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約6割が枕に満足していない!理想的な枕の角度は15度らしい【まくら株式会社】

毎日約7〜8時間、私たちの睡眠の必需品として使用している枕。実は約6割もの人が、自分の枕に満足できていない「枕難民」であることが枕に関しての実態調査からわかったそう。なぜこれほどの人が自分に合った枕を見つけられないのか?数ある中から自分に合う枕を選ぶための重要なポイントや理想の枕の角度などについて、今回まくら株式会社の益田さんに詳しくお話を伺った。

益田桃花さん

まくら株式会社 睡眠改善インストラクター / 睡眠環境・寝具指導士(R)

自身の睡眠好きが高じて学生時代から睡眠についての研究に従事し、一般社団法人日本睡眠改善協議会(JOBS)主催の睡眠資格「睡眠改善インストラクター」の資格を取得。大学卒業後、枕の企画製造販売をメインとする「まくら株式会社」に入社し、商品企画/広報担当として活躍。その後は、日本寝具寝装品協会主催の睡眠スペシャリスト「睡眠環境・寝具指導士(R)」の資格も取得し、自社商品の監修や、様々な企業とのコラボレーションにおける企画、監修を行っている。

本記事のリリース情報
Webメディア「Wellulu」にて、枕の専門家としてインタビュー取材を受けました。

目次

「枕難民」が増えている?枕から考える私たちの睡眠環境

枕に関しての実態調査を通して見えてきたこと

──本日はよろしくお願いします!

益田さん:こちらこそよろしくお願いします!

──まず、御社では枕に関して実態を把握するための調査をおこなわれたそうですが、どのような背景から調査をすることになったのでしょうか?

益田さん:私たちは枕の企画・販売を行う中で、枕に関する実態を把握したいという思いがありました。そこで、枕に関しての利用・実態・意識調査をおこない、「まくら白書 2024」を通して発信しています。

──普段お客様と接している中で枕に対しての意識など、課題に感じる部分があったのでしょうか?

益田さん:そうなんです。枕は毎日使うものであるにも関わらず、お客様自身が自分の枕についてよく知らない、という状況でした。

たとえば、「どんな枕をお使いですか?」と伺うと「普通の枕だよ」とだけ答える方が多く、素材や大きさを聞いても「わかりません」とおっしゃる方がほとんどだったのです。このような状況から、枕に関する関心や知識を広めるため、データを公表して多くの方に届けたいと考えました。

──なるほど。日常生活の中で枕に対して特別意識が向いていない現状があるのですね。調査で判明した現状を教えてください。

益田さん:調査の結果からとくに注目したいのは「枕難民」というものです。

約6割の人が満足のいく枕に出会えていない「枕難民」

──「枕難民」ですか…?自分に合う枕に出会えていない、ということなのでしょうか?

益田さん:そうなんです。調査で「お使いの枕に満足していますか?」という質問をおこなったところ、「不満」と「やや不満」と回答された方がなんと全体の59.3%にのぼりました。この方々がまさに「枕難民」なのです。

──約6割もの人が満足する枕には出会えていないのですね。背景にはどういった要因があるとお考えでしょうか?

益田さん:そこには枕選びの難しさや情報不足があると思っていて、素材や高さに対する情報が十分に広まっていないことや、枕の種類が多様化していることも、選択が難しくなっている一因だと感じています。不満を抱えつつも何も行動を起こさない方も多く、そうした意味でも枕に対する興味や関心の低さが背景にあると考えています。

──多くの人が枕に悩みを持ちながらも行動を起こせていない現状があるのですね。満足度が低い理由にはどういったものがあるのでしょうか?

益田さん:「不満」と「やや不満」と回答された方は「首が凝る」「肩が凝る」「疲れが取れない」といった身体的な問題を挙げています。このような不快感や不調は、枕が身体に合っていないことで生じている可能性があります。

朝起きたときに首や肩の凝りの悪化はもちろん、腰痛も実は枕が原因となっている可能性があるんです。高さが合わないことで全身のバランスが崩れ、寝姿勢に影響を与えてしまうんです。

──身体を休める時間のはずなのに…と思いますよね。睡眠環境を整える必要性を感じる調査結果ですね。最近では睡眠への意識に対する高まりも感じていますか?

益田さん:そうですね、以前は「睡眠中は何もしていないから無駄な時間」「なるべく寝る時間を減らして有効活用しよう」といった考えが主流で、睡眠は軽視され、後回しにされがちでした。

ですが、最近では睡眠が「健康維持のための積極的な行動」として見直されるようになったと感じており、よい傾向だと感じています。

──たしかに、身体がきつくなることわかっていながらも、睡眠を削って何かをしよう、みたいな部分がありましたよね。

益田さん:そうなんです。睡眠は単なる「休む時間」ではなく、能動的に健康を管理するための重要な時間なので、この考え方がもっと広がって、自分に合った枕や寝具を見つけてよりよい睡眠環境につながっていくといいなと思っています。

──もっと枕や寝具に関して私たち自身も知っていかなければなりませんね。

益田さん:そのため、私たちは枕に関する知識や選び方のポイントをもっと分かりやすく発信していきたいと思っています。枕は睡眠の質に直結する大切なアイテムなので、多くの方に自分に合った枕を見つけるきっかけを提供していきたいですね。

寝姿勢を保ち快適な睡眠のための理想の枕の条件とは

──枕についての基本的な役割や歴史について伺っていきたいのですが、まずその役割を教えてください。

益田さん:枕のおもな役割は、横になったときに首や頭の下にできる隙間を埋め、安定した寝姿勢を保つことです。理想的な寝姿勢というのは、自然に立っているときの姿勢をそのまま寝ている状態でも維持することにあります。立った状態で横に倒れると、首の後ろと頭の後ろに隙間ができますよね。この隙間を埋める枕がないと、頭が後ろに沿ってしまい、首や肩に負担がかかってしまうんです。

また、枕の歴史は非常に古く、遺跡からは石や木で作られた枕が出土されています。枕を使うのは人間だけで、これには二足歩行になったことが大きく影響しています。二足歩行により、首や背骨にかかる負担が増えたため、その負担を和らげるための道具として枕が必要になったと考えられているんです。

──枕が二足歩行と関係していて、身体的に必要になり生まれたというのは興味深いですね。

益田さん:その通りで、太古の人々も身体の快適さや健康を守るために、何かしらの道具として枕を使いたいと感じたのだと思います。

枕を選ぶ際に大事な3要素「高さ」「硬さ」「大きさ」

──では、枕を選ぶ際に、とくに重要となる要素は何なのでしょうか?

益田さん:枕を選ぶ際にとくに大事な要素は、「高さ」「硬さ」「大きさ」の3つです。中でも、寝心地や身体への影響が大きいのは高さです。適切な高さは人によって異なりますが、低すぎると枕の役割を果たせず、高すぎると逆に首や肩に負担をかけてしまいます。そのため、自分に合った高さを見極めることが非常に重要なのです。

──ホテルでも硬さの異なる枕が置いてあったりしますが、硬さは寝心地や身体にどういった影響を与えるのでしょうか?

益田さん:硬さは固すぎる枕は圧力が集中し、頭や首に痛みを感じたり、眠りにくくなったりする可能性があります。一方で、柔らかすぎると頭が埋まってしまい、寝返りが打てなくなります。

人は1晩で20回以上寝返りを打つと言われており、これが妨げられると血流が阻害されたり、局所的に熱がこもったりして、寝苦しくなってしまいます。硬さは身体に負担をかけない程度で選ぶことが大切です。

──柔らかいものは包み込まれるような感じがしてよいのかと思っていましたが、寝返りが打ちにくい原因になってしまうのですね。大きさはいかがでしょうか?

益田さん:大きさについては、横幅が狭すぎると頭が枕から落ちやすく、目が覚めてしまう原因になります。一方で、大きすぎる枕も、好みの体勢で眠りにくくなることがあります。そのため、自分の寝相やベッドのサイズ、好みに合ったサイズを選ぶことが重要です。

──寝室環境とも合わせて選ぶ必要があるのですね!形状や素材についてはいかがでしょうか?

益田さん:形状や素材も個人の好みや身体へのフィット感に大きく関わるものなので、高さ・硬さ・大きさの3つを軸に、形状や素材をしっかりと検討することがおすすめです。

15度が最適?理想の枕の角度とは

──これまで枕選びにおける重要な要件についてお話を伺いましたが、角度も重要とのことですね。これについても教えていただけますか?

益田さん:はい。みなさんはそば殻の枕を使ったことはありますでしょうか?まだ自宅で愛用されている方も多くいらっしゃると思います。

古くから使われてきた枕ではありますが、たとえばそば殻の枕の角度はかなり大きなものが多く、30~45度ほどあり、これでは首に大きな負担がかかることがわかりました。ここから「もっと低くすれば快適になるのでは?」という思いが生まれました。

──古いものだからこそのよさがあると思って実は私も使っていたんですが…首への負担は気になりますね。

益田さん:私たちは試行錯誤を繰り返し、最終的に一晩使っても疲れを感じにくい角度として「枕の角度は15度が最適」という結論に至ったのです。

──最適な角度の枕を使った睡眠ではどのようなよい点があるのでしょうか?

益田さん:枕の角度が15度であると、筋肉が無意識に力んでしまうのを防ぎ、自然にリラックスした状態を保てます。この角度が首や肩に負担をかけず、筋肉を休めるのに最適なのです。また、寝姿勢にゆるやかな傾斜がつくことで、呼吸もしやすくなるため、快適な睡眠をサポートします。

──逆に、首への負担以外にも角度の大きな枕が健康に与える影響はあるのでしょうか?

益田さん:高さが合っていない枕を使い続けると、首や肩に負担をかけるだけでなく、健康にも悪影響を及ぼします。最近では、「殿様枕症候群」と呼ばれる現象も注目されていて、枕が高すぎることで首への負担が増加し、脳卒中のリスクが増えるという研究結果があるのです。枕は頭を持ち上げるものではなく、隙間を埋めて支えるものなので、適切な高さや角度の枕を選ぶ重要性を改めて感じます。

──では実際にどのような高さの枕が一般的に多く使われているのでしょうか?

益田さん:ここ数年、以前に比べて低めの枕が人気を集めるようになっています。ただ、そば殻枕のような昔ながらの高い枕も、馴染み深さから一定の支持を保っています。枕の選び方や高さに対する意識は徐々に変わってきているものの、適切な角度や高さを考慮することへの意識はまだ不足しているように感じています。

──自分が使っている枕の角度が適切、自分の身体に合っているのかどうかを確認する方法はありますか?

益田さん:枕の角度を確認するには、自分の寝姿を横から見るのが一番簡単です。たとえば、誰かに見てもらったり、写真を撮って確認したりするとわかりやすいと思います。理想的な姿勢は、立っているときの自然な姿勢を横に倒した状態なので、横から見たときに首の角度が不自然でないかをチェックしてください。

──これも多少は個人差を考えて15度「くらい」と考えてるとよいのでしょうか?

益田さん:そうですね。実際には人それぞれ頭の大きさや後頭部の形、背中の筋肉の厚さなどが異なるため、15度を実現するための高さも個人差があります。

──枕の角度に関してのお考えから「理想的な15度枕」を展開されていますが、その機能やこだわりを教えてください。

益田さん:まず低反発のウレタンフォームを使用しているため、身体によくフィットします。フィット感があることで首や頭、背中の隙間をしっかり埋め、一部分に負担が集中したり、浮いてしまって筋肉がリラックスできないといった問題を防いでいます。

また、頭部から首、背中まで広範囲を支える形状になっているため、首の角度を自然な15度に保つことができます。この設計により、仰向けでも横向きでも快適に休めるよう工夫されています。

──先ほどの理想の角度について個人差があることについてはどのようにカバーすることができるのでしょうか?

益田さん:この枕は裏側に調節シートが付属しており、シートを抜き差しすることで高さを細かく調節できるという特徴があります。また、調節ポケットが3分割されていて、サイドと中央でそれぞれ高さを変えられる仕様になっているため、仰向け寝派、横向き寝派のどちらにも対応が可能なのです。

──全体の高さだけでなく寝姿勢の傾向にも合わせられるのですね。

益田さん:そうなんです。横向き寝では仰向け寝よりも高さが必要になるため、サイド部分を高く設定することで、寝姿勢が変わっても負担なく休んでいただけます。

自身の睡眠の課題を知り、解決に向けて枕を選ぶという方法

──枕を選ぶ際、まずおこなうべきことはありますか?

益田さん:まずは自分の睡眠における課題を明確にすることが大切だと思っています。たとえば、途中で目が覚めてしまうのか、枕の音や臭いが気になるのか、あるいはアレルギーの心配があるのかなど、自分が抱えている問題点を一つひとつ挙げてみてください。その課題を洗い出すことで、自然と適切な素材や形状が見えてきませんか?

──自分の睡眠における課題ですか!私は途中で目が覚めてしまうタイプかもしれません。

益田さん:途中で目が覚めてしまうというのが課題なのですね。この場合は、枕が身体にしっかりフィットしていない可能性が考えられます。

なので身体への負担が少ない硬さや、寝返りが打ちやすい横幅の広い枕が選択肢となります。

──なるほど!多くの種類から選ぶのではなく課題解決の糸口を見つけるのですね。

益田さん:そうなんです。このアプローチだと選んでいただきやすいと思います!

ほかにも、たとえば動いたときにガサッという音が気になる方も多いです。そういった場合には静音性の高い素材を選ぶようにするとよいです。あと、見落とされがちなのが枕の臭いで、羽毛や一部の合成素材は臭いが残ることがあるため、臭いに敏感な方は購入前にしっかり確認することをおすすめします。

──枕を選ぶ際にとくに注意が必要なものはありますか?

益田さん:アレルギーについては注意が必要です。そば殻や羽毛、ラテックスなど、一部の素材はアレルギーの原因となる場合がありますので、これに関しては必ず素材を確認するようにしてください。

──アレルギーは危険が伴うので重要なポイントですね。ほかにもヒントやアドバイスはありますか?

益田さん:洗える枕も人気で、洗えるかどうかを基準に選ぶ人も多いです。ただ実際に洗える方法をしっかり確認する必要があります。中には、手洗いのみのもの、洗濯機OK、乾燥機まで使用可能なものなど様々ですので、自分のライフスタイルに合わせてお手入れしやすいものを選んでください。

──メンテナンス方法が楽なのは魅力的ですよね。

「枕は睡眠の一等地」

──枕の重要性について、改めて教えていただけますか?

益田さん:はい。枕は、身体の中でも重要な器官が集まる「首から上」を支える道具です。脳をはじめ、視覚、聴覚、嗅覚、味覚など、多くの感覚器官が集まる部分を1日7~8時間支えるものです。そのため「枕は睡眠の一等地」なのです。

──「枕は睡眠の一等地」とはおもしろい表現ですね!

益田さん:また、枕が身体的な影響だけでなく心理的な影響も与えることを忘れてはいけません。たとえば、枕が臭かったり、音がうるさかったりすると睡眠の質に影響します。また、手入れがしづらい枕は、使い続けるうちにストレスになる場合もありますよね。だからこそ、しっかり自分に合った枕を選んでほしいと思っています。

──最近は睡眠改善の最初のステップとして枕を見直す方も増えているそうですね。

益田さん:そうですね。以前は「枕は布団のおまけ」みたいな立ち位置であまり関心を持ってもらえないことも多かったのですが、最近では睡眠への関心が高まり、「まずは枕を変えてみよう」という方が増えていて嬉しく感じています。とくに朝起きたときのだるさや疲れが取れないといった悩みを解決するため、枕選びを見直す方が多いですね。

──よい傾向だと思います!睡眠を整えることでよりよい日々を叶える、より満足感の高い毎日が送れそうです。

益田さん:その通りです。枕は快適な睡眠だけでなく、健康にも大きく影響するので、ぜひとも自分の枕はどうか?自分に合っているか?見直しをして、満足できていない場合は満足のいく枕を見つけてほしいですね。

Wellulu編集後記:
1日の約3分の1にあたる時間を過ごす際に必要な枕にも関わらず、約6割もの人が自身の枕に満足していないという現実に驚きつつも、改めて考えてみると私自身もまさに「枕難民」だと感じました。よい枕はあるのだろうけど、種類が多くてどれが本当に「自分に合う」かがわからない。自分の睡眠の課題から枕選びをしていくという方法は目からウロコでした。課題を解消していくという新しい形の枕選び、ぜひとも試してみたいです。

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