよ。
── どんな工夫があるんですか?
髙戸さん:一般的なポテトチップスを製造する工程では、ポテトを揚げたあとにのり塩やコンソメパウダーなどのシーズニングをかけます。
湖池屋プライドポテトの場合は、ポテトチップスを揚げたあとに「やみつきオイル」を一度染み込ませて味付けし、その後シーズニングをかける。
この工程を挟むことによって、満足感がある複層的な味わいが生まれています。
神業と呼ぶにふさわしいボーダーラインを維持する

── 開発の裏話を聞くと、実際に食べたくなります!
髙戸さん:ほかにもこだわりがあるんですよ!実は、先ほどお伝えした揚げ方の工程で量産化しただけでは、プライドポテトならではの食感を生み出せません。
じゃがいもの品種や生産時期、生産工場によっても食感は変わってしまうんです。
── じゃがいもという自然の素材を扱う以上、そう単純にはいかないんですね。
髙戸さん:はい。ですので、ベストな食感でお客様にお届けできるように、人の手による調整をしながら生産しているんです。
各工場の工場長や生産責任者の方たちが集まって、食感をよりよくする「神業食感会議」を毎月開催しています。
── 神業食感会議では、どのようなことが話されているのですか?
髙戸さん:じゃがいもという生ものを使用しているため、じゃがいもの品種や状態、気温、湿度などによって、同じ製法で作っても、違うポテトチップスに仕上がります。
ですので、神業食感会議では、各工場のサンプルを試食し、理想の食感へのアプローチを議論しています。
── なるほど。工場の環境によってもアプローチを変えているんですね!
髙戸さん:品質ハードルを高く設定して、理想のおいしさを追求し続けている姿勢は、まさに湖池屋のプライドです。
社内の反対を乗り越え、情熱で道を切り拓く

── 湖池屋プライドポテトがこだわり抜いて作られていることがわかりました。そもそも湖池屋プライドポテトは、どのような経緯で生まれたんですか?
髙戸さん:2016年に現社長の佐藤が就任したあと、2017年2月に「KOIKEYA PRIDE POTATO」として発売された、新生・湖池屋のフラッグシップブランドです。
新しいブランドなので期待値も高く、私がプライドポテトを担当し始めた2019年から新しいことに積極的に挑戦しようとした結果、他部署から「リスクがある」といった声も上がりました。
── どのような内容で意見がわかれたんですか?
髙戸さん:フレーバー数を減らすことを提案したときに、実は猛反対にあいまして。私がプライドポテトのブランドリーダーになったときに、売上は伸びしろしかない状況でした。その状況の中でフレーバーが6種類もあったので、お客様が棚に並んでいる商品を選びにくいだけでなく、営業の経験からしても売り抜けないと思っていたんです。
自分の経験も踏まえた提案でしたが、社内からは「売上が下がる可能性がある」と言われました。でも、「これくらいチャレンジしないと変わらない!」と譲らない姿勢で向き合いました。
── 実際に、2020年のリニューアルではフレーバーが4種類に絞られていますよね。髙戸さんの意見を採用してもらうために、どのような工夫をしたのでしょうか?
髙戸さん:フレーバーの議論に限らずですが、とにかくまっすぐに熱意を伝えています。
意見を裏付ける資料を準備し、論理的な説明をしたうえで、「絶対にこちらの方がお客様のためになる!!」と、魂を込めてぶつかっていく。
周りからは「喧嘩しているんじゃないかとヒヤヒヤする」と言われるほどです。
── すごい熱量ですね……!本気でぶつかり合うために、髙戸さんが意識されていることはありますか?
髙戸さん:信念と愛を持った対話ですね。ぶつかったときこそ、密なコミュニケーションをとって、譲り合うのではなく、すり合わせて新しいアイデアを生み出せるように意識しています。
そのための方法として、対面で話し合うことを大切にしていますね。人の表情や眼差しから読み取れるものがあると思っていて。オンラインでのやりとりが主流になっていても、なるべく直接会うようにしているんです。
今を大切に。仕事も子育ても全力で楽しむ

── ふと気になったのですが、髙戸さんは落ち込んだときに、どうやって立ち直っているんですか?
髙戸さん:落ち込んだときほど、足りないものやなくなったものに目が行きやすいですが、今あるものに目を向けて、立ち直るようにしています。
今まで築き上げてきたものを振り返ると「まだやれるかも」と少しだけ気力がわき、「また明日もちょっとがんばってみようかな」と切り替えられます。
── 振り返ると前向きになることもありますよね!それでも、うまくいかないこともありますか?
髙戸さん:たくさんありますね。そんなときは、近くにいる人に話を聞いてもらっています。
自分で悩みを抱え込むとネガティブな方向に考えてしまいますが、人に話すと前向きな答えが見つかりやすいです。育休が明けて復帰した現在は、仕事面で抱え込まないようにしていますね。
一瞬一瞬を、全力で。

── 髙戸さんは2026年5月に育休から復帰されたと伺いました。育児もしながら仕事も全力でがんばるのは、とても体力を使うのではないでしょうか?
髙戸さん:子育てをしながらキャリアを積み上げられる前例に私がなりたいからですね。若いメンバーが多いマーケティング部は、女性が復職して役職やキャリアを積んでいった事例が多くはありません。
だからこそ、子育てをしながらキャリアを積むモデルケースになりたいと思っています。若いメンバーにキャリアを積み上げる背中を見せることが、仕事をがんばるモチベーションでもあるんです。
── ご自身が働く母親の姿を、体現していきたいと。
髙戸さん:そうですね。ただ、自分を犠牲にして仕事と子育てを両立するのではなく、母親が生き生きと自分の人生を楽しんでいる姿を見せたいと思っています。それが、子どものためにもなるんじゃないかと。
子どもには、仕事も子育ても楽しんでいる母親の姿を見てほしいんです。そのうえで、一緒にいられる時間は子どもに全力で愛を伝えています。
── 素敵な考え方ですね!
髙戸さん:この瞬間は二度と戻ってこないので、後悔しないように今できることを全力でやりたいです。だからこそ、そのときに思った気持ちはしっかりと言葉にするようにしています。
子どもへの愛情も、伝えられるときにちゃんと伝えておきたいんです。仕事も子育ても、今を大切にして、全力で楽しむしかないと思っています。
夢中になった仕事でお客様に幸せを届けたい

── 仕事も子育ても心から楽しまれていることがわかりました。今後、プライドポテトのお仕事を通じて、個人として実現したいことはありますか?
髙戸さん:湖池屋プライドポテトを食べて、幸せな気持ちになる人を増やしたい。おいしいと感じる瞬間を、大切な人と一緒に共有していただければ嬉しいです。
── 自分が企画した商品で、お客様に幸せになってもらえるのは素敵ですね!
髙戸さん:湖池屋のシェアを拡大して、幸せになる人を増やしたいという想いは、入社時から持ち続けています。それを形にするには、お客様に選んでいただく商品を生み出し続けないといけません。
お客様が求めるニーズを満たした商品を実現していくことに、これからも挑戦していきたいです。

Wellulu編集後記
ブランドを統括すると聞くと、数字やロジックで語られる仕事を想像していました。けれども髙戸さんの言葉から伝わってきたのは、「楽しむこと」をモットーに、まっすぐな熱意で周囲とぶつかりながら進んでいく姿勢でした。
でんぷんを流さずうまみを残すための3段階の温度帯での揚げ方やオイルとシーズニングによって調整された味付け。フレーバー数を巡って、信念と愛を持って対話を重ねた日々。そこにあったのは、周囲を巻き込んでいくプライドポテトに対する熱意でした。
髙戸さんのお話を伺いながら、ブランドを育てることは、正しさを押し通すことではなく、一瞬一瞬を全力で楽しみながら、人と向き合い続けることなのだと感じました。
2016年入社後、九州・大阪で3年間営業職として活躍。
現場の最前線で小売店や消費者の生の声に触れた後、2019年マーケティング部へ異動し、湖池屋プライドポテト、湖池屋ポテトチップスなどのブランドリーダーを歴任。「JAPAN PRIDE プロジェクト」の立ち上げや、創業60周年記念商品のプロジェクトなどにも携わってきた。
2024年〜2026年4月まで産育休を取得。2026年5月の復帰後、マーケティング本部マーケティング部3課課長として、湖池屋プライドポテト・湖池屋ポテトチップスのブランド全体管理(商品企画・プロモーション)を統括している。