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昆布の種類・だしの引き方・うま味の相乗効果…、昆布でお馴染みの会社に聞いた【ヤマサ醤油】

「おだし」と言えば、皆さんは何を思い浮かべるでしょうか…?華やかな香りが特徴的な「かつおだし」、個性的で強い香りの「煮干しだし」、穏やかな甘味と深いうま味のある「昆布だし」など、和食には欠かせないうま味として、さまざまな料理で「おだし」は活躍している。

そんな中、今回は昆布にフォーカスを当て、昆布の種類(銘柄)やその風味、おいしいだしの引き方について、ヤマサ醤油の西谷さんに詳しくお話を伺った。

CMでお馴染みの「こんぶ~こんぶ~こんぶつゆ~♪こんぶをぎょ~さんつこてるの♪ヤマサ」のメロディを口ずさみながらヤマサ醤油の東京支社へ突撃です!

西谷 綾さん

ヤマサ醤油 マーケティング部 宣伝広報室 室長代理

2008年にヤマサ醤油へ入社。製品開発、業務用営業、商品企画を経て、
2021年4月より現職。醤油・食品の宣伝プロモーションと広報PRを担当。

本記事のリリース情報

WEBメディア「Welulu」にインタビュー記事が掲載されました

目次

昆布のほとんどが北海道産!その種類と味の特徴とは?

──本日はよろしくお願いします。まず始めに初歩的なところなのですが、昆布はどこに生息しているのか?などからお伺いできますでしょうか?

西谷さん:はい。昆布は海藻の一種で、褐藻類(かっそうるい)コンブ目に属するもので、日本では45種程あると言われています。日光の届く岩場に生息していて、光合成をしながら大きく成長していきます。
種類が違うのはもちろんなのですが、その産地によって異なる特徴を持っています。

──そんなに種類があるのですね!その中でも代表的なものにはどのような昆布があるのでしょうか?

西谷さん:日本で広く利用される昆布では、三大銘柄として「真昆布(まこんぶ)」「羅臼昆布(らうすこんぶ)」「利尻昆布(りしりこんぶ)」がよく見られると思います。

日本の昆布の約9割は北海道で採れるものなのですが、消費自体は西日本や東日本が中心になっています。

──やはりほとんどが北海道なんですね。

真昆布・羅臼昆布・利尻昆布。三大銘柄を上手に使い分けよう

──真昆布・羅臼昆布・利尻昆布、それぞれの特徴を教えていただけますか?

西谷さん:まず「真昆布」は、北海道の函館周辺で採れる昆布で、肉厚で幅が広く表面が滑らかです。その上品な味わいからも、「昆布の王様」と称されることもあります。澄んだすっきりとした味わいのだしが取れるため、高級な料理やバッテラといった押し寿司に使われることが多いです。

──「羅臼昆布」の特徴も教えてください。

西谷さん:「羅臼昆布」は、北海道の知床半島周辺で採れる昆布です。学名では「オニコンブ」と言われて、真昆布と共に高級品として知られています。柔らかく、風味豊かなだしが取れるため、だしとしての利用に優れています。煮物や佃煮、昆布茶などにも利用されることが多く、そのまま煮て食べることもできます。

そして「利尻昆布」は、北海道の利尻島で採れる昆布で、昆布自体が硬めです。この硬さのおかげで濁りが少なく、澄んだだしが取れるのが特徴です。利尻昆布は主にだしを取る用途に使われますが、乾燥加工品としてとろろ昆布やおぼろ昆布に加工されることもあります。

──正直、いままできちんと特徴を知らずに使ってしまっていました…!

──ほかにも、日高昆布も聞いたことがあります。

西谷さん:日高昆布は、主に北海道の日高地方で採れる昆布で、煮物やおでんの具材として使われることが多い昆布です。柔らかく煮えやすいので、だしを取るよりも食べる昆布として利用されることが一般的ですね。

昆布は、ウニの餌としても知られており、北海道のウニがおいしいのは、もしかしたら北海道のおいしい昆布を食べているからかも知れません。

──せっかくなのでそれぞれの特徴を知ってから使い分けたいですね。

西谷さん:北海道産の昆布は全体的に質が高く、加工技術も高いレベルで行われています。産地による使い分けを楽しんでいただきたいと思います。

昆布のうま味の正体・うま味の相乗効果とは?

──昆布のおいしさの秘密について教えてください。

西谷さん:昆布のおいしさの秘密は、そのうま味成分にあります。昆布にはグルタミン酸というアミノ酸系のうま味成分が豊富に含まれています。グルタミン酸は口に含むとまろやかな甘味と深いうま味が広がり、これが昆布の特有の風味を生み出しています。

──かつお節もよくだしを引くのに使われますが、昆布だしとの違いはどういったものがありますか?

西谷さん:かつお節のだしには、魚や畜肉などに多く含まれるうま味成分であるイノシン酸が含まれています。かつお節のだしは強い香り立ちと鮮明なうま味が特徴です。お湯にかつお節を入れると、華やかな香りが立ち、口に含むと鼻に抜けるような香りが楽しめます。

一方、昆布だしはうま味成分のグルタミン酸が主体となっています。柔らかいうま味、じんわりとした味わいが特徴です。

──それぞれのだしはどういった食事に合うのでしょうか。

西谷さん:かつお節のだしは、香りが豊かで、力強い風味が求められる料理に向いています。例えば、味噌汁や煮物など、だしの風味が料理の中心になるような場合に最適です。昆布だしと合わせても、相乗効果でうま味がさらに引き立ちますよ。

一方、昆布のだしは、穏やかな甘味と深いうま味があるため、素材の良さを引き立てるような京料理など日本料理にぴったりです。主役の素材を邪魔することなく、調和をもたらします。澄んだスープや繊細な味付けの料理に使われることが多いです。

昆布×かつお節、先人の知恵「うま味の相乗効果」を研究

──ヤマサの研究を通して発見された「うま味の相乗効果」についてお伺いしたいです。

西谷さん:「先人の知恵」として、古くから昆布とかつお節を組み合わせるとおいしいというのは知られていました。かつお節のうま味のイノシン酸と昆布のうま味のグルタミン酸を組み合わせると驚異的にうま味が増幅するという「うま味の相乗効果」をヤマサの研究員だった國中明(くになか・あきら)が、科学的に証明することに成功しました。

──古くから人々は組み合わせるとおいしいと体感ではわかっていたものの、この研究でついに科学的にその相乗効果が示されたということですね。

西谷さん:はい、ヤマサは元々醤油の醸造研究を行う中で、微生物の研究も進めており、その中で核酸をかつお節のうま味であるイノシン酸に分解する微生物を発見しました。

リボ核酸を5’-ヌクレオチド類に分解する微生物を発見し、また5’-ヌクレオチドを効率よく分離精製する技術を開発し、かつお節のうま味であるイノシン酸を工業的に製造する方法を確立しました。

イノシン酸にもさまざまな種類があるのですが、國中はどの成分がうま味をもたらすのかを実際に舐めて比較しながら研究を進め、5’-イノシン酸にうま味があることを発見しました。さらに、昆布のグルタミン酸との味比べをしたときにうま味が増強される現象を発見したのです。

口をすすぐことなく5′-イノシン酸とグルタミン酸を舐め比べたことにより、かつお節の「5′-イノシン酸」と昆布の「グルタミン酸」が共存すると、うま味が飛躍的に増すことが分かりました。

──味の舐め比べが「うま味の相乗効果」が科学的に証明されるきっかけになったのですね!

──実際にどのような食材の組み合わせでもこの相乗効果を実感できるのでしょうか?

西谷さん:この相乗効果はうま味成分であるイノシン酸とグルタミン酸の組み合わせによるものであるため、例えば、イノシン酸を多く含むお肉とグルタミン酸を多く含むトマトを組み合わせた料理でも同様の効果が見られます。

──たしかに!お肉とトマトの組み合わせって多いですし、単体で食べるよりうま味がぐっと増している気がします!こんなカラクリがあったのですね!

西谷さん:また、椎茸のうま味成分のグアニル酸や貝のうま味成分のコハク酸など、異なるうま味成分を組み合わせることで、うま味が増すことも確認されています。昆布と椎茸を組み合わせたり、貝のだしと昆布のだしを合わせることで、うま味が増すので、上手く活用しながら、お料理や食事をよりおいしくたのしんでいただけたらと思います。

中火にかけ沸騰前に取り出す!昆布だしの上手な引き方

──昆布だしをおいしく取るポイントはありますか?

西谷さん:昆布だしを取る際には、加熱しすぎないことが重要です。昆布を入れた水を中火で温め、鍋の水がぐらつく前(沸騰する前)に昆布を取り出すことで、濁りのない澄んだだしが取れます。

──沸騰する前に取り出すのはなぜでしょうか?

西谷さん:沸騰させると、昆布の粘り成分が出過ぎてしまい、雑味やえぐみが出てしまうためです。また、昆布を長時間加熱しすぎた場合、逆にうま味成分が昆布に戻ってしまうことがあるため、適度な時間で昆布を取り出すことが、よりおいしいだしを取るためのコツです。

──加熱し過ぎない、沸騰前に取り出すことがポイントということですね!

西谷さん:はい。また、料理人の間ではだしを取ることを「だしを引く」と言われています。昆布の自然の風味を引き出すために、強引にではなく、適切な温度で時間をかけてじっくりとだしを取ることが重要であることがわかる表現だな、と思っています。

──じっくりと引き出す、ぴったりな表現ですね。今日から「だしを取る」ではなく、「だしを引く」と言おうと思います。また、一般の消費者には少し難しい場合もあるかと思うのですが、何かほかにおすすめのだしの取り方…、いや、だしの引き方はありますか?

西谷さん:煮出すとどうしても手間が気になる場合、水出しであれば、1リットルの水に対して20グラム程度の昆布を水に浸けて冷蔵庫で2〜3時間から一晩置くだけで、すっきりとした旨味が引き出せます。加熱して取るだしに比べ、水出しだしは雑味やえぐみが出にくく、まろやかな味わいを楽しめます。

──入れて放っておくだけであれば今日すぐにでもできそうですね!

西谷さん:昆布だしは味噌汁やお吸い物、煮物などに幅広く使えるので、ぜひやってみてほしいですね。あとは、先ほどお話ししたように、昆布にはそれぞれの風味があるので、数種類組み合わせてみたりするのも面白いと思います。たとえば、真昆布の上品な味わいと羅臼昆布の風味豊かさを合わせると、より深いうま味のだしが取れます。

──ちなみに、だしを取ったあとの昆布もなんだかもったいないなと思っていたのですが、これもおいしく食べられるのでしょうか…?

西谷さん:だしを取った昆布を細かく刻んで、佃煮にしたりサラダに加えたりするのがおすすめです。

例えば、水出しで取った昆布は、細かく刻んでぽん酢で和えるとコリコリとした食感のサラダになります。ドレッシングには、少量の醤油を混ぜると、昆布のうま味が引き立ちます。

また、醤油と砂糖で煮ると、簡単に手作りの佃煮が作れます。さらに、乾燥させた昆布をコーヒーミルなどで砕いて昆布ふりかけにするのもおすすめです。乾燥させる場合は、フライパンで軽く乾煎りするだけでも十分です。

──ちなみに昆布を使用する際に、表面の白い粉が気になります。もしかしてうま味成分なのかな…と思いつつ、どのくらい洗うべきかいつも迷っています。

西谷さん:昆布の表面に白い粉のように見えるものはマンニトールという成分です。これは、昆布に含まれる成分が結晶化したものであり、甘味を感じさせるものです。汚れかな?食べるとよくないかも?と思って、ゴシゴシ洗い流している方も多いかもしれませんが、使用する際は、軽く汚れを取る程度にふき取るようにしてください。

──なるほど。今後は気をつけるようにします。本日はありがとうございました。

Wellulu編集後記
どれもおいしそう!となんとなく選んでしまっていた昆布。産地ごとに特徴は違い、味わいや食感、相性のよい料理など、あまりに身近な食材なのに知らないことばかりでした。味の相乗効果については、なんとなくお肉と昆布の組み合わせがおいしいとは思いつつも、科学的にも相乗効果が起きていることが証明されているとは意外で、今後は上手に食材の組み合わせをたのしめそうだと感じました。まずは水出しで昆布だしをたのしむことから挑戦してみたいと思います!

余談ですが…、取材後には昆布ぽん酢の試飲会も開いてくれました。

左が柑橘系のフルーティな香りも楽しめる塩分カットのタイプ、右がベーシックなタイプ。

「しゃぶしゃぶのつけだれとして使用すると、豚肉のうま味と昆布のまろやかなうま味が絶妙にマッチします。昆布のうま味がたっぷり入ったぽん酢なので、スープや炒め物の味付けとしても、風味豊かな料理を楽しめますよ」と西谷さん。

取材後に改めて昆布のうま味成分「グルタミン酸」をしっかり感じるひと時でした。

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