「私の幸せって、なんだろう?」生き方も、働き方も、AIによって社会のあり方まで変わりつつある今、そう問いかけたくなる瞬間が増えたのではないだろうか。
2年目を迎えた「Women’s Well-being Fes 2026」は、220名の女性が集まり、世界にたったひとりだけの「あなたの幸せのカタチ」を見つけに行った一日だった。
今回のテーマは「3つの幸せ」。その鍵は、3つの“つながり”にある。「私らしい幸せは、たくさんのつながりから広がっていく。」自分の心とのつながり、心でつながる人とのつながり、そして社会とのつながり。会場は終始、あたたかくて、熱くて、書ききれないくらいの“体温”で満ちていた。この日の空気ごと、お届けしたい。


安藤 美玖(あんどう・みく)さん
株式会社ICORE 創業者・代表取締役

LILY(リリー)さん
株式会社Lilynage 代表取締役/セルフケアプロデューサー®
心と体の両面に働きかける独自のセルフケアメソッド「リリナージュ®」を開発し、国内外で普及活動を行う。現在は現代女性のウェルビーイング研究にも取り組む。

前野 隆司(まえの・たかし)さん
慶応義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授、武蔵野大学ウェルビーイング学部長、ウェルビーイング学会代表理事
幸福学研究の第一人者。「幸せの4つの因子」など、幸せのメカニズムを科学的に研究する。

前野 マドカ(まえの・まどか)さん
EEVOL株式会社代表取締役CEO/武蔵野大学ウェルビーイング学部客員教授、元慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科附属システムデザイン・マネジメント研究所研究員
幸福学の知見を生かし、講演や企業研修を通して幸せな人間関係・組織づくりを支援する。

川原 卓巳(かわはら・たくみ)さん
KonMari Media Inc. CEO/プロデューサー
近藤麻理恵さんの世界展開を手がけ、著書の世界42カ国・累計1,400万部のベストセラー化などを実現。日本発コンテンツの海外展開にも取り組む。

自分とつながる——心の声を大切に生きる
ーー冒頭では、隣同士で名前と「今の気持ち」をシェアするチェックインから始まった。Slidoに流れる「緊張しています」「わくわくしています」というリアルな声が画面に大きく浮かぶたび、会場がくすっと笑って、じんわり温かくなっていく。
チェックインの途中、私もこう自己紹介した。Wellulu編集者として、またメンタルトレーナーとして、女性のみなさんがどんなことに悩み、どんなことで救われるのかを知りに来たと。そのはずだったのに、会場でさまざまな話を聞いているうちに、いつの間にか私自身が一人の女性として、この場にのめり込んでいた。

ーー最初のセッションは「私とつながる」。「心と体を大切にする時間が取れているか」という問いに手を挙げた人はごく少数で、誰かのために頑張りすぎて自分を後回しにしている女性の多さが印象的だった。セッションではまず、呼吸から始まった。
LILY:上手に呼吸しようと思わないでください。ただ、自分の体の中にしっかり酸素を入れていくことを意識していきましょう。
ーー続いて教わったのが、肌に触れることの意味だ。
LILY:島皮質は、心と体をつないでいる脳の部分です。感情や感覚、決断を司っていて、これを活性化させる一番強力な方法が、肌に触れることなんです。

ーー首の後ろに手を回し、肩、二の腕へと手のひらを滑らせていくワーク。生まれた時からずっと一緒にいてくれた体に「今日までありがとう」と話しかける。目を閉じた会場が、ふっと静かになった。隣の席の方の肩が小さく震えていて、私もどんな時も一緒に闘ってきてくれた身体に感謝がこみ上げてきた。会場からは「自分に会えた気分になりました」「過去の頑張った自分に感謝できた」という声が。私も知らず知らずウルウルしてしまった。
安藤美玖:こういう時間って1、2分で取れるのに、日常で取れてないなって。1分、2分だけでも違うんだなと感じました。

あなたとつながる——幸福学から学ぶ、心でつながる人間関係
ーー第2パートには、幸福学の第一人者・前野隆司先生と奥様のマドカさんが登壇。前半は前野先生が「幸せと人間関係」の科学を解説した。
ーー先生の研究によれば、幸せは「やってみよう」「なんとかなる」「ありのままに」「ありがとう」という4つの因子で構成されていて、その土台になっているのが人との関係の質なのだそう。それだけに、人間関係の悩みは幸せに直結する。では、なぜ私たちは人間関係に悩んでしまうのか。先生は、脳の進化の話から切り出した。
前野隆司:人間は、生き延びるようにできています。人間関係が悪くなると、命の危険なんてない現代なのに、命の危険のある原始時代のように防御するようにできてるんですよ。脳は進化していないんで、原始時代と同じなんです。
ーーたとえば、友達からの返事が遅いだけで「もしかして、嫌われた?」と過剰に心配してしまうこと。理屈では「単に忙しいだけかも」と分かっていても、心は大げさな警戒態勢に入ってしまう。先生はこれを、こう例えた。
前野隆司:ネズミが家に入ってきたら、機関銃で撃ってしまうようなもの。
ーー小さな脅威に、実態に見合わないほどの大砲で応えてしまう。それが現代人の脳の使い方だとすれば、直す方法はただひとつ。自分の「受け取り方」を、意識的に練習することだという。
前野隆司:現代社会に合わせて、“大したことないネズミだよ”“あの人、忙しいんだね”って、受け取り方を練習すればいいんです。練習すれば、実際に思えるようになりますから。それが僕らがやっている幸せの研究ですよね。
ーー「嫌われた?」と自動的に反応してしまう脳に対して、「忙しいんだね」と言い換え直す練習を重ねる。

ーーその練習のひとつが「いいところを見る習慣」。マドカさんは、初対面の人にまず「この方の素敵なところはどこかな」と探すのだという。前野先生が続ける。
前野隆司:僕は後天的に練習して、マドカに近づきました。イラッとしかけた自分に“いいとこ、いいとこ”って思うと、大幅にできるようになったんですよ。
ーー会場にいた私たちも、日々の人間関係にそのまま使える技術として、ぜったい持ち帰りたい話だった。

ーーそして会場が最も熱を上げたのが、夫婦円満の秘訣「Weメッセージ」だ。
前野マドカ:「あなたはゴミ捨ててない」だと怒りになりますけど、「私たち、ゴミ捨てできてないね」って言ったら腹立たないじゃないですか。
前野隆司:YouメッセージじゃなくてIメッセージにしましょう、と言われますけど、僕たちが発見したのは「Weメッセージ」。誰も責めていない感じになって、ちょっと笑いになるんです。職場でも“俺たちできてなくて悔しいね”と言えばいい。戦争だって地球みんなWeにすれば平和じゃないですか。
ーー発言が終わるや否や、220人のメモが一斉に動いた。私も「メモメモ!」。帰りの電車の中ではすでに家族とのシチュエーションを考えている自分がいた。

社会とつながる——「死なへんって!やってみな!」
ーー最後のパートは、こんまりさんの世界展開を手掛けた川原さん。『人生がときめく片付けの魔法』を世界42カ国・累計1,400万部のベストセラーに、Netflix番組ではエミー賞まで受賞している。まず、仕事で大切にしていることを問うと。
川原:もっと分かりにくく言うと、僕は鳥肌が立ってゾワゾワしたいだけなんですよ。妻がお客様に寄り添い、ともに涙を流しながら片付けを進める。部屋の空気がふわっと変わった。目の前の人が確実に人生の何かを変えた瞬間に立ち会ったら、鳥肌が立った。それをもっと味わいたいのが僕の仕事の原点です。
ーー31歳のとき、妊娠中の奥様と生まれたばかりの子を連れ、英語も話せないままアメリカへ渡ったお話は圧巻だった。
川原:じつは最初の1年半は逃げ回っていたんです。でも、1か月の出張で0歳の娘に顔を忘れられて泣かれたとき、こんな働き方しちゃいけないなと。妻と話して、チャンスを受け取らない選択をしたら絶対後悔するよね、と。やってみようって決めたんです。

川原:挑戦してみると意外と人って優しい。助けてくれる。“人に頼れない”っていうのは、自分で何とかできるレベルの挑戦しかしていないことの裏返しでもあるんですよ。不安や大変なことは大抵起きる。起きるけど大丈夫。だって生きてるし、そのうち慣れる。
川原:社会進出する女性はまだ孤独でマイノリティ。だからこそ、同じことを目指す人とのつながりを増やすこと。一人だと怖くても、多ければ勇気が出る。今日この会場に来ている人とつながって、応援し合いながらやっていくのが一番いいと思います。
ーー中でも胸に刺さったのが「死なへんって!やってみな!」の一言だ。うじうじ悩んでいる人に、川原さんはただそれだけを繰り返し伝えてきたという。自分らしく生きるって、きっとこういう一歩の積み重ねなんだろうなぁ。隣の席の方と名刺交換をして、写真を撮って、「証拠を残して」という川原さんの笑いに、220人が拍手で応えた。

現代女性の幸せ「5因子」——幸せの中心にあったのは「しなやかな自分軸」
ーーイベント後半には、もう一つの注目プログラムが待っていた。
主催者の安藤美玖さんとLILYさんが、約1年かけて取り組んできた「現代女性のウェルビーイング研究」の成果発表だ。
女性の社会進出が進み、生き方の選択肢が広がる一方、結婚、出産、育児、介護、キャリア形成など、ライフステージによって環境は大きく変化する。
“そんな現代女性にとって、本当の幸せとは何なのだろうか”
株式会社ICOREと株式会社Lilynageは、20〜50代の女性を対象に調査を実施。264名への予備調査から83項目を抽出し、494名への本調査、345名への追跡調査を経て、幸せを構成する「5つの因子」を明らかにした。

現代女性の幸せを構成する5つの因子
① しなやかな自分軸
自分の価値観を大切に、自ら選択・決断し、環境の変化に応じて柔軟に考え方や行動を変えられること。
② 自分も周りも満たせる仕事
強みを生かし、やりがいや誰かの役に立つ喜びを感じながら働けること。
③ 心とからだの軽やかさ
心身の変化に気づき、自分自身を大切にケアできていること。
④ 自然体でいられる私
人の目や評価に縛られず、無理をせず自分らしくいられること。
⑤ 大切なものを大切にするバランス
仕事、家族、自分の時間など、大切なものを自分らしく大切にできること。

幸せの鍵は「強さ」ではなく「しなやかさ」
ーー特に興味深かったのが、他の4因子すべてと強い相関を示した「しなやかな自分軸」だ。
安藤美玖:一度決めたことをやり抜く強さではなく、ライフステージの変化に応じて柔軟に決め直して行動できる“しなやかさ”が、他の因子との相関も一番高かったんです。
ーー自分軸とは、決めた道を貫くことだけではない。仕事に夢中な時期もあれば、家族を優先したい時期もある。
一度決めたことを変えるのは、必ずしも諦めではない。今の自分にとって大切なものを、自分の意思で選び直すこともできる。
さらに、人生の満足感との相関係数は、お金に関する項目が0.35〜0.38だったのに対し、5因子は0.44〜0.62と上回った。
経済的な安心も大切だが、自分らしく人生を選択できることが、幸せと強く結びついていたのだ。
LILY:体調がいいだけじゃなくて、自分自身が自分を大切に扱えているか。心も体もケアしている実感が、幸せに関係していることがわかりました。
LILY:全部取っている自分は欲張りなんじゃないかと思う時があったんですけど、いや、そうじゃない。むしろそれが必要なのが私たち女性だということが、今回わかりました。
ーー会場からは「わかる!」という共感の声が一斉に上がった。
仕事も家族も、自分の時間も大切にしたい。そんな願いを「欲張りかもしれない」と感じた女性も少なくないだろう。
けれど、幸せのカタチは一つではない。ライフステージに応じて、大切にするものが変わってもいい。
また、5因子のうち3つには他者との関わりが含まれ、人とのつながりが幸せを育むことも示唆された。今回のフェスのテーマ「自分・あなた・社会とのつながり」にもしっかり通じている。
会場では一部の公開だったが、今回の研究成果は10月14日、株式会社ICOREからプレスリリースとして発表された。今後はウェルビーイングを測る指標の開発なども目指すという。
人生の選択肢が増えた今だからこそ、「何を選ぶか」以上に、「自分の意思で選べているか」
そのためには、まず自分の心と体の声に耳を傾け、今の自分が何を感じ、何を求めているのかを知ることが大切なのだと思う。
けれど、日々の忙しさの中で、私たちはどれほど自分自身と対話できているだろうか。
自分を知ること。そして、変化する自分を受け入れ、その時々の幸せを自ら選び取っていくこと。
今回の研究は、幸せの答えを外に求めるのではなく、自分自身に問いかけることの大切さを、改めて気づかせてくれた。
出典:現代女性のウェルビーイング調査2026(ICORE×Lilynage調べ)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000022.000101969.html

五感で楽しむ、ウェルビーイング
会場には、心と体を整えるウェルビーイングアイテムがずらり!
美玖さんの「Me手帳」は、私も来年用にグリーンを購入! LILYさんのボディマッサージクリーム「RU:KRMグレイス」や、日々の幸せを記録するアプリ「シアフル」、コラーゲンプロテイン「Welme(ウェルミー)」の試飲も楽しめた。
さらに、座るだけで骨盤底筋を鍛えられる「BODY DOCTOR femfit(フェムフィット)」は私も体験! 見て、触れて、味わって。楽しみながら、自分の心と体に目を向けるきっかけが、会場のあちこちに溢れていた。




クロージング——幸せは三つ先の人まで広がる
ーー最後は、参加者が「私の幸せ」をシェアし合う時間で締めくくられた。「怖がらず挑戦することと、周りを信じること」「仕事は内容より、誰とやるか」という声が続々と。美玖さんは1年間の走り抜けをこう振り返る。
安藤美玖:何かを成し得たかよりも、どういう思い出を誰と作れたかの方が今はめっちゃ幸せ。思い出が一番ハッピーだなというのが、走り抜けた感想です。
LILY:自分が幸せになると、三つ先の人まで幸せが広がる、というのがウェルビーイングの研究で出ています。自分がまず幸せに生きることが、周りの幸せ、そして世界の幸せにつながっていくんです。
ーーそして、会場の一角に設置されていた「あなたの幸せをシェアしよう!」のボード。
来場した一人ひとりがカードに自分の幸せを書いて貼っていく。去年のイベントで書かれたカードもそのまま展示されていて、「つながり」「自分を大切にする」「つながりながら挑戦していく」。一年前の誰かの言葉が、今日の熱気の中で静かに息づいていた。


ーー私も書いて、そっと貼った。来年、この会場で自分が描いた言葉を目にして、その時の自分がどう思うのか。それを思うだけで、今から楽しみで仕方ない。
ーー終わったときの皆さんの表情が、入場時よりずっと柔らかかったのを、よく覚えている。

一日の頷きやシェアの中には、「同じように奮闘する仲間がいる」という心強さがあふれていた。朝、「今日の自分の心と体の調子は、何パーセント?」の問いに手を挙げたあの皆さんの顔が、帰りにはまた違って見えた。自ら行動を起こして、このイベントに参加した人々のウェルビーイング度は、高いのだと確信せずにはいられない。幸せが頭の中の概念じゃなくて、体温を持ったものだということも。

貴重な機会を作ってくださった安藤美玖さん、LILYさん、そして関わった皆さまに、心から感謝を伝えたい。この日出会った220人の「私らしい幸せ」が、三つ先の誰かの幸せまで広がっていきますように。

Text:酒向杏奈(Wellulu)
女性向けキャリアスクールを創業し、延べ3,000名以上の女性を支援。現在は現代女性のウェルビーイング研究にも取り組む。