スクワットは器具なしでどこでも取り組める一方で、大腿四頭筋や大臀筋などを総合的に鍛えられる効率の高いトレーニングで、筋力が向上するだけでなく、下半身の引き締めなどが期待できる。
この記事ではスクワットの効果や正しいやり方を始めとし、効果を高めるための組み合わせトレーニング、適切な時間や頻度を詳しく紹介する。
この記事の監修者

坂詰 真二さん
スポーツ&サイエンス代表、フィジカルトレーナー
この記事の検証者

山本 祐志郎さん
6年前に始めたハンドボールで培った瞬発力や体力を活かして、日々の生活や仕事にも前向きに取り組む。朝の公園ランニングやHIITトレーニングを日課とし、時にはヨガで心身を整えるなど、アクティブな日々を過ごしている。
スクワットで鍛えられる筋肉

| 部位 | 負荷の強度(※) |
| 大腿四頭筋 | ★★★★★ |
| 大臀筋 | ★★★★☆ |
| ハムストリングス | ★★☆☆☆ |
| 内転筋 | ★☆☆☆☆ |
| 下腿三頭筋 | ★☆☆☆☆ |
以下の記事では、スクワットで鍛えられる部位についての説明をより詳しく解説。
「スクワット」の正しいやり方!効果・回数・重量・種類別の特徴
「スクワット」の検証ポイント 【難易度】 トレーニングレベルに関わらず、正しいフォームを習得できるか? 何回目の練習で正しいフォームを習得できたか? どの部分が.....
スクワットで得られる7つの効果

- 筋肉量・筋力が向上する
- 体幹の強化・ぽっこりお腹の改善
- 基礎代謝の向上により痩せやすくなる
- 下半身の引き締めやヒップアップ
- むくみや冷え性の改善
- 歩く・階段を上る・立ち座りがラクになる
- 骨密度の維持・骨折の予防
筋肉量・筋力が向上する

スクワットは、大腿四頭筋・ハムストリングス・大臀筋といった大きな筋肉を効率よく刺激できるため、筋肉量と筋力の向上に非常におすすめ。
複数の関節と筋肉が同時に働く多関節運動なので下半身全体を鍛えるのに加え、姿勢維持のために体幹の筋力発達にもつながる。
筋肉は年齢とともにゆるやかに減少していくため、スクワットのような適度な筋トレを継続することは、筋量の維持に役立つ。
筋肉量を保つことは基礎代謝を支える点でも重要であり、お腹まわりなどの脂肪燃焼にもつながる。
体幹の強化・ぽっこりお腹の改善

スクワットは下半身だけでなく、体幹も同時に鍛えられるトレーニング。動作中に正しい姿勢を維持するためには、背中の脊柱起立筋やお腹の腹直筋・腹横筋が常に働き、上体を安定させる役割を担う。
とくに腹圧を高める必要があるため、深層筋であるインナーマッスルも自然と刺激される。
これらの体幹筋が強化されることで、姿勢が整い、内臓が正しい位置に保たれやすくなる。その結果、ぽっこりお腹の改善やウエストラインの引き締まり、浮き輪肉といわれる皮下脂肪の目立ちにくさにも代謝アップによる間接的な効果が期待できる。
基礎代謝の向上により痩せやすくなる

スクワットは、全身の約6〜7割を占める下半身の大きな筋群を鍛えられるため、基礎代謝の向上に非常に効果的。スクワット自体の消費カロリーも一定量はあるが、痩せやすさに影響を与える最大の要因は、筋肉量の増加による基礎代謝の向上。
基礎代謝は1日の消費カロリーの約60%を占めており、これが上がることで、安静時や睡眠中でもエネルギーを消費しやすくなる。
言い換えると、痩せやすく太りにくい体質へと変化し、ダイエット後のリバウンド防止にも役立つ。
スクワットは大筋群を効率よく鍛えられることから、基礎代謝の底上げを目的としたトレーニングとしておすすめのトレーニング。
下半身の引き締めやヒップアップ

スクワットは、太もも・お尻・ふくらはぎなど下半身全体を効率よく鍛えられるトレーニング。とくに、大臀筋・大腿四頭筋・ハムストリングスといった大きな筋肉を効果的に刺激できるため、下半身の引き締めや基礎代謝の底上げによる脂肪燃焼に大きく寄与する。
これらの筋群が強化されることで、キュッと上がったヒップラインや、メリハリのある美しい脚のラインが形成されやすくなる。
さらに引き締まったボディラインをつくるためには、スクワットだけでなく、ヒップリフトやブルガリアンスクワットなどお尻に特化した種目を組み合わせることもおすすめ。
むくみや冷え性の改善

ふくらはぎは「第二の心臓」と呼ばれ、血液を全身へ押し戻すポンプの役割を担っている。スクワットではこの部位も鍛えられるので血液循環が改善し、老廃物の排出が促されるため、むくみの軽減に効果が期待できる。
また、スクワットによって筋肉量が増えると体温が上がりやすくなるため、冷え性の改善にもつながる。
デスクワーク中で本格的なトレーニングができない場合でも、軽いスクワットや屈伸に近い動作であっても血流を整える効果は十分に得られるため、日常の合間に取り入れやすいトレーニング。
歩く・階段を上る・立ち座りがラクになる

スクワットを継続すると、大殿筋・大腿四頭筋・ハムストリングスといった下半身の抗重力筋が強化され、身体を支える力やバランス能力が向上する。
その結果、「歩く」「階段を上る」「立ち座り」といった日常動作が安定し、動作がスムーズに。
筋肉量が落ちることで生じやすい疲れやすさも、下半身の筋力向上によって軽減されやすくなるため、生活全体の快適さにつながる。
高齢者や運動初心者の場合は、浅めのスクワットや、イスを使ったサポート付きスクワットを選ぶと安全に実施できるのでおすすめ。
骨密度の維持・骨折の予防

スクワットのような筋力トレーニングをおこなうと、筋収縮によって生じる刺激やホルモンの分泌が骨の形成を促進するとされている。
骨に縦方向に刺激がかかると骨を増やす細胞の働きが促される。スクワットで体を上下に動かすと、太ももや背骨などの骨にも縦方向の刺激が加わるため、骨は適応して密度と強度を高める方向へ働く。
さらに、下半身の筋力が向上することでひざや足首といった関節の安定性も高まり、転倒リスクの軽減にもつながるため、結果として骨だけでなく関節の保護にも影響するトレーニング。
スクワットで効果が出るまでの期間

| 1ヶ月 |
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| 2ヶ月 |
|
| 3ヶ月 |
|
■【目的別】効果が出るまでの期間
| 効果 | 効果を実感できる期間 |
| 筋力の向上 | 2~4週間 |
| 筋肉量の増加 | 2〜3ヶ月 |
| 体幹の強化・姿勢の改善 | 2~4週間 |
| 基礎代謝の向上 | 2〜3ヶ月 |
| 下半身の引き締めやヒップアップ | 2〜3ヶ月 |
| むくみや冷え性の改善 | 2〜4週間 |
スクワットの効果的なやり方
| 難易度 | ★★☆☆☆ |
| 続けやすさ(※1) | ★★★★★ |
| トレーニング効率(※2) | ★★★★☆ |
- ※1:続けやすさ = トレーニングができる場所の自由度/器具や設備の必要性
- ※2:トレーニング効率 = 複数部位にアプローチできるか/負荷調整できるか
- 足を肩幅程度に開き、つま先をやや外側に向ける
- 背中は真っすぐの状態でひざと股関節を同時に曲げて尻を落とす
- 太ももが床と平行になるまで屈み、立ち上がる
| ケガのリスク | 低い傾向 |
| 実施できる場所 | 自宅・ジム |
| 器具・設備 | 不要 |
| 鍛えられる部位 | 大腿四頭筋、大臀筋、ハムストリングス、下腿三頭筋 |
| 負荷の調整 | 可能 ※股関節とひざを曲げる角度を浅くすると負荷が弱まる |
【注意点】
- 背中を丸めない
- ひざがつま先より前に出ない
- 脚は肩幅程度

ひざがつま先より前に出すぎない

脚は肩幅程度


検証者:山本
シンプルな動きなので取り組みやすかった一方で、しゃがむ深さが浅くなったり、重心がつま先側に寄ってかかとが浮きそうになることがありました。回数を重ねると太もも前だけでなく、お尻やふくらはぎにもじわじわ効く感覚がありました。

監修者:坂詰
ノーマルスクワットは下半身全体をバランスよく鍛えられる基本トレーニングです。股関節を曲げながらお尻を下げていく意識を持つと重心が前に流れにくくなり、お尻やもも裏にも刺激が入りやすくなります。
鏡を見ながら背すじが丸まっていないか、太ももが床と平行まで下りているかを確認しながらおこないましょう。
スクワットで効果を得るための回数・頻度

- 目的別のおすすめの回数
- おすすめの頻度
目的別のおすすめの回数

| 目的 | 回数 | セット数 | インターバル | 負荷の目安 |
| ダイエット 下半身のシェイプアップ |
6-12回 | 3セット | 30-90秒 | 中負荷 |
| 下半身の筋肉量の増加 | 6-12回 | 3-5セット | 30-90秒 | 中負荷 |
| 下半身の筋力向上 | 1-6回 | 3-6セット | 2-5分 | 高負荷 |
| 筋持久力向上 姿勢の改善 |
15-20回 | 2-3セット | 30-60秒 | 軽負荷 |
| 日常動作の向上 | 8-12回 | 2-3セット | 60-90秒 | 中負荷 |
| 疲労回復 むくみ改善 |
15-20回 | 1-2セット | 30-60秒 | 軽負荷 |
以下の記事では、平均回数や回数の決め方、回数を上げるコツを紹介。
スクワットの回数の目安!回数を増やすコツ・男女別や目的別の平均回数も紹介
スクワットは何回やればいい?回数の設定方法 スクワットの効果を最大限に高めるためには、目的に応じて適切な回数と負荷設定を行うことが重要。一般的には、10〜12回.....
おすすめの頻度

スクワットで主に使用する下半身の筋群は回復が比較的早いが、筋肥大や筋力向上を目的として中程度の負荷をかける場合は週に2~3回、軽負荷でおこなう筋持久力の向上を目的とする場合は、週3〜5回を目安とし、短時間でも継続的に刺激を入れることが効果的。
一方で、筋肉痛が強い日や、ひざ・腰に違和感が生じた日は、無理をせず休息日に切り替えよう。
スクワットの効果を高めるために組み合わせたい種目2選
- バックエクステンション
- プッシュアップ
バックエクステンション
| 難易度 | ★★★☆☆ |
| 続けやすさ(※1) | ★★★☆☆ |
| トレーニング効率(※2) | ★★★★★ |
- ※1:続けやすさ = トレーニングができる場所の自由度/器具や設備の必要性
- ※2:トレーニング効率 = 複数部位にアプローチできるか/負荷調整できるか
- うつ伏せになり、両手を頭の後ろで組む
- 脚を肩幅程度に開き、上半身を上げてキープする
- ゆっくりと元の位置に戻す
| ケガのリスク | 低い傾向 |
| 実施できる場所 | 自宅・ジム |
| 器具・設備 | 床マット |
| 鍛えられる部位 | 脊柱起立筋・大臀筋 |
| 負荷の調整 | 可能 |
【注意点】
- 脚を肩幅に開く


検証者:山本
背中を反らす動作で腰に力が入りすぎてしまい、背中全体で動かす感覚がつかみにくかったです。
また、反り上げる高さをどこまでにすべきかの判断が難しく、やりすぎると腰に張る感じがありました。

監修者:坂詰
勢いよく上体を反らすと、背骨に負担がかかるので、顔⇒胸⇒お腹の順番で少しずつ状態を床から浮かせることが大切です。上げる高さは「お腹の上部までが浮く程度」で十分で、足が床から浮くほど大きく反る必要はありません。
目線が正面に向くまで反らすと、腰への負担を抑えて安全に動作できます。
以下の記事では、バックエクステンションの正しいやり方や回数などを詳しく紹介。
「バックエクステンション」の効果は?マシンやベンチのでの正しいやり方や回数も紹介
「バックエクステンション」はどこに効く?鍛えられる3つの部位 「バックエクステンション」は、主に背中の筋肉を鍛える筋力トレーニング。脊柱起立筋(せきちゅうきりつ.....
プッシュアップ
| 難易度 | ★★★★★ |
| 続けやすさ(※1) | ★★★☆☆ |
| トレーニング効率(※2) | ★★★★★ |
- ※1:続けやすさ = トレーニングができる場所の自由度/器具や設備の必要性
- ※2:トレーニング効率 = 複数部位にアプローチできるか/負荷調整できるか
- 肩幅よりもやや広めに手幅を広げ、胸の横にセットする
- 身体を真っすぐに保ったまま身体をおろす
- 身体をもち上げる
- ひじを曲げて無理のない範囲まで体を降ろす
| ケガのリスク | 低い傾向 |
| 実施できる場所 | 自宅・ジム |
| 器具・設備 | 床マット |
| 鍛えられる部位 | 大胸筋・上腕三頭筋・三角筋・腹筋群(姿勢維持のため) |
| 負荷の調整 | 可能 |
【注意点】
- 手を胸の横あたりの位置に置く


検証者:山本
身体を一直線に保ったまま下ろすのが思った以上に難しく、お腹が抜けて腰が反りやすくなりました。体幹の弱さが出やすいステップだと感じました。

監修者:坂詰
腰が反ってしまうのは体幹が伸びたまま緩むことが原因のひとつです。下ろす際は、軽くお腹に力を入れて腹圧を高め、みぞおちから骨盤までを板のように固定するイメージを持つと直線を維持しやすくなります。
動作中は、お尻を締めて体幹を補助することも効果的です。
以下の記事では、プッシュアップの正しいやり方や回数などを詳しく紹介。
「プッシュアップ(腕立て伏せ)」のやり方や効果は?鍛えられる筋肉や種類も紹介
どこに効く?プッシュアップ(腕立て伏せ)で鍛えられる部位 ・大胸筋 ・上腕三頭筋 ・三角筋 ・背筋群 手の幅や位置を変えることで、鍛える部位を変えられる! ちょ.....
スクワットの効果に関するQ&A
Q:スクワットの深さと効果の関係は?
A: スクワットを筋トレとするか有酸素運動に近づけるかによって異なる

監修者:坂詰
スクワットの深さは目的によって効果が異なり、筋トレとしてしっかり下半身を鍛えたい場合は、太ももが床と平行、もしくはひざを90度程度曲げると効果的です。関節を大きく動かすことで、大臀筋やハムストリングスへの刺激が強くなります。
一方で、有酸素運動に近い刺激をねらう場合は、浅めのスクワットをテンポよく繰り返す方法がおすすめです。
また、腕の振りも使って、負荷を全身に分散させましょう。
Q:自重スクワットだけでも筋力アップの効果は期待できる?
A: 期待できる

監修者:坂詰
自重スクワットであっても、正しいフォームで適切な回数と負荷設定で行えば、筋力アップの効果は十分に期待できます。とくに運動習慣がない人、座っている時間が長い人は自重スクワットでも最初はキツく感じられるはずです。
ただし、慣れてくると自重の負荷では刺激が足りなくなることもあるため、その場合は動作のスピードを遅くしたり、足を前後に開いて行ったり、ダンベルを取り入れるなどして、強度を少しずつ上げていくことが効果を高めるポイントです。
Q:分割した場合は効果が変わる?
A: できたら分割しない方が効果は高い

監修者:坂詰
朝10回、昼10回、夜10回というように1日の合計回数を分割しておこなうことも可能ですが、まとめて実施したほうが効果は高くなります。スクワットのような筋トレでは、まとまった負荷によりホルモン分泌が高まりやすく、トレーニング効果が出やすいためです。
疲労回復、むくみ改善を目的とした場合は分割でおこなう方法でもよいでしょう。
Q:スクワットの前後でやったほうがいいことはある?
A: ウォーミングアップを取り入れる

監修者:坂詰
スクワットの前には、両手をひざの上におき、いわゆる屈伸運動を10~20回程度おこなうことをおススメします。帰宅などの移動で5分以上歩いている場合は不要です。
また、トレーニング後は、太ももやお尻、股関節の軽いストレッチをおこなうと疲労が抜けやすく、次のトレーニングのパフォーマンス維持にも効果的です。















フィジカルトレーナー、NSCA認定ストレングス&コンディショニングスペシャリスト。横浜市立大学文理学部卒。株式会社ピープル(現コナミスポーツ)にてディレクター、教育担当を歴任後、株式会社スポーツプログラムで各種アスリートのコンディショニング指導を担当する。1996年に独立後、パーソナル指導、トレーナーの育成とともに、書籍、雑誌、TVなど各メディアで健康情報の提供をおこなう。22万部越えの「世界一やせるスクワット」(日本文芸社)ほか著書多数。3月末に『眠れなくなるほど面白い 図解 筋肉の話』(日本文芸社)を上梓。公式youtubeチャンネルはhttps://www.youtube.com/@shin.training-channel