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データから見えてくる睡眠不足の原因。睡眠を切り口に日常生活のデザインを考えてみる

生活者一人ひとりのデータを分析してつくった「主観的Well-Being 21因子」の中で「良質な睡眠」は、生活者にとってウェルビーイング度を高めるために大切にしている要素だという調査データ(※)がある。
※引用:「生活者調査結果 因子別重視度(平均値)」

しかし、実際は興味の度合いに反して、不眠に悩んでいる人も多く、興味があるのに良くする術がわからないという課題を孕んでいる。睡眠に関するヘルスリテラシーは、世代にかかわらず一度真剣に考えなければならない重要な要素のひとつだ。

株式会社S’UIMINは、脳波を測定して睡眠状態を調べ、専門家のアドバイスや改善アドバイスを加えて利用者にレポートする、睡眠計測サービス「InSomnograf(インソムノグラフ)」を提供。データから見えてくる睡眠改善の方法とは?

「InSomnograf」の事業開発に携わる睡眠改善アドバイザーの谷 明洋さんと、ヘルスケアコーディネーターとして活躍する大木都さん、二人の睡眠のエキスパートにWellulu編集部の堂上 研が話を伺った。

 

谷 明洋さん

睡眠改善アドバイザー/科学コミュニケータ

株式会社S’UIMINで睡眠改善プログラムの開発・実施に従事。プロスポーツ選手や企業従業員、健康診断オプション検査の利用者など、年間200名以上の睡眠改善に携わる。睡眠脳波計測で得られた客観データと本人の主観を照らし合わせ、一人ひとりに最適な睡眠衛生指導を考案する。

大木 都さん

ヘルスケアコーディネーター/株式会社310LIFE代表取締役/株式会社ラフールCHO(Chief Healthcare Officer)

病院の立ち上げ運営に携わる。1,000名以上への個別パーソナルコーチング経験から「日本らしく、ちゃんと続けられる」ヘルスケアを提唱。自身が過労で入院した経験も活かし、忙しい毎日の中でも実践できるヘルスケアメソッドを研究し、スマートウォッチなどのヘルステックツールの活用を推奨している。

堂上 研さん

Wellulu編集部プロデューサー

1999年に博報堂へ入社後、新規事業開発におけるビジネスデザインディレクターや経団連タスクフォース委員、Better Co-Beingプロジェクトファウンダーなどを歴任。2023年、Wellulu立ち上げに伴い編集部プロデューサーに就任。

ウェルビーイングな生活は「良質な睡眠」が鍵

堂上:はじめに、谷さんが睡眠改善アドバイザーに就かれた経緯を教えていただけますか?

谷:一言で言ってしまうと、ご縁なんです(笑)。大学は農学部に進み、卒業後は新聞記者になり、その後、日本科学未来館の科学コミュニケーターなどを務めてきました。その中でかつての同僚が、株式会社S’UIMINで睡眠の事業を進めるということで声がかかり手伝うようになったんです。日本科学未来館時代から一人ひとりの価値観を大切にしながら議論を深めるような濃度の高いコミュニケーションを楽しく感じるようになりました。それが、睡眠計測サービス「InSomnograf(インソムノグラフ)」の計測結果を踏まえて一人ひとりに寄り添う、睡眠改善アドバイザーの活動にも繋がっているのかもしれません。

堂上:さまざまなジャンルを横断され、睡眠にたどり着いたんですね。とても興味深いストーリーです。大木さんは幅広くウェルビーイングの分野で活動されていますね。

大木:包括的に現代日本人を「健康」な生活へと導けるよう、専門家と一般の方を繋げて研究支援やマーケティングなどを行えるコーディネイト業を立ち上げています。以前の私は、それこそワーカーホリックともいえるような働き方をしていたんです。その後、結婚を機に自分や家族の身体を守れるようになりたいと思い、ヘルスケアの分野に転職しました。最初は身体のケアについて学んでいたのですが、次第にメンタルヘルスに興味が出てきて、心と身体の関係性について考えた結果、現在に至ります。

堂上:睡眠に関して現場で感じられることはありますか?

大木:忙しい現代で、睡眠が多くの方の興味の対象となっていることは日々実感しています。仕事柄、食事・運動・睡眠をはじめとしたさまざまな健康法に触れるのですが、一番多くの方に興味を持ってもらえるのが睡眠なんですよね。睡眠を良くすることを目標に、食事や運動のアドバイスをさせていただくとみなさん徐々に意識が変わってきて、「睡眠」は世代に関わらずコミュニケーションの入り口にするのがいいなと実感しています。

脳波計測を健康管理の選択肢に

堂上:谷さんが所属する株式会社S’UIMINでは、就寝前に自分で電極を貼って睡眠時の脳波を測定しAI解析を行う「InSomnograf(インソムノグラフ)」というユニークなサービスを展開しています。

谷:はい。基本的には健診センターや医療機関を通じてお申込みいただき、2晩もしくは5晩かけてご自宅で計測していただいた脳波のデータから、睡眠の状態を詳しく解析し、医師の評価や判定を加えて利用者にレポートを提出しています。先日、堂上さんにも体験していただきましたね。

堂上:僕は普段から何かをつけて生活するのが苦手なのですが、「InSomnograf」に関しては数日限定ということで頑張ることができました(笑)。

谷:数値は日中の行動やストレスなどによって毎晩変化するものなんです。そのため、最も身近な睡眠の問題である「睡眠不足」や「不眠」、あるいは「生活リズム・体内時計の乱れ」などを見極めるには、どうしても継続して測定するのが必要なんですよね。

堂上:「InSomnograf」では、インターネットで販売する「Web限定体験プラン」も展開されていますね。どのような違いがあるのですか?

谷:「Web限定体験プラン」は、詳しい睡眠状態の見える化に特化した簡易体験版です。睡眠の質を手軽に確認したい、睡眠時無呼吸症候群が心配という方におすすめですね。具体的に睡眠の悩みを抱えていない方や、若い方にもぜひ受けて欲しいと思って始めたサービスです。

大木:20~30代はまだ眠らなくても頑張れるからと自分の睡眠の質に気づかないものなんですが、一度自分の脳波を計測して、データを残しておくというのは有効だと思います。

また、40〜50代になると睡眠の満足度がぐっと下がってくることが、厚生労働省からも発表されているんです。さらに女性は、仕事に加えて更年期の問題も入ってきてしまうので特に大変な時期なんですよね。周りでも仕事中に倒れたり、脳梗塞になったとかいう話も増えてくる世代ですから、健康管理の選択肢として一度「InSomnograf」で睡眠を計測してもらうのが必要だと思います。

堂上:僕もこういう機会でもいただかないと、自分の睡眠について客観的に知ることなどなかったので、正直ワクワクする気持ちがありました。長年ショートスリーパーを自負しているのですが、いつもより早く寝るように気を遣ってみたりして(笑)。実際5晩のデータを見せてもらいましたが、こんなにも日々変化しているということに驚きました。

睡眠の「上手い」「下手」ってどんな状態?

堂上:先日お二人とお打ち合わせさせていただく中で、「睡眠が上手い」とか「睡眠が下手」っていう表現をされていて、それがすごく面白いと思いました。実際「睡眠が上手い」とは、具体的にはどのような状態を指しているのですか?

谷:現実的に目指すところがわかっていて、それに限りなく近づけることができる行為というのを「睡眠が上手い」と表現しています。みなさん忙しく生活していて、お酒も飲まずに落ち着いた最高の環境で毎日7時間半眠れたらベストですが、そこを目指すのは現実的にはかなり難しいですよね。

大木:そう、「睡眠が上手い」は無理して目指すものではないんですよね。

谷:現実的に確保できる時間の中で、良質な睡眠をとるためにはどうすれば良いのだろうか、とか、睡眠時間を増やすために日中の時間をどこまでやりくりするのかが自分にとってのウェルビーイングなのか主体的に考え、選択できることが大切なんだと思っています。

堂上:なるほど。僕が「InSomnograf」で測ってもらった結果、5段階中のC判定だったんですよね。どうやったらもっと睡眠が上手くなれるんだろう? どうやったらA判定になるのだろう? と、ちょっと考え過ぎていました。誰かと比べるものではなく、自分の中でより良い状態が作れたらいい、という話なんですね。

「InSomnograf」計測データ例

谷:そう思います。具体的な例として、堂上さんはお酒を飲まなかった日に安定した睡眠が計測されていましたが、睡眠を良くするのを目的に大好きなお酒を一切やめるというのも決してウェルビーイングな状態だとは思わないんです。お酒とほどよく付き合いながら睡眠が良くなるような状態を作れば良い、しいては、お酒も睡眠も楽しめるバランスを身につけることが堂上さんにとってのウェルビーイングなのではないかと思うんです。

堂上:すごく納得です。自分の中でどのような状態を目指すのが幸せなのか、ウェルビーイングにも多様性がありますもんね。

谷:仰る通りですね。「InSomnograf」では、睡眠を切り口にライフスタイル、ワークスタイルのデザインを考えるきっかけを提供したいと思っているんです。可視化された睡眠のデータを元に、自分と向き合い、自分が目指すウェルビーイングを考えてもらえたら、サービスの提供者としてこれ以上嬉しいことはないですね。

すべては眠れなかった原因を探ることから

堂上:朝起きるのがつらいと、なんだか一日がちょっとダメになる感じがするじゃないですか。そうならないためにできることってあるんでしょうか?

谷:「睡眠が上手い」という話と繋がりますが、やはり原因を見極めることが必要ですね。眠れなかった原因は、前日に摂取したアルコール量だったのか、体内時計が乱れていたのか、もしくは会社の人間関係だったかもしれない。

代表の柳沢(正史・株式会社S’UIMIN代表取締役)もよく言っているのですが、万人に効く睡眠を良くする方法っていうのはないんですよね。結局、朝寝起きがつらい理由は、どこに原因があるのかを探っていって、多分これだなっていうところに対してアプローチしてみて改善されるのかを探る。そのサポートになるのが「InSomnograf」ですが、計測せずとも、自分の生活を振り返る習慣が必要だと思います。

堂上:上級 睡眠健康指導士の資格を持つ大木さんの立場からはどのようにアドバイスされますか?

大木:まずは生活全体を詳しく聞いてみますね。たとえば「ちゃんと寝ているのに朝がつらいんです」と言う方でも、実際はお子さんと一緒に寝ていて夜中に何回も起こされているとか、改善が難しい原因もあるので、詳しく聞いてからアドバイスするようにしています。

堂上:すごくわかります。家族でも心地良いと思う室温がそれぞれ違って揉めたら、良い睡眠なんて考えるどころじゃないです(笑)。

大木:ご自宅の状況に合わせてアドバイスするのが大切ですね。子どもと一緒に寝る中で睡眠を良くするコツというのもありますから。たとえば100円ショップで売っているようなすごく柔らかい耳栓って、子どもの声を通しやすいんです。ギャーって泣く声は聞こえるけど、ギシギシいっているような雑音は聞こえなくなるのでよく眠れる。女性は音に敏感になる傾向があり、特に女性ホルモン的にも授乳中や育児中って敏感になるのですが、それが軽減できます。

堂上:その方の状態を包括的に診て、原因を探るということなんですね。そして「睡眠が上手く」なるためには、自分だけでなく家族みんなで環境をどう作るかっていうことを考えていくのも重要なのかもしれません。

睡眠の質は自分では把握できないもの

堂上:以前、「目が覚めてしまって長時間眠れない」と悩んでいた方が、睡眠計測の結果、「実はしっかりと眠れていた」ことに気づいたという話を伺って。どうしてだろうと思ったのですが、脳が勘違いしているんですか?

大木:実際の睡眠状態と本人が感じている睡眠評価が異なることを、専門的には「睡眠誤認」というのですが、正にその例ですね。眠っている間は記憶がないんです。ぱっと目が覚めたときに、2時だなとか、時計見ちゃったりして、その後また眠れてるんだけど、3時に起きてまた時計を見て「1時間眠れていなかった……」と認識してしまう。実際は1時間意識がなく眠れていたのに、起き続けていたと思ってしまうことが多いんです。

谷:たくさんの方の睡眠計測結果を見てきた私の実感としても、睡眠誤認は決して珍しいものではありません。そういった方には「InSomnograf」で計測してしっかり眠れていることを認識してもらったうえで、睡眠への満足度を高めるアプローチを考えています。

睡眠の満足度を高めるための効果的な方法を選択するためには、睡眠計測によって、自身の「眠れない」という感覚の正しさや、詳細な睡眠状態を把握していくことが、重要なアプローチのひとつとして考えられます。

良質な睡眠でより良いコミュニティへ

堂上:睡眠は性別年齢問わず人類共通の課題。今日のお話を伺って、睡眠を通じて自分のウェルビーイングの在り方について考えるというのは、人生を豊かにする術ではないかと思いました。

大木:そう思います。とはいえ、家族といったごく小さなコミュニティの中でも、健康に人一倍気遣う人もいれば、無頓着な人もいる。みんなが同じレベルになるよう足並み揃えるのは互いにとってストレスが生じますよね。

そこで、たとえば家庭の中では、家族みんなの健康について目を配る、ウェルビーイングリーダー的な存在を決めるのもおすすめしています。

堂上:ウェルビーイングリーダー! 面白いですね。僕は妻から「いびきがうるさかったから眠れなかったし、あなた自身もよく眠れていないと思うよ」と言われるよりも、ウェルビーイングリーダーからの指摘だと思えば素直に聞けそう(笑)。互いのウェルビーイングを同時に叶えるにはどうするのが有効なのか、ひとつのプロジェクトとして考えていけそうです。

大木:ですよね(笑)。私が接しているご家庭の中には高校生の娘さんがウェルビーイングリーダーになっているというケースもあります。

堂上:家庭に限らず、組織の中でも有効な方法かもしれませんね。睡眠不足になると人はパフォーマンスも下がるし、不機嫌になったりするもの。身近な人がそういう状態では影響も受けるし、逆にみんながウェルビーイングな状態なら組織は必ず良い方向に向かいますよね。今日は睡眠をキーワードに、良いアイデアをいただきました。ありがとうございました。

 

編集後記

睡眠がうまくなるために、基礎を学び、習慣の中で自分にあった最適な方法を考えることが大切だと実感しました。

睡眠時間が短い(睡眠が下手な人)がまわりにいると、イライラしたり、暴飲暴食してダイエットも失敗するそうです。今回の僕自身の睡眠中の脳波を見て頂き、たくさんの学びがありました。お酒の量やストレスなど、いろいろな原因により、睡眠の質が変わることも分かりました。

睡眠がうまくなったら、家族も幸せになるし、仕事のチームメートも幸せになる。睡眠は明らかに、全ての人のウェルビーイングを司る「生きる上で大切な習慣」だと分かりました。

今回、このような機会を頂き感謝申し上げます。睡眠がうまくなるように定期的に脳波の計測をしたいと思います。

堂上

[当記事に関する編集部日記はこちら]

睡眠と早起き

睡眠時間と睡眠効率

本記事のリリース情報

博報堂:多様な生活者のウェルビーイングを促進する情報サイト「Wellulu」で睡眠改善アドバイザーの谷が紹介されました。

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