
「地中海式ダイエット」とは、ギリシャや南イタリアなど、地中海沿岸の国の食習慣を取り入れるダイエット方法。体重管理ができるだけでなく疾病リスクも下げるなど、健康法として注目されている。この記事では、地中海式ダイエットの「基本知識・効果」「おすすめ食材・簡単メニュー」「やり方・注意点」などを解説。
この記事の監修者

古谷 彰子さん
博士(理学) 管理栄養士
地中海式ダイエットとは?
まずは、地中海式ダイエットの基本知識として、地中海地方の食習慣について詳しく見ていこう。地中海式ダイエットは、特定の食品や栄養素を避けるような極端な食事制限はしないため、栄養バランスのよい食事をとりながら健康的に体重管理をおこなえる。
- 地中海地方の伝統的な食事「地中海食」
- 地中海食を取り入れるメリット
地中海地方の伝統的な食事「地中海食」
地中海食は、地中海沿岸地域の伝統的な食生活をモデルとした食事方法。特定の食品を極端に制限せず、オリーブオイルを中心とした植物性の「脂質」、豊富な「野菜」「果物」、「魚介類」「全粒穀物」などをバランスよくとれるのが特徴。
また、赤身肉の摂取は控えめにし、代わりに「魚」「鶏肉」「豆類」などから良質なタンパク質をとるのも地中海食のポイント。地中海食は、厳格な制限がなく実践しやすいのが魅力。オリーブオイルなど、比較的シンプルで取り入れやすい内容が多い。

栄養面でのバランスがよいのも地中海食の強みです。多様な食材を取り入れることで、ダイエット時の栄養不足のリスクが低く、極端な食事制限もないので健康的にダイエットできます。
地中海食を取り入れるメリット
地中海食には健康増進効果があるのも魅力のひとつ。「魚介類」「オリーブオイル」などの良質な脂質を積極的に摂取でき、心血管疾患や2型糖尿病、高血圧のリスク低減効果も確認されている。
厳格な量的制限がないため、体重減少や体型変化は緩やかになる可能性があるが、長期間続けやすくリバウンドのリスクも低い。

時間栄養学の観点から、朝食に適している食材が地中海式ダイエットには多いといえます。キノコや野菜などの「食物繊維」、魚などの「タンパク質」、ヨーグルトなどの「発酵食品」を含む朝食は栄養バランスがよく、体内時計を整えるのにもおすすめです。必ずしも3食全てを地中海式にする必要はなく、朝食で地中海食を意識するだけでも効果が見込める可能性があります。
地中海式ダイエットの効果
ここでは、地中海式ダイエットで期待できるおもな効果をご紹介。ダイエット効果はもちろんのこと、腸内環境音改善や疾病リスクの低下などの嬉しい健康効果もある。
- 血糖値の急上昇を抑え、脂肪の蓄積を防ぐ
- 高タンパク・低カロリーで痩せやすい身体をつくる
- 腸内環境の改善による全身の健康向上
- 心臓病や糖尿病などの病気のリスク低減
血糖値の急上昇を抑え、脂肪の蓄積を防ぐ
地中海式ダイエットは、血糖値の急上昇を抑えることで、脂肪の蓄積を防ぐ効果がある。
「全粒穀物」「豆類」「野菜」など、食物繊維が豊富な食材を多く摂取することで糖質の吸収が緩やかになり、食後の血糖値の急激な上昇を防ぐ効果が期待できる。とくに夕食時は血糖値が上昇しやすい傾向にあるため、地中海式の食事は夕食から取り入れよう。
慣れないうちは、3食のうち1食だけ地中海食を取り入れるマイルドな地中海式ダイエットから始めてみるものおすすめ。

体内時計をリセットしやすい朝に取り入れやすい食材が多いですが、雑穀などは血糖値が上がりやすい夜の時間帯に適した食材。全てを地中海式ダイエットにするのではなく、夜ご飯の主食は雑穀という緩やかな取り入れ方でも血糖値の安定化が期待できます。血糖値の改善は食事内容の変更直後から徐々に現れ、上昇幅と下降幅が変化します。自身の生活リズムや食生活に合わせて無理のない範囲で挑戦してみましょう。
高タンパク・低カロリーで痩せやすい身体をつくる
「魚介類」「鶏肉」「豆類」などの良質なタンパク質源を積極的にとり、「高タンパク・低カロリー」になりやすいのも地中海式の食事の特徴。
タンパク質は、体内で消化吸収される際に多くのエネルギーを必要とするため、食事誘発性熱産生(TEF)が高く、代謝が活性化されてカロリー消費が増加する。また、タンパク質は筋肉の主成分であり、摂取することで筋肉量の維持・増加に役立つ。筋肉量が増えると基礎代謝が上がって、安静時のカロリー消費量が増加することからダイエットに有効。
「オリーブオイル」「ナッツ類」の良質な脂質は、栄養バランスがよく肌のつやが改善されることも。ただし、脂質摂取量が多めになり、総摂取エネルギー量が上がってしまうことには注意しよう。
個人差が大きいが、食習慣の改善を継続することで徐々に「肌」「髪」「体型」などに変化を感じられる。

地中海式ダイエットは、いつもの食事に少しずつ地中海食の要素を足していくことがポイントです。例えば、サラダオイルを「オリーブオイル」に置き換えるなど、小さな置き換えから始めましょう。日本食と類似点が多いため、日本人にとってなじみやすい食事スタイルと言えます。食事のバランスが地中海食の要素を満たしていれば和食でもOKです。納豆にオリーブオイルも合いますよ!
腸内環境の改善による全身の健康向上
地中海食には、腸内環境の改善に効果的な食材が多い。とくに雑穀類の豊富な食物繊維は腸内細菌の餌となり、健康的な腸内環境をつくる効果が期待できる。
また、食物繊維はヨーグルトなどの乳製品に含まれる乳酸菌などのエサになるため、発酵食品も一緒にとることで相乗効果が期待できる。腸内環境が整うと、「栄養素の吸収の促進」や「免疫系の強化」にもつながる。副菜として地中海式の食材を追加したり、既存の食事に地中海式の要素を加えるのもおすすめ。

腸内環境の改善は比較的短期間で実感できる可能性が高いです。1〜2日で変化を感じる場合もあり、一般的には1週間程度で排便時に顕著な変化を実感できます。
心臓病や糖尿病などの病気のリスク低減
オリーブオイルや魚に含まれる不飽和脂肪酸は、悪玉コレステロールを減らし、善玉コレステロールを増やす効果がある。
地中海食では「オリーブオイル」「魚介類」を積極的にとるため、動脈硬化のリスクが低下し心臓病予防につながるというメリットも。また、「野菜」「果物」「全粒穀物」に豊富に含まれる食物繊維は、血糖値の急激な上昇を抑えることから、2型糖尿病のリスクを低減する効果が期待できる。
ただし、地中海式ダイエットの疾病予防効果は、食事内容や調理方法によっても異なる。「オリーブオイル」「雑穀」「チーズ」など、身体によい食材を使用していても、濃い味付けや塩分の過剰摂取は心臓や腎臓などに負担をかけることがある。

地中海式ダイエットに関する多くの研究では、味付けについての言及が少ない傾向にありますが、味付けは健康にも影響を与える重要な要素です。地中海式ダイエットの効果は、単に食材を選ぶだけでは得られません。調理方法や味付けにも十分に注意しましょう。
地中海式ダイエットにおすすめの食材9選
地中海式ダイエットを効果的に実践するためには、適切な食材選びが重要。地中海式ダイエットの基本となる食材は以下なので、実践の際の参考にしよう。
- オリーブオイル
- 魚介類
- 野菜
- 果物
- 全粒穀物
- 豆類
- ナッツ類
- ヨーグルト
- ハーブ・スパイス
オリーブオイル
オリーブオイルは、地中海式ダイエットの中心となる食材。とくに「エキストラバージンオリーブオイル」のような質のよいオイルが推奨されている。
オリーブオイルは、単価不飽和脂肪酸(オレイン酸)を豊富に含み、抗炎症作用や抗酸化作用を持つ。また、オリーブオイルに含まれるポリフェノールは、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)の酸化を防ぎ、心血管系疾患のリスクを低減する効果も。ビタミンEも豊富に含まれており、抗酸化作用により細胞の老化を防ぐ効果も期待できる。
分量は「1日に大さじ2〜3杯程度」のオリーブオイルを摂取することが理想的。サラダのドレッシングや調理油として使用するほか、パンにつけて食べるのもよい。オリーブオイルには、満腹感を持続させる効果もあるため過食を防ぐこともできる。
魚介類
青魚には、DHA(ドコサヘキサエン酸)とEPA(エイコサペンタエン酸)が豊富に含まれている。これらのオメガ3脂肪酸は、血液をサラサラにする効果があり心疾患のリスクの軽減が期待できる。
魚介類の「摂取の目安は週2〜3回」。とくに余分な脂肪を加えずに魚本来の栄養価を保つことができる「グリル」「蒸し料理」がおすすめ。また、オリーブオイルとハーブを使ったマリネもおすすめ。

魚は単に白身か赤身かではなく、「DHA」「EPA」などの良質な脂肪酸の含有量に注目することが大切です。これらのオメガ3脂肪酸は、心疾患のリスク軽減に寄与し、体内のリセット効果があるとされています。とくに朝食での摂取が推奨され、一日の代謝や体調を整える効果が期待できます。バランスの取れた食事をするためにも、様々な種類の魚を取り入れましょう。魚が苦手な人は缶詰などを活用するのもおすすめです。
野菜
野菜は、「ビタミン」「ミネラル」「食物繊維」「抗酸化物質」を豊富に含んでいるほか、一般的に低カロリーで栄養価が高い。満腹感を得ながら過剰なカロリー摂取を避けることができるので、ダイエットで積極的に摂取したい。
地中海式ダイエットでは、「毎日400〜560g程度」の野菜をとるのが目安。以下の緑黄色野菜と淡色野菜をバランスよく取り入れよう。
【緑黄色野菜】
- トマト
- ほうれん草
- ブロッコリー
- ナス
- ピーマン など
【淡色野菜】
- 玉ねぎ
- キャベツ
- きのこ など
また、加熱するとかさが少なくなり、より多くの食物繊維をとりやすくなる。レンジなどで蒸したり、スープに入れるなど工夫して食事に取り入れよう。

玉ねぎは血液をサラサラに、キャベツときのこは腸内環境を改善するのに効果的です。緑黄色野菜と淡色野菜を組み合わせることで、より多くの栄養素を摂取できます。また、野菜ではありませんが、海藻類も食物繊維を多く含む食べ物。ミネラルが豊富なので栄養バランスを整えるのにもおすすめです。
果物
地中海式ダイエットでは、「1日にりんご1個分程度」の果物をとることが推奨されている。以下の果物は「ビタミン」「ミネラル」「食物繊維」「抗酸化物質」を豊富に含み、とくに地中海食で食べられている。
- イチジク
- ブドウ
- オレンジ
- リンゴ
- ベリー類 など
果物は自然な甘みを持ちながらも、「ビタミンC」や「ポリフェノール」などの抗酸化物質を豊富に含んでおり、身体の酸化ストレスを軽減する効果も。
おもに生で食べるのが一般的だが、ヨーグルトに加えたり、サラダのトッピングとして使用するのもおすすめ。また、デザートとして果物を選ぶことで、高カロリーのスイーツを避けつつ甘味の欲求を満たすことができる。
ただし、果物にも糖分が含まれているため、過剰摂取には注意しよう。とくに、糖尿病や血糖値が気になる人は、果物の摂取量や種類に気をつけよう。
全粒穀物
地中海式ダイエットでは、小麦粉や白米など精製された穀物ではなく、全粒穀物を主食にする。全粒穀物食品として代表的なものは以下の通り。
- 全粒粉パン
- 全粒粉パスタ
- 玄米
- オートミール
- キノア など
全粒穀物は「食物繊維」「ビタミン」「ミネラル」を豊富に含んでおり、精製された穀物に比べて血糖値の急激な上昇を抑え腸内環境の改善にも役立つ。
さらに全粒粉のパンやパスタは、通常の小麦製品よりも消化に時間がかかるため、エネルギーがゆっくりと放出される。これにより、長時間にわたって安定したエネルギー供給が可能になり、空腹感を抑える効果も期待できる。
ただし、カロリーは通常の穀物と同程度なので量は適度に抑えるように。1日の摂取量は「全体の食事量の約1/4程度」を目安にしよう。

玄米や全粒粉の食品は血糖値が上がりにくい分、満腹感を感じにくい場合があります。玄米の場合は白米に混ぜるなど、少しずつ慣らしていきましょう。「全粒粉パン」は100%全粒粉でできているものはまだ販売されていません。「全粒粉入り」と記載のあるものでも低GL食品の部類に入りますので、分量を守りつつ夕飯に取り入れていきましょう。
豆類
以下の豆類は「植物性タンパク質」「食物繊維」「ビタミン」「ミネラル」を豊富に含み、低脂肪で高タンパクなのが魅力。
- レンズ豆
- ひよこ豆
- 白インゲン豆
- そら豆 など
食物繊維も豊富なため満腹感を得やすく、血糖値の急激な上昇も抑えられる。過食を防ぐことにもつながるので体重管理や食事量を調整したい人におすすめ。

食習慣を大きく変えることなく豆類の摂取量を増やすには、「煮豆として副菜で摂取」「スープの具材として使用」「ご飯に混ぜ込む」のが効果的です。日本の食文化にもなじみやすく継続的しやすいので、ぜひ試してみてください。食感が苦手な人はブレンダーなどで潰してしまうのも手です。
ナッツ類
以下のナッツ類は、「良質な脂肪」「タンパク質」「ビタミンE」「マグネシウム」などの栄養素を豊富に含んでいる。
- アーモンド
- クルミ
- ヘーゼルナッツ
- ピスタチオ など
ナッツ類に含まれる不飽和脂肪酸は、心臓病のリスクを低減し血中コレステロール値を改善する効果が期待できる。また、食物繊維も豊富に含まれており腸内環境の改善にも役立つ。
ナッツ類は、そのままスナックとして食べるほか、サラダのトッピングや料理の付け合わせとしても活用できる。ただし、ナッツ類は高カロリーなため摂取量には注意が必要。1日摂取量は「小さな一握り(約30g)程度」を目安にしよう。
ヨーグルト
ヨーグルトは、地中海式ダイエットで取り入れたい発酵食品の1つ。
ヨーグルトは「良質なタンパク質」「カルシウム」「ビタミンB群」を含み、さらに腸内環境を整える乳酸菌などのプロバイオティクスも豊富。腸内環境の改善、免疫機能の向上、骨の健康維持など様々な健康効果が期待できる。
ヨーグルトはそのまま食べるほか、フルーツやナッツを加えて朝食や食後のデザートにもぴったり。タンパク質が豊富でクリーミーな食感のギリシャヨーグルトもおすすめ。
ハーブ・スパイス
地中海食では、以下のハーブ・スパイスがおもに使われる。
【ハーブ】
- オレガノ
- バジル
- タイム
- ローズマリー
- セージ など
【スパイス】
- ニンニク
- 黒コショウ
- パプリカ など
ハーブやスパイスは、抗酸化物質や抗炎症成分を豊富に含み、さまざまな健康効果が期待できる。たとえば、ニンニクには「血圧低下作用」、オレガノには「抗菌作用」、ローズマリーには「認知機能向上効果」があるとされている。
また、上手に使うことで塩分を控えめにしても十分な味わいを楽しめるのも魅力のひとつ。新鮮なものを使用するのが理想的だが、乾燥ハーブも十分に効果がある。なお、ハーブソルトなら魚や肉の下味付け、サラダのドレッシング、スープやソースの風味づけなど、様々な料理に応用できるので料理が苦手な人でも取り入れやすい。
地中海式ダイエットにおすすめの簡単メニュー3選
ここではフライパンを使わずに料理できるお手軽な地中海料理を3つご紹介。どれもハーブソルトやオリーブオイルで味付けするだけでおいしく食べられるので、地中海料理になじみがない人や料理が苦手な人にもおすすめ。
- サーモンと玉ねぎのカルパッチョ
- チキンと野菜のオーブングリル
- レンジでできるサバのハーブ蒸し
サーモンと玉ねぎのカルパッチョ
切って和えるだけで作れる簡単なおかず。玉ねぎは「オリーブオイル」「レモン汁」「塩」などを混ぜ合わせた調味料と先に和えておくと食べるときに味がなじみやすい。好みでピンクペッパーやディルを添えると華やかになる。
チキンと野菜のオーブングリル
見た目が豪華でおもてなしにも活躍する一品。チキンにはハーブソルトをすりこんでおく。パプリカやズッキーニなど好みの野菜やいも類と合わせ、オリーブオイルをかけてオーブンで焼きあげる。一品で肉と野菜をバランスよく取り入れたいときにもおすすめ。
より脂質を控えたい場合は鶏もも肉の皮を削いだり、鶏むね肉に変えるとよい。
レンジでできるサバのハーブ蒸し
火を使わず手軽に作りたいときは電子レンジを使うのも一つの手。トマトやキャベツなど好みの野菜を合わせる。ハーブとにんにくの香りでサバの臭みも気にならずおいしく食べられる。レンジで加熱すれば調理に必要な油も少なく済むのでダイエット中に最適。
地中海式ダイエットの基本的なやり方
地中海式ダイエットのやり方・ポイントは以下の通り。厳しい食事制限はないが、どんなダイエット方法でもカロリーの過剰摂取は厳禁。以下に加え、自分の基礎代謝に合わせた食事量を心がけよう。
- 毎日オリーブオイルなどの良質な脂質を摂取する
- 肉よりも魚介類をメインとした食事をする
- 野菜と果物を積極的にとる
- 主食は全粒穀物を中心にする
- 発酵食品を豊富に取り入れる
毎日オリーブオイルなどの良質な脂質を摂取する
良質な脂質、とくにオリーブオイルを「1日に大さじ2〜3杯程度」を目安に食事に取り入れよう。
また、「アマニ油」と「えごま油」は、オリーブオイルと同じく体内でDHAとEPAに変換されやすい特徴がある。オリーブオイルの味や風味が苦手な人は代替品として使うのもおすすめ。

アマニ油などに含まれる「α-リノレン酸」は熱に弱く酸化しやすいため、生で摂取するようにしましょう。ドレッシングの代わりとして、塩と一緒にサラダにかけるなど、ちょっとした工夫で最大限の効果が得られます。
肉よりも魚介類をメインとした食事をする
魚を食べる頻度は「週に2〜3回」が目安。魚介類は、赤身肉に比べて低カロリーでありながら、高タンパクで満腹感が得られやすい。
「サバ」「イワシ」「サーモン」などの青魚は、EPA・DHAが豊富で、心臓病のリスクを低減する効果も期待できる。ただし、赤身の魚にもDHA・EPAは含まれている。鉄分も豊富に含まれているなど、青魚とは違ったメリットがあるので、自分の好きな魚を食べることから始めてみよう。

魚が苦手な人は、変換効率は少量にはなりますが体内でDHA・EPAに変換される「えごま油」や「アマニ油」を活用するのもよいでしょう。
野菜と果物を積極的にとる
色とりどりの野菜や果物を取り入れることで、さまざまな栄養素を効果的に摂取できる。とくに、地中海料理に使われる「トマト」「ピーマン」などの赤や緑の野菜は「ビタミンC」が豊富で、ブロッコリーやほうれん草などの葉物野菜は「葉酸」を多く含んでいる。
果物は朝食や昼食に食べることで糖質を消費しやすくしビタミン摂取にもなる。「1日に約400〜560g」の野菜と果物をとるようにしよう。

果物は、種類によっては糖分を多く含んでいます。夜のデザートとして果物を食べてしまうと体内に糖質が蓄積されてしまうので、控えるとダイエットの効率がアップします。
主食は全粒穀物を中心にする
全粒穀物は「食物繊維」「ビタミン」「ミネラル」が豊富で、血糖値の急激な上昇を抑えられるのが魅力。ただし、地中海式ダイエットに取り組むからといって、急に全ての主食を全粒粉に切り替える必要はない。
人によっては、全粒粉の味や満足感のなさに違和感を感じる場合もあるため、徐々に全粒粉製品を増やしていこう。

地中海式ダイエットの本質は、主食を含めたバランスの取れた食事にあります。主食をしっかり食べるよう意識し、できる範囲で全粒粉製品を取り入れましょう。ダイエットは無理のない範囲で、長期的に継続できる食習慣をつくることが大切です。
発酵食品を豊富に取り入れる
ヨーグルトやチーズなどの発酵食品を積極的に取り入れるのが、地中海式ダイエットの特徴。ヨーグルトやチーズには、腸内環境を整える乳酸菌などを豊富に含み、「栄養素の吸収効率の向上」や「免疫機能の改善」をサポートする。
ただし、ヨーグルトやチーズなどの発酵食品が苦手な場合は、無理して摂取する必要はない。発酵食品の範囲は広く、「キムチ」「醤油」「みりん」「味噌」なども発酵食品なので、好みに合わせて取り入れよう。

カルシウム摂取が目的であれば、チーズやヨーグルトでなくても、牛乳や乳酸菌飲料など、ほかの乳製品で代替できます。また、加熱調理も食べやすくなる方法の1つですが、75度の温度であれば15分でほぼ死滅してしまう菌もあるので煮詰めすぎないなど工夫が必要です。
例えば、納豆菌は納豆汁に入れても(90度前後で数分)ほぼ死滅しませんが、長時間の煮込みやフライ、炒め物などは100度以上になり死滅してしまいます。調理方法には気をつけながら、個人の好みや体質に合わせて好きな発酵食品を取り入れましょう。
地中海式ダイエットの効果を高めるコツ
「運動を取り入れる」「食事の量・タイミングを調整」するなど、ダイエット効果をさらに高めるコツがある。地中海式の食事に加えて、以下の3つのポイントを意識してみよう。
- 水分補給をしっかりとおこなう
- 適度な運動を組み合わせる
- 夕食は控えめにする
水分補給をしっかりとおこなう
こまめな水分補給は代謝を促進し、体内の老廃物の排出を助けてくれる。また、食事の前に水を飲むことで自然と食事量を抑えることができ、カロリー摂取の制限にもつながる。
水だけでなく「ハーブティー」や「レモン水」などもおすすめ。抗酸化物質を含んでおり、身体のデトックスを助ける効果が期待できる。ただし、糖分の多い飲み物は避け、過剰にカロリーを摂取してしまわないよう注意しよう。
また、十分な水分摂取は、肌の乾燥対策や便秘解消にも効果的。1日に2L(コップ6〜8杯)の水を飲むように心がけよう。
適度な運動を組み合わせる
筋トレは「基礎代謝の向上」、有酸素運動は「脂肪燃焼促進」などの効果があり、心臓血管系の健康維持効果も期待できる。
地中海式ダイエットは栄養バランスに優れたダイエットであるため、運動中のエネルギー供給が効率的になり脂肪燃焼や代謝向上がしやすい。運動も食事と同様に、継続することが何より大切。日常生活の中で「積極的に階段を使うようにする」など、できるところから始めてみよう。
夕食は控えめにする
地中海式ダイエットでは、1日の食事バランスも重要なポイント。とくに夕食は控えめにし、朝食や昼食をメインの食事とすることが推奨される。朝食を食べることで、朝の代謝を緩やかに上げ、1日のエネルギー消費を促進し、昼食時の過食も防ぐことができる。
時間栄養学に即した考え方としても夜遅い時間の食事は、体内時計の乱れを引き起こし代謝が低下しやすくなる。そのため、夕食は就寝の3時間前までには済ませるのが理想的。タンパク質と野菜を中心とした軽めの食事にし、炭水化物の摂取を控えめにしよう。
夜間の消化器系への負担が減ることで、質のよい睡眠や体内時計の整った生活ができ、結果的にダイエット効果も高まる。
地中海式ダイエットのデメリット・注意点
さまざまな健康効果が期待できる地中海式ダイエットだが、食生活を大きく変えることでのデメリットもある。事前にデメリットをおさえておき、対策をしながらダイエットに取り組もう。
- 地中海食の味が合わない可能性がある
- 食費がかかる
- 自炊の手間がかかる
地中海食の味が合わない可能性がある
地中海式ダイエットは健康にもダイエットにもよいが、「オリーブオイルを多用する調理法」や「ニンニク・オレガノなどのハーブを多く使用」するため、日本人にとってなじみにくい風味になってしまうことも。
オリーブオイルが苦手な場合は、「アマニ油」や「えごま油」などほかの植物油でも代替できる。日本人の味覚に合わせてアレンジしたレシピから始め、少しずつ本格的な地中海食を楽しんだり、地中海の要素だけを取り込んだ食事をしたりするのもおすすめ。

エクストラバージンオリーブオイルの香りや風味が苦手な場合は、ピュアオリーブオイルに切り替えてもOKです。良質な油、魚介中心、発酵食品や雑穀の食品を取り入れるなど、地中海料理は日本食にも当てはまる要素が多くあります。日本食にオイルをプラスしたり、少しだけ魚を食べる頻度を増やすなど、ちょっとした工夫で地中海式ダイエットのような健康的な食事を楽しめます。
食費がかかる
ハーブや雑穀米、魚介類やオリーブオイルなど、本格的な地中海料理を作ろうとすると食費がかかってしまう可能性がある。ただし、必ずしも高価な食材を使用する必要はない。青魚など比較的高価な食材の代わりに缶詰を使うこともできる。
「調理方法も電子レンジで調理する」「スパイスはハーブソルトで代用する」など、手間を省いておいしく地中海料理を楽しむことができる。旬の野菜を選んだり、まとめ買いをしたり、外食を減らし自炊を増やすことで、全体的な食費を抑えられる可能性もある。

地中海式ダイエットの本質は、特定の高級食材や複雑な調理方法にあるのではなく、バランスの取れた食生活にあります。できるところから始め、面倒な部分は既存の食品で補うことも楽しくダイエットを続けるためのポイントになります。
自炊の手間がかかる
地中海式ダイエットは自炊を中心とした食生活となるが、仕事などで忙しい人にとっては大きな負担となる可能性も。
ただし、サラダのドレッシングをオリーブオイルと塩の組み合わせに変更するだけでも、地中海式ダイエットの要素を取り入れられる。個包装のチーズ、缶詰や焼き魚など、コンビニなどで手に入る製品を利用すれば、必要な栄養素を手軽に摂取できる。
主食については、全粒粉のパンにこだわる必要はなく、おにぎりやパウチ入りの米飯など、日本の一般的な主食でも問題ない。雑穀米が手に入らなくても、通常の白米で代用できる。
自炊の負担を軽減するためには週末にまとめて調理し、平日の食事を準備しておく「作り置き」の活用も効果的。

自炊をしなくても地中海式ダイエットの主要な要素を取り入れることができます。既存の食品を賢く選択し組み合わせることで、忙しい日常生活の中でも健康的な食生活を維持できます。簡単なレシピから始め、徐々にレパートリーを増やしていくことで、無理なく自炊習慣を身につけましょう。
地中海式ダイエットに関するQ&A
地中海式ダイエットで、卵や乳製品は食べてもいい?
A:問題ない

無理して我慢しなくて大丈夫です。ダイエットは継続することが何よりも大切。食べすぎやカロリーオーバーに注意しつつ、食事を楽しめるよう「ゆるくやっていく」ようにしましょう。
どのくらいの期間続ければダイエット効果が現れる?
A:体内の変化は「1ヶ月程度」、体型の変化は「3ヶ月程度」

年齢や個人で差はありますが、肌や髪のターンオーバーが約30日程度で起きることから、1ヶ月程度で肌や髪のつやを実感しやすくなります。ダイエットの効果を待つために無理をして続けたり、耐え忍ぶ必要はありません。毎日無理なく続けられる方法で少しずつ健康的な身体をつくっていきましょう。
和食を地中海式にアレンジする方法はある?
A:オリーブオイルを足すだけでも可能

日本食と地中海料理は非常に似た要素を持つ食事です。栄養バランス自体に大きな差異はありませんが、日本食には良質な油を多くとれるメニューが少ないので、サラダにオリーブオイルをかけるなどして工夫してみましょう。
地中海式ダイエットでは赤ワインも推奨されているが、どのくらい飲んで大丈夫?
A:小さめのワイングラス2杯程度

日本栄養士会によるとアルコール摂取の基準量は1日あたり約20gで、ワイングラスに換算すると約2杯分になります。赤ワインには抗酸化作用などの健康効果があることも知られていますが、過剰な摂取は禁物です。適量を守り、アルコールを楽しむ程度に留めるようにしましょう。
博士(理学) 管理栄養士
愛国学園短期大学 家政科 准教授、早稲田大学 ナノライフ創新研究機構 招聘研究員、(株)アスリートフードマイスター 認定講師、発酵料理士協会特別講師としても勤務。「時間」という観点から、医学・栄養学・調理学の領域にアプローチすることを専門とする。科学的根拠を基にしたライフスタイルへのアドバイス、実体験を基にした食育活動や講演活動、料理教室も開催している。『食べる時間を変えるだけ! 知って得する時間栄養学』(宝島社/2022)、『10時間空腹リセットダイエット』(主婦の友社/2023)、他多数の書籍を執筆。
【所属】
愛国学園短期大学 家政科 准教授
早稲田大学ナノ・ライフ創新研究機構 招聘研究員
あきはばら駅クリニック 非常勤管理栄養士
アスリートフードマイスター認定講師
発酵料理士協会特別講師