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【がくちょ氏×堂上研】組織運営に必要なのは“サッカーOS”? 楽天大学学長が語るウェルビーイングな働き方

人の悩みの原因はほとんどが人間関係だといわれている中でも、特に頭を抱えるのが職場での人間関係。実際、Welluluにも「働き方」や「職場での人間関係」に悩んでいる読者からの声が数多く寄せられている。

今回は創業期の楽天に入社し、「楽天大学」を立ち上げたりチームビルディングの講座を開催している仲山進也さん(通称がくちょ)に、組織の中でのウェルビーイングについてWellulu編集部の堂上研が話を伺った。

 

仲山 進也(がくちょ)さん

仲山考材株式会社 代表取締役/楽天グループ株式会社 楽天大学学長

慶應義塾大学法学部卒。当時社員20名ほどの楽天に入社し、楽天市場出店者同士がつながり学び合う場「楽天大学」を設立。20人から数千人規模となった楽天での経験を活かし、2007年からチームビルディングの講座を始める。楽天に籍を置きながらも、2008年に仲山考材を設立したり2016年には「横浜F・マリノス」とプロ契約を結んだりするなど、自由な働き方を実現している。

■著書
・『アオアシに学ぶ「考える葦」の育ち方』(2022年/小学館)
・『「組織のネコ」という働き方』(2021年/翔泳社)
・『組織にいながら、自由に働く。』(2018年/ 日本能率協会マネジメントセンター)
・『あの会社はなぜ「違い」を生み出し続けられるのか』(2015年/宣伝会議)他

堂上 研さん

Wellulu編集部プロデューサー

1999年に博報堂へ入社後、新規事業開発におけるビジネスデザインディレクターや経団連タスクフォース委員、Better Co-Beingプロジェクトファウンダーなどを歴任。2023年、Wellulu立ち上げに伴い編集部プロデューサーに就任。

フレームワークを提供することで自ら考える力を育てる

堂上:僕は小さい頃からサッカーをやっていて、今も子どものサッカーを見に行くのが毎週末の楽しみというくらいのサッカー好きなのですが、『アオアシに学ぶ「考える葦」の育ち方』を読んで、「この人ものすごくカッコいい!」と思ってから、がくちょが書いた本は全部読むくらい大ファンなんです。今日は本当にお会いできるのを楽しみにしていました。

仲山:そんなふうに言っていただけると、嬉しいです。本日はよろしくお願いいたします。

堂上:そういった経緯もあり、僕は一方的にがくちょのことを存じ上げていますし、Facebookでつながってから勝手に「がくちょ」と呼ばせていただいているのですが、がくちょは普段どのように自己紹介をされているのでしょうか。

仲山:自己紹介が苦手なので、このスライドを見てもらうことが多いです。

仲山:分かりやすいところで言えば、1999年にまだ社員20人ぐらいだった楽天に入社し、楽天市場のネットショップ出店者向けに学び合いの場として「楽天大学」を立ち上げた人、ということになります。

堂上:楽天大学では、出店者に対して「どうやったら商品が売れるようになるのか」を教えているのでしょうか。

仲山:具体的なノウハウを教えるというよりは、出店者さんが自分で考えられるようになるフレームワークを提供するのがキモです。あえて抽象度の高いフレームワークを提供することで、出店者さん自身がそれぞれの視点で意見や体験談を共有し合いやすくなります。横の繋がりができやすくなる工夫をしながら続けるうちに、出店者コミュニティができていきました。

堂上:まさにサッカーの話にも繋がりますよね。監督が指示を出して言う通りに動くチームを作るのではなく、選手自ら考えて動ける仕組みを作る、みたいな。

仲山:その通りです。サッカーでは選手11人全員へ同時に指示を出すことは不可能ですよね。楽天でも、お店がどんどん増えていく中で、1店舗ごとに「次はこうしてください」と楽天スタッフがサポートしなくても出店者さん自身が考えて行動できる環境作りが必要だったんです。そのことを「自走する店舗さんを増やす」と呼んでいました。

当初、楽天大学はリアル開催に注力したこともあって店長さん同士の繋がりができて、「大人になってから仕事の話を真剣にできる友達ができるなんて思ってなかった」と言ってくれる人が増えたのでよかったです。

堂上:『アオアシに学ぶ「考える葦」の育ち方』の中で書かれているアシトが「自ら考え動く」こと、「自律」することは、サッカーだけでなくどんな場面でもとりわけビジネスシーンでも通用することに感銘を受けたんですが、がくちょはもともとサッカーがお好きだったんですか?

仲山:小学校3年生の時に『キャプテン翼』が流行り始めたことで休み時間にみんなでサッカーをし始め、ほどなくハマりました。ほとんど毎日、学校のグラウンドや公園でサッカー遊びをしていました。その直後に「ファミコン」という強力な競合が現れたので、家に帰る時にみんなが「明日もサッカーしたい」と思えるようになるにはどうすればよいかを考えていました。

強さが偏らないチーム分けのしかたとか、点差が開いたらチーム替えをするとか、人数が違う時にハンデを付けるとか……。

堂上:小学生の頃からそんな俯瞰的な目を持っていたんですね! 驚きです。

仲山:考えてみると、「夢中でいられる時間を長くする方法を考える」という意味で、今の働き方も当時やっていたことと変わらない気がします。

楽しそうに働いているのは「サッカーOS」で「ネコ」の人?

堂上:この間知人と話していてすごく盛り上がったのが、「サッカー脳」と「野球脳」について。小さい頃にサッカーをやってる人たちと野球をやっていた人たちでは、組織での働き方が全然違うと思うのですが、がくちょはどのように考えていますか?

仲山:ちょうどそんなスライドもありますよ(笑)。

堂上:さすがです!

仲山:僕の知人でサッカーチームと野球チーム、両方を持っている人がいまして、三木谷浩史さんというのですが(笑)。三木谷さんが両方やり始めてからほどなく、「楽天のビジネスは野球よりもサッカーに近いと感じている」と言っていました。それを僕なりに言語化してみたのがこれです。野球はポジションが固定的で分業型、そして監督の指示で動きます。世界観を一言でいうと「安定」のスポーツ。一方、サッカーはポジションが流動的で協働型、そして監督の指示待ちではどうにもならない、「カオス」が世界観のスポーツですよね。

堂上:すごく分かりやすいですね。

仲山:ただ、サッカーをやっていた人たちが全員サッカー型人材になるわけではないと思っていて。

堂上:どういうことでしょう?

仲山:たとえば少年サッカーのコーチでも、横からずっと大声で指示を出し続けて、指示通りできなかったら怒鳴っている人っていますよね。そんなコーチがまさに「サッカーを野球OSでプレーしている人」です。

仲山:そういう人たちって、40代とか50代より上に多いような気がします。子どもの頃、テレビで毎晩、野球のナイター中継が放映されていた世代なので、野球OSが染み込んでいるのではないかなと。

堂上:たしかに。とはいえがくちょもアラフィフで野球全盛期のなか育っていると思うのですが、サッカーOSはどうやって身に付いたんですか?

仲山:楽天に入社したことが大きい気がします。当時は20人くらいのスタートアップだったので、毎日カオスでしたから。次々と勃発する未経験の問題・課題に対してみんなで「どうするどうする?」と試行錯誤しながら取り組んでいました。そのうち、上手くいくやり方がわかってきて、「息が合った」状態で仕事ができるとすごく成長するなと肌で感じられたのが大きかったです。これってまさに小学校の時のサッカーと同じだ! と思いました。

 

堂上:がくちょや僕のように、サッカーOSで仕事をしている人って楽しそうに夢中になって働いている人が多い印象があります。いわゆる「ネコ派(※)」ですよね。僕はもっと同じように楽しく働く人が増えたらいいなと思うのですが、「イヌ派(※)」の人にはそれが難しいようです。楽しそうに働くことを良しとしないというか。イヌとネコは分かり合えないのでしょうか?

※「イヌ」「ネコ」
仲山進也著『「組織のネコ」という働き方』で組織内での立ち位置を分かりやすく表現したもの。組織に忠実な「イヌ」に対し、「ネコ」は自分に忠実であることが特徴。

 

仲山:図の上にいるライオンとトラは人間ができているので、人は多様であって得意や苦手なことが違うとわかっているので、お互いをリスペクトすることができます。

それに対して、イヌとネコはそこまで成熟していないので、自分と違う価値観を受け入れる姿勢ができていない。放っておくとお互いにバカにしあいがちになります。

なので、相互理解が進むような取り組みをすることで、「組織の中にイヌとネコの両方がいていいんだな」「それぞれ得意な仕事が違うんだな」と知ってもらうことが重要です。

ウェルビーイングな組織のために必要な「フロー面談」

堂上:「Wellulu」を運営していると、働き方や会社の人間関係に悩んでいる人からのお悩み相談がよく寄せられます。ウェルビーイングな組織運営のためには、がくちょは何が1番良いと思いますか?

仲山:やっぱり「フロー(夢中)理論」が参考になると思います。フロー図は縦軸が「挑戦の難易度」で、横軸は「能力の高さ」になっています。能力が低くて挑戦の難易度が高すぎると、人は「不安」になります。逆に、能力が高い人が挑戦をしないと、「退屈」になる。メンバー各自が「いま自分は不安・退屈・夢中のどのゾーンにいるか」を意識して、夢中に近づく工夫ができるようになれば、ウェルビーイングな組織に繋がるはずです。

堂上:自分やチームメンバーが今どの位置にいるかを把握するためには、どのようなコミュニケーションを心がければよいのでしょう?

仲山:フロー図を使った1on1がおすすめです。僕は「フロー面談」と呼んでいます。フロー図を一緒に見ながら「今あなたはどこにいると思いますか」と聞いてみるんです。

たとえば退屈ゾーンに入ってしまっている人がいたとしましょう。そうしたら「どうすれば夢中ゾーンに近づけそうですか」と聞きます。能力を下げることはできないので、何か新たに挑戦をすることになります。

堂上:なるほど。面白いですね。

共創社会に必要なのは掛け算のコラボレーション

堂上:組織の中には、「自分がいくら変わっても上司や組織が変わらない」と悩んでいる人も多い気がします。こういった方々には、がくちょならどのようにアドバイスしますか?

仲山:上手くいかない相手にフォーカスするのではなくて、上手くいく相手とよい仕事をして成果を上げることにフォーカスをするのはどうでしょう。「その上手くいかない相手としか仕事してはいけない」という決まりは、たぶんないですよね。

堂上:価値観が合わない人からはさっさと離れて、上手くいく人と一緒にいればよいことに気づいてもらうわけですね。

仲山:そうですね。実際に僕のチームビルディング講座に参加した人でよくあるのが、「社内は色々あってなかなか進められてないんだけど、最近、社外の人とのコラボが上手くいくようになった」というパターンです。それまでは「社外の人と付き合う=どちらかが上でどちらかが下」という「業者」的な考えだったのが、フラットに「こんなことができたら面白いよね」と話しているうちにチームを組んでプロジェクトを進められるようになるんです。

堂上:僕もウェルビーイングな共創社会を作っていきたいと思っているのですが、コラボでお互いの強みを出し合うために1番重要なことは何だと思いますか?

仲山:よくあるコラボって、お互いが「相手方のお客様がこちらに流れてくればよい」という集客目的に行われることが多い気がします。足し算にすぎないというか。でも本当の意味の共創は、掛け算だと思うんです。

堂上:強み×強みの掛け算ですね。

仲山:そうです。そのために大事なのが、チームビルディングのプロセスなんです。

子どもが憧れる“夢中で仕事する大人”を増やしたい

堂上:すごく抽象的な質問になってしまうのですが、がくちょは今後どのように生きていきたいですか?

仲山:僕個人の理念は、「子どもが憧れる『夢中で仕事する大人』を増やす」ことです。いろんなことをやっているように見られがちですが、この軸は共通しているんです。

堂上:素敵ですね。僕自身サラリーマンとして働いていますが、なかなか「将来サラリーマンになりたい」という子どもはいませんよね。きっと子どもの身近には「楽しそうに働くサラリーマン」がいないからなんだろうな、と常に思っていて。僕はいつか子どもの友達に「堂上パパってサラリーマンなのにすごい楽しそうに仕事しているよね」って憧れてもらうのが夢なんです。

仲山:「将来の夢」として子どもたちがよく挙げるプロスポーツ選手やYouTuberって、楽しそうに働いている姿が見える職業ということだと思うんですよね。いつかはそこに「近所の魚屋のおじさん」「花屋のお姉さん」が入る世界になるといいなと思っています。

実際に、楽天でネットショップを始めたことで「仕事が楽しくなった」という出店者さんが増えました。中には、若者が出ていくばかりの地方だったのに、新卒の学生がUターン就職するようになった会社もあります。そういう世の中になっていったら楽しいなって。

堂上:最後に、がくちょ個人にとってのウェルビーイングを教えてください。

仲山:さっきフローの話をしましたけど、マイクロフロー状態というのがあります。僕は「ぷちフロー」と呼んでいるんですけど、浅いフロー状態のことです。深いフローって、没頭している状態なので、常にそれを維持するのは簡単ではないですよね。ぷちフローは「ボーッとしている時」、たとえば雑談する、散歩する、シャワーする、音楽を聴く、テレビを観る、本を読むなどしながらリラックスしている状態をいいます。散歩しながら、シャワーを浴びながら、そしてこうして人と話しながら……パッと何かいいことを思いついた瞬間に幸せを感じます。

堂上:「ぷちフロー」な状態って、また新しいですね。

仲山:あと、前から思っていることがあって、「ウェルビーイングになるために何をすればいい?」みたいな言い方って、ちょっと違和感があるんですよね。ウェルビーイングを目指して何かしなければいけないのは「DO」であって「BE」ではない。ウェルビーイングを阻むものを取り除いた結果、本来の状態に「戻る」のが、ウェルビーイングっぽいなと思うんです。だから、足そうとするより、引き算していくほうが大事だと僕は思っています。

堂上:なるほど。ウェルビーイングの概念について僕も新しい発見がありました。これもまさに「ぷちフロー状態」ですね。がくちょ改め仲山さん、本日は貴重なお話をありがとうございました!

撮影場所:UNIVERSITY of CREATIVITY

[当記事に関する編集部日記はこちら]

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