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「全従業員の物心両面の幸福を追求する」。最勝寺CFOの語るKDDIグループが目指す社員の働く環境とは?

人と人との円滑な対話は、より良い人間関係をつくり、成長を実感する。人に幸福感を与え、つながりの中のウェルビーイングへと導く。

「豊かなコミュニケーション社会の発展に貢献すること」を企業理念に掲げるKDDI株式会社は、何よりも「全従業員の物心両面の幸福を追求すること」を基本に置いている。そのKDDI株式会社で2023年4月、執行役員常務 CFO コーポレート統括本部長に就任した最勝寺 奈苗さんは、同社の最高財務責任者であり、人財戦略の領域も担っている。

人的資本経営のキーパーソンである最勝寺CFOに、従業員の「心身の健康」と「生きがい」を向上する取り組みについて、Wellulu編集部の堂上研が話を伺った。CFOがCHRO領域を管轄する形を取り入れている先進事例とは、どのようなものなのだろうか?

従業員の幸福を、お客様の感動につなげる。KDDIの理念

堂上:まず最勝寺さん個人のお話しをお聞きできればと思います。最勝寺さんは学生時代にどのような活動をされていたのでしょうか?

最勝寺:小さい頃から高校の途中までは、陸上競技に熱中していました。短距離走をやっていたのですが、選手生命が長い競技ではなくて、選手として引退してからは縁の下の力持ちになりたいと思うようになったのです。大学に入ってからは、日本拳法部のマネージャーとして選手たちをサポートしていました。

堂上:日本拳法部ですか! なぜ日本拳法を選ばれたのですか?

最勝寺:私の実家には弓道場があり、子どもの頃から師範を務める祖父の姿を見ていました。「礼に始まり、礼に終わる」という、武道の世界に魅力を感じていたのだと思います。

堂上:なるほど。そうした子どもの頃からの経験や価値観は、その人のウェルビーイングに大きな影響を与えると思います。では、最勝寺さんがCFOの立場になって、あらためてKDDIが目指していく理念についての考えをお聞かせください。

最勝寺:KDDIの企業理念は、「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、お客さまの期待を超える感動をお届けすることにより、豊かなコミュニケーション社会の発展に貢献します」というものです。「従業員が幸福でなければ、お客さまに感動を与えるサービスをお届けすることはできない」との考えのもと、「全従業員の物心両面の幸福を追求する」の一文が最初にあることが当社の特徴であり、重要なことだと考えています。

KDDIグループで働く全ての従業員が、経済的な安定と心の豊かさを得られる環境にあることが何より大切です。その上で、お客さまの期待を超える感動をお届けする。この企業理念には、お客さまに心から喜ばれ、愛される会社でありたいという思いが込められています。

KDDIグループの社是と企業理念

堂上:「豊かなコミュニケーション社会の発展」というのは、具体的にどのような社会創造を思い描いているのでしょうか。

最勝寺:「KDDI VISION 2030」として、2030年に向けたビジョンを掲げています。「『つなぐチカラ』を進化させ、誰もが思いを実現できる社会をつくる」。そこを目指して、命・暮らし・心をつなげていくことで、環境変化に強い社会基盤構築に貢献することを意味しています。

今、世の中には数々の社会課題があります。それらを解決していくために、カギを握るのは『つなぐチカラ』。通信がさらに暮らしに溶け込めば、できることは飛躍的に広がっていくはずです。KDDIとして、そんなワクワクできる社会を創っていきたいと考えているのです。

堂上:ワクワクできる社会、新しい学びや挑戦できる環境は、本当にそれぞれのウェルビーイングにつながっていくと思います。では最勝寺さんの考える、「ワクワク」とはどういったものですか?

最勝寺:例えば、私はテレビドラマが好きでよく見るのですが、ドラマのストーリーの先を読んで自分なりに想像するのです。ところが、これはなかなか難しく、とんでもなく予想外の展開になったときには胸がドキドキして「これは面白い!」と感じるのです。一番ワクワクする瞬間とは、そんな自分では想像もできないような新しいものとの出会いのときではないでしょうか。

堂上:私たちは、ウェルビーイングはひとりひとり違うという想いがあります。最勝寺さんの感じるウェルビーイングは、セレンディピティという偶然の出会いや発見があるように感じます

「経営の番人」として。財務とHRをはじめとするコーポレート領域を担うCFOの役割

堂上:最勝寺さんのCFOとしての役割について教えてください。一般的にCFO(Chief Financial Officer)は最高財務責任者を指す言葉ですので、経営の中枢ですよね。

最勝寺:KDDIは2022年度までは「CxO(Chief x Officer)」という、チーフオフィサー制度は取っていませんでした。2023年4月から、CEOとCTO、CFOが任命されています。CFOの役割は「経営の番人」であり、「経営の羅針盤」です。大きな視点からだと「企業価値の向上に寄与すること」で、会社を守るだけではなく、持続的に会社を成長に導いていくのがCFOの役割です。

堂上:最勝寺さんは、さらに会社のHR(人的資本)の領域も担っていらっしゃいますよね。その背景を教えてください。

最勝寺:先ほどおっしゃられたように、狭義のCFOは、会計部門のトップという位置付けです。しかしながら、会計部門だけで「経営の番人」、「経営の羅針盤」の役目は果たせないと思っています。近年は、サステナビリティ経営やESGへの取り組み、さらにHR領域への関心が高まり、企業価値が“業績”という会計の数字だけでは語れません。会社によってはチーフオフィサー制で、CHRO(最高人事責任者)などのポジションを設けているところもありますが、KDDIではCFOの役割を非財務の領域に範囲を広げてCFOがコーポレート全体を統括しています。

堂上:KDDIグループでは経営戦略の中心に、財務や人的資本の考えを取り込んでいるように感じます。その狙いはどこにあるのでしょうか。

最勝寺:KDDIグループの経営戦略フレームは、サステナビリティ経営を基軸において、事業戦略であるサテライトグロース戦略の推進と、非財務の領域である経営基盤強化の両輪によって企業価値を向上させ、社会に貢献することで、企業理念を実現していくというものになっています。

全体の基盤にあるのが、当社が掲げるフィロソフィです。ここには「目指す姿」や「仕事の流儀」など、従業員が指針にするべき行動の規範が記されています。私たちは年間多くの時間を費やして、企業理念やフィロソフィの勉強会を開いてきましたが、今では、サステナビリティとKDDIの理念・フィロソフィを融合させて学ぶ場に変わってきています。

KDDIグループ2022-24年度中期経営戦略の全体フレーム

堂上:企業理念やフィロソフィを全従業員に浸透させていくことが、サステナビリティ経営にもつながっているのですね。この経営基盤強化の部分に、HR領域の戦略も含まれるのでしょうか。

最勝寺:従業員への理解浸透がないと、実行はできないと思っています。経営基盤強化については、柱が大きく3つあります。1つめがカーボンニュートラル、2つめがグループガバナンスの強化、そして、3つめがHR領域の「人財ファースト企業への変革」の話です。

堂上:次は、特にHR領域について、KDDIが取り組んでいる具体的なアクションについて聞いていきます。

従業員の心身を守る。KDDIが本気で取り組む人財ファースト企業への変革

堂上:まず「人財ファースト企業」を追求するというKDDIグループの考えをお聞かせください。

最勝寺:私たちは常に、人“財”という言葉を使っています。材料の“材”ではなく、財産の“財”です。人は単なるコストではなく、重要な資本であるということを意識するために、あえて「人財」と表現しています。「人財ファースト」への取り組みは以前から進めていて、特に人事制度の改革と働き方の改革、社員エンゲージメントの向上に注力してきました。会社と従業員がwin-winの関係を築き、共に成長できる状態を目指しており、単に従業員に優しいだけの会社とは異なるものです。

堂上:従業員のエンゲージメントはどのように測定しているのでしょうか?

最勝寺:全従業員を対象に、年間4回の「エンゲージメントサーベイ」が実施されています。その全社平均の総合スコアが全社のKPI(重要業績評価指標)にもなっています。ダイレクトに個人の人事評価につながるわけではなく、全社業績賞与の掛け率算定の1項目という位置づけです。今期は、第1四半期から目標を達成して、従業員のエンゲージメントが高く維持されています。

堂上:従業員の心と身体の健康という面では、どのような取り組みをされているのですか?

最勝寺:KDDIは先に人財が最も大切だとお伝えした通り、従業員の「心身の健康」と「生きがい」を向上するための取り組みを進めています。「心身の健康」の面では、社内カウンセラーによる全社員面談を年2回行って、仕事や職場環境、人間関係についてヒアリングし、改善につなげています。

堂上:この取り組みも本当に素晴らしいと思います! いつ頃から始められているのですか?

最勝寺:2019年4月にスタートしています。それまで、部署ごとに上司が面談をしながらカバーするという形でしたが、職場のストレスは上司に直接伝えにくい社員も多いため、客観性を持ったカウンセラーが間に入ることも大切です。カウンセラーは基本的に、社内での公募やシニア人財の起用によって配置されています。年齢を重ねた方は話の聞き方も上手く、シニア人財の活躍推進という面でも効果的だと思っています。

堂上:ほかにもメンタル予兆検知など、様々な施策を取り入れられているそうですが、効果は目に見えてきているのでしょうか。

最勝寺:メンタル予兆検知は2023年4月から始まり、4年分の全従業員面談の結果と各種データを分析して、メンタルリスクの高い従業員・組織を予測し、早期の対応につなげています。また、健康支援アプリ「auウェルネス」を活用した従業員の生活習慣病予防イベントの実施や、働き方改革推進委員会を設置して、本部長間での意見交換、事例共有を月1回行っています。

特に全社員面談は実施から4年が経過して、メンタルヘルス不調の予兆者への対応数、組織改善への介入数や不適切な勤務管理の是正対応件数などが、確実に減少していると判断しています。

働く社員の生きがいの向上を。さらなる環境づくりを推進する

KDDIが掲げる「人財ファースト企業のさらなる追求」を実現させるためのビジョン

堂上:従業員の「生きがい」の向上というのは、どういったことに取り組んでいるのでしょうか?

最勝寺:私たちは人が生きがいを感じるのは「自分の成長を実感したとき」「人から感謝されたとき」、そして「社会にいい影響を与えたとき」だと考え、環境を整備しています。取り組みのひとつは、従業員の成長を目的とした能力開発支援です。全従業員が対象のDX研修や、ベーススキル向上のためのコアスキル研修、管理職向けのスキルアップ支援ワークショップ、社内の他部署で新たな領域のスキル習得を目指す副業制度などが挙げられます。

また、メンバーの成長をサポートするため、部下と上司との1on1面談を「業務」から「キャリア」まで、幅広いテーマで実施しています。

堂上:実際に従業員の「生きがい」が向上しているなど、見えてきた成果はあるのでしょうか?

最勝寺:「上司と部下の1on1」については、チームメンバー内の心理的安全性の土台が形成されることで、本人の新しい挑戦を促すような対話の機会が増えています。エンゲージメントサーベイにおいても、「挑戦する風土」のスコアが向上していて、「プロ人財の育成」「挑戦・成長」「特技・特徴などの個性を組み合わせた事業変革・価値創造」の循環に貢献しています。

堂上:今後、従業員のウェルビーイングを高めるために、KDDIはどのような施策を進めていくのでしょうか?

最勝寺:KDDIでは2019年に「働き方改革・健康経営推進室」を設置しました。2023年10月からは働き方改革・健康経営推進室内に新たに「ウェルビーイング推進G」を設け、従業員が病気にならないことを目指すだけではなく、働きがい・生きがいをもって活き活きとした暮らしを送り続けるような環境をさらに整備していきます。

また、従業員のウェルビーイングにもつながるキャリア形成への取り組みの一環で、2023年10月からキャリア面談を本格的に開始しています。これまで以上に従業員のキャリア形成をサポートしていきたいと考えています。

最勝寺CFOにとってのウェルビーイングと、思い描くウェルビーイング社会とは?

堂上:最勝寺さん自身が、ウェルビーイングな状態を保つために行っていることはありますか?

最勝寺:ウェルビーイングは、人によっても形が変わりますし、人生のステージなどのタイミングによっても変わります。会社内で置かれる環境は刻々と変化していて、健康状態も当然変化していきます。昨日がベストな状態でも、今日もベストとは限らない。そんな中でウェルビーイングな状態を保つには、自分の「心の持ちよう」が大切であると考えています。

堂上:「心の持ちよう」ですか。最勝寺さんは、どういった考え方で日々を過ごされているのですか?

最勝寺:良いことも、悪いことも永久に続くわけではないと私は割り切って考えています。そう考えていると、気持ちが楽になり、目の前の課題に対応していける。それが私にとってのウェルビーイングな状態でいられる秘訣だと思います。

環境も自分自身も変化していく中で、未来ばかりを見るのではなく、今を一生懸命生きることに努めています。そのために、他人に対して興味を持つこと、「良かった」を探してポジティブ思考で生きること。それを自分に言い聞かせています。

堂上:なるほどです。ポジティブマインドを持てるように、自分の中でどう意識するか、コントロールするか、行動するかというのは、重要な要素ですよね。自分と向き合う時間をつくって、うまく自分の感情と対話していらっしゃるように感じました。

最勝寺:ため息が不幸を伝播してしまうように、ネガティブな思考は周りを不快にしてしまいます。逆に、ポジティブなマインドを持って接することで、人をウェルビーイングへと導いていけるのではないでしょうか。

実は私の心の師匠は、テレビアニメの『小公女セーラ(原作は小説の『小公女』)』なんです。どんな苦境の中でも、常にポジティブに考え行動することで周りを幸せに導いていきます。苦難を乗り越えて、「ダイヤモンド・プリンセス」と呼ばれるようになるわけですが、ポジティブなマインドが人を、そして何より自分自身をウェルビーイングへと近づけていくのではないでしょうか。

堂上:面白いですね。ポジティブな人の周りは、みんな影響を受けてポジティブになっていくように感じます。では、最後に最勝寺さんがCFOとしてKDDIの従業員をウェルビーイングに導くために、どういったことを進めていきたいとお考えでしょうか?

最勝寺:従業員がウェルビーイングな状態でなければ、企業はお客さまに「感動できるサービス」を提供できません。この考え方がKDDIの大きな核です。全従業員のウェルビーイングを追求することで、お客さまの期待を超えるサービスを提供する。そして、豊かなコミュニケーション社会の発展に貢献することで、社会の持続的な成長と企業価値の向上を図り、従業員のウェルビーイングをさらに高めていく。そんな好循環をつくっていければと考えています。

堂上:私は企業のトップがウェルビーイングな状態であれば、従業員にも必ずウェルビーイングが伝播していくと思っています。最勝寺さんのお話しをお伺いして、従業員、そしてお客さま、全てのステークホルダーを巻き込んで「幸せの連鎖」をつくっているように感じました。本日は素晴らしいお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

〈後編〉はこちら

社員のウェルビーイングの実現に向けて。KDDIグループが取り組む「全社員面談」システム

最勝寺 奈苗さん

執行役員常務 CFO コーポレート統括本部長

1988年第二電電(現KDDI)に入社。経営管理部グループリーダー、IR室長、財務・経理部長などを務め、2014年に理事(役員)就任。2020年に執行役員 経営管理本部長、2022年に執行役員 コーポレート統括本部 副統括本部長 兼 サステナビリティ経営推進本部長を歴任し、2023年より執行役員常務 CFO コーポレート統括本部長に就任。

堂上 研さん

Wellulu 編集部プロデューサー

1999年に博報堂へ入社後、新規事業開発におけるビジネスデザインディレクターや経団連タスクフォース委員、Better Co-Beingプロジェクトファウンダーなどを歴任。2023年、Wellulu立ち上げに伴い編集部プロデューサーに就任。

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