Biz 4 Well-Being

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企業と社員を笑顔にするために。「ウェルビーイング経営」の実現に本気で取り組む2社が目指す場所

株式会社ラフール

誰しも、子どもたちの満面の笑みを見て、自分も思わず微笑んだことがあるだろう。心からの笑顔は、まわりの人へと伝播して、人をウェルビーイングへと導く。

「人を笑顔にしたい」という思いをもつ2つの企業がある。1社は企業のウェルビーイング経営、人的資本経営を支援する「株式会社ラフール」。もう1社は「ゆたかな人生のきっかけを」という言葉を企業理念に掲げ、コンサルティング事業、イノベーション事業、インベストメント事業の3事業を展開し、クライアントや社員、ひいては社会にとっての「ゆたかさ」に貢献し続ける「イグニション・ポイント株式会社」。

企業にとって、社員を笑顔にする「ウェルビーイング経営」とはどういったものなのか。組織改善ツール『ラフールサーベイ』を展開する株式会社ラフール・代表取締役社長の結木 啓太さんと、『ラフールサーベイ』を導入し、組織改善をすすめるイグニション・ポイント株式会社・コーポレート本部 人事/総務/広報責任者の宮崎 達矢さんに、話を伺った。

企業に、より喜ばれるサービスを。組織の状態を「見える化」し、改善するツール

株式会社ラフール

- はじめに、株式会社ラフールの事業内容と運営するサービスについて教えてください。

結木:株式会社ラフールは、創業してから13年目の会社になります。メンタルヘルスの研修や電話相談など、一般的なEAP(従業員支援プログラム)サービスから事業をスタートしました。その中で6年ほど前から開発を始め、2019年4月に提供を開始したのが組織改善ツール『ラフールサーベイ』というプロダクトです。

『ラフールサーベイ』は、社員の方にアンケート調査を行い、結果を分析することで社員の心身の健康状態やエンゲージメントを把握して、組織全体の状況を可視化・改善し、ウェルビーイング/人的資本経営を支援・実現するためのツールです。

- 『ラフールサーベイ』を開発するきっかけは、どういったことからだったのですか?

結木:2015年12月にストレスチェック制度が法制化され、私たちも厚生労働省の指針に準拠したストレスチェックサービスを企業向けに展開していました。しかし、ストレスチェックは企業にとって「最低限の義務を果たせばいいもの」と捉えられることも多く、「ストレスチェックだけでは、企業に喜ばれるサービスにはならない」と、次第に課題を感じるようになりました。

企業側としては法律を遵守するためにストレスチェックの導入が求められますが、ストレスチェック自体が労働生産性の向上につながるわけではなく、逆に費用負荷も多くなり、管理部署の手間も大きくなってしまうんです。私たちが考えていた「企業に喜ばれるサービスを提供したい」という思いと、「ストレスチェックが企業の生産性とリンクしていない」という現実のギャップを解消しなくてはいけない。それが『ラフールサーベイ』開発の始まりでした。

- 大きな課題が見つかり、そのあとはどのような経緯で開発が進んでいったのでしょうか。

結木:『ラフールサーベイ』は、弊社だけではなく、精神科医の先生や立正大学の心理学部、AIを専門とする大学教授など、専門家の方々のサポートを受けて開発してきました。最初は、ストレスチェックだけでは分からない「ストレス因子」を特定することを目標に研究を重ね、データを蓄積していきました。今では1,500社以上の企業に導入いただき、回答データ数は9,000万を超えています。

ストレスの要因は、多岐にわたります。価値観バランスや職場環境、人間関係、評価制度への納得度や、会社が掲げるビジョンへの共感度合いなど、本当に様々な因子が絡んでいきます。それらを網羅するように改良を加えていった結果、社員の心身の健康やエンゲージメントだけではなく、ストレス因子を見つけ出し、ハラスメントリスクや離職リスクを含めた包括的な分析ができるサービスになっていったのです。

「ゆたかさ」を生み出す。イグニション・ポイントの理念と事業

宮崎 達矢

- 最近では、日本でも「健康経営」や「働き方改革」の本格的な議論が進み、「ウェルビーイング経営」という言葉もよく聞くようになってきましたね。

結木:まさにイグニション・ポイントさんは、それに本気で取り組まれている会社ではないですか?

宮崎:そうですね。私たちは創業以来「ゆたかな人生のきっかけを」という企業理念を掲げています。この言葉には、私たちのサービスを通して、クライアントやエンドユーザー「ゆたかさ」を感じるきっかけを作りたいという想いと、イグニション・ポイントで働く社員のみなさんにとっても当社の環境が、ゆたかな人生・ゆたかなキャリア形成のきっかけになってほしいという、2つの想いが込められています。

- 素晴らしい理念ですね!その理念の元、イグニション・ポイントではどのような事業を行っているのですか?

宮崎:理念を実現するために目指す将来像が私たちのビジョンである「ゆたかさを生みだすあらゆる革新のプラットフォームになる」というものです。この「プラットフォーム」を形成する事業が3つあります。1つはコンサルティング事業で、クライアントの企業さま向けにコンサルティングサービスを行っています。もう1つは自社ビジネス。企業や行政、大学と連携して新規事業を創発し、自ら展開しています。さらに、スタートアップ投資と投資先の成長支援を行う、投資事業にも力を入れています。

- 3つの事業を展開されているんですね。

宮崎:3つの事業が相互にコラボレーションをすることで、シナジーが生まれています。それがイグニション・ポイントのユニークな部分であり、強みでもあります。

私は2019年に中途入社したのですが、当時は従業員が80人ほど。今は350人を超え、3〜4年後には1000人規模に拡大する計画です。

結木:3〜4年後に1000名ですか!それはすごいですね!

社員にとっての「働きやすい環境」を整えて離職リスクを管理する

株式会社ラフール

- どんどんと組織の規模を拡大していくために「課題」が生まれたことも、『ラフールサーベイ』を導入するきっかけになったのでしょうか。

宮崎:そうですね。元々のメイン事業であるコンサルティングサービスは、人の入れ替わりが激しい業界でもありました。人数を増やさなければいけないときに、離職が多く発生してしまうと、この事業計画は進んでいきません。まずは社員定着が大前提でした。

さらに「ゆたかな人生のきっかけを」という理念を掲げている以上、社員のウェルビーイングを考え、より良い環境を作っていかなければなりません。「離職リスクの管理」と「社員のウェルビーイング」、この2つを実現するために検討を進めていく中で、『ラフールサーベイ』を導入することになりました。

- 中でも、導入を決めるポイントはどこだったのですか?

宮崎:結木さんのお話にもありましたが、私たちも「ただ法定のストレスチェックができればいい」とは考えていませんでした。数値化された指標があり、細かく分析することができるのが大きな決め手でしたね。『ラフールサーベイ』は、用意された質問だけではなく、自分たちで追加の質問を入れてセミカスタマイズができるところにも魅力を感じました。

- 導入して「ここが変わった」と感じる部分はありますか?

宮崎:やはり組織の状態が数値として見える化することで、管理する立場の人たちの意識が「変わった」と感じます。実際に、マネジメント層の人事評価の指標に『ラフールサーベイ』が示す数値を取り入れています。例えば、事業計画を作るときにも、「管理しているグループのエンゲージメント指数を、何ポイントまで上げる」など、明確な数値を目標にして取り組んでもらっています。

結木:そのように活用していただけるのは、本当に嬉しいですね。ありがとうございます!

- お二人の会社では、どのように社員の「働きやすい環境づくり」に取り組まれているのですか?

結木:社員が任意で立ち上げた健康経営プロジェクトがあり、その一環として毎週月曜日の朝に全社でマインドフルネスや健康講座を行っていたり、雑談会やウォーキング企画などを実施して、健康とコミュニケーションを高める環境作りを行っています。また、『ラフールサーベイ』内に、「感謝のキモチ」というアプリ上で感謝の気持ちとコインを送り合えるピアボーナス機能があり、自社でも活用しています。利用する社員からは「些細なことでも感謝を伝えられて、とても嬉しくモチベーションが上がった」「普段あまり接点がない人でもアプリを通してなら感謝の気持ちを伝えることができコミュニケーションが円滑になった」などの声も上がっています。

他にもリスキリング支援として「ラフール大学」という福利厚生があります。これは業務に必要な書籍の購入費、資格試験受験費用などを会社が負担し、社員のスキルアップを後押しするものです。一部ではありますがこのように社員が働やすく、パフォーマンスを高められるよう工夫を凝らしています。

宮崎:弊社はそういった「手当」は敢えてあまり作っていません。手当を導入しない分は、成果を上げた社員の給料アップに反映させています。代表もよく言うのが「イグニション・ポイントはパフォーマンスを発揮している方に、より多くを還元する会社であり続ける」ということ。還元するのは、単純に報酬だけの話ではなく、チャレンジ機会や成長機会も含めてです。

パフォーマンスを発揮していれば、働き方もそこまで問いません。上司に相談の上、業務に差し障りなければリモートor出社は各自の判断に任せていますし、フルフレックスも活用して、自分のライフスタイルに合わせて、もっともパフォーマンスが高まる「働きやすい環境」を自分で選んでもらうのが私たちの考え方です。

メンタルヘルスケアが生産性を高める。ウェルビーイング経営の最前線

宮崎 達矢

- お二人が考える「ウェルビーイング経営」とはどういうものでしょうか?

結木:「メンタルやフィジカルが整っていないと、パフォーマンスが上がらない」。本当にそれに尽きると思います。プレゼンティーズムとも言われていますが、心だけじゃなく身体も含めて、何らかの疾患を抱えた状態で働いていては、生産性が大きく下がります。出社はしているのに何らかの理由でパフォーマンスを発輝できない人たちが、日本にも大量に存在するんです。

「ウェルビーイング経営」とは、そんな人たちが健康で生き生きと働ける環境を作ることだと思っています。また、人的資本情報の開示義務化もはじまり、多くの企業は対応に迫られることとなりますが、前述のストレスチェックの義務化のタイミングと同様、必要最低限の対応ではなく、より本質的な取り組みが必要だと感じています。しかし、企業が主体となって、社員のメンタルケアやエンゲージメントの向上を行うのには限界があります。私たちが取り組むメンタルデータテック®︎(メンタルヘルス×テクノロジー)を通して、ウェルビーイング経営や人的資本経営の実現を“本気で”サポートしていきます。

宮崎:仕事の中でウェルビーイングを感じるポイントは、人それぞれですよね。それは一緒に働く仲間との時間ややりがいのある仕事を成し遂げたとき、自分の成長を実感した瞬間や、単純に高い報酬を貰ったときなのかもしれません。会社としては、社員それぞれの「ゆたかさ」を考え、社員の後ろ盾になれるような制度を作りたいと思います。

結木:人事評価の制度などは、「ウェルビーイング経営」にも大きくつながりますよね。

宮崎:「自分にとってのゆたかさとは何か」をしっかりと考え、それに向かって努力できる環境の下地を会社は整える。それが「ゆたかな人生のきっかけ」となり、「ウェルビーイング経営」に繋がるのではないでしょうか。

弊社では、役員を含めた全社員に「パフォーマンスマネージャー」という人が付きます。少し意味合いは異なりますが、メンターとトレーナーの中間のような存在です。

- 直接的な指示権限はない、斜めの関係性のような方でしょうか?

宮崎:その場合もありますが、弊社では社員のパフォーマンスを高めるために相談役としてフィードバックやフォローをする先輩社員やマネージャーです。パフォーマンスマネージャーには2週間に1回、“必ず”1on1の面談を義務付けています。キャリア相談から日々の仕事で困っていること、プライベートの悩みまで、何かがあったときにすぐ相談できる相手が身近にいることも、社員のメンタルバランスを保つ上で大切だと考えています。そのため、人事部門ではこの1on1が徹底して行われるような仕組みづくりにも力を入れています。

人それぞれのカタチがあるウェルビューイング。テクノロジーが未来を創り出す。

株式会社ラフール

- お二人にとってのウェルビーイングな時間について教えてください。

結木:これまでは都心に住んでいたのですが、昨年、千葉の方に引っ越したんです。海が望め、自然が豊かなおかげで今、とてもウェルビーイングを感じています(笑)。

昔は、都心に住んでスタートアップで頑張っているというのが自分なりのモチベーションでもあったんですけどね。結婚して、子どもが生まれて、ライフステージや環境の変化があって……。今はゆったりと、郊外の家からオンラインで仕事をする「新しい働き方」が、自分にとってのウェルビーイングなんだと再認識する毎日です。

宮崎:私はどちらかというと、プライベートよりも仕事の中でウェルビーイングを感じるタイプですね。新卒の頃から、「仕事に意味を見出したい」という想いを強く持っていました。会社のために仕事をするのではなく、自分のキャリアの中で成し遂げたい目標に向かって進んでいきたい。その積み重ねが、私にとってのウェルビーイングにつながると思っています。仕事が充実しているからこそ、プライベートも充実すると考えています。

- プライベートでの時間も、ストレスのない働き方も、仕事のやりがいも、ひとりひとりのウェルビーイングを加速する大切な因子だと思います。では最後に、お二人が実現したい未来についてお聞かせください。

宮崎:人事として、イグニション・ポイントが他社にとってのロールモデルになれるように、より社員がゆたかさを感じられる会社をつくりたいと思っています。それができれば、会社を通じて世の中を数%でも向上させるような価値を生み出せる。それが私の成し遂げたいことであり、今の会社なら、それができると確信しています。

結木:「メンタルデータテック®︎で全人類を笑顔にする」というパーパスを私たちは掲げています。私たちに関わってくれた人たちを、1人でも多くウェルビーイングにしたい。その手段として、私たちの提供しているサービスがあります。

「どうすれば笑顔で働いていけるのか」を、科学で考えて、笑顔でいられるウェルビーイングな社会をみなさんと共に創っていきたいと思います。

結木 啓太さん

株式会社ラフール 代表取締役社長

宮城県仙台市出身。営業支援会社などを経て、2011年、株式会社ラフールを設立し、代表取締役社長に就任、2019年2月、組織改善ツール『ラフールサーベイ』を提供開始。サービスローンチ約4年で有料導入企業数累計1,500社を超え、企業のウェルビーイング/人的資本経営支援を行っている。

宮崎 達矢さん

イグニション・ポイント株式会社 コーポレート本部 人事/総務/広報責任者

新卒で人事系コンサルティング会社に入社。在籍した7年間で約50社の人事・採用のコンサルティングに従事。その後、IT系メガベンチャーにて、採用責任者として年間300名以上の採用のリードを行い、人事制度設計、管理職向けの教育設計などを担当。
2019年に現職のイグニション・ポイントに参画し、3年間で80名から300名規模に会社が成長する中で、コーポレート部門の統括責任者として主に人事/総務/広報領域をメインに会社全体の組織・仕組みづくりに従事。

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