
身体についてしまった皮下脂肪を、専用の器具で吸引して取り除く「脂肪吸引」。自力ではなかなか実現が難しい、部分痩せやボディラインの調整ができるとして、男女問わず多くの人に利用されている。
従来の「脂肪吸引」では、吸引した部位と周りの部位のバランスの不自然さなどが課題であったが、2024年12月にはどの角度から見ても美しい体型をデザインする最新の脂肪吸引技術「360°脂肪吸引」がリリースされた。
今回は、「360°脂肪吸引」をリリースした脂肪吸引と脂肪注入の専門クリニック・THE CLINICの総院長である大橋先生に「360°脂肪吸引」の効果と魅力について詳しくお話を伺った。

大橋 昌敬さん
THE CLINIC 総院長
美しい体型をデザイン!腹筋を割る・部分痩せより重要なコト
── まず「360°脂肪吸引」を開発するに至った経緯を教えていただけますか?
大橋さん:「360°脂肪吸引」の開発に至るには、外科手術によるボディデザインの第一人者であり、今世界でもっとも有名な脂肪吸引の外科医であるアルフレッド・ホヨス氏との出会いが大きかったですね。
私自身、約15年前に彼の施術を受け、彼との付き合いがはじまりました。それから、技術を教えに度々日本に来てくれているんです。2024年の5月に彼が来日した際にも、当院で解剖学的知識や施術の安全性、実際の手術についてなどのセミナーを2日間に渡って受けました。
── 実際に施術を体験してから、医師としての交流もされてきたのですね。
大橋さん:当時から、彼の技術は脂肪吸引の分野で飛び抜けていて、新しい機械の開発やすばらしい技術を確立していました。
たとえば、シックスパックを作る施術ですが、単に「割れた腹筋を作る」のではなく、いかにその人本来の筋肉の動きに合わせたシルエットを作るかを、医学的なアプローチで追及していくんです。
単にシックスパックを作るだけであれば、正直誰でもできます。しかし、その仕上がりはまるで板チョコのように不自然なものになってしまったりすることがあるんです。
これが、彼の技術であれば、人の身体の動きに対してどう筋肉が動くか、さらにその際にどのような影ができるかなどを考慮しながら作り上げるため、自然なシックスパックが作れるんです。
── 人間の身体の動きや、一人ひとりの身体に合わせてデザインされているということですね。
大橋さん:はい。彼は英語で「Total Definer(トータル・ディファイナー)」という表現をするのですが、これは気になる部位を部分的に吸引するのではなく、全体を見てどうするのがかっこいいのかを考慮して、全身をデザインするという考えなんですね。
この「どの角度から見ても美しい体型をデザインする」という考え方や「360°全体の調和」の重要性に気付かされて、今回の「360°脂肪吸引」を開発するに至りました。
どの角度から見ても美しい身体を目指す「360°脂肪吸引」
従来の脂肪吸引との違い
── 従来の脂肪吸引と「360°脂肪吸引」の大きな違いはなんでしょうか?
大橋さん:一般的な脂肪吸引は、「お腹を細くしたい」「太ももをスリムにしたい」といった部分的な要望に応じて、脂肪を吸引する手法です。しかし、それだけでは全身のバランスが崩れ、どこか不自然な仕上がりになってしまうというデメリットもありました。
一方、「360°脂肪吸引」は、全身のシルエットをトータルでデザインするアプローチを取ります。たとえば、お腹だけを細くするのではなく、ウエストから背中、ヒップラインまでを考慮し、どの角度から見ても美しいシルエットを作るといった形になります。
いわゆるハイデフ手術(High Definition Surgery)というもので、本来の骨格や身体の陰影にしっかりと注目し、筋肉のラインを際立たせて美しいボディラインを作るんです。
── 気になる部分を単に取るだけではなく、自然なラインを作ることを重視しているんですね。
大橋さん:前から見てウエストが細くても、後ろや斜めから見たときに美しくないと不自然ですよね。
実際に従来の脂肪吸引では、患者さんが希望する部位を、希望通りに吸引したけれど、全体のバランスをみると美しく見えない…という例もよくありました。せっかく施術を受けて、気になる部分の脂肪は落ちたけれど、全体的にみると気に入らないとなるともったいないですよね。
そこで、解剖学に基づいたアプローチで、どうしたら女性のボディラインが綺麗になるか、そこに各患者さんの希望も合わせながらどうしたらいいのかを考えていくのが、「360°脂肪吸引」の特徴ですね。
実際の施術例をみてみましょうか。
左:施術前、右:施術後
── 施術例のお写真をみてみても、脂肪吸引したのかどうか、言われなければわからないですね。とても自然な仕上がりに見えます。
大橋さん:ありがとうございます。
脂肪吸引したのがわからない身体になるのが、理想ですよね。
ですので、患者さんが特定の「この部分の脂肪を取りたい」と希望されても、その部分だけではなく、その周囲のどの部分をどうすることで最終的に一番綺麗なラインになるのかを一人ひとりの身体をみながら考え、ご提案しています。
実は脂肪吸引なんだけど、「鍛えてかっこいいね!」「ダイエットして素敵だね!」と思ってもらえるような仕上がりになるように、どこから見ても自然でバランスよく、というのを念頭に施術をおこなっています。
「360°脂肪吸引」の技術の特徴
── 「360°脂肪吸引」では、とくにデザイン性が求められそうですね。施術にあたり、とくに重視されているポイントはありますか?
大橋さん:「360°脂肪吸引」では、おっしゃるとおり、脂肪を吸引する技術はもちろんですが、美しく見える身体をデザインするという点が非常に重要です。そのため、施術前のデザインの作業、つまり「マーキング」がもっとも重要なポイントだと言えますね。
解剖学に基づき、周辺部位とのバランス・身体の動き・見られる角度すべてを考慮しながら、マーキングをおこないます。
左:一般的なマーキング、右:360°マーキング
私たちはこれを「360°マーキング」と呼んでいて、通常の脂肪吸引でおこなうマーキングとは異なり、肋骨の下端や骨盤の位置、腹直筋のラインなどにも印をつけて、細かくデザインをしていきます。
── マーキングの例をはじめて見たのですが、一般的なマーキングに比べ、360°マーキングでは、かなり多くの位置に印が付けられていますね。
大橋さん:これが「360°マーキング」つまり「360°脂肪吸引」の大きな特徴でもあります。
実は、脂肪を完全に取り除くと、逆に身体のバランスが崩れてしまうことがあります。脂肪は単に余分なものではなく、身体のラインを整える役割も担っているので、適切に残すことも重要なんです。
── あったほうがいい脂肪もある、ということですね。
大橋さん:そのとおりです。
たとえば、患者さんから「ヒップと太ももの境目にある脂肪を取ってほしい」という要望があったとします。ただし、患者さんの望み通り、単にこの部分の脂肪を取るだけだと、ヒップがかえって下がってしまうことがあるんです。
この部分の脂肪は、ヒップを支える役割も持っているため、この部分を取り除いてしまうと、ヒップの丸みが失われ、全体的に垂れた印象になってしまいます。こうなると「脂肪が少なくなり、細くはなったけど、以前よりシルエットが崩れてしまった」という結果になりかねません。
だからこそ、脂肪を「どう取る」かだけでなく、「どう残す」かも重要なんです。
脂肪を取るという位置を示した一般的なマーキングと異なり、「360°マーキング」でたくさんの位置に印がついているのは、こういった点が考慮されているためです。
従来の脂肪吸引よりも高い技術力が必要
── 従来の脂肪吸引よりも、より高い技術力が必要になりそうですね。
大橋さん:そうですね。「360°脂肪吸引」は、通常の脂肪吸引よりも高度な技術が求められます。
まず解剖学の知識がなければ、適切なデザインつまり「360°マーキング」ができません。さらに、この「360°マーキング」がきちんとできたうえで、このデザインを実現するための施術技術もなければなりません。
たるみにくくする脂肪の取り方や、脂肪の取りすぎ、吸入後の肌のデコボコを防ぐ技術などが必要になってきます。
── 脂肪吸引には、どのような機器を使用するのですか?
大橋さん:脂肪吸引にはさまざまな機器がありますが、私たちのクリニックでは、まず「ベイザー」という機械を使用して脂肪を柔らかくし、そのあとに、専用のカニューレ(管)を使って吸引をおこないます。
その後に吸引を行います。脂肪を一度柔らかくすることで、吸引がスムーズになり、より均一で綺麗な仕上がりになるんです。
また、吸引に使用するカニューレも種類が豊富です。まっすぐなものだけでなく、曲がったもの、細いもの、太いものなどさまざまな形状があり、身体のカーブや部位ごとに最適なカニューレを選んで使用しています。
── 吸引の管にも、こんなにさまざまな種類があるんですね。
大橋さん:人の身体は直線ではなく、曲線ですよね。そのため、まっすぐなカニューレだけでは細かいカーブに対応できません。
また、脂肪吸引後の皮膚のたるみを防ぐために、専用の皮膚タイトニング機器を使用することもあります。
たとえば、「エンブレイスRF」や「モフィウス8」といった機器は、皮膚を引き締める効果があります。これらの機器は、皮膚の下にエネルギーを照射することでコラーゲンを刺激し、たるみを軽減する効果が期待できるんです。
脂肪吸引の施術だけで済むケースもありますが、とくに年齢を重ねた方や、妊娠・出産で皮膚の伸び縮みを大きく経験した方などは、皮膚の収縮力が弱くなっていることが多いため、脂肪吸引と同時にこうした引き締め治療を併用することで、より自然な仕上がりになります。
── 脂肪吸引後のリスクやダウンタイムについても教えてください。
大橋さん:基本的に、施術のリスクやダウンタイムは、従来の脂肪吸引と大きく変わりません。術後に腫れや内出血が出ることはありますが、通常1〜2週間程度で落ち着きます。
シックスパックやアブクラックスを作るような手術の場合は、約1ヵ月間のボディースーツ着用にして圧迫するケアをします。
圧迫をしっかりおこなうことで、むくみを抑えるだけでなく、施術による成果を安定させることにもつながります。
半永久的につづく「360°脂肪吸引」の効果
── この「360°脂肪吸引」による効果はどのくらい持続するのでしょうか?
大橋さん:脂肪吸引の最大の特徴は、脂肪細胞の数自体を減らせる点です。
たとえば、運動や食事制限を組み合わせて自力でおこなう一般的なダイエットでは、脂肪細胞が小さくなるだけで、細胞の数は変わりません。そのため、太るとまた脂肪細胞が膨らんで、リバウンドしてしまいます。
しかし、脂肪吸引では脂肪細胞の数を減らすため、脂肪細胞が膨らんだとしても、施術前ほどのリバウンドにはならないんです。
── 脂肪細胞の数自体が減るので、痩せやすく、リバウンドもしにくいということですね。とても魅力的です。
大橋さん:私自身、17年前と15年前に施術を受けましたが、どちらもしっかりラインが残っています。とくに腹筋の縦ラインは、脂肪細胞の数を完全にゼロにしています。そのため、今でもそのラインがしっかり残っているんです。
ただし、これは今回私の身体で縦ラインを作るうえでゼロにするのがベストだったという話ですので、すべての脂肪をゼロにするのがよいわけではありません。
その人にとってベストなボリュームで脂肪を残しながら、理想のボディラインを作ることが重要です。
── 15年前の施術とは思えないほど、しっかりラインが残っていますね! 体型維持の努力もおこなわれているのですか?
大橋さん:私自身、あまり運動は好きじゃないんです。ですが、内臓脂肪が多いお腹で、腹筋が割れているのもなんだかな…というのもあり、週1回くらい、テニスなどの運動をするように心がけています。
実際に、「施術後の状態をキープしたい」という気持ちがダイエットのモチベーションにつながり、運動習慣や食生活に気を付ける習慣がついたとおっしゃる、患者さまも多いですよ。
── 見た目だけでなく、心にもよい変化を与えてくれていますね。施術の感想については、患者さんからどのような声をいただいていますか?
大橋さん:やはり「ファッションの選択肢が増えた」「自信がついた」といった声は多いですね。とくに女性は着こなせる洋服のバリエーションが増えたという変化に喜んでいる方が多い印象です。「水着を着て海やプールに行くのが楽しみになった」なんて言われますね。
この施術をして「きれいになり、美容へのモチベーションも上がり、自分に自信が持てたことで結婚できました」という方もいましたね。反対に、結婚式を控えている方が施術を受けるケースもありますよ。
イベントに備えて施術を受ける場合、施術直後は腫れやむくみがあるので、最終的な仕上がりが自然になるまで半年くらい余裕を持って受けるのがおすすめです。
また、ほかのクリニックで脂肪吸引をしたけれど仕上がりが思うようにならなかった…という方の修正施術をおこなうことも多いです。
私たちは広告をたくさん出しているわけではありませんし、いわゆる大手でもないので、1件ずつ時間をかけ、患者さんの希望に添えるよう取り組んでいます。
── 初めて痩身施術を受けたいと考えている人も安心して来院できますね。
大橋さん:ありがたいことに、一度いらっしゃったら、長く通ってくださる患者さんが多いです。最初は脂肪吸引の施術で来られた方が、そのあとはアンチエイジングの施術で来られることもあります。脂肪吸引だけでなく、さまざまなサービスを提供しているので、ほかの施術でも選んでもらっています。
── 本日のお話で「360°脂肪吸引」、そしてクリニックの魅力がよく伝わりました。貴重なお時間をありがとうございました。
大橋さん:こちらこそ、ありがとうございました。
脂肪吸引は「細くすること」が目的ではなく、「いかに美しく仕上げるか」が重要です。脂肪をただ取るだけではなく、どのように取るか、どのようにデザインするか、さらに皮膚の引き締めまで含めて考えることで、全身のバランスを整えながら、自然で理想的なシルエットを実現できます。
光が当たったときに自然な陰影が生まれるように調整も必要ですし、デザインには非常にこだわっています。
痩身施術を検討されている方は、ぜひ当クリニックの「360°脂肪吸引」にも注目してもらえると嬉しいです。
Wellulu編集後記:
今回の取材で「360°脂肪吸引」が、単に脂肪を取り除くだけの従来の脂肪吸引とは一線を画す、どの角度からみても美しい身体を目指すための“デザイン”にこだわった施術であることがよく分かりました。
また、脂肪吸引の施術が「脂肪を取ること」ではなく「どう取るか、どう残すか」が重要であるというお話も印象的でした。360°の視点で全身のバランスを整えることで、より自然で理想的なシルエットを実現できるという点は、これまでの部分痩せの概念を大きく覆すものだと感じました。
痩身施術を検討している人にとって「360°脂肪吸引」は、新しい選択肢のひとつとして魅力的なのではないでしょうか。
専門性の高さと誠実な診療姿勢が多くの支持を集めるドクター。
2024年には第112回日本美容外科学会(JSAS)会長を務め、最先端技術の研究にも尽力。
カナダにて心臓外科医として高度な医療技術を習得し、帰国後、美容外科に転身。豊胸・脂肪吸引を中心にトータルボディデザインを手がける。
圧倒的な症例数と確かな技術力を誇り、他院向け技術セミナーの開催や学会発表を積極的に行い、美容医療の発展に寄与。