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【ブランド責任者のB面】猫を見る研究者から、飼い主を見るブランド責任者へ。立場が変わっても考え続ける「猫ちゃんの健康」

猫の下部尿路の健康維持に配慮したキャットフードブランド「メディファス」。そのブランドマネージャーを務める大石亮さんは、麻布大学獣医学部出身の獣医師であり、約13年間にわたりキャットフード・ドッグフードの研究開発に携わってきた研究者でもある。

「猫ちゃんに健康で長く暮らしてほしい」。その想いは、研究者だったころも、ブランドマネージャーとなった今も変わらない。

ただ、変わったのは、その想いの届け方だった。フードを開発するだけでは、猫の健康は守れない。だからこそ今は、専門知識を飼い主に伝わる言葉へと翻訳し、「猫の健康を守る文化」を育てることに力を注いでいる。

研究者からブランド責任者へ――変わらない信念と、新たな挑戦に迫る。

大石 亮さん

獣医師 / 博士(獣医学)

ペットライン㈱ ビジネスクリエイト本部マーケティング部ブランドチームに所属し、「メディファス」ブランドマネージャーを担当。

2012年に親会社である日本農産工業㈱に入社、ペットフード研究部門に配属、2019年に同部門がペットライン㈱に譲渡、同社へ出向となる。

約13年に渡り療法食も含めたキャットフード・ドッグフードの研究開発、試験研究、レシピ設計に携わり、同時にスタッフ猫/犬の健康管理、診断治療を行ってきた。

嗜好性の向上、犬の消化速度に注目した療法食の開発、2種類の尿石をケアするフードの基礎研究を始め、多くの製品のレシピ設計に関与。

2025年5月に現在の部署に異動、メディファスのブランドマネージャーを務める。
2026年3月にメディファス スナックを上市。設計経験を活かし、主食と合わせた際の健康ケア、塩分摂取量に配慮した調味料不使用のペースト状おやつ。

現在は「猫には下部尿路の日常ケアが必要」ということを啓発するため、「発症時のつらい思いと、知らなかったことによる後悔をしてほしくない」旨を応援キャラクターとマンガを使って発信している(2026年6月19日公開)。

目次

動物好きだった少年が獣医学部へ

── 大石さんは、子どものころから動物がお好きだったのですか?

大石さん:はい。小学生のころはハムスターを飼っていましたし、高校では生物部に入っていました。

── 生物部というと、解剖をしていたのですか!?

大石さん:そのイメージがありますよね(笑)。でも私の学校はちょっと違っていて、プレハブ小屋でハムスターやウサギを飼育し、校内を散歩させるような動物のお世話をする活動でした。

── それは珍しいですね。かなり動物との距離が近い学校生活だったことが伺えます。

大石さん:そうですね。振り返ると、ずっと動物が身近にいる環境だったんだなと思います。

── 動物と触れ合ううちに獣医への道を志すようになったのですか?

大石さん:獣医学部に入ったのは、シンプルに「動物が好きだから」というのが一番大きかったですね。正直なところ「絶対に獣医になるんだ」という強い想いは、当時はなくて。

── そこからどうやって進路を決めたのでしょうか?

大石さん:3年生になって研究室を選ぶタイミングで、「自分はどんな形で動物と関わりたいか」を真面目に考え始めました。

ちょうどそのとき、自分自身が病気で入院したときのことを振り返って、治療を受ける立場になってみて初めて「病気を治すってこんなに大変なことなんだ」と実感したことを思い出しました。

だったら、「治すより、もっと前の段階でできることがあるんじゃないか」と思い、病気にならないように動物を支えたいと考えるようになったのです。

── 動物の健康的な体づくりについて考えたということでしょうか?

大石さん:はい。つまり、「予防」ですね。栄養の面から予防医学を研究したいと思い、栄養学研究室を選びました。

── その研究室での経験が、ペットフードの仕事の原点になるのですね!

大石さん:そうなりますね。3年生から所属した栄養学研究室では、ペットフード会社との共同研究も行っていて、それが今の仕事につながる最初の接点になりました。

ペットフードの研究者が、ブランドマネージャーに

── 就職後はどれくらいの期間、ペットフードの研究に携わってきたのですか?

大石さん:約13年間ですね。キャットフードやドッグフードの研究開発やレシピ設計、試験を行いながら、研究所でフード開発に協力してくれている犬や猫の健康管理や診療も担当していました。

── その後、現職のブランドマネージャーへと転身されるわけですが、ご自身で希望されたのですか?

大石さん:いえ、実は「ブランドマネージャーになりたいです」と希望したわけではないんですよ(笑)。

会社のジョブローテーションの一環で、約13年間研究所にいた経験を、今度はブランドづくりや情報発信に活かしてほしいと声をかけてもらいました。

── 研究者とブランドマネージャーでは職種がまったく違いますが、当初はどのように受け止めましたか?

大石さん:そうですね。初めての挑戦でしたが、これまでレシピを設計し、商品の機能について考えてきた経験があるからこそ、発信できることもあるかもしれないと思いました。

いいキャットフードを「つくる」だけでは、猫は守れない

── 今はブランドマネージャーとして「メディファス」をご担当されているということですが、「メディファス」について簡単に教えていただけますか?

大石さん:メディファスは、猫ちゃんの下部尿路の健康維持に配慮したキャットフードブランドです。

ブランドが誕生した当時は、ここまで下部尿路の健康に特化したキャットフードはほとんどありませんでした。その分野では、パイオニアの一つだったと思っています。

下部尿路とは?

下部尿路とは、膀胱や尿道など、おしっこをためたり排出したりする器官のこと。猫はもともと尿が濃くなりやすい体質のため、結晶や結石などのトラブルが起こりやすいと言われている。

── 発売当時から、下部尿路のケアに着目していたのですね。

大石さん:そうですね。猫ちゃんの健康を考える上で、下部尿路は昔からとても大切な部分なんです。

猫ちゃんはもともと、おしっこを濃く、少量で出す体質なので、尿の中の成分が結晶や石になりやすいという特徴があります。

さらに最近は平均寿命も15歳を超え、長く生きられるようになった分、内臓への負担も大きくなっているんです。だからこそ、年齢に合わせて日常的に配慮することが大切だと考えています。

── その下部尿路の健康を守るために、メディファスではどのような考え方で商品を設計されているのでしょうか?

大石さん:メディファスはブランド全体として、下部尿路の健康維持に配慮した設計になっています。

おしっこの状態には、濃さやpH、カルシウムやリンなどのミネラルバランスが関係するため、それらに配慮して栄養バランスを調整しているんです。

いい商品でも、伝わらなければ意味がない

── ブランドマネージャーになられて、このブランドと向き合ったときにどんなことを感じましたか?

大石さん:最初に感じたのは、「こんなにいい商品なのに、まだ魅力を十分に伝えきれていない」ということでした。

研究者のころは、「どうすればもっと健康に役立つフードをつくれるか」をずっと考えてきました。でもブランドの仕事に就いて、「つくること」と「伝えること」は全然違うんだと気づいたんです。

── つくるだけでなく、その価値をどう届けるかもブランドの役割なんですね。

大石さん:はい。どれだけいい商品でも、その価値が飼い主さんに伝わらなければ、猫ちゃんの健康にはつながりません。それが、メディファスのブランドマネージャーに就任してみて、一番大きく感じたことでした。

── なるほど。ペットフードを選ぶときに、機能性まで理解して選んでいる飼い主さんは、実は少ないのかもしれませんね。実際、そのように感じたことはありますか?

大石さん:下部尿路のケアは、特別な猫ちゃんだけの話ではなく、すべての猫ちゃんにとって、日頃から気にかけてほしいことなんです。

でも「おしっこの健康を気にしていますか」というアンケートでは、「気にしている」と答えた方は約2割ほどでした。

── かなり少ないですね……。

大石さん:私もアンケート結果を見たときは、やはりすごく驚きました。研究者としては当たり前だと思っていたことが、飼い主さんにはまだ十分に伝わっていなかった。

その現実を突きつけられたような気持ちでした。

伝え方まで考えるのがブランドの仕事

── では、その価値をどのように届けようと考えたのでしょうか?

大石さん:病気の話って、どうしても難しく聞こえてしまうので、親しみやすい兄弟猫のキャラクター「カブニョロブラザーズ」をつくりました。

兄は、おしっこのトラブルを経験したことがある。弟はまだ元気だから、「大丈夫」と思っている。その弟に、お兄ちゃんが少しずつ伝えていくストーリーにしています。

実は、これは飼い主さんにも重なると思っているんです。

── 実際の経験談を伝えていくというストーリーになっているのですね。

大石さん:そうなんです。以前、飼い主さん向けのイベントで下部尿路のケアについてお話ししたことがあります。もともと関心を持っていた方は5〜7割ほどでしたが、話を聞いた後には、9割以上の方が「もっとケアしたい」と答えてくださったんです。

そのとき、きちんと伝えること自体に意味があると実感しました。

続けられる「おいしさ」にもこだわる

── ここまで、メディファスが猫ちゃんの健康をどのように考えているかを伺ってきました。どんなに健康に配慮したフードでも、猫ちゃんが食べてくれなければ意味がありませんよね。その点では、「おいしさ」も大切になるのでしょうか?

大石さん:もちろんです。健康に配慮した設計であることはもちろんですが、毎日続けて食べてもらうためには、おいしさも欠かせません。

そのために、猫ちゃんたちに協力してもらって、「どちらがおいしいですか?」という試験を何度も繰り返しています。

── 猫ちゃんたちが商品開発に協力してくれているんですね!

大石さん:そうなんです。私が食べて「おいしい」と判断するわけにはいきませんから(笑)。猫ちゃんにとっておいしいものは、猫ちゃんに聞くしかないんです。

実際に二つのお皿を並べて、「どっちが好き?」と選んでもらっています。

── 人間がおいしいと感じる味と猫ちゃんが好きな味は違うのですか?

大石さん:違いますね。材料は人間用の食品にもよく使われるものですが、風味については、猫ちゃんの好みに合わせて調整するんです。

正直、私(人間)にとってはおいしくはないです(笑)。

── (笑)。2026年3月に発売されたペーストタイプのスナックも、猫ちゃんにとっての食べやすさを考えて開発されたのでしょうか?

大石さん:はい。年齢を重ねると固形よりもペーストの方が食べやすくなる子もいるので、健康だけでなく、「長く食べ続けられること」も考えて設計しています。

猫の健康は、フードだけでは守れない

── 研究者からブランドマネージャーへと立場が変わり、ご自身の中で一番変わったことは何でしたか?

大石さん:一番変わったのは、見ている相手ですね。

研究者のころは、猫ちゃんの体を見ていました。どんな栄養が必要なのか、どんなフードなら健康を支えられるのか。猫ちゃんにとっていいものをつくることが仕事でした。

でも今は、その猫ちゃんと暮らす飼い主さんを見ています。病気になってからの大変さを知っているからこそ、その前に飼い主さんが気づける小さな変化があることを伝えたい。

だからこそ、フードの機能だけではなく、毎日の暮らしの中で何を見てほしいのか、どうすれば猫ちゃんの健康を守れるのかまで伝えることも、自分の役割だと思っています。

── フードを届けるだけではなく、飼い主さんの行動や意識まで変えていきたい、ということなのですね。

大石さん:はい。フードだけで、すべてを解決できるわけではありませんから。

変化に気づくために、「いつも通り」を知る

── では、猫ちゃんの健康を守るために飼い主さんにはどんなことを意識してほしいですか?

大石さん:よくお伝えしているのは、「いつも通りを知ってください」ということです。例えば「おしっこは一日に何回が正常ですか」と聞かれることがあります。

でも、回数だけを見て、すべての猫ちゃんに共通する正常・異常を判断するのは難しいんです。

もともとの回数を知っていれば、「今日は多い」「いつもより少ない」と変化に気づけます。まずは、その子の普段の状態を知ることが大切です。

── 人間と同じということですね。家族の不調は、普段の様子を知っているから気づくというか。

大石さん:はい。おしっこの回数だけではなく「トイレに行っているのに出ていない」「長い時間トイレにいる」「普段と違う場所でしてしまう」といった変化も気にしてほしいですね。

そのうえで、「いつもと違う」と感じたら、早めに動物病院へ相談していただきたいと思っています。

猫ちゃんの健康を守る文化を育てたい

── ここまでお話を伺ってきて、大石さんが伝えたいのは、商品そのものではなく、「猫ちゃんの健康を守る考え方」なのだと感じました。その想いを、メディファスというブランドを通じてどのように広げていきたいですか?

大石さん:売上を伸ばすことも企業としてもちろん大切ですが、それ以上に、「猫ちゃんのおしっこの健康は大事だよね」という共通認識がもっと広がってほしいと思っています。

今は、お腹のケアや毛玉のケアなど、キャットフードにもいろいろな機能ありますが、猫ちゃんと暮らすなら、おしっこのケアをまず第一に考えてほしい。その上でいろいろな機能をオプションとして選ぶ。そういった文化を少しずつ育てていきたいです。

── メディファスを広めるというより、「猫ちゃんのおしっこの健康」を広めたい、という想いを大切にされているのですね。

大石さん:SNSを見ていても、「うちの猫ちゃん、おしっこの回数はこれくらいかな」「最近、水をよく飲んでいるかな」といった話題が、自然に出てくるようになったらいいなと願っています。

ブランド名が前に出るよりも、そういう会話が当たり前になることの方が、私にとっては大切です。その結果として、「そういえばメディファスって、ずっとおしっこのことを伝えてきたブランドだよね」と思い出していただけたら、一番うれしいですね。

Wellulu編集後記

取材中、何度も「猫ちゃん」という言葉を使っていた大石さん。その穏やかな語り口からは、ブランドマネージャーという肩書きよりも、一人の猫好きとして、猫の健康を心から願う想いが伝わってきました。

研究者として猫の体と向き合い、今はブランドマネージャーとして飼い主さんと向き合う。立場は変わっても、「猫ちゃんに健康で長く暮らしてほしい」という想いは少しも変わっていない。その一貫した姿勢に、強く心を動かされました。

おしっこの回数や水を飲む様子を、いつもより少し気にかけて見てみよう。

そんな小さな気づきこそが、大石さんが目指している「猫ちゃんの健康を守る文化」の第一歩なのかもしれません。私も実家に帰ったら、愛猫の様子をいつも以上にしっかり観察してみようと思います。

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