
この記事では、話題のケトジェニックダイエットの基礎知識や正しいやり方、食事メニューなどをご紹介。また、取り組む際のリスク・注意点も詳しく解説しているので、ケトジェニックダイエットに興味がある人、これから挑戦してみたい人は参考にしてみよう。
この記事の監修者

古谷 彰子さん
博士(理学) 管理栄養士
ケトジェニックダイエットとは?
ケトジェニックダイエットとは、「糖質を極端に制限して脂質を多く摂取する」ダイエット方法。通常、身体はエネルギー源として炭水化物(糖質)を優先的に利用する。
一方で、ケトジェニックダイエットは炭水化物の摂取を制限することで、代替エネルギー源として脂肪を活用するようになる。この状態を「ケトーシス」と呼び、脂肪が分解されてケトン体が生成される。
ただし、人の体内でケトン体が生成されるのは、非常事態といえるほど異常なこと。健康面でリスクがあるということを踏まえておく必要がある。

ケトジェニックダイエットは、「低糖質ダイエット」よりも糖質摂取量を大幅に減らすなど、効果よりも健康上のリスクが高いため、あまりおすすめはできません。
ケトジェニックダイエットのリスク
ケトジェニックダイエットは効果的な減量方法として注目されているが、一方でいくつかのリスクも指摘されている。正しいやり方を知る前に主なリスクをおさえておこう。
- 骨内のミネラルが減少する
- 悪玉コレステロールの増加
- 脂肪肝・高尿酸血症
- 腎臓結石・尿結石
- 「ケトン臭」によって口臭・体臭がきつくなる
骨内のミネラルが減少する
ケトジェニックダイエットを長期間続けると炭水化物の摂取量が足りず、カルシウムの吸収を促進する食品の摂取が減少してしまう。
また、「高タンパク質・高脂質」の食事になるため、尿中のカルシウム排出量が増加。さらに、ケトーシス状態が続くことで体内が酸性に傾き、骨からのミネラル溶出が促進される。
このように長期的には「骨密度の低下」や「骨折リスク」の増加につながる可能性がある。
悪玉コレステロールの増加
ケトジェニックダイエットでは脂質を多く摂取するため、血中のコレステロール値が上昇するリスクや、LDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)の増加が懸念される。
LDLコレステロールの増加は、「動脈硬化」や「心血管疾患」のリスクを高める可能性がある。また、HDLコレステロール(善玉コレステロール)が同時に増加することも。ただし、個人差が大きく、全ての人にこの影響が現れるわけではない。
脂肪肝・高尿酸血症
ケトジェニックダイエットで高脂肪食を継続的に摂取すると、肝臓に脂肪が蓄積されやすくなり、肝臓の機能低下や炎症を引き起こすことも。とくに、不適切な食事内容や個人の代謝特性によっては、脂肪肝のリスクが高まる。
こういったリスクを軽減させるために、中性脂肪になりにくいとされる「MCTオイル」などの中鎖脂肪酸を含む油を摂取するのも1つの手。
また、ケトジェニックダイエット中は脂質をとる上で、タンパク質の摂取量が増加することが多い。そのため、タンパク質の代謝過程で生成される尿酸の量が増加し、痛風や腎臓障害のリスクとなる血中尿酸値が上昇する可能性も。

「低コレステロール」や「低カロリー」など、一見身体によさそうな効果をうたった油であっても、ケトジェニックダイエットに適しているかは別です。脂質であれば、中性脂肪になりにくい特性を持つ「MCTオイル」「ココナッツオイル」といった中鎖脂肪酸を含む油がおすすめです。
脂質を摂取するために、タンパク質の摂取量が多くなる傾向がありますが、実際にタンパク質過剰で腎臓の数値が悪くなっている人もいらっしゃいます。必要以上のタンパク質摂取も脂質の過剰摂取と同様に注意が必要です。
腎臓結石・尿結石
ケトーシス状態により尿が酸性化すると、結石形成のリスクが高まる。また、炭水化物制限により体内の水分保持能力が低下して脱水状態になりやすい。
さらに、高タンパク質な食事により、尿中の「カルシウム」と「シュウ酸」の排泄が増加する。これらの要因が重なることで、とくに「カルシウムシュウ酸結石」のリスクが高まる。また、尿酸結石のリスクが上昇する可能性も。
予防策としては十分な水分摂取を心がけること、3ヶ月など短い期間で集中的に取り組むことがあげられる。
「ケトン臭」によって口臭・体臭がきつくなる
「ケトン臭」は体内でケトン体が生成されることによって生じる甘酸っぱい臭いのこと。ケトン体の一種である「アセトン」が呼気や汗を通じて排出されることで、口臭や体臭として現れることが多い。
この臭いは、身体がケトーシス状態(酸性状態)に入り、脂質を主要なエネルギー源として利用し始めた証拠でもある。ケトン臭は身体がケトーシス状態に慣れてくるにつれて徐々に和らいでいく場合が多いが、ダイエット中は継続して発生する可能性も。
ケトン臭を軽減するためには「十分な水分摂取」「丁寧な口腔ケア」「適度な運動」などを取り入れて、ケトン体の代謝を促すことが効果的。

特定の食品がケトン臭の原因になるとは言い切れません。中鎖脂肪酸を含む油など体内に脂肪として蓄積されにくい食品を選ぶことや、ケトジェニックダイエットの期間を設定し、運動を取り入れることで健康維持につながりやすくなります。
ケトジェニックダイエットの正しいやり方
ここでは、ケトジェニックダイエットの正しいやり方・取り組む際のポイントを紹介。
- 初期の頭痛・倦怠感に備えて徐々に身体を慣らす
- 1日の糖質摂取量を20〜50g程度に抑える
- 1日の摂取カロリーを通常の70〜80%に設定する
- 食事内容・体重を毎日記録しケトーシス維持を確認する
- MCTオイルを1日大さじ1〜2杯摂取
- 1日2Lの水分摂取で代謝を促進する
- 体脂肪率・身体の状態に応じてチートデイを取り入れる
初期の頭痛・倦怠感に備えて徐々に身体を慣らす
ケトジェニックダイエットを開始すると、多くの人が初期段階で頭痛や倦怠感などの症状を経験する。これは「ケトフル」と呼ばれ、身体が炭水化物主体の代謝から脂質主体の代謝に切り替わる際に起こる一時的な現象。
この症状を軽減するには、徐々に身体を新しい食事スタイルに慣らしていくことが大切。極端な食事制限をいきなり始めるのではなく、1週間ごとに主食の量を減らすなど、段階的に炭水化物の摂取量を減らしていくのがおすすめ。
また、十分な水分補給やミネラルの摂取も重要。とくに、「ナトリウム」「カリウム」「マグネシウム」などのミネラルが不足しがちなため、意識的に摂取する必要がある。ただし、症状が強い場合は無理に継続せず、休息をとることも検討しよう。

ケトフルの症状を軽減するためには糖質の摂取が一番ですが、症状が強い場合は急に糖質の多いものを食べることは避け、徐々に摂取していくことが大切です。必要に応じてサプリメントを活用することも1つの方法です。また、ミネラルを含む経口補水液やスポーツドリンクなどでの水分補給や休息をとることも大切です。
1日の糖質摂取量を20〜50g程度に抑える
ケトジェニックダイエットのPFCバランスは「3:6:1」といわれることが多い。これは総摂取エネルギーに対して、タンパク質(protein)が約30%、脂質(fat)が約60%、糖質が約10%の割合で栄養を摂取するということ。
これにより、身体はケトーシス状態になり、脂肪をエネルギー源として効率的に利用するようになる。
【糖質量の計算方法】
1日の糖質量 =(体重 × 基礎代謝基準値※1 × 活動レベル※2)× 0.025
※1
- 18~29歳の基礎代謝量:男性「23.7」/女性「22.1」
- 30~49歳の基礎代謝量:男性「22.5」/女性「21.9」
※2
活動レベルは18~64歳の場合
- レベルⅠ(生活の大部分が座位で、静的な活動が中心):1.50
- レベルⅡ(座位中心の仕事だが、職場内での移動や家事、軽い運動などをおこなう場合):1.75
- レベルⅢ(移動や立位の多い仕事や、運動習慣をもっている場合):2.00
例:30歳女性で体重は60kg、活動レベルはⅠの場合
(60 × 21.9 × 1.50)× 0.025 = 49.2g
でき合いの食べ物であればパッケージに記載された栄養成分表示をこまめにチェックし、糖質量を計算しながら食事を組み立てよう。また、調味料や加工食品には意外と糖質が多く含まれていることがある。低糖質の食品を中心に選び、「高脂質・中タンパク質」の食事構成が心がけよう。
1日の摂取カロリーを通常の70〜80%に設定する
ケトジェニックダイエットでは単に糖質制限をおこなうだけでなく、適切な摂取エネルギーの管理も大切。一般的に、通常の摂取エネルギーの70〜80%程度に設定することが推奨されている。これにより緩やかな減量効果を得ながら、身体に必要な栄養素を確保できる。
摂取エネルギーの制限をおこなうことで身体は脂肪をエネルギーとして利用するようになるが、過度な制限は筋肉量の減少や代謝の低下を招く可能性がある。そのため、個人の身体状況や活動量に応じて、適切なエネルギー摂取量を設定しよう。
たとえば、通常2,000kcalを摂取している人であれば、ケトジェニックダイエット中は「1,400〜1,600kcal程度」に設定する。ただし、この値は目安であり、個人の「年齢」「性別」「身長」「体重」「活動量」などによって適切な摂取エネルギー量は異なる。
【摂取エネルギーの計算方法】
摂取エネルギー = 基礎代謝基準値 × 体重 × 活動レベル
※1
- 18~29歳の基礎代謝量:男性「23.7」/女性「22.1」
- 30~49歳の基礎代謝量:男性「22.5」/女性「21.9」
※2
活動レベルは18~64歳の場合
- レベルⅠ(生活の大部分が座位で、静的な活動が中心):1.50
- レベルⅡ(座位中心の仕事だが、職場内での移動や家事、軽い運動などをおこなう場合):1.75
- レベルⅢ(移動や立位の多い仕事や、運動習慣をもっている場合):2.00
例:30歳女性で体重は60kg、活動レベルはⅠの場合
21.9 × 60 × 1.50 = 1,971
80%摂取エネルギーをカットする場合は「1,577kcal」が目安となる
食事内容・体重を毎日記録しケトーシス維持を確認する
日々の食事内容と体重の変化を記録すると、ケトーシス状態が維持されているかを確認したり、必要に応じて食事内容を調整したりできる。スマートフォンアプリなどを活用すると、より簡単かつ正確に記録をつけることができるので、細かい管理が面倒な人にもおすすめ。
また、体重測定は毎回同じ時間(たとえば起床時)におこなうのが理想的。ただし、体重の変動は水分量の影響を受けやすいため、1週間単位など長期的な傾向を見ることが大切。
体脂肪率や身体周りの寸法も定期的に測定すると、身体の変化を把握しやすくなりモチベーションの維持につながることも。
MCTオイルを1日大さじ1〜2杯摂取
MCT(中鎖脂肪酸)オイルは消化吸収が早く、すぐにエネルギーに変換されるため体内で脂肪が蓄積されない。また、運動前に摂取した場合は、持久力の向上が期待できる。一般的に、1日大さじ1〜2杯(約15〜30mL)のMCTオイル摂取がおすすめ。
ただし、急に多量に摂取すると下痢などの胃腸障害を引き起こす可能性があるため、少量から始めて徐々に増やそう。コーヒーや紅茶に加えたり、サラダドレッシングの材料として使用したりと、さまざまな飲み物や食べ物と合わせられるので、好きなものと組み合わせてみて。

MCTオイルの大量摂取は血中脂質異常症のリスクを高める可能性があります。また、酸化しやすく加熱調理には向いていません。エチレン製の容器(カップ麺・コーヒーカップなどに多い)にMCTオイルを入れる場合は、変性して底が抜けてしまう可能性もあるので注意してください。
1日2Lの水分摂取で代謝を促進する
ケトジェニックダイエットでは身体から水分が失われやすくなるため、十分に水分摂取することを意識しよう。目安としては一般的に「1日1.8~2L程度」。
こまめに水分を摂取することで老廃物の排出を助け、ケトーシスによる初期の不快症状(頭痛や倦怠感など)の軽減にも効果がある。また、水分摂取は満腹感を高める効果もあり、食事の前にしっかりと飲むことで過食の防止にも役立つ。
ケトジェニックダイエットでは「ナトリウム」「カリウム」「マグネシウム」などのミネラルが不足しがちなため、水分だけでなくミネラルのバランスに注意が必要。ミネラルウォーターやハーブティー、野菜スープなどを取り入れるのがおすすめ。
体脂肪率・身体の状態に応じてチートデイを取り入れる
ケトジェニックダイエットを長期間継続すると身体が低エネルギー状態に適応し、代謝が低下してしまう可能性がある。代謝の低下による停滞期を乗り越える場合はチートデイを取り入れるのも1つの手。
チートデイとは通常の食事制限を一時的に緩和し、普段控えている炭水化物を意図的に摂取する日のこと。これにより代謝を活性化させ、ダイエットの停滞を防げる。
ただし、チートデイの頻度は個人の体脂肪率やBMIなどによって異なる。BMIが25以上(肥満体型)であれば体内にエネルギー源が多い状態なのでチートデイの効果が出ない可能性がある。
下記の記事では、「チートデイの正しいやり方・適切な頻度・摂取カロリーの目安」などを詳しく紹介しているので、参考にしてみよう。
チートデイとは?体脂肪率別・BMI別の頻度、正しいやり方を紹介
チートデイとは? 「チートデイ」はダイエット中の食事制限を「なんでも好きなものを食べてもいい日」だと思われがち。しかし、本来の意味は異なるもので、ダイエットに必.....
ケトジェニックダイエットの効果が出るまでの期間
ケトジェニックダイエットの効果が現れるまでの期間は個人差があるが、一般的な目安は以下の通り。
- 開始後数日:体重減少が見られることも
- 2週間以内:ケトーシス状態に移行し脂肪燃焼が始まる
- 3ヶ月程度:脂肪減少により体型の変化が現れる
開始後数日:体重減少が見られることも
炭水化物の摂取を極端に制限すると、身体は貯蔵していた「グリコーゲン」を消費し始める。グリコーゲンは水分と結合して貯蔵されているため、これが分解されると水分も一緒に排出される。
そのため短期間で体重が減少したように見えるものの、これは一時的に水分が失われた状態であり、脂肪燃焼が始まる前段階であることを覚えておこう。また、急激に体内から水分が失われると脱水症状になる可能性があるため、十分な水分補給を意識しよう。
2週間以内:ケトーシス状態に移行し脂肪燃焼が始まる
ケトーシスとは身体が主要なエネルギー源として脂肪を利用し始める状態。この段階に入ると本格的な脂肪燃焼が始まり、ダイエット効果が実感できるようになる。
ケトーシス状態にどのくらいで移行するかは個人差があり、食事内容や身体の状態によって異なる。一般的に炭水化物の摂取を「1日40~50g程度」に抑えると、「1~2週間以内」にケトーシスに到達することが多い。
ただし、一部の人は「ケトフル」と呼ばれる不快な症状が現れたり、炭水化物を極端に制限することで幸せホルモンと呼ばれる「セロトニン」の分泌が減少する。気分の落ち込みや睡眠障害につながる可能性もあり、症状が続く場合は無理せず中断を検討しよう。

ケトジェニックダイエットは効果を感じられやすく、つい手を出しがちですが、長期間おこなうことはおすすめできません。過度の空腹感や過食、精神的な苦痛などの症状がある場合は無理をして続ける必要はありません。
3ヶ月程度:脂肪減少により体型の変化が現れる
ケトジェニックダイエットを開始してから約3ヶ月が経過すると、身体はケトーシスに適応し脂肪燃焼がより活発におこなわれる。体重計の数字だけでなく、「服のフィット感」や「鏡での見た目」にも変化が感じられるようになる。
とくにお腹まわりや顔のむくみが改善されることが多いが、これらは個人の代謝やダイエットの実行方法によって異なるため、3ヶ月で目に見える変化が現れない場合もある。

長期間のケトジェニックダイエットによって糖尿病のリスクが低下したなどのデータはあるものの、実際に摂取している栄養素の質がどうかが「ダイエットしている」ことよりも大切です。動物性脂肪の過剰摂取に気をつけ、MCTオイルや魚油などの良質な脂肪酸を摂取しましょう。ダイエット期間中に限らず、日々の食事内容から意識しておこなうのがおすすめです。
ケトジェニックダイエット中に食べていいもの
ケトジェニックダイエットは炭水化物の摂取を抑えて、脂質を積極的に摂取することが基本的な方法。ここでは、脂質を効率よく摂取するのにおすすめの食品を紹介。
- 高脂質食材:アボカド・ナッツ類・オリーブオイル
- 良質なタンパク質:魚・肉・卵・チーズ
- 低炭水化物野菜:ブロッコリー・ほうれん草・キャベツ
- 適度に摂取可能な果物:ベリー類・グレープフルーツ
高脂質食材:アボカド・ナッツ類・オリーブオイル
ケトジェニックダイエットでは、高脂質食品の摂取が中心となる。良質な脂質を多く含む食品としては、「アボカド」「ナッツ類」「オリーブオイル」などがある。
アボカドは一価不飽和脂肪酸を豊富に含み「ビタミン」「ミネラル」も豊富。サラダに加えたり、そのまま食べたりとさまざまな料理に使える。ナッツ類は良質な脂肪酸に加え、「タンパク質」「食物繊維」も含むため間食としても適している。
また、ココナッツオイルは脂肪として蓄積されにくい中鎖脂肪酸を含み、サラダのドレッシングにも活用しやすい。

ケトジェニックダイエット中の脂質摂取量は、PFCバランス(タンパク質・脂質・炭水化物)が3:6:1の比率を目安にしてください。「肉類」「魚介類」「卵」「牛乳」「サラダ」「ナッツ類」「大豆製品」などからタンパク質をとり、ビールなどのアルコールは糖質なので控えましょう。
脂質はタンパク質を食べるにつれ多くなってしまいがちなので、サラダに「オリーブオイル」や「えごま油」をかけたりして摂取するのもおすすめです。
良質なタンパク質:魚・肉・卵・チーズ
ケトジェニックダイエットでは適度なタンパク質摂取も重要。良質なタンパク質として、魚、肉、卵、チーズなどがおすすめ。これらは脂質も含んでいるためケトジェニックダイエットに適している。
魚は良質なタンパク質に加え「オメガ3脂肪酸」も豊富。とくに「サーモン」「マグロ」「サバ」などの脂肪分の多い魚がおすすめ。肉類では脂身の多い部位を選ぶのもよい。
卵も良質なタンパク質を含み、「ビタミン」「ミネラル」も豊富。調理法も多様でさまざまな料理に使える。また、チーズなどの乳製品もタンパク質と脂質を含み、カルシウムも豊富。ただし、乳糖を含むため乳糖不耐症の人は摂取量に注意が必要。
低炭水化物野菜:ブロッコリー・ほうれん草・キャベツ
ケトジェニックダイエットでは炭水化物の摂取を制限する必要があるが、栄養バランスを保つためにも野菜の摂取は大切。とくに、低炭水化物野菜を選ぶことがポイントで「ブロッコリー」「ほうれん草」「キャベツ」などがおすすめ。
これらの野菜は、「食物繊維」「ビタミン」「ミネラル」が豊富で、身体の健康維持に欠かせない。また、低エネルギーで満腹感を得られるため、空腹感の軽減にも効果的。調理方法も多様で、サラダやスープ、炒め物などさまざまな料理に活用できる。

低炭水化物野菜を中心とする食事では、糖質の摂取量が減少してしまいますので糖質を含む野菜もバランスよく摂取しましょう。野菜を選ぶ際に「ごぼう」や「人参」などの根菜類をGI値で見て糖質が高いと判断してしまうことがありますが、これをGL値で見た場合、糖質はそれほど高くないため気にせず食べて大丈夫です。
適度に摂取可能な果物:ベリー類・グレープフルーツ
ベリー類(イチゴ、ブルーベリー、ラズベリーなど)やレモンなどの柑橘類は比較的糖質が少なく、「食物繊維」「ビタミン」「抗酸化物質」が豊富。とくにベリー類は抗炎症作用や、血糖値の上昇を抑える効果があるとされている。
グレープフルーツは料理の味付けや、水分補給時の風味付けに活用できビタミンCも豊富。ただし、果物は少量を楽しむ程度に留め、総炭水化物摂取量の範囲内に収めることが重要。
また、バナナやリンゴなど、糖質の多い果物はできるだけ控えるように。

ケトジェニックダイエットにおすすめの食事メニュー
ここでは、炭水化物の摂取を抑えつつ、バランスよく栄養素を摂取するためのおすすめダイエットメニューを紹介。
- 朝食:良質な脂質・タンパク質で1日のエネルギー源を確保
- 昼食:タンパク質・野菜を中心に、持続的なエネルギーを維持
- 夕食:低糖質メニューで満足感を得ながら量は控えめに

ケトジェニックダイエット中は、朝昼を重視した食事がおすすめです。夜間は脂質の代謝が低下するため、朝と昼で1日の食事をほぼ完結させるような形が理想的です。夕食は全体的なボリュームを抑え、少量のタンパク質と脂質を中心とした軽めの食事がおすすめです。
朝食:良質な脂質・タンパク質で1日のエネルギー源を確保
朝食では良質な脂質とタンパク質を十分に摂取し、1日のエネルギー源を確保する。「MCTオイル」「卵」「アボカド」を積極的に取り入れ、エネルギーをしっかりとろう。
食物繊維も忘れずに摂取し腸内環境を整える。糖質は朝多めに摂取し夜減らすことを意識すると、1日の食事量をコントロールしやすく、日中にエネルギーとして糖質を消費できる。

- 雑穀ごはん(お茶碗1/3で100gくらい)
- 納豆(MCTオイル入り)
- おひたし、もしくは豆腐(かつお節をかける)
- ゆで卵
- グレープフルーツ1/4
女性の場合、とくに上記メニューがおすすめです。朝のうちに思い切って糖質40gを目安に食べてしまうのも1つの方法です。
昼食:タンパク質・野菜を中心に、持続的なエネルギーを維持
昼食ではタンパク質と野菜を中心に摂取し、朝食に引き続きエネルギー補給を意識しよう。良質な脂肪も適度に取り入れ、ケトーシス状態を維持するのがポイント。
食物繊維が豊富な野菜を積極的にとることで、満腹感を得ながら栄養バランスを整えることが大切。とくに昼は食物繊維の摂取量が減りやすいので意識して野菜を多めにとろう。

- マンナンご飯、もしくはこんにゃくご飯
- サラダボウル+サラダチキン(オイルドレッシング・ナッツ・チーズも追加
- コーヒー(MCTオイル入り)
- グリーンスムージー
基本的に食事量は朝食と同様のボリューム感にしましょう。
夕食:低糖質メニューで満足感を得ながら量は控えめに
夕食は野菜やイモ類などの食物繊維が豊富な食べ物を組み合わせることで、栄養バランスを整えよう。夕食の糖質は体内で消費しにくいので15g以下を目安にするのがおすすめ。

「春雨スープ」はジャガイモなど芋類のでんぷんを使用していて血糖値を上げにくいメニューです。身体も温められるので朝食や昼食はもちろん、夕食にもおすすめです。夜は脂質の代謝が落ちるので脂っこい食事は避けるようにしましょう。
コンビニで買えるおすすめの食べ物・飲み物
ここでは、忙しくて自宅で料理をする時間がない人向けの、ケトジェニックダイエットに適したおすすめコンビニ商品を紹介。
- サラダチキン・ゆで卵:手軽にタンパク質を補給
- ナッツ類・チーズスティック:脂質を効率的に摂取
- 炭酸水・お茶:水分補給と満腹感をキープ

コンビニで手に入るものでは、「焼き魚」や「春雨スープ」がおすすめです。低糖質な上、栄養バランスもよいです。また、糖質オフのパンもあります。糖質を制限することが重要ではありますが、昼や夜の食べ過ぎを防ぐためにも朝食では適度な糖質摂取が理想です。
サラダチキン・ゆで卵:手軽にタンパク質を補給
サラダチキンは「100g当たり約20〜25g」のタンパク質を含み、かつ糖質をほとんど含まないため、ケトジェニックダイエットに最適。さまざまな味付けのものがあるが、糖質の少ないプレーンタイプを選ぶのがおすすめ。
ゆで卵も同様に優れたタンパク質源。「1個あたり約6g」のタンパク質を含み、良質な脂質も適度に含まれている。また、「ビタミンB群」「ビタミンD」「ミネラル」なども豊富で、栄養バランスがよい。手軽に食べれて、満腹感も得られるため間食にも適している。
ナッツ類・チーズスティック:脂質を効率的に摂取
ナッツ類やチーズスティックは脂質を効率的に摂取でき、持ち運びもしやすいのでオフィスでのスナックや外出時の補食として最適。ナッツ類(アーモンド、マカダミアナッツ、くるみなど)は、良質な脂肪酸を豊富に含む。
また、「食物繊維」「ビタミンE」「マグネシウム」などの栄養素も豊富。ただし、カロリーが高いため、適量を守ることが大切。小分けパックを選ぶと摂取量の管理がしやすい。
チーズスティックは「高脂肪・高タンパク質」で低糖質な食品。カルシウムも豊富に含まれている。ただし、塩分含有量が高いものもあるため、1日の摂取量には注意しよう。
炭酸水・お茶:水分補給と満腹感をキープ
ケトジェニックダイエット中の水分補給には甘味料が入っていない「炭酸水」「お茶」を選ぼう。水分補給と満腹感の維持に役立つ。炭酸水は炭酸ガスによって胃が膨らむため、より満腹感を得やすい。
無糖の緑茶や麦茶などのお茶類も、「カフェイン」「カテキン」などの成分により代謝を促進する効果が期待できる。
ケトジェニックダイエットをおこなう際の注意点
ケトジェニックダイエットを実施すると一時的な不快感や倦怠感が起こったり、栄養不足に陥ったりすることも。しっかりと体調管理をしながら、無理のない範囲で取り組むようにしよう。
- ビタミン・ミネラルを意識してとる
- 有酸素運動は控えめ。軽めの筋トレを中心に行う
- 吐き気・倦怠感などが続く場合は中断し、医療機関に相談する
ビタミン・ミネラルを意識してとる
ケトジェニックダイエットでは炭水化物の摂取を極端に制限するため、「ビタミン」や「ミネラル」が不足しがち。果物や野菜、全粒穀物などの摂取が制限されることで、水溶性ビタミンや食物繊維、ミネラルが不足する可能性がある。
とくに注意すべきなのは、身体の基本的な機能維持に不可欠な以下の栄養素が不足すること。
- ビタミンB群
- ビタミンC
- ビタミンD
- カルシウム
- マグネシウム
- カリウム など
また、これらの栄養素は基本的に食事から摂取するのが理想的。サプリメントはあくまで補助的な役割であり、完全に食事を代替するものではない。「低炭水化物の野菜」「ナッツ類」「魚介類」などから栄養を摂取することを心がけよう。

ケトジェニックダイエット中は炭水化物の摂取が不足するため「便秘」になりやすいです。同じ炭水化物とはいえ、食物繊維を意識的に摂取することは大切です。また、脳が糖質を欲して過食につながることもあるため、極端な糖質制限にも注意しましょう。
一方で、脂肪分を多く摂取することで下痢につながる可能性があります。また、タンパク質の過剰摂取によって腎臓機能の低下を引き起こすこともあるのでとりすぎに注意してください。
有酸素運動は控えめ。軽めの筋トレを中心に行う
炭水化物の摂取が制限されている状態では、長時間の有酸素運動をおこなうためのエネルギーが不足している。そのため、ケトジェニックダイエット中は有酸素運動を控えめにし、「軽めの筋トレ」を中心におこなうのがおすすめ。
また、筋トレは短時間で高強度の運動が可能なため、ケトーシス状態を維持しやすい。自重トレーニングやダンベルなどを使った軽めの筋トレは筋肉量の維持や基礎代謝の向上にも役立つ。
運動を取り入れる際は、高強度の運動をいきなりおこなうのではなく、徐々に強度を上げて身体に負担がかかりすぎないようにしよう。
吐き気・倦怠感などが続く場合は中断し、医療機関に相談する
ケトジェニックダイエットを開始して間もない時期に、一時的な吐き気や倦怠感を感じることがある。これは「ケトフル」と呼ばれる症状で、身体がケトーシス状態に適応する過程で起こる現象。
通常は「数日から1週間程度」で改善するものの、これらの症状が長期間(2週間以上)続く場合や、症状が悪化する場合は要注意。
とくに、以下のような症状が現れた場合は、ケトジェニックダイエットを中断し、医療機関に相談することも視野に入れよう。
- 激しい頭痛
- めまい
- 持続的な吐き気
- 極度の倦怠感 など
ケトジェニックダイエットに関するQ&A
糖質制限ダイエットとのおもな違いは?
A:おもな違いは脂質の摂取量

ケトジェニックダイエットでは糖質を制限するだけでなく、脂質を多く摂取します。一方、糖質制限ダイエットは普段の食事から糖質をカットし、脂質は少量で補う程度です。極端な制限はかえって健康に悪影響を及ぼす可能性があるので、もしケトジェニックダイエットをやってみたい場合は、正しいやり方を理解した上でおこなうようにしてください。
ケトジェニックダイエットが便秘・下痢の原因になることがある?
A:ある

ケトジェニックダイエットをおこなうと、炭水化物と脂質の摂取バランスが大きく変化するため、便秘や下痢を引き起こすことがあります。そのため、意識的な水分摂取や食物繊維の摂取を心がけるのがおすすめです。
ケトジェニックダイエット中はプロテインも併用した方がいい?
A:飲むのは問題ないが摂りすぎには注意

ケトジェニックダイエット中、プロテインを併用することにはとくに問題はありません。しかし、プロテインをとりすぎた場合、腎臓に負担をかけることがあるため、1回のタンパク質摂取量は20g程度に抑え、過剰摂取にならないよう気をつけてください。
博士(理学) 管理栄養士
愛国学園短期大学 家政科 准教授、早稲田大学 ナノライフ創新研究機構 招聘研究員、(株)アスリートフードマイスター 認定講師、発酵料理士協会特別講師としても勤務。「時間」という観点から、医学・栄養学・調理学の領域にアプローチすることを専門とする。科学的根拠を基にしたライフスタイルへのアドバイス、実体験を基にした食育活動や講演活動、料理教室も開催している。『食べる時間を変えるだけ! 知って得する時間栄養学』(宝島社/2022)、『10時間空腹リセットダイエット』(主婦の友社/2023)、他多数の書籍を執筆。
【所属】
愛国学園短期大学 家政科 准教授
早稲田大学ナノ・ライフ創新研究機構 招聘研究員
あきはばら駅クリニック 非常勤管理栄養士
アスリートフードマイスター認定講師
発酵料理士協会特別講師