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社員のウェルビーイングの実現に向けて。KDDIグループが取り組む「全社員面談」システム

「全従業員の物心両面の幸福を追求すること」を企業理念の第一目標に掲げているKDDI株式会社。2019年4月からは社内カウンセラーによる全社員面談を実施し、全国13,500人の社員をケアしている。KDDI株式会社に勤める社員が思う、それぞれのウェルビーイング、そしてKDDIの中でのウェルビーイングの実現とは?

経営戦略本部の西村 由紀さん、パーソナル企画統括本部の高坂 義行さん、サービス統括本部の高久 由佳さん、そして2023年10月に新設された人事本部/働き方改革・健康経営推進室 ウェルビーイング推進Gグループリーダーの小林 敬子さんに、Wellulu編集部の堂上研と左達也が話を伺った。

ひとりひとり異なるウェルビーイング。実現を目指す会社としての課題

堂上:まず、みなさんの自己紹介と自分にとってのウェルビーイングについて教えてください。

小林:ウェルビーイング推進Gのリーダーをしています、小林です。よろしくお願いいたします。今回、「ウェルビーイングとはなんだろう?」と改めて考えたときに、一番ワクワクとかドキドキするのは「自分が成長しているとき」とか、「新しいものに触れたとき」だと気づきました。新しい学びも、学んだことを「どこで活用しようか」と考えるのも大好きで、それが自分にとってのウェルビーイングだと思っています。

元々は人材開発の部署で仕事をしていたので、人が成長する姿を応援するのも好きで、キャリアコンサルタントの資格やコーチングの資格も取得していて、今はカウンセラーの勉強もしています。

左:新しいことを学んで、自分や人が成長する姿にウェルビーイングを感じるのですね。学生時代から学ぶのが好きだったのですか?

小林:いえいえ、学生時代は遊んでしまって……(笑)。もっと勉強しておけばよかったと思います。

高久:ヘルスケア事業推進部の高久です。よろしくお願いいたします。私は健康支援アプリ「auウェルネス」の企画・開発を行っています。私にとってのウェルビーイングは、プライベートな部分ですが、旅行などでアクティブに動くことだと思います。最近はピラティスに週3回通っていて、単調だった日常にメリハリが付いて、私の中にいいリズムを作れていると感じています。

堂上:ピラティスに辿り着いたのは、どういった経緯だったのですか?

高久:ジムには通ってはいたのですが、ダンベルを使う運動が自分には合っていて。同じように器具を使う運動を自分で探していて見つけたのがきっかけです。

高坂:パーソナル企画統括本部の高坂です。私は営業として働いていて、外に出ることも多い体力勝負の仕事なので、身体を動かすようになりました。私は自転車競技が好きで、以前はレースにも出場していたのですが、最近は自転車レースの審判の資格を取り、競技の中では審判としての活動がメインです。

自転車レースに参加する高坂さん

堂上:自転車レースの審判ですか! どんな楽しさがあるのでしょうか?

高坂:もともと選手をやっていたのもあり、競技者をサポートできるのは本当に楽しいですね。レースをきちんと成り立たせることは、なかなか奥が深くて、自分の成長も実感できます。

西村:経営戦略本部の西村です。普段は部署の総務の仕事をしているのですが、ご縁があって副業制度で小林さんのウェルビーイング推進Gにもお世話になっています。

左:社内副業の制度ですね? 本業とは全く関係のない部署で働かれているのですか?

西村:はい。全く関りはない部署同士でも手を上げればマッチングしてもらえます。業務の2割を違う部署で働ける制度なので、とても良い経験になっています。私にとってのウェルビーイングを感じる時間は、家族と一緒に過ごしている時です。

堂上:ウェルビーイングな環境というは、人によってそれぞれに違うものです。ひとりひとりの価値観が違う中で、どうやって従業員のエンゲージメントを高め、ウェルビーイングを実現していくのかが、ウェルビーイング経営の大きな課題だと思っています。今日は、KDDI株式会社の中にいてみなさんが感じていることを、率直にお聞かせいただければと思っています。

新設されたばかりの「ウェルビーイング推進G」が担うものと、その背景

堂上:では、組織の話からお聞きさせてください。2023年10月からウェルビーイング推進Gが立ち上がった背景にはどういう経緯があったのでしょうか?

小林:「働き方改革・健康経営推進室」は2019年に設置されました。その名の通り、働き方改革と健康経営の2つをミッションとした部署でしたが、それぞれのミッションを企画するグループが部署内でも分かれていたという事情がありました。働き方改革と健康経営をさらに発展させていく上で、この2つは一緒に考えていかなければなりません。

左:なるほど。働き方と健康経営は、つながっているということですね。

小林:健康経営の中に、働き方改革の考え方は出てきますし、逆もまた同じです。弊社では働き方改革・健康経営を取り巻く制度は整ってきましたが、まだまだ改善する余地があります。企業理念の中にもある「全従業員の物心両面の幸福を追求する」ためにも、ミッションの先にあるものを見据えて新設されたのが、ウェルビーイング推進Gです。

堂上:新設されて間もないと思いますが、ウェルビーイング推進Gでは、具体的にどういった施策を行っていくのでしょうか。

小林:まだグループ自体が具体的に動いている状況ではありませんが、「ホワイト500」などの健康経営度調査の順位は上げていかなければなりませんし、KDDIが取り組んでいることの認知度も上げていきたいと考えていますので、そのためにできることも考えていきたいと思っています。

堂上:最勝寺さんのお話をお伺いして、KDDIグループでは「ワクワクできる」というのがウェルビーイングのキーワードになっている気がしています。それぞれ「ワクワク」するものが違う中で、工夫していこうと考えていることはありますか?

小林:「ワクワクさせる」というのは、難しいですよね。人それぞれなので……。心身の健康は大前提として、各々が自分の強みを生かしながら働ける環境を整えることでしょうか。自分なりに目指すキャリアを見つけて、そこに向かって進んでいく間にも、ワクワクしながら仕事をしてもらえるようにしていきたいですね。

堂上:小林さんは多分、人が大好きなんでしょうね。自身のウェルビーイングが高い人には、仕事を楽しんでいる人が多いと思います。小林さんは仕事とプライベートの切り替えはどうされていますか?

小林:休みの日に出かけたときに、仕事のヒントを見つけて「あ!」と思って、仕事のことを考えてしまうことはよくありますね。子どもが2人いるのですが、子育ての過程でなかなか思うように仕事ができなかった時期があったので、今、仕事にのめり込める環境が本当に楽しく感じています。仕事とプライベートが混ざっていても、あまり嫌だとは思っていません。本当に仕事を遮断したいときには、場所を変えて、家族や友達とどこかに旅行してしまうのが一番良いかもしれないですね。仕事のことを考えてしまうタイミングが少しあったとしても、確実に心の糧になると思います。

社内副業制度で新しいチャレンジを。従業員の健康意識を高める施策

堂上:西村さんが社内副業を始めたきっかけを教えてください。

西村:子どもが生まれて、育児休業から2023年4月に戻ってきて元の業務に復職したのですが、新しい仕事も始めたいという思いがあり、周りに相談する中で「副業制度を使ってみたらいいんじゃない?」とアドバイスを受けたのがきっかけです。

堂上:副業する先は選べるのですか? 上長の確認が必要なのでしょうか。

西村:社内副業できる部署がいくつかあって、立候補することができます。もちろん、所属している部署の上長との話し合いはありますが、副業制度への理解は深まっていて「ほかの部署で得たものを元の部署で生かして欲しい」と期待していただいています。

小林:副業先でも、応募した人との面談を全員とするのですが、本当に「学んだこと、経験したことをどこかで生かしたい」という意欲がある方ばかりで、目的と興味があるのを感じています。

堂上:それも素晴らしいですね。社内副業制度は導入する企業も増えてきましたが、KDDIではしっかりと機能されているということだと思います。

では、高久さんが開発している「auウェルネス」は、何年くらい運用されているのですか?

高久:2020年12月にリリースされました。歩数や体重などの日常の健康管理と、オンライン診断など医療分野についてもケアして、総合的に健康の持続をサポートするアプリです。

「auウェルネス」の画面。歩数や消費カロリー、体重など日常の状態をモニタリングできる

堂上:Welluluでも度々話題に上るのですが、運動を続けていく上で「習慣化のデザイン」と「パーソナライズドのデザイン」がキーワードだと思っています。その面で「auウェルネス」はどういう特徴があるのでしょうか。

高久:習慣化のデザインとしては、歩くことでコインが貯まっていくようなシステムを導入しています。コインはプレゼントとの交換もできて、あとは歩数によって毎月のレベルが変わって、交換できるプレゼントも変わっていくというデザインにしています。

堂上:まさにそれぞれの価値観に合うように、インセンティブも選べる形というのは素晴らしいですね。KDDIでは、ほかにも社員の健康を守る施策をされているのですか?

西村:私はウェルビーイング推進Gでの副業で「KAISHA DEエクササイズ」という従業員の運動習慣に関する啓発ポスターなども作成しました。

堂上:なるほど。こうした取り組みも従業員の健康を守る手助けになっているのですね。

「次の面談が楽しみです」。年2回の全社員面談が社員に与える好影響

堂上:次に、年2回行われている全社員面談についての詳細を教えてください。高坂さんは実際に社内カウンセラーによる面談を受けて、どう感じられましたか?

高坂:基本はカウンセラーとの1対1で、30分の面談を行います。カウンセラーの方は、私の場合は毎年同じではなくその年によって変わっています。先輩の方とかもいらっしゃるので、親近感もあり話しやすいと思います。

小林:その組織の事情をわかっている方もいるので、しっかりと相談できますね。

左:見知った方がカウンセラーだと、安心感もありますよね。

堂上:どんな話をされるのですか?

高坂:「最近どう?」のような感じで雑談に近いですね。自分のいる部署のことも知ってくださっているので、思わず愚痴を言ってしまうことも(笑)。初回はさすがに構えましたが、2回目からは楽しみになりました。

左:面談が楽しみになるというのはすごいですね! 話す時にどこまで話していいのか悩みませんか?

西村:愚痴を言っても上に伝わることはないですし、好き放題に話しています(笑)。

高坂:面談が楽しみで、「次の面談を待っています!」と言っている人もいますし、私も素晴らしい制度だと思っています。

堂上:社内カウンセラーの方が確認しなければならない項目というのはあるのですか?

小林:カウンセラーが主に確認するのは、まずは健康状態。ほかにも業務量や職場の人間関係など、メンタル不調を起こしやすい箇所を上手く聞き出していただいています。社内カウンセラーもロールプレイングなどを行い、向上心を持ってスキルアップしています。資格を取得した方も多くいらっしゃいますよ。

堂上:カウンセラーにとっても、カウンセリングの仕事を通じてウェルビーイングへとつながっているんですね。しかも、その事業のこともわかっている経験者が聞いてくださるという仕組みも良いですね。

自身のウェルビーイングが仕事にも反映され、好循環を生んでいく

左:みなさんがプライベートで楽しんでいること、プライベートでウェルビーイングを感じていたことが、実際に仕事の成果として結びついたことはありますか?

西村:家族との時間を過ごしていく中で、小さな子どもがいるので、スキマの時間をやりくりする必要に迫られていました。そのスキマ時間を管理するスキルは、今回、副業制度を活用する上でもとても役に立っていると思っています。

高坂:自転車レースの審判をやっている中で、違反行為が発生して、審判としてペナルティを課すことがあります。しかし、審判の役割はペナルティを取ることではなくて、ペナルティが発生しないようにきちんと導いていくことが重要です。選手と一緒に良いレースをつくり上げていく、という視点は仕事にもフィードバックできていると思っています。

左:違反のないレースをすることが、結果的に「良いレース」という成果に結びつくわけですね。

高久:私は「auウェルネス」を手掛けていて、いかに楽しく運動を続けてもらうかを考えるのがミッションのひとつなのですが、その視点で自分がジムに行った時に「なぜ自分は運動を続けているのだろう」「ほかの人はどういった目的でジムに通っているのだろう」と観察するようになりました。

例えば、ジムの受付のときにスタッフの方から「由佳さん、今日も来てくれたんですね!」と話しかけられるだけで、心が掴まれて「明日も来よう!」となります。実際に体験したことを仕事にフィードバックしていくことは、多いと思っています。

左:高久さんのもとに、アプリの利用者からの感想や意見が届くことはあるのですか?

高久:届きますね。ユーザーの反応が良かったものとかは、数字としてもわかりますし、SNSやアプリストアの評価を通してユーザーの生の声を確認することもできます。反応がリアルタイムで伝わってくることは楽しさでもあり、大変でもありますが……。部内の人間関係が良好なので、良い反応を見たときはみんなで喜びを共有しています。

堂上:仲間と喜びを共有するのも、まさにウェルビーイングだと思います!

小林:先ほど、西村さんからスキマ時間の話がありましたが、私も子育てをしている中で「なんで人は同じように生まれてくるのに、それぞれ違いが出てくるのかな」と不思議に感じて、「育つ環境による影響は大きいのかな」とか、そんなことを考えていました。会社においても、人を育てる“環境”は重要なのではないでしょうか。

堂上:たしかに、大人だって環境によって変わっていきますよね。

小林:私は子育てを通じて、人の育成に関わることが「楽しい」と感じるようになり、キャリア開発の仕事に携わるようになりました。

堂上:小林さんは、心から仕事を「楽しい」と感じているんでしょうね。

小林:仕事は楽しんでやりたいと思っていますし、実際に楽しく働けています。私は新しいことをやるのが大好きなんですよね。

堂上:楽しいこと・新しいことをやりたい人は飽き性でもあるのですが、ウェルビーイング度が高いと聞きます。

小林:まさに飽き性ですね(笑)。今は新しいグループで、新しいものをつくっているのでとてもやりがいを感じています。子育てに手がかからなくなりキャリアアップできたからこそ、今の仕事につながっていることを実感しています。

堂上:KDDIで働くみなさんが、仕事とプライベートの両方でいかにウェルビーイングを感じて過ごしているのかが伝わってきました。本日はありがとうございました。

編集後記

今回、経団連の経営の勉強会で、KDDI・最勝寺CFOの話を聴かせて頂いたのがきっかけで、Welluluで取材をさせて頂いた。なぜ、CFOにウェルビーイングの話を聴くのか、と編集会議でも話になった。

きっかけは、ダイヤモンド社の徳成旨亮著「CFO思考」(2023年)にあった。CFOの役割が担う10の責任領域と役割の中に、人件費はコストではなく、「将来への投資」とある。KDDIがまさに、CFOの役割に人的資本をいれていたのだ。

全ての従業員にワクワクをつくっていく、さらにはお客さままでも幸せにしていく循環の仕組みを経営の中枢においている。大きな会社になればなるほど、人的資本経営を推進するのは難しい。

そんな中、KDDIは「上司でない人が、全社員への面談を年2回する」というのと、「社内副業制度」というので、それぞれの成長と息抜きをうまく浸透させている。

何より印象的なのは、インタビューさせて頂いた社員のみなさんの笑顔だ。個々人のそれぞれの働き方を対話の中で決めていることで、仕事を楽しんでいる人が多いのだろう。面談が楽しみ、自分から手を挙げて社内副業する、ということから働くことを楽しんでいることがうかがえる。

自分と対話する時間をつくり、同僚とも対話する。今の自分の仕事と関係ない人に話を聞いてもらう、越境して新しい仕事に参加する。お客さままでも、つながりの中で幸せにしていく。このサイクルは学ぶことが多いように感じるインタビューになった。

今回、CFOが管轄するCHROの分野からウェルビーイング経営の話につなげたが、こういう会社が増えると、まさに人財への将来への投資につながるのだろう。

最勝寺CFO、KDDIのみなさま、今回は貴重なお話しを聴かせて頂きありがとうございました。

堂上 研

〈前編〉はこちら

「全従業員の物心両面の幸福を追求する」。最勝寺CFOの語るKDDIグループが目指す社員の働く環境は?

西村 由紀さん

経営戦略本部/データマネジメント部

副業制度を活用し、データマネジメント部の本業と働き方改革・健康経営推進室の副業を両立する。

高坂 義行さん

パーソナル企画統括本部/CATV東日本支社 東日本支店/コアスタッフ

「auウェルネス」の社員向けウォーキングイベントに参加した経験を持つ。

高久 由佳さん

サービス統括本部/ヘルスケア事業推進部/サービス企画グループ/コアスタッフ

健康支援アプリ「auウェルネス」の企画・開発に携わっている。

小林 敬子さん

人事本部/働き方改革・健康経営推進室/ウェルビーイング推進G/グループリーダー

2023年10月に新設された「ウェルビーイング推進G」のリーダーを務める。

堂上 研さん

Wellulu 編集部プロデューサー

1999年に博報堂へ入社後、新規事業開発におけるビジネスデザインディレクターや経団連タスクフォース委員、Better Co-Beingプロジェクトファウンダーなどを歴任。2023年、Wellulu立ち上げに伴い編集部プロデューサーに就任。

左 達也さん

Wellulu編集部プロデューサー

福岡市生まれ。九州大学経済学部卒業後、博報堂に入社。デジタル・データ専門ユニットで、全社のデジタル・データシフトを推進後、生活総研では生活者発想を広く社会に役立てる教育プログラム開発に従事。ミライの事業室では、スタートアップと協業・連携を推進するHakuhodo Alliance OneやWell-beingテーマでのビジネスを推進。Wellulu立ち上げに伴い編集部プロデューサーに就任。毎朝の筋トレとランニングで体脂肪率8〜10%の維持が自身のウェルビーイングの素。

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