
納豆は「食物繊維」「タンパク質」などの栄養素を含んでおり、ダイエット中に取り入れたい食材。この記事では、納豆のダイエット効果や食べ方のコツ、組み合わせ食材、注意点などを解説。ダイエットを目的として、より健康的な食生活を目指している人は参考にしてみよう。
この記事の監修者

神原 李奈さん
管理栄養士・食育栄養インストラクター
納豆に含まれるおもな栄養素
納豆に含まれている栄養成分は大きく分けて3つ。ここではそれぞれの栄養成分の特徴について解説。
- ナットウキナーゼ
- ビタミンK
- 納豆菌
ナットウキナーゼ
ナットウキナーゼは納豆に含まれる酵素で、血栓を溶解する効果が期待できる。そのため、血液をサラサラにし、血流を改善する。
ただし、血栓溶解作用は試験管での実験で証明されている効果であり、納豆を食べることで実際に同じ効果が得られるのかについては、今後の研究で解明が必要とされている。
なお、血行が改善されると、皮膚の下に余計な水分がたまりにくくなるため、「むくみの予防・解消」「代謝の向上」につながる。

企業による研究では、ナットウキナーゼによって高めの血圧が改善されたという報告もあります。
ビタミンK
納豆にはビタミンが含まれており、その中でもとくに「ビタミンK」が豊富。ビタミンKは骨の形成に必要なビタミンで、骨の健康維持に重要な役割を持つ。ダイエット中の骨密度低下を予防し、健康的な身体づくりをサポートしてくれる。
納豆菌
納豆菌は「稲わら」「枯草」「落ち葉」などに生息する細菌で、納豆の製造に欠かせない微生物。試験管での実験では、免疫力を高める働きが認められており、人体でも同じような効果が期待されている。

納豆菌については、さまざまな働きが発見されていますが、人の身体への効果については、まだまだ研究段階のことが多いです。ただ、納豆には食物繊維が含まれていますので、それによって「腸内環境の改善」「免疫機能維持」などの効果が期待できます。
納豆のダイエット効果
ここでは、納豆のダイエット効果を詳しく見ていこう。
- 高タンパクで筋力維持することで減量サポート
- 腸内環境を整えて便秘を改善
- エネルギーを消費しやすい体内環境をつくる
- 糖質・脂質・タンパク質の代謝をサポート
高タンパクで筋力維持することで減量サポート
納豆は「100gあたり約212kcal」で、タンパク質を「約16.5g」含む高タンパクな食品。
タンパク質は筋肉の維持・成長に必要な栄養素。筋力維持のサポートはもちろん、体内で消化に時間を要することから食後の空腹を感じにくくなる。食事の満足感を得やすくなるため、過食を防いでくれる効果が期待できる。
腸内環境を整えて便秘を改善
【納豆の食物繊維(100gあたり)】
- 糸引き納豆:約6.7g
- ひきわり納豆:約5.9g
納豆は食物繊維が豊富で、種類によって含まれる量に違いがある。これらは食物繊維の1日の摂取推奨量の約4分の1の量に値する。
食物繊維は腸内の善玉菌のエサとなって善玉菌の増殖を促進し、これにより「腸内環境の改善」「便秘の予防・改善」につながる。また、納豆に含まれる不溶性食物繊維は、水分を吸収して膨張し腸管を刺激するため、便通をスムーズにしてくれる。

栄養強調表示の基準値では、「100gあたり6g以上」で食物繊維が「高い」ということになります。ダイエット時には積極的に納豆を取り入れるのがよいです。
エネルギーを消費しやすい体内環境をつくる
納豆に含まれるイソフラボンには抗酸化作用があり、体内の炎症を抑制する効果が期待できる。この働きにより身体の代謝機能を正常に維持することで、エネルギーの消費も正常におこなわれ、脂肪の蓄積予防につながる。
また、イソフラボンは分子構造がヒトの女性ホルモン(エストロゲン)に似ており、月経周期を調節するなど、女性ホルモンに似た働きも期待できる。
糖質・脂質・タンパク質の代謝をサポート
納豆には、疲労回復をサポートするビタミンB群が含まれている。「糖質」「脂質」「タンパク質」と一緒にとることで、効率よくエネルギー変換ができ、ダイエット中の体力低下を防ぐ効果が期待できる。
また、ビタミンB群の中でもパントテン酸が多く含まれている。パントテン酸は「糖質」「脂質」「タンパク質」の代謝に関わるビタミンで、エネルギー産生をサポートしてくれる。

パントテン酸は、ストレスをやわらげる働きを持つ副腎皮質ホルモンの合成にも関わっています。適度に摂取することにより、ダイエット時のストレスに対する防御機能をサポートしてくれる効果があります。
ダイエット中に納豆を食べる最適なタイミング
ダイエット中に納豆を取り入れるなら、「朝食」と「夕食」がおすすめ。それぞれのタイミングで納豆を取り入れるメリットを見ていこう。
- 朝食:代謝アップ&痩せやすい体質に
- 夜:腸活&食欲増進予防
朝食:代謝アップ&痩せやすい体質に
朝食に納豆を取り入れると、タンパク質の働きによって体温が上がりやすくなる。さらに、朝食時に「糖質」「脂質」「タンパク質」と一緒にとることで、効率よくエネルギー変換ができ、日中の活動をサポートする。
また、食物繊維は血糖値の上昇がゆるやかにするため、体脂肪の蓄積を防ぐ。

納豆に含まれる「ビタミンK」は脂溶性ビタミンのため、油脂と一緒にとることで吸収がよくなります。たとえば、魚脂が含まれる青魚と合わせるのがおすすめです。
また、納豆の食物繊維は「不溶性」がやや多いため、海藻などの「水溶性」の食物繊維が多いものを組み合わせることで、腸内環境の改善が期待できます。とくに朝食に食物繊維を多く含む食事をとると昼食の血糖値上昇を抑えられるので、欠食しがちな朝食をダイエット中はとくに意識してみてください。
夜:腸活&食欲増進予防
夜は副交感神経が優位になることで腸の動きが促され、腸内環境が整いやすいタイミング。そのため、夜に納豆から食物繊維をとることで、腸内環境を整えてくれる。
また、脂身たっぷりのお肉や揚げ物などを食べるよりも、夕食に消化のよい納豆を食べることで、睡眠の質の低下を防ぐ効果も。質のよい睡眠をとると、食欲増進ホルモンの分泌を抑えられ、ダイエットを効率的に進めやすくなる。

意外に思われるかもしれませんが、「ヨーグルト」と「納豆」の組み合わせもおすすめです。納豆の食物繊維がヨーグルトに含まれる善玉菌のエサとなり、増殖を助けてくれます。
納豆と相性抜群!ダイエット効果を高める食材3選
ダイエット中に納豆と組み合わせる食材は、どのようなものを選ぶのがよいのだろうか。納豆と相性のよい食材を、その効果とともに紹介。
- オクラ
- ネギ
- 卵
オクラ
オクラは納豆との相性が抜群。納豆と同様にオクラにも食物繊維が豊富に含まれている。
そのため、「食後の血糖値の急上昇を抑える」「腸内環境を整える」などのダイエット効果をより高めることができる。また、腸内環境を整うことで栄養素を効率的に吸収し、便秘の改善につながる。
ネギ
ネギに含まれる「アリシン」は血流をよくする効果があり、代謝促進効果が期待できる。また、アリシンには「ビタミンB1」の吸収を助け、糖質の代謝をサポートする働きも。
さらに、ネギにも食物繊維が含まれており、オクラと同様に「食後の血糖値の急上昇を抑える」「腸内環境を整える」などの効果が期待できる。

「納豆ご飯にネギを散らす」ことでお米の糖質を体内で利用するのをサポートしてくれます。
卵
卵には良質なタンパク質が含まれており、納豆に卵をプラスすることでより多くのタンパク質を摂取できる。タンパク質は筋肉量の維持・増加をサポートすることから、適度な摂取によって基礎代謝量も維持・向上ができ、痩せやすい身体づくりにつながる。
また、卵に含まれるビタミンB群は、納豆のビタミンB群と相乗効果を発揮し、エネルギー代謝を促進する効果も期待できる。

卵には食物繊維が含まれていないため、納豆と組み合わせることで食物繊維を補うことができます。
納豆ダイエットをする際の注意点
ダイエット効果が期待できるからといって、特定の食品を食べ過ぎるのはNG。納豆ダイエットをおこなう際にも以下のポイントに注意しよう。
- 食べ過ぎによるエネルギーオーバーに注意
- 痛風持ちの人はプリン体の過剰摂取に注意
- 大豆アレルギーに注意
- 納豆だけに頼らずバランスのよい食事を心がける
- 納豆と併用NGな薬があるので要確認
- 加熱しすぎない
食べ過ぎによるエネルギーオーバーに注意
納豆はダイエット効果が期待できるが、食べ過ぎるとエネルギーオーバーのリスクがある。納豆のエネルギー量は糸引きのもので「100gあたり約184kcal」で、「1パック(約50g)あたり約92kcal」。
また、納豆ご飯にして、普段よりもご飯が進んでしまった場合、お米からのエネルギー摂取量も多くなってしまう。納豆の適量は1日1~2パック程度。量を守り、バランスの取れた食事の一部として摂取しよう。

納豆のタレや醤油の量をカットする場合は、ネギや生姜などの薬味、鰹節、お酢などをかけると、減塩による物足りなさをカバーできます。
痛風持ちの人はプリン体の過剰摂取に注意
プリン体の過剰摂取は尿酸値の上昇につながり、痛風発作のリスクを高める可能性がある。プリン体は肉や魚に多く含まれ、大豆製品に関してはそこまで多くはないものの、「100gあたりの約56.6mg」のプリン体が含まれている。
痛風や高尿酸血症の人のプリン体の1日の目安摂取量は「400mg程度」。納豆だけで400mgに達することは考えにくいが、ほかの食品も食べることを考えると、納豆1〜2パック(50g前後)を目安に留めよう。

痛風や高尿酸血症の人は、「鶏レバー」「干物(マイワシ)」「白子」「アルコール飲料(とくにビール)」などのプリン体含有量が多いものに注意しましょう。また、水分をしっかりとることで、尿量を増やせて、尿酸値の改善につながります。水分補給の際は、ジュースやアルコールは避けましょう。
大豆アレルギーに注意
納豆は大豆から作られているため、大豆アレルギーの人は注意が必要。アレルギーの症状として、軽度の場合は口腔内の不快感や皮膚のかゆみなどが生じる可能性がある。重度の場合はアナフィラキシーショックを起こし、命を落とすこともあるため要注意。
過去に大豆製品で体調不良を経験したことがある人は、医師や専門家に相談し、 アレルギー検査を受けるのが安心。
納豆だけに頼らずバランスのよい食事を心がける
納豆はさまざまな栄養素を含んでいるが、すべての栄養素を網羅しているわけではなく、一部のビタミンやミネラルなど含有量が少ないものもある。そのため、納豆だけに頼りきったダイエットでは栄養バランスがうまく保たれない可能性がある。
納豆だけでなく、「肉」「魚」「野菜」「海藻」「果物」などのさまざまな食品から栄養素を摂取することが大切。

ダイエット中は炭水化物や脂質を避ける人もいらっしゃいますが、健康的な身体づくりのためには、糖質や脂質の摂取も大切です。とりすぎはいけませんが、適度かつ質のよい糖質や脂質の摂取も意識しましょう。
納豆と併用NGな薬があるので要確認
納豆に含まれるビタミンKは血液凝固に関与するため、抗凝固薬(ワルファリン)の効果を弱める可能性がある。
抗凝固薬(ワルファリン)などで治療中の人は、納豆ダイエットを始める前に、現在服用中の薬との相互作用を確認することが重要。主治医や薬剤師に相談しよう。納豆の摂取量や頻度については専門家にアドバイスを求めるのがおすすめ。

納豆がすべての薬と合わないわけではありません。抗生物質で治療中の人は、抗生物質の働きによって腸内環境が乱れやすくなってしまうので、食物繊維を摂取するという観点から納豆を意識して取り入れるのがおすすめです。
加熱しすぎない
納豆の栄養価を最大限に活かすには、加熱しすぎないことが大切。ナットウキナーゼは熱に弱いため、過度の加熱は栄養素を破壊してしまう可能性がある。
そのため、納豆は基本的に生で食べるのがおすすめ。温めて食べたい場合は、電子レンジで10~15秒程度で軽く温める程度に。炒め物や味噌汁に入れる場合は、火を止めてから入れるようにしよう。
納豆ダイエットに関するQ&A
納豆は冷凍しても栄養価は落ちない?
A:基本的には変わりない。

栄養価の変化はありませんが、食感や風味が若干変化してしまう可能性があります。
ダイエット中の運動は必要?
A:ダイエットを目的とするならば、運動は必要。

食事に納豆を取り入れるだけでは、痩せるのは難しいです。ダイエットを成功させるためには、運動を取り入れるようにしましょう。
下記の記事では「ダイエット中におすすめの運動・筋トレメニュー」を詳しく紹介しているので、取り組む際は参考にしてみよう。
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納豆が苦手でも効果は得られる?代替品はある?
A:同様の栄養素を含む、代替食品をとるとよい。

納豆の代替となる食品としては、栄養素別に以下の食材があげられます。
- ビタミンK:「緑黄色野菜」「海藻」など
- イソフラボン:「納豆以外の大豆製品」
- 食物繊維:「野菜」「果物」「海藻」「きのこ」「穀類」など
これらの食品をバランスよく取り入れるようにしましょう。
日系航空会社のCAとして働く中で不規則な食生活から健康と食の強い結びつきを実感、食の世界に興味を持つ。退職後、大手料理教室のパン講師の経験や自宅パン教室の開校を経て、専門学校に入学。その後、管理栄養士免許取得。現在外資系航空会社でCAをしながら、管理栄養士として健康や美容・食に関する情報発信をしている。