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風味と甘味が違う!わさび好きにおすすめしたい「本わさび」のツウな食べ方【大王わさび農場】

いままで本わさびをすりおろして食べた経験はありますか?「わさび好き」な人も、実は本当のわさびの風味を知らない可能性も…?澄んだ水の豊かな地域でしか育たない日本伝統の食材わさび。今回は、わさびの本当の風味やおいしい食べ方など、魅力溢れる本来の姿について、大王わさび農場の田村さんに詳しくお話を伺った。

田村 歩さん

松本大学総合経営学部観光ホスピタリティ学科卒業。大王わさび農場では、観光係としてお客様への案内や受付を担当。入社2年目に入り、日本の方や様々な国から訪れるお客様と直接かかわれる仕事に楽しさとやりがいを感じている。地域の魅力を伝えていくとともに、観光地としてだけでなく日本の伝統を守り続けていることを世界に発信していくことが目標。

本記事のリリース情報

「Welulu」にて取材を受けました。

目次

「本わさび」と「わさび」は風味が違う?わさびの種類

── まずはじめに、田村さんはわさびがお好きなんですか?

田村さん:はい、大好きです。入社してから、わさびを詳しく知り、食べ方の幅が広がったのがきっかけの1つです。わさびは種類も食べ方も本当に多く、知っていくにつれて、わさびを食べる楽しみも増えました。自分の固定観念といいますか、わさびに持っていたイメージが大きく変わったんです。

── ぜひ詳しく教えてください。まず、わさびの種類にはどういったものがあるのでしょうか?

田村さん:わさびには大きく分けて青系と赤系の2種類があります。

── 青系と赤系…。わさび自体の色か何かが異なるのでしょうか?

田村さん:はい、まず色が違いますね。青系は茎が緑色をしていて、赤系は茎が赤みを帯びています。それぞれ風味の特徴も異なり、代表的な品種は青系だと「だるま系統」で、味はまろやか。赤系だと「真妻(まづま)」という品種で、辛みが強いのが特徴です。

── ちなみに私たちがよく食べている、チューブのわさびにはどちらの品種がよく使われているのでしょうか?

田村さん:実は、よく目にする市販のチューブのわさびは、日本のわさびと西洋のホースラディッシュが混ざったものが多いんです。

── そうなんですか?では、「本わさび」という言葉も聞きますが、具体的に何を指すのでしょうか?

田村さん:本わさびとは、日本原産のわさびを指します。先ほどの「真妻(まづま)」や「だるま系統」などの品種が本わさびと呼ばれています。

私も入社して初めて摺り下ろした本わさびを食べ、本わさびの本来の風味や辛みってこういうものなのか、と違いを実感しました。私の中のわさびのイメージとは全然違ったんですよね。

── 私のわさびのイメージもチューブのものなのですが、摺り下ろしたわさびが、どんな味なのか気になってきました。

田村さん:チューブのわさびはただ辛いだけですが、本わさびは風味の中に甘さが感じられます。

── わさびに甘さのイメージはなかったです……!

わさびのおもな生産地と収穫、旬について

── わさびは水が綺麗なところでしか育たないと聞いたことがありますが、どのような環境で育つのでしょうか?

田村さん:まず湧水が常に湧き出していること、そして年間を通して水温が13〜15度に保れることが必要で、本当に限られた条件のもとで育つんです。

たとえば静岡のわさびは山の中で育てられています。一方、弊社では「石造り」という方法を採用していて、湧水が流れる上に石や砂利を敷いて、いわゆる平地式で栽培しています。

── 日本ではどのくらいの場所でわさびが生産されているのですか?

田村さん:水わさびに関しては、約27の県で栽培されています。代表的な地域は長野県の安曇野市や静岡のわさび産地が有名ですね。

── わさびはどのくらいで収穫の時期を迎えるのでしょうか。

田村さん:種から植える場合は約18ヵ月、苗から植える場合は約14ヵ月で収穫が可能です。収穫時には、葉っぱから根っこまでの全長は50cmから1mになります。わさびとして食べる根茎(こんけい)の部分は大きいもので15センチ以上になります。

── 全長1メートルになるものもあるのですか? もっと小さなものだと思っていました。ちなみにわさびは野菜に分類されるのでしょうか?

田村さん:そうですね、アブラナ科に属していて、野菜で近いものだと菜の花が挙げられますね。

── わさびの旬はいつですか?

田村さん:わさびには大きな旬はなく、一年中収穫できます。ただし、とくに12月から2月にかけてのわさびは辛さや風味が一番強く感じられますね。

私もわさびを一年中食べていますが、やはり12月から2月のわさびは辛さが強く感じられて好きですね。

── わさび菜も名前が似ていますが、わさびと関係のある野菜なのでしょうか?

田村さん:名前は似ているのですが、わさび菜とわさびはまったく違うものです。わさび菜は同じアブラナ科ではありますが、からし菜の一種なんですよ。はっきりはわかりませんが、アブラナ科という共通点から名前が似ているのかもしれませんね。

日本発祥の本わさびは、海外での認知度も急上昇中

──わさびの歴史についてお伺いしたいのですが、起源やいつごろから食べられるようになったのか教えてください。

田村さん:わさびは日本原産の植物なので、日本が発祥です。現在のようにお寿司に使われるようになったのは江戸時代後期とされています。室町時代には野生のわさびが食用や薬草として使われていたとされています。

──最近は海外での認知度も上がり、わさびがよく食べられていると聞きますが、実際どうなのでしょうか?

田村さん:観光客だけでなく、食通の方など、海外からわさびを求めて弊社を訪れる方も多く、その認知度の高まりは感じていますね。とくにフランスなどからの食通の方が多い印象です。

── 海外の人が初めて本わさびを食べたときのリアクションが気になります。

田村さん:海外のお客様は辛さに驚くことが多いですが、同時に甘さが感じられることに驚く方も多い印象です。ただ辛いだけでなく、爽やかで鼻にスッと抜けるような辛さですね。

わさび特有の風味と辛さはほかの野菜にはなく、なかなか表現が難しいですよね。わさびに代わる食べ物はないのではと思っています。

生のわさびは辛くない!? 本わさびの擦り方のコツ

──本わさびを知る、ハマるきっかけとしてどんなことがおすすめですか?

田村さん:本わさびを擦って食べてみてほしいですね。チューブのわさびとの違いを感じて、これまでのわさびに対する固定概念から抜け出してほしいです。

── 本わさびを擦るときのコツやポイントはありますか?

田村さん:わさびの擦り方によって辛さが変わるので、注意して擦ってみてほしいです。細かい目のすりおろし器で、丁寧にゆっくり擦るようにしてください。そうすることで繊維がよく壊れ、辛みが強く感じられます。繊維を壊すことが大事なんです。

── 辛味を出すためには、繊維を壊さないといけないのですね?

田村さん:実はわさびは生のままだと辛くないんです。わさびの辛味成分であるシニグリンは、すりおろすことで酵素と反応して辛味が生まれるんです。

葉っぱや茎はもともと少し辛味はありますが、根茎(こんけい)の部分はすりおろさないと全然辛くありません。

── 擦り方に気をつけて、辛味のポテンシャルを引き出してあげることが重要なのですね。

田村さん:そうなんです。擦り方1つで辛さが変わるのがわさびのおもしろいところなので、せっかく本わさびを食べるときは擦り方に注目してみてほしいです。本来の味をしっかり楽しむのであれば、すりおろし器も目の細かいものをぜひ手に入れてほしいですね。

葉っぱや根っこも食べられる!本わさびをさらに知る

── わさびの根茎以外の部分もおいしく食べることはできるのでしょうか?

田村さん:わさびは葉っぱから根っこまですべて食べられるのが特徴です。葉っぱは天ぷらにして食べられますし、春になると小さな白い花が咲くのですが、これも天ぷらにするとおいしいんですよ。あと茎は漬物に使えます。私たちのレストランでは根っこの部分を焼酎と合わせて提供することもあります。

── わさびの花って見たことないです!菜の花の天ぷらもおいしいですし、間違いなくおいしそうです。

田村さん:春になると畑中が白くなってとても綺麗なんですよ。私たちは春のイベントとして春祭りをおこなっていて、そこでわさびの花の販売はもちろん、花にちなんだ料理の提供などおこなっています

── 身近なスーパーなどでは花を買えなさそうなので、気になります。調理の際は、わさびの種類の使い分けもされていますか?

田村さん:そうですね。やはり品種や育てられた環境により、風味が異なるため、弊社では料理や使用する食材に応じてわさびの種類を使い分けています。

── わさびと相性のよい食材には、どういったものがあるのでしょうか?

田村さん:乳製品・脂質と相性がよいので、お肉や脂ののった中トロのような刺身との相性が抜群です。私たちのレストランではわさびが練り込まれたソフトクリームも提供しています。ソフトクリームも乳製品なのでよく合うんです。

みなさんがあまり知らないところでいくと、実は柑橘系のものと相性がよくて、私たちのレストランでは、わさびとレモンと合わせた商品を提供しています。柑橘系のシャーベットにわさびを少し乗せて食べるとおいしいんですよ。

── 柑橘系ですか!まったくイメージがありませんでした。家庭でもできそうなものはありますか?

田村さん:柚子の皮と一緒にわさびを茶碗蒸しに乗せるのも大人の味わいになり、おすすめですよ。アボカドにわさび醤油をかけたり、冷奴や納豆にわさびを加えるのもおいしいです。クリームチーズとの相性もよいですね。

自宅でぜひ試してほしい私のおすすめは「わさび丼」です。ご飯にのり、ネギ、鰹節などの薬味を乗せ、わさびを添えていただくだけのシンプルなものなのですが、わさび本来の味を楽しめるんです。

── 自宅でも手軽にできそうですね! 個人的にわさび茶漬けが好きなんです。

田村さん:わさびのお茶漬けは、お好きな方が多いですよね。それこそぜひ、本わさびを使って食べてみてもらいたいです。

ただ、わさび丼もなのですが、わさびは熱に弱いため、熱々のご飯の上に直接のせたり、お湯をかけてしまうとせっかくの風味が損なわれてしまうので注意してください。

── お茶漬けではとくに気にせず、お湯をかけてしまっていました…。

田村さん:知らない方も多いと思います。わさび丼であれば、薬味の上にわさびをのせることで熱から守れますよ。お茶漬けは、夏であれば冷やし茶漬けにするのがおすすめです。

── わさびの良さを知り、より身近に感じるためにまずやってほしいことはありますか?

田村さん:どんな食品にも合うので、まずはからしやしょうがを使っていたものを、わさびに変えて試してみてほしいです。冷奴もですし、おでんもよいと思います。

── たしかに、冷奴はしょうが、おでんはからしのイメージがありました。

田村さん:お刺身やお蕎麦だけでなく、お肉や天ぷら、スイーツにまで幅広く合います。固定観念を変えて、さまざまな料理に使いながら、わさびの美味しさを楽しんでいただきたいです。

Wellulu編集後記
普段親しんでいる市販のチューブわさびは、本わさびの風味とは大きく異なるというのは驚きでした。辛みだけではなく甘みがあるという、本わさびの風味……とても気になります。柚子の皮やソフトクリーム、冷奴など、わさびと相性のいい食材もたくさんお伺いできたので、ぜひ自宅でも試してみたいと思います。また、春にはわさびの花の天ぷらがおいしいとのこと、いつか水が綺麗なわさびの産地を訪れて、本わさびの味わいを体験してみたいなと思いました。

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