
運動初心者でも取り組みやすく、下半身を効率よく鍛えられる種目として知られているスクワット。ダンベルを取り入れることで、より筋肉への負荷を高め、高い効果が期待できる。
この記事では「ダンベルスクワット」のメリットや効果、正しいやり方・フォームを解説。重量・回数、目的に合わせて取り組めるバリエーションも紹介。下半身強化、下半身痩せを目指している人は参考にしてみよう。
この記事の監修者

中野ジェームズ修一さん
フィジカルトレーナー
「ダンベルスクワット」はどこに効く?鍛えられる筋肉
「ダンベルスクワット」で鍛えられるおもな部位は以下の3つ。それぞれの筋肉の特徴と鍛える効果を詳しく紹介。
- 大臀筋
- 大腿四頭筋
- ハムストリングス
大臀筋
大臀筋はお尻の中心部に位置する下半身で一番大きな筋肉。鍛えることで日常生活の「立つ」「歩く」「走る」「階段を上る」などの動作がスムーズになる。また、ランニングやジャンプなどの運動パフォーマンスの向上にもつながる。
大腿四頭筋
大腿四頭筋は大腿直筋・内側広筋・中間広筋・外側広筋の4つの筋肉で構成される、太もも前面にある筋肉の総称。ひざひざ関節の伸展と股関節の屈曲に関係する筋肉で、鍛えることで下半身の安定性向上につながる。
ハムストリングス
ハムストリングスは太もも裏側に位置する大腿二頭筋・半腱様筋・半膜様筋の3つの筋肉から構成される筋肉群。ひざ関節の伸展と股関節の屈曲に関係する筋肉で、鍛えることで下半身の安定性向上や瞬発力など運動パフォーマンスの向上につながる。
スクワットにダンベルを取り入れるメリット
身体の中でもとくに大きな筋肉群を鍛えられる「筋トレBIG3」の1つとしても知られるスクワット。さらにダンベルを取り入れることで、どのようなメリットがあるのかみていこう。
- 自宅で手軽に本格的な筋トレができる
- 負荷の調整をおこないやすい
- バーベルより安全に筋トレができる
自宅で手軽に本格的な筋トレができる
自重でも効果は期待できるが、ダンベルを使用してさらに負荷をかけることでより本格的なトレーニングができる。ダンベルはバーベルのような大きな設備や器具が不要で、収納場所も最小限で済むため、スペースが限られているマンションやアパートでも気軽におこなえる。
負荷の調整をおこないやすい
ダンベルはさまざまな種類があるため、自身のレベルや目的に合わせて負荷を調整しやすい。たとえば、筋力アップを目指すなら重めのダンベルで負荷をかける、持久力アップを目指すなら軽めのダンベルで回数を多くするなど、細かく調整ができる。
バーベルより安全に筋トレができる
バーベルを使ったスクワットはバランスが取りづらく、フォームが崩れてしまいがち。しかし、ダンベルを使ったスクワットはダンベルを両手に持つためバランスが取りやすく、正しいフォームを維持しやすいため初心者でも安心して取り組める。
「ダンベルスクワット」の効果
- 基礎代謝が上がり痩せやすい身体になる
- 下半身の筋力アップで日常生活が楽になる
- 姿勢が改善されて腰痛・ひざ痛の予防になる
- 持久力が向上し疲れにくい身体になる
基礎代謝が上がり痩せやすい身体になる
ダンベルスクワットは下半身の大きな筋肉を鍛えるため、筋力が増加することで基礎代謝の向上効果が期待できる。基礎代謝が向上することで安静時のカロリー消費量も自然と上昇するため、痩せやすい身体づくりにつながる。
下半身の筋力アップで日常生活が楽になる
ダンベルスクワットをおこなうことで、日常の動作でよく使われる下半身の筋力を鍛えられる。鍛えることで階段の上り下りや長時間の歩行、立ったり座ったりなどの日常生活における動作もスムーズになる。
姿勢が改善されて腰痛・ひざ痛の予防になる
下半身の筋力がアップすると、骨盤まわりの安定性が向上し正しい姿勢がキープしやすくなるため、腰痛の改善に効果が期待できる。
また、ひざ痛はO脚やX脚が主な原因であることが多く、O脚の場合はひざ蓋骨の外側に、X脚の場合は内側に負担がかかることで痛みが発生する。多くの場合は筋力不足や柔軟性のバランスの悪さが原因のため、大腿四頭筋を鍛えることでひざ関節が安定し、ひざへの負担が減りひざ痛の改善が期待できる。

骨盤は正常な状態では立位の際は軽く前傾しているものの、この骨盤の位置が過剰に傾くことで腰痛につながります。後傾した状態では下腹部が出やすく、前傾が過度な場合は反り腰のような姿勢になりやすいです。
また、ひざ痛は大腿骨と脛骨で構成されるひざ関節の配列が崩れることで引き起こされています。日常生活での姿勢の改善に加え、適切な筋力トレーニングとストレッチをおこないましょう。
持久力が向上し疲れにくい身体になる
スクワットなどの下半身の大きな筋肉群を使用するトレーニングでは、動作の際に深い呼吸が必要となるため、心肺機能を向上させる。
心肺機能がアップし酸素の供給能力が向上することで、日常生活での疲労回復が早まる効果も。また、筋持久力がアップすることで、長時間の歩行や立ち仕事でも疲れにくい身体づくりにつながる。
「ダンベルスクワット」の正しいやり方・フォーム
- 身体の横で片手に1つずつダンベルを持つ
- 脚を肩幅に開いてつま先を少し外側に向け、重心を脚全体に分散させるイメージで立つ
- 胸を張って太ももが床と平行になるまでゆっくり腰を下ろしていく
- ゆっくりもとの位置に戻す
効果を出すためには正しいフォームでおこなうことが重要。最初のうちは、フォームを正しく身につけることを意識してトレーニングをおこなおう。
ポイントは、屈伸運動のようにひざを曲げ伸ばしするのではなく、イスに座るときと同じようにお尻を後ろに引くようなイメージで股関節から動かすこと。腰を下ろす際は、ダンベルを身体の横に沿わせることをイメージすることで、フォームを維持しやすい。
「ダンベルスクワット」の平均重量・回数
- 筋肥大を目的とする場合
- ダイエットを目的とする場合
筋肥大を目的とする場合
下半身の筋肉を大きくし、たくましい脚を手に入れたい場合は、8~12回程度おこなえる程度の負荷で3セットおこなうのがおすすめ。まずは、正しいフォームを身につけることを優先し、慣れてきてから徐々に重量を増やすように心がけよう。

ダイエットを目的とする場合
ダイエット目的で下半身を引き締めたい場合、軽めの重量で15~20回を3セットおこなうのがおすすめ。セット間の休憩時間は60秒以内を目安にしよう。
「ダンベルスクワット」の効果を高めるコツ・注意点
- 準備運動をしっかりおこなう
- ひざを前に出しすぎないように意識する
- 動作の際に背中は丸めない
- 負荷は急に上げず徐々に増加する
- インターバルは適切に確保する
準備運動をしっかりおこなう
準備運動は本来のトレーニングの50%程度の負荷で動くことがおすすめ。トレーニング本番よりも軽い負荷でおこなうことで、ウォーミングアップはもちろん、正しいフォームの確認にもなるためケガの予防にもつながる。

ひざを前に出しすぎないように意識する
腰を下ろした際、ひざが爪先より前に出てしまうとひざ関節への負担が増大してしまう。ひざが90度を超えないように注意し、ひざを曲げるのではなくお尻を後ろに少し引くようにして腰を下ろしていくイメージでおこなおう。

動作の際に背中は丸めない
背中が丸まった状態でトレーニングをおこなうことで腰痛のリスクに。背筋を真っ直ぐ伸ばして、胸を張った姿勢をキープするように意識しよう。常に腹筋に力を入れて身体をしっかり安定させるのがポイント。
負荷は急に上げず徐々に増加する
負荷を急に上げてしまうことは、ケガのリスクを高める原因に。自身の筋力の向上に合わせて、段階的に重量を増やしていくようにしよう。負荷を上げたことで、フォームが崩れたり極度な疲労感を感じる場合は、すぐに重量を調整するのがポイント。
インターバルは適切に確保する
セット間の休憩時間を適切に確保し、しっかり休憩を取ることで筋肉の回復が促される。目的によるが、基本的に休憩時間は30秒〜60秒程度を目安にしよう。
狙った部位に効かせる!「種類別ダンベルスクワット」6選
ダンベルを取り入れたスクワットの、6つのバリエーションを紹介。基本のダンベルスクワットに慣れたら、ステップアップとして取り組んでみよう。
- 大腿四頭筋を重点的に鍛える「ダンベルフロントスクワット」
- お尻と太もも裏を鍛える「ダンベルワイドスクワット」
- 体幹も強化できる「ゴブレットスクワット」
- 内転筋を意識した「ダンベルスモウスクワット」
- 片脚の筋力を上げる「ダンベルブルガリアンスクワット」
- 全身の調整力を高める「ダンベルジャンプスクワット」
大腿四頭筋を重点的に鍛える「ダンベルフロントスクワット」
<やり方>
- 片手に1つずつダンベルを持ち、脚を肩幅に開く
- ダンベルを持ち上げて肩の上で担ぐ
- 腕はそのままでゆっくりと腰をおろし、太ももが床と平行になるまで沈んだらもとの姿勢にもどる
ダンベルを肩の高さでキープし、通常のスクワットよりも上半身を起こした姿勢でおこなうトレーニング。重心が前よりになるため、太もも前面の大腿四頭筋に、より強い刺激を与えられるのが特徴。腰をおろす際に、上半身を前傾させず、真っ直ぐ保ったままでおこなう。
お尻と太もも裏を鍛える「ダンベルワイドスクワット」
<やり方>
- 片手に1つずつ(もしくは両手で1つ)ダンベルを握り、脚を肩幅よりも広めに開く
- つま先を45度くらい外側に向け、足のかかとに重心がくるように意識する
- 太ももと床が平行になるところまで腰をゆっくり下ろし、もとの位置にもどす
通常のスクワットより脚幅を広げておこなうトレーニング。
脚を広げることで股関節の可動域が広がり、通常のスクワットと比べて、お尻と太もも裏への刺激が増加、内ももの筋肉である内転筋も鍛えられる。背中が丸まらないよう、顔は正面に向け、胸を張っておこなうことを意識しよう。
体幹も強化できる「ゴブレットスクワット」
<やり方>
- 胸の前で、両手で1つのダンベルを持つ
- 脚は肩幅程度に開き、つま先は少し外側に向ける
- ダンベルが身体から離れないように意識しながら、腰を下ろす
- 太ももと床がほぼ平行になるところまで下げたら、もとに戻る
ダンベルを胸の前で持ち、上体を起こした姿勢でおこなうトレーニング。通常のダンベルスクワットより重心が高い位置にあることで、体幹の筋肉を多く使い、腹筋や背筋を強く刺激するため、姿勢改善やインナーマッスルの強化に効果的。
内転筋を意識した「ダンベルスモウスクワット」
<やり方>
- 両手で1つのダンベルを縦向きに握り、脚を肩幅よりも大きく広く開く
- しゃがんだときに力士のような姿勢になるよう、つま先を大きく外側に向ける
- 太ももと床がほぼ平行になるところまでゆっくりと腰を下ろして、もとの位置にもどる
脚幅を広げ、さらにつま先を大きく外側に向けておこなうトレーニング。日常生活で使用頻度の少ない、内もも(内転筋)に筋肉を効率的に鍛えられるのが特徴。また、股関節の柔軟性、下半身のバランス力の向上にも効果的。
片脚の筋力を上げる「ダンベルブルガリアンスクワット」
<やり方>
- 片手に1つずつダンベルを持った状態でベンチや台の前に立ち、片脚を乗せる
- 背筋を伸ばし、上体を前傾に保つ
- 前脚のひざをゆっくりと曲げて、身体を下げていく
- 前脚のひざの角度が90度になったら、ゆっくりともとの姿勢に戻る
片脚を後ろに上げて台に乗せた状態で、前脚でスクワットをおこなうトレーニング。片脚でおこなうことで負荷が増加し、両脚でおこなうスクワットよりも自重でもより高い効果を期待できる。股関節の柔軟性向上やお尻の引き締めに効果的。
全身の調整力を高める「ダンベルジャンプスクワット」
<やり方>
- 片手に1つずつダンベルを持ち、脚は肩幅に開く
- 太ももと床が平行になる程度までしゃがんだら、両脚で床を押すようにしてジャンプする
- 足の中心部で柔らかく着地し、再び腰を落とし、同じ動作を繰り返す
通常のダンベルスクワットの動作にジャンプを組み合わせたトレーニング。難易度も飛躍的に上がるため、ダンベルスクワットで物足りなくなった人におすすめ。
常に腹筋に力を入れ、ジャンプの際も背筋が伸びているか意識しよう。高負荷のトレーニングのため、疲れたりしてフォームが崩れてきたりするとケガのリスクが高くなるため注意が必要。

とくにジャンプスクワットは正しいフォームを維持するのが難しいトレーニングです。2〜3回でバランスが崩れたり、フォームが乱れたりする場合は負荷が高すぎる状態です。ケガを防ぐためにも自身のレベルに合ったトレーニングをおこないましょう。
瞬発力を向上させたい場合は、通常のジャンプスクワットを取り入れるのもよいです。瞬発力が向上することで筋肥大の促進にもつながります。
瞬発力を高める「通常のジャンプスクワット」
- 脚を肩幅に開き、つま先は少し外側に向ける。胸を張り、背筋をまっすぐに伸ばす
- 息を吸いながら、お尻を後ろに突き出すように太ももが床と平行になるまで腰を落とす
- 息を吐きながら、力強く地面を蹴って真上にジャンプする
- かかとから着地し、すぐにスクワットの姿勢に戻り繰り返す
「ダンベルスクワット」に関するQ&A
バーベルスクワットとの違いは?
A:ダンベルスクワットは首や脊柱への負担が少ない

効果が出るまでの期間の目安は?
A:2〜3ヶ月程度

ひざや腰が不安な場合はどう工夫すべき?
A:正しいフォームの習得を優先、そのあとは負荷を徐々に上げていく

女性がおこなう際の注意点は?
A:重量の調整と安全への配慮が大切

アメリカスポーツ医学会認定運動生理学士として、運動の大切さを広める活動を行っている。2014年からは青山学院大学駅伝部のトレーナーも務めており、東京神楽坂にある会員制パーソナルトレーニング施設「CLUB100」で一般の方やアスリートを指導。「科学的根拠に基づき、必ず結果を出す」が合い言葉で熱意のある指導を常に心がけている。