シンプルな生野菜サラダから実は和惣菜まで?野菜をおいしく食べる料理として、栄養面でも健康面でもバランスよくサラダを作る秘訣は…?ドレッシングの選び方や活用法、彩りと栄養素を考えながら作るサラダ、サラダと合わせたい食材など、よりサラダを気軽においしく食べられるポイントについて、今回、ケンコーマヨネーズの佐藤さんに詳しくお話を伺った。
佐藤さん
ケンコーマヨネーズ株式会社 事業開発本部 開発部
本記事のリリース情報
Webメディア「Wellulu(ウェルル)」にサラダに関する取材記事が掲載されました
野菜をおいしく食べるサラダの世界!自由に楽しむのが一番
──本日はよろしくお願いします。まずサラダとはなにか、定義があるのでしょうか?
佐藤さん:よろしくお願いします。サラダは、ラテン語で塩を意味するサール(sal)が語源であり、生野菜に塩をかけて食べていた習慣に由来すると言われ、「野菜に塩やドレッシングなどをかけて食べる料理」とされています。ただ私たちは仕事柄、野菜をメインとして商品やメニューを扱っているため、おいしく工夫された野菜料理であれば、全てサラダと捉えています。
──なるほど!ではカルパッチョやスティック野菜はいかがですか?
佐藤さん:私自身はサラダだと思っています!カルパッチョは生野菜や香味野菜と一緒に食べるとおいしいですよね。
──さすがに、野菜炒めはまた別物ですよね…?
佐藤さん:いえいえ、温かいサラダです!!!
──温かいサラダ、たしかにそうですね。野菜を加熱するより生のほうがよいのかな、なんて思ったりもしますが、どうなのでしょうか?
佐藤さん:野菜は加熱するのも、生で食べるのもそれぞれの良さがあります。
加熱をすると野菜のかさが減り、一度にたくさん食べられるようになるのがよい点です。さらに、加熱することで甘みが増し、おいしさが引き立つこともあります。水分が飛ぶことで旨味が凝縮されるので調理で加熱するのもおすすめですよ。
また、トマトを加熱すると、水分が飛び、旨味成分のグルタミン酸が凝縮されるため、甘酸っぱい味が旨味のある甘みに変わります。また、芋類や根菜類はデンプンが分解されて甘みが引き出されます。栄養面でも、油に溶けるビタミンやトマトのリコピンなどは、油+加熱をすると吸収がよくなるんですよ。
──もし生のままだと風味が苦手な野菜があったとしても、加熱することでおいしく食べられるかもしれませんね!
佐藤さん:そうなんです、青臭さが気になる野菜も炒めたり、サッと茹でたり加熱することで食べやすくなります。えぐみが軽減され、食感もよくなるのでおすすめですね。
サラダの彩りは赤1:黄1:緑1で
──サラダを作る際に、どの食材をどれくらい入れるのが最適か?で迷ってしまうことあるのですが、サラダの食材としてマストなもの、全体のバランスの目安はありますか?
佐藤さん:サラダの食材として特定のマストなものはありませんが、全体的にカラフルに、野菜の色で言うと、赤、黄、緑の野菜を1対1対1の割合で取り入れるのがおすすめです。
赤系の野菜にはトマトや人参、黄系にはパプリカやかぼちゃ、緑系にはレタスやブロッコリーなど、どの色に近いかな?と考えながらバランスよく取り入れてみてください。
──栄養素のことを難しく考えず、彩りでサラダをつくる!確かにそういう捉え方の方がよさそうです。
佐藤さん:野菜の色が栄養素の色とリンクしている部分があるので、彩りがよいと栄養素もバランスが整うものなんですよ。たとえばリコピンがどうのこうのと考えるのではなく、全体的に彩りを意識して作ると自然と栄養素もバランスが良くなる、という感じです。
何よりもサラダを作る際には、そこまでこだわりすぎず、気軽にいろいろ試してみてほしいなと思っています。自由にサラダを楽しんでいただくことが一番の理想ですね。
──もっと自由にサラダを捉えるためにも日本と海外のサラダ事情について知りたいです!
佐藤さん:そうですね。まず日本では、生野菜のサラダやポテトサラダ、ごぼうサラダ、かぼちゃサラダ、春雨サラダ、マカロニサラダなどが一般的です。また、日本ならではのものとして、きんぴらやひじき煮、水菜や大根、ほうれん草などを和えた和風のサラダも見かけます。スーパーやコンビニでも多種多様なサラダが売られていて、和惣菜でも野菜をおいしく食べる方法が確立されていますよね。
──和惣菜もたしかにサラダに含まれそうですね!
佐藤さん:海外のサラダでは、たとえば、タイには「ソムタム」という青パパイヤを使ったサラダがあり、熟す前の青い果実を使っています。また、韓国の「水キムチ」は辛くない調味液に野菜が浸かっており、韓国ではサラダと呼ばれなくても、野菜をおいしく食べる方法だなと感じています。
栄養素を逃さない!食品ロスに配慮したサラダを楽しもう
──ちなみに、いま注目しているサラダやトピックはありますか?
佐藤さん:とくに注目しているのはサステナブルな観点から普段捨ててしまう部分をおいしく活用する「使い切りレシピ」です。弊社でも食品ロスに配慮した、キャベツの芯や元茎わかめを使った商品を開発しています。実際にこれらの部分は栄養素も豊富なんですよ。
──いくつかは家庭でもできそうな取り組みですね。
佐藤さん:たとえば、キャベツの芯やブロッコリーの茎は切り方を工夫するだけで、コールスローに入れたり、肉巻きとして食べられます。
また、にんじんや大根などは皮ごと食べるのがおすすめで栄養素も無駄なく摂取できます。豚肉と一緒に巻いてつくる「ぐるぐる巻き串」などもすごくおいしいですよ。
──栄養素を逃さず、それぞれの野菜特有の食感や味も楽しめるとなると捨てる必要がないですね!
佐藤さん:そうなんです、皮や芯をそのまま食べることで、手間が省けてゴミも減ります。経済的にも環境にもよいですし、皮や芯にはフィトケミカル(植物性食品に含まれる色素や香りなどの化学物質)やポリフェノールが含まれており、それらには抗酸化作用があるので、身体にもよいんです。
──そのような取り組みが広がれば、サラダの価値観も変わりそうですね。
佐藤さん:そうですね。サラダ作りや考え方が変われば、もっと簡単に、よりサラダを楽しむことができると思います。調理の手間も省けて、簡単に、栄養素も豊富で、ゴミも減り、経済的にも環境にもよい取り組みを多くの人に広めていきたいです。
サラダに合わせてドレッシングを使い分けるのもおすすめ!
──続いて、ドレッシングもさまざまな種類があると思いますが、いくつか特徴など合わせて教えていただけますか?
佐藤さん:まず、食品表示基準によるとドレッシングには大きく分けて半固体状ドレッシング(マヨネーズなど)、分離液状ドレッシング、乳化液状ドレッシングの3種類があります。そのほか、ドレッシングと表記はされませんがノンオイルタイプもあります。
分離液状のものは、油と調味液が分かれているため振ってから使うもので、油のコクが感じられます。
乳化液状のものは油と調味液がしっかり混ざっている(乳化されている)状態のもので、クリーミーでコクがあり、食材全体にしっかりと絡みます。
ノンオイルのものは油が入っていないため、さっぱりしていてカロリーが低いのが特徴です。
──普段ドレッシングの風味だけ見て選んでしまっているのですが、おすすめの使い分けがあったりしますか?
佐藤さん:そうですね、分離液状タイプはマリネや漬け込み料理にも合うので、野菜をマリネして調理したり、鶏肉を漬け込んで唐揚げにするのもよいですね。
乳化液状タイプはコクがあり、食材とよく絡むので、コールスローや濃厚な味わいのサラダにぴったりです。野菜にかけて焼いてもおいしいですよ。
ノンオイルタイプは味わいがさっぱりしているので、焼いた野菜やお肉、魚にかけるのに適しています。あとは漬物やピクルスにもお使いいただけますよ。
──漬け込んだり、かけて焼いたり、ドレッシングの用途ってこんなにもあるんですね。ちなみにこれはおもしろい!というドレッシングはありますか?
佐藤さん:最近では、フルーツ入りやトリュフ入り、ナッツ入りのドレッシングといったもの、低カロリー、低糖類、減塩などを謡うドレッシングなど、さまざまなドレッシングが登場しています。あとは、キャベツをおいしく食べることに特化したコールスロードレッシングなど、特定の食材に合わせたものもありますよ。
──どれもおいしそうです!
ドレッシングが栄養素の吸収を手助け
──ダイエット中はカロリーが気になってドレッシングやマヨネーズを控えたほうがよいのかな…なんて葛藤も正直あります。
佐藤さん:カロリーを気にする方にはノンオイルのものがおすすめです。
ただ一方でドレッシングやマヨネーズを使うことにもメリットがあるんです。たとえば、野菜の甘みを感じやすくなったり、渋みが感じにくくなったりするなど、野菜特有の香りや味を引き出し、食べやすくなります。
また、栄養的にも、色の濃い野菜に含まれるβカロテンは油に溶けるため、油と一緒に食べると吸収がよくなる効果があるので、私たちはマヨネーズやドレッシングを使うこと自体は、よいことだと考えています。
──ついカロリーばかり考えていましたが、栄養素の吸収を助けてくれるのはダイエットをしていても嬉しい効果ですね。
佐藤さん:そうなんです、せっかく野菜を食べるならしっかり栄養素を吸収したいですよね。ドレッシングやマヨネーズは栄養素の吸収を助けてくれて、野菜がおいしくなる。また、味わいに変化が生まれて食べやすくなり、野菜の旨味が引き出される感じもあるのでおすすめですね。
サラダをよりおいしく!おすすめアレンジ&レシピ
──野菜は1日あたりどのくらいを目標に食べるとよいでしょうか?
佐藤さん:厚生労働省の「健康日本21」という健康作りの指標があり、1日の野菜の摂取量は350グラムとされています。そのうちの120グラムは緑黄色野菜が望ましいとされています。大体、両手で軽く1杯くらいの量で、これを目安に料理を作るように心がけてもらえるとよいと思います。
──ちなみに佐藤さんがサラダによく使う野菜はありますか?
佐藤さん:野菜全般好きなのですが、その中でもとくにブロッコリー、人参、葉物野菜が好きです。また、シャキシャキした食感がおいしいレンコンやセロリ、トマトもよく使いますね。鮮やかな色の野菜がとくに好きで、毎日の食事に欠かせません!ただ無理はせず、そのときの気分や体調に合わせて野菜を選んでいますね。
──栄養素や健康へのよい影響などさまざまありますが、サラダを作るために押さえておきたいポイントを教えてください。
佐藤さん:野菜とタンパク質を組み合わせるのがおすすめです。野菜は身体の調子を整える栄養素が豊富ですし、タンパク質は身体を作るために必要ですので、たとえば肉、魚や卵、豆類(豆腐)などを加えてみてください。
ほかにも、食物繊維をしっかり摂りたい場合は、野菜、きのこ、海藻を組み合わせて、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の両方を摂ることもおすすめです。美しさや体型を維持したい場合は、野菜とタンパク質、さらにきのこを組み合わせてみてください。きのこは水溶性の食物繊維も豊富なので、腸内の善玉菌の栄養となり腸の環境を整えることにもつながります。
──野菜のみのときよりも満腹感も増しそうでいいですね。サラダライフをより楽しむためのアドバイスがあればお願いします。
佐藤さん:野菜と普段食べているものを合わせて食べてみてください。たとえば、タンパク質やナッツなどと一緒に食べると、栄養素やおいしさが増します。野菜に魚の缶詰(サバ缶など)や焼いた魚の身をほぐしたもの、焼肉、豚しゃぶ、ローストチキン、蒸し鶏をのせて食べるのもよいですね。茹で卵やスクランブルエッグもよいですし、温泉たまごだとソースのように絡んでよりおいしいです。
──家の冷蔵庫にあるものでいろいろと合わせて食べられそうです!
佐藤さん:そうですね、ナッツやチーズなどものせるのもよいですし、豆腐サラダやフルーツをのせたサラダなどもおすすめです。冷蔵庫の中の食材で、サラダに合わない食材ってほとんどないんじゃない?と思うほどです。あとは甘めの味付けでデザートサラダを楽しむこともできますよ。
──たしかに、サラダに合わないものってなかなかないかもしれません!
サラダをよりおいしく!おすすめアレンジ&レシピ
──サラダを食べることのよさはどういった部分にあると思いますか?
佐藤さん:野菜にはビタミン、ミネラル、食物繊維といった栄養素が豊富に含まれていること、また、野菜の色にはフィトケミカルという抗酸化作用が期待できる植物性食品に含まれる色素や香りなどの成分が含まれていて、身体の調子を整えてくれることですね。
私たちは、一般のお客様向けに「キッチンスペース831」という名前で料理教室もおこなっているのですが、レッスンの際は普段よりもたくさん野菜を食べるからか、身体の調子がとても良くて身体も心も元気でいられます。
──体感としてあるんですね。料理教室はたとえば、どのようなテーマでおこなっているのですか?
佐藤さん:一例ですが、管理栄養士の監修シリーズというテーマがあります。先日は、塩麹をメイン食材として、料理教室を開催しました。普段から料理好きの方はその季節に応じた手仕事をされるので、まず塩麹を作ってから、それを野菜と合わせていく、といった内容でレッスンをしました。
──まずは塩麹!?意外な切り口でした。
佐藤さん:そうなんです。最初に塩麹を作って、それを用いてスープや炒め物、揚げ物などを作ってみよう、といった形でおこないました。
──料理教室の参加者からよく寄せられる疑問や悩みはなにかあったりしますか?
佐藤さん:そうですね、先ほどお答えしましたが、「野菜は生の方がよいのか?加熱した方がよいのか?」といった質問や、野菜はどのくらい食べればよいのか、食べ方や切り方、保存方法についての質問も多いですね。
あとは娘さんが痩せたいと言っているが、何を食べたらよいかわからないとか、糖尿病の家族がいて
どんな食事を作ったらよいか悩んでいるなどの相談もありますね。
──子どもたちが野菜を食べてくれない…なんていう悩みもありそうですね。
佐藤さん:ありますね!弊社でも食育に関する取り組みとして、子どもたちが実際に自分の手を動かして体験する機会づくりをしています。たとえば、1日の野菜摂取目安量が実際にどれくらいか、両手にどのくらいになるかを体験するワークショップも開催したことがあります。
ほかにも、自分でマヨネーズを作る体験もあります。弊社はマヨネーズも取り扱う会社なので、マヨネーズづくりで重要な“乳化の原理”を学びながら、自作マヨネーズで野菜を食べていただく、といった取り組みもおこなっています。
──実際に体験すると愛着が湧くというか、思い出にも残りますし、身近に感じるようになりますよね。
佐藤さん:そうなんです、体験を通じて、野菜嫌いを克服するお子さんも多いんですよ。これをさらに馴染みのある料理、たとえばサンドイッチ作りなどにつなげていくことで、野菜をもっと身近に感じてもらえますし、親御さんも知識を得ながら一緒に楽しんでもらえます。
──お子さんの野菜嫌いで悩む人も多いかと思いますが、少しでも食べてもらうためのコツやアドバイスがあったりしますか?
佐藤さん:まずはお子さんが好きな野菜から始めるとよいのかなと思います。それからカラフルな野菜を無理せず取り入れることをおすすめしています。たとえば、もしピーマンが苦手でもほかの緑の野菜を食べればよいんです。あとは小さく刻んでみる、一緒に料理をする、好きな味で食べてみるなども効果的ですね。
お家でミニトマトなど野菜を実際に育てて食べてみるのもよいですね。料理教室でも、夏休みに親子向けのレッスンを開催し、お子さんが自身で料理をすることで、野菜を食べるきっかけ作りとなる活動もしています。
──野菜とのつながりを感じることがキーになりそうですね。
編集後記
サラダの定義を広く捉え、定番の生野菜サラダやポテサラだけでなく和惣菜まで、よく考えてみると日常生活の中で数多くのおいしいサラダに囲まれていることに気がつきました。家にあるものでよりおいしく栄養素を豊かにたのしめるサラダ。気軽にアレンジを楽しみたいと思いました。
その資格を活かし、同社で開催する料理教室の講師も務める。作るのも、食べるのも大好き、探求心旺盛な栄養マニア。