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積極的に摂りたい「DHA」と「EPA」。身体に大きな影響を与える重要な成分だった!【不二製油】

オメガ3脂肪酸に分類されるDHAとEPA。これらは体内でほとんど合成されないため、食事による摂取が重要であるにもかかわらず、現代人は不足しているという。実は脳や心臓、血管、骨など全身の健康に関係している。妊娠中から子どもの成長過程、高齢者の認知機能まで、幅広く私たちの健康に関与しているDHAやEPAについて、今回不二製油の長森さん、青山さんに詳しくお話を伺った。

●忙しい人のための今記事の内容
・DHAとEPAについて知りたい
・DHAとEPAをどう摂取すればいいか知りたい
・DHAが含まれる食材について

長森 真信さん

営業部門 営業戦略室 ソヤファームクラブ

1989年に不二製油(株)に入社。
大豆たんぱく素材の営業を経て、プラントベースフードの市場開拓を実施するマーケティング業務に従事。
2021年度より同社グループ唯一のECサイトである「ソヤファームクラブ」を担当。

青山 直実さん

油脂事業部門 油脂開発部 第二課

2012年に不二製油(株)に入社。
乳化・発酵開発室を経て、2020年4月より現職。健康油脂をはじめ、大手メーカーから小売まで多岐にわたる顧客向け油脂製品の開発を担当。

本記事のリリース情報
メディアに取材されました
WEBメディア「Wellulu」にインタビュー記事が掲載されました

目次

「DHA」「EPA」の役割:体内ではほとんど合成されないオメガ3脂肪酸DHAとEPAとは

──そもそも、DHAやEPAとは一体どういったものですか?

長森さん:DHA(ドコサヘキサエン酸)とEPA(エイコサペンタエン酸)は、オメガ3脂肪酸と呼ばれるものの1種で、心臓や脳の健康によいと言われています。これらの成分は魚油に多く含まれており、われわれの体内では極めて作られにくく、魚介料理やサプリメントを通して摂取するのが一般的です。

とくにDHAは、赤ちゃんの脳の発達に重要な成分で、成長期や成人期でも重要な役割をになっています。また、認知症患者の脳内ではDHAが減少していたとの報告もあります。そのため、DHAは全ての世代で日常的に摂取する事が望まれる脂肪酸です。

Point!
・DHAやEPAといった脂肪酸は、脳にとって非常に重要な成分
・これらの成分は体内での合成がほとんど行われない
・全ての世代で重要な役割を担うため、日常的に摂取する事が重要

──ちなみに、脂肪酸にはどのような種類があるのでしょうか?

長森さん:脂肪酸には大きくわけて、飽和脂肪酸(ほうわしぼうさん)と不飽和脂肪酸(ふほうわしぼうさん)の2種類があります。飽和脂肪酸は、主にお肉に含まれているもので、直鎖上の構造を持ち、不飽和脂肪酸と比較すると融点が高く劣化しにくいという特徴をもちます。たとえば、ラードは室温でも固まっていますが、これは飽和脂肪酸を多く含むためです。一方、不飽和脂肪酸は主に魚介類に多く含まれており、折れ曲がり構造をもち、融点が低く、健康に良いという報告が多数あります。

この不飽和脂肪酸のうち多価不飽和脂肪酸は必須脂肪酸とされていて、身体にとって重要な役割を持っています。DHAとEPAはこの多価不飽和脂肪酸に含まれます。

──重要ではあるものの体内での合成が極めて少ないため、食事やサプリメントでの摂取が必要なのですね。DHAやEPAの働きについて教えてください。

長森さんDHAとEPAは血液の循環や脳の活性化、身体の酸化防止に寄与します。とくにDHAは各臓器の脂質に対する割合として脳の22%、心臓や肝臓の約10%を構成しています。たとえば、身体の潤滑油としての役割を果たし、血液の流れをよくしたり、脳の働きを活性化させたりします。

もし油が不足した場合、健康に悪影響を及ぼします。とくにオメガ3脂肪酸が不足すると、老化や病気のリスクが上昇してしまいます。

──もともと体内での合成が極めて少ないということですが、なぜ加齢にともないDHAやEPAが不足するのでしょうか?

青山さん加齢に伴い身体の機能が全般的に衰えるため、脂肪酸の合成能力も低下します。とくにDHAやEPAは体内ではほとんど合成されないため、食事から摂取する事が重要となります。しかし、年齢とともに食事の摂取量が減り、さらに魚介類の摂取量も減少するため、体内のDHAやEPA濃度も減少してしまうのです。

Point!
・DHAとEPAは血液の循環や脳の活性化、身体の酸化防止といった働きがある
・オメガ3脂肪酸(DHAやEPA)が不足すると、老化や病気のリスクが上昇する
・年齢とともに食事(魚介類)の摂取量が減るため、体内のDHAやEPA濃度も減少してしまう。

──では、現代のDHAやEPAの摂取量の現状はいかがでしょうか?

青山さん:昔ながらの食生活をおこなっている50歳以上の方では、比較的魚を多く摂取していることが最近の調査でわかっています。一方で若い世代では、食の欧米化が進んでおり、魚介類の摂取量低下に伴いDHAとEPAも不足しています。また、共働き家庭の増加や外食産業の発展により、手間のかかる魚料理が敬遠される傾向に拍車がかかっています。

──なるほど。ちなみに、DHAやEPAの摂取量の不足による健康への影響にはどういったことがあるのでしょうか?

青山さん:DHAは目の網膜や神経細胞に多く含まれており、不足すると視力低下や神経機能の障害が生じる可能性があるとされています。また、脳機能にも深く関与しており、不足すると認知機能の低下や精神的不安定が引き起こされることがあります。

EPAには、血液をサラサラにする働きがあると考えられているため、不足すると血液の粘性が高まり、血栓ができやすい、いわゆる「ドロドロ血液」になりやすくなります。これは動脈硬化や心疾患のリスクを増加させる要因となります。

また、両者ともに抗炎症作用があるため、不足すると、慢性的な炎症が進行し、関節炎や心血管疾患のリスクも高まります。

──脳や心臓、血液など全身の健康に関わるのですね。

Point!
・DHAの不足により、視力低下や神経機能の障害・認知機能の低下や精神的不安定になる可能性があるとされている
・EPAの不足により、動脈硬化や心疾患のリスクが増加する

DHA摂取で認知機能低下の抑制、骨折リスクの軽減!

DHA入りの牛乳を摂取することで認知機能と骨の健康が改善する!

──DHAを摂取することで、認知機能の他に効果はありますか?

青山さん:弊社の独自技術で開発した酸化安定性に優れたDHA含有油「プロレア®」が、乳飲料とも相性が良いことが確認されました。

「プロレア®」を添加したDHA強化乳飲料を1 日当たり 200 mL(297 mg のDHAを配合)、12 カ月間摂取することによって、加齢に伴う認知機能の低下を抑制すると共に、血清中骨破壊マーカーを減少させることが明らかになりました。

認知機能の維持に関して、過去の研究では1日あたり1000 mg程度のDHA摂取が必要と言われていましたが、弊社の研究では1日あたり297 mgのDHAでも認知機能が維持できることが示されています。また、DHA強化乳飲料を摂取していた群では、破骨マーカーが統計学的に有意に抑制されたこともわかりました。

──この試験に参加した方々の反応はどうでしたか?

青山さん:試験に参加した高齢者のご家族からは、「毎日DHAを配合した牛乳を飲むようになってから、生き生きとした生活を送るようになった」という声や介護をされている方々からも「生活の質が向上した」といった声がありました。DHAの摂取が、身体だけでなく精神的な健康にもよい影響を与えていると感じています。

──認知機能の改善ということですが、認知症予防として期待できるということでしょうか?

長森さん:そうですね、DHAは脳の細胞膜の構成成分であり、神経伝達の効率を高める役割を果たします。そのため、DHAを十分に摂取することで、認知症のリスク軽減が期待できます。DHAの摂取は脳の健康維持に役立ち、脳の発達や機能維持に重要なのです。

また、妊娠中に魚介類を十分に摂取することで出生後の子どもの発達にいい影響を与えることも研究により明らかになっています。この主な要因としてDHAの機能が考えられています。

Point!
・DHAを含む強化乳飲料には、認知機能の低下を抑制し、骨の健康に良い影響を与える
・DHAの摂取は身体だけでなく、精神的な健康にもよい影響を与える可能性がある

DHAは赤ちゃん・子どもの脳の構造と機能の発達をサポート

──妊娠中のDHA摂取が重要とのことですが、妊娠中だけでなく子どもの成長でも重要なのでしょうか?

長森さん:胎児の脳は妊娠中期から急速に発達し始めるのですが、その際に必要な量のDHAが十分に供給されることで、健康な脳の発達を促します。また、母乳を通じてもDHAが赤ちゃんに伝わるため、母親がDHAを豊富に含む食事を続けることが重要です。

また、生まれてから3年から4年ぐらいの間は、子どもの成長において非常に重要な時期とされていて、この段階でもDHAを積極的に摂取することが重要だと言われています。DHAは脳の発達に不可欠な脂肪酸なので、とくにこの時期に十分な量を摂取することで、脳の構造と機能の発達をサポートしてくれます。

Point!
・DHAを十分に摂取することで、胎児の健康な脳の発達が促される
・母乳を通じてもDHAが赤ちゃんに伝わるため、母親がDHAを豊富に含む食事を続けることが重要
・生まれてから3年から4年ぐらいの間は、子どもの成長において非常に重要な時期なので、この段階でもDHAを積極的に摂取することが重要

DHAやEPAは日常的な摂取が重要!

──DHAやEPAの推奨摂取量を教えてください。

長森さん:厚生労働省のデータによるオメガ3脂肪酸の推奨摂取量は、一般的には成人男性で2.2グラム、女性で2グラムとされています。これは年齢によって異なり、とくに65歳から74歳の方はより多く摂取することが推奨されています。

DHAやEPAは体内に蓄積されにくい成分であるため、日常的に取り入れることで継続的な効果が期待できます。

──DHAやEPAの摂取方法や気をつけたいポイントがあれば教えてください。

長森さん:まず、DHAやEPAを含む食品を日常的に取り入れることが大切です。もっとも効果的な摂取方法は魚を食べることとサプリメントの利用です。とくに魚はDHAやEPAが豊富に含まれています。また、サプリメントを利用することで、手軽にこれらの成分を補うことができます。

とくに魚料理は効果的ですが、調理の過程で酸化や劣化が起こりやすいため、新鮮な状態で摂取することが理想です。DHA・EPAが酸化すると魚臭が発生することから食品への応用は難しいとされていましたが、弊社独自技術により食用油にDHA・EPAを安定化させることに成功しました。今後、あらゆる食への応用が期待されます。

──日常的に摂取するためには、摂取方法でなにかおすすめはありますか?

長森さん:DHA・EPAの安定化技術の向上によりオイルのまま摂れる商品も出てきています。日々の食事の中で使えるので、誰でも毎日気軽に摂っていただけます。

食べ方は、朝食にヨーグルトや牛乳に混ぜて摂るのが手軽でよいですね。また、納豆やサラダにオイルをかけるのもおすすめです。

──DHAとEPAは魚から取るイメージでしたが、植物性というのも驚きました。

長森さん:そうなんです。DHAとEPAは魚から取るのが一般的ですが、最近では藻類から取る方法も注目されています。魚のDHA・EPAも元々は藻類由来と考えられており、藻類からのDHA・EPAの摂取はフレッシュな状態を保てる点がメリットなんです。また、藻類由来のものはSDGsの観点からも非常に優れています。

──近年、藻類への注目度が高いですよね!

長森さん:藻類から取れるDHAとEPAは、陸上養殖された藻類から抽出されるため、地球温暖化による魚の生息地の変化や漁獲量の減少といった問題も避けることができます。こうした背景から、安定的に供給できる藻類由来のDHAとEPAが注目されています。

──魚自体の資源が減少という課題もあるのですね。

長森さん:はい、そのため学校給食などでのDHAの提供方法を見直す動きも出ています。魚料理の提供が難しくなってきているため、藻類由来のDHAを使ったサプリメントや食品を取り入れることで、子どもたちにもDHAをしっかりと摂取させる取り組みが進んでいます。

まとめ:DHAとEPAについて総ざらい

私たちの身体に必要とされているオメガ3脂肪酸のうち、人間の体内ではほとんど合成されないDHAとEPA。これらは、血液の循環や脳の活性化、身体の酸化防止に大きな役割を果たしています。特に、DHAを十分に摂取することで、認知症のリスク軽減が期待できます。DHAは生まれる前、生まれた後問わず、子供の脳の発達にとても重要な要素です。

DHAは主に魚やサプリメントから摂取することができ、日常的な摂取が勧められる。

これらDHAやEPAなどオメガ3脂肪酸の推奨摂取量は、一般的には成人男性で2.2グラム、女性で2グラムとされています。最近では、安全面や吸収率が良い点などから藻類が注目されている。

Wellulu編集後記:
脳や心臓、血液、骨など全身の至るところの健康に影響を与えるということに驚いたと同時に、赤ちゃんや子どもの脳の発達、高齢者においては認知症予防など、興味深い効果の連続でした。しかし、食文化の変化もあり、摂取量は不足気味とのこと、DHAとEPAは体内ではほとんど合成されないからこそ意識的に日々の摂取が重要ですね。サプリメントによっては匂いが気になるものもあったりするので、さまざまな形での摂取手段の開発に期待しています。

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