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肉を食べる頻度が少ないことが女性では緑内障のリスクに【旭川医科大学・木ノ内先生】

私たちが生きる上で欠かせない大切な目。

とくに女性では、毎日の食生活が目の病気に関連することがわかってきている。

旭川医科大学の木ノ内先生による研究では、女性で開放隅角緑内障(かいほうぐうかくりょくないしょう)の方はそうでない方に比べ、1週間に肉を食べる日数が少ないことが明らかに。

今回は木ノ内先生に「肉を食べる頻度と開放隅角緑内障のリスクの関係性」について詳しくお話を伺った。

木ノ内 玲子さん

旭川医科大学病院 准教授(病院)

眼科専門医 緑内障とぶどう膜炎を専門として診療を行なっている。旭川医科大学医学部卒業後、免疫の研究で医学博士を取得、ハーバード大学スケペンス眼研究所で眼科の基礎的研究を行い、帰国後は旭川医科大学で臨床診療を続けながら、疫学研究や遠隔医療に携わっている。医工連携講座特任准教授を経て、現職。

自覚症状なく進行する開放隅角緑内障

──はじめに、「開放隅角緑内障」とはどのような病気なのでしょうか?

木ノ内先生:開放隅角緑内障は、初期段階では自覚症状がほとんどなく、多くの場合ゆっくり進行します。ある程度病気が進んでから、視野が悪くなるなどの自覚症状が出てきます。中心の視野を残した状態で徐々に進行するため、気づいたときにはかなり視野障害が進んでしまっていることが多い病気です。だからこそ、早く見つけて治療し、生涯不便のない視覚機能を保つことが大切です。

──早期発見・早期治療が大切なんですね。今回の研究内容について、改めて木ノ内先生よりご説明をお願いします。

木ノ内先生:今回の研究は、北海道留萌市(るもいし)で40歳以上の約1,700人の方を対象に、眼底写真検診を受けてもらいました。その際、生活習慣に関するアンケートなども同時におこなっています。眼底写真から緑内障が疑われた人には二次検査を受けてもらい、開放隅角緑内障の有無を判定しました。そこから、開放隅角緑内障とそれ以外の群に分け、生活習慣の違いなどについて統計学的に比較検討しました。

その結果、女性で開放隅角緑内障の方はそうでない方に比べ、1週間に肉を食べる日数が少ないことが明らかになりました。(開放隅角緑内障の方は平均1.7日、そうでない方は2.7日。統計学的に違いを検討。PLoS One 13, e0204955 (2018).)

──木ノ内先生がこの研究に取り組まれたきっかけを教えてください。

木ノ内先生:きっかけとして、留萌市で疫学研究を呼び込もうという取り組みが始まったことが背景にあります。その際、目に関する研究も何かできないかと、眼科専門医とともに眼底写真検診からできる疫学研究として話が進みました。

「緑内障」に注目した理由は、眼底写真から発見できる病気であること。そして、研究をおこなう上である程度有病率の高い病気だったことから解析対象としました。病気と食生活や生活習慣との関連は、多くの方が興味を持っていることです。しかし、まだ十分には研究が進んでいない分野でもあるので、それも含めて分析できたらと考えました。

──食生活や生活習慣と関わりがあり、なおかつ有病率の高いことから緑内障にご注目されたんですね。

木ノ内先生:はい。「何が悪くて病気になるのか?」「直せばよい生活習慣とは何か?」という疑問に答えられるかどうかをテーマに、眼底写真検査で見つかる病気(今回では開放隅角緑内障)と生活習慣にどのような関連があるかを調べることを目的に研究しました。

肉を食べる頻度と緑内障のリスクの関係性

── 現時点で、肉をあまり食べないことと開放隅角緑内障を引き起こす関係性についてわかっていることはありますか?

木ノ内先生:なぜ、肉を食べる頻度が少ない女性に開放隅角緑内障が多いのかは、現段階では解明できていません。ただ、アジアでは開放隅角緑内障の中でも眼圧の高くない正常眼圧緑内障の占める割合が多く、日本でも9割の方が正常眼圧緑内障という報告がされています。

緑内障は、視神経にかかる負荷によって、見る神経が侵されて視野障害が起こる病気です。眼圧の負荷に対して視神経が弱いことで、正常眼圧緑内障を起こすと一般的に考えられてます。このことから、肉を食べる頻度が視神経の脆弱性に関わってるのではないかと推測しています。

── 肉を食べる頻度が、視神経の強度に関わってるかもしれないんですね!

木ノ内先生:また、アメリカ眼科学会の雑誌『Ophthalmology(オフサモロジー)』にも、大変興味深い報告が出ていました(Ophthalmology 130, 565-574 (2023).)。この報告では、元々食事で脂質をとる割合が少ない方にさらなる食事制限を加えると、開放隅角緑内障が増えたという結果が出ています。

この研究はアメリカで実施されたもので、50歳から79歳の女性2万人程度を対象におこなわれました。食事の総カロリーの中で脂質の割合を20%以下に減らし、果物・野菜・穀物を増やす指導をした群とそうでない群(脂質を減らした食生活を勧めた群とそうでない群)の2つに分けて比較しています。

その結果、両群で開放隅角緑内障の発症率は変わらなかったそうですが、より詳しくみると、元々あまり脂質を取ってない人にさらなる低脂肪食をすすめた場合は開放隅角緑内障の発症が多くなったという結果がわかりました。このことからも、食事と緑内障はやはり関連があることが最近エビデンスとして出てきたかなと私は思ってます。

── 肉に含まれる栄養素なども関連しているのでしょうか?

木ノ内先生:肉の栄養としては、脂質はもちろん、タンパク質も含まれます。別の研究で、必須アミノ酸の摂取と開放隅角緑内障の発症の関連性の報告もあります。必須アミノ酸の研究では男女合わせたもので見ていますが、開放隅角緑内障の発症と関連はありませんでした。これらのことを考えると、肉の栄養素の中でも「脂質」が開放隅角緑内障の発症のキーになってるかもしれないと考えています。

『Ophthalmology(オフサモロジー)』の 報告などの結果も受け、開放隅角緑内障と栄養に関する研究というのは今後加速されていくと思います。緑内障と栄養という観点で、現段階ではまだ明らかになっていないことは多いですが、新たな病気を引き起こさないような食生活を考えていく必要があると思ってます。

── 具体的に、肉に関しては食べる量の目安というよりも、日数を増やしていくことがポイントになりますか?

木ノ内先生:研究では、量については確認していませんが、頻度でいうと緑内障であった人は平均週に1.7日、緑内障でない人は週に2.7日という結果になりました。日数としては、週に3日程度を目安に肉を食べるとよいのではないかと思います。

ただし、あまりに一気に肉を食べると中性脂肪が上がってしまう可能性があります。急激にたくさん食べるのではなく、分散させて食べていくこと。反対に、肉は絶対に悪いから食べないなどの極端な考え方はしないこと。栄養素を考えてバランスのよい食生活を送ることが大事だと思ってます。

── 極端に摂るのではなく、食生活の1つとして、バランスよく摂っていくことが大事ですね。肉以外にも、緑内障または目によいとされる食品や栄養素などはありますか?

木ノ内先生:「緑内障に対してこれが効く」と十分に証明されているものは現段階ではありません。先ほど出てきた脂質などが、これから研究が進んでくるところだと思います。

早期発見・早期治療が大切!

──予防という観点からも、開放隅角緑内障の早期発見のためにできることはありますか?

木ノ内先生:緑内障は、早期発見・早期治療がとても重要です。たとえ緑内障になっても、早い段階で治療して眼圧を下げることで、進行をある程度抑えられることは明らかになっています。

40歳以上の20人に1人が緑内障といわれています。まずは、40歳を超えたら健診を受けること。職場の定期健診や人間ドック、自治体の特定健診などを受けて早く見つけ、早めに治療することが大切です。あるいは、健診以外にも、目の調子が悪いときに眼科に受診して、緑内障も心配だから検査してほしいと初めに聞いてしまうのもよいと思います。

──緑内障は「早く見つけること」が重要なんですね!

木ノ内先生:そのとおりです。緑内障と聞くだけで怖がる方もいますが、たとえ自覚症状のない視野障害が少しあっても、まったく問題ないままの段階で収まる方もいます。なによりも早期発見・早期治療が重要です。

──普段私達が日常生活の上で何気なくおこなってることで、緑内障の原因になっていることはありますか?

近視が強い方が緑内障が多いことはわかっていますので、あまり近視が進むようなことはしないほうがよいですね。たとえば、小さいころからスマホなどの小さい画面みたいなものでずっとゲームするのはかなり負荷になるので、避けたほうがいいかもしれません。ただ、そこから緑内障につながるまではかなり長い段階があるので、はっきりしないところです。

今回の研究では、生活習慣や食生活との関連がメインですが、緑内障にとって一番大事なのは、健診で早期発見して治療につなげていくこと。初期の段階で見つけて治療することが重要です。

── 目も大切な自分の身体であると改めて感じました。生活習慣や食生活を見直したうえで、目を含めた健康づくりをしていきたいと思います。本日はどうもありがとうございました!

Wellulu編集後記

今回は旭川医科大学の木ノ内先生に「肉を食べる頻度が少ない女性と緑内障のリスク」の関連についてお話を伺いました。

普段、目に対するケアができていなかったなと思わされると同時に、食生活の改善で緑内障を引き起こすリスクを減らせるという結果に驚きました。

食生活や生活習慣は、私たちの健康づくりにとても身近で毎日のもの。日々の食生活が自らの身体や健康をつくっていることを改めて意識し、少しずつでも整えていきたいと思います。

本記事のリリース情報

「Wellulu」にて眼科・木ノ内玲子医師のインタビュー記事「肉を食べる頻度が少ないことが女性では緑内障のリスクに」が公開されました

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