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【ブランド責任者のB面】美容師さんと一緒に育てるブランド「アルタイム」グローバルで培われたクオリティを日本市場へ

140年以上の歴史を持つヘアブランド「ウエラ」。その中のサロン専売ヘアケアブランドである「アルタイム」を日本人の髪や文化に合わせて翻訳し、消費者のもとへと届けているのが、ブランドマーケティングを担う板谷さん。

グローバルチーム・美容師・消費者・・・立場の違う人たちの意見をもとに、どうやって「よいもの」をつくり、届けているのか。板谷さんの価値観と仕事観に迫る。

この記事の監修者

板谷 紗也子さん

ウエラジャパン合同会社 プロフェッショナルヘア事業部 マーケティング&イノベーション本部 ブランドマネージャー

製薬、医療機器メーカーのマーケティングを経験後、2024年ウエラジャパン合同会社へキャリア入社。

アルタイム、システムプロフェッショナル、セバスティアンプロフェッショナルなどのプロフェッショナル向けヘアケアブランドのブランドマーケティングを担当。

グローバル本社や研究開発部門とコミュニケーションを図りながら、日本市場に向けたイノベーション・ブランドプランニングに従事している。

目次

思い込みを手放し、対話で磨き上げる

── まずは、現在の事業部でのお仕事内容を教えてください。

板谷さん弊社には大きく分けて、リテールヘア部門、プロフェッショナルヘア部門、そしてネイルブランド「OPI」を担当する部門があり、私はプロフェッショナルヘア事業部で、サロン向けのヘアケア製品のブランドマーケティングを担当しています。

まずはグローバルチームから、新製品のコンセプトやブランドの方向性が私たちの部署に共有されます。それを「日本市場にどうフィットさせるか」を検証し、日本での展開方法やブランド戦略を考えていくのが、おもな役割です。

── 海外で人気の商品でも「日本人にそのままハマるとは限らない」ということですね。

板谷さんそうなんです。弊社には「イノベーションセンター」という独自の研究施設があって、その研究開発チームと連携しながら、「どんな製品やメッセージが、日本の美容師さんやお客様に届くのか」を日々考えています。

── そうなると、最初のターゲットは美容師さんになるのでしょうか。

板谷さん私が担当しているのはサロン専売品なので、まずは美容師さんに製品をお試しいただき、さらに消費者の方にも使っていただく、という2段階で検証しています。

最初は、みんな同じにしか感じなかった

── 日々、さまざまな製品に携わる中で、苦労したことはありますか。

板谷さん最初は本当に知識がなくて……

製品をテストするとき、周りは経歴の長いメンバーが多いので、何種類か触ってみて『これはこう、こっちはこう』と話しているんですけど、私は正直、『同じにしか感じないな』と思っていました(笑)。

── 確かに、細かな違いを見分けるのは難しそうです……。

板谷さんそうなんです。ヘアケアって、質感や手触りといった繊細なところが勝負なので、最初はそこで苦労しました。でも逆に、『みんな、こんなに高いレベルで差を見ているんだ』と、めちゃくちゃ感動しました。消費者だったころには気づかなかった世界だったので。

経験だけに頼らず、第三者視点で考える

── 経験の差を感じることもある中で、意識されていることはありますか。

板谷さん一度自分を「無」にして、第三者視点に立って考えることを大切にしています。

私自身、業界での経験が浅いので、知識や経験だけで勝負するのではなく、まずは自分の思い込みを取り払って、「何が本当に求められているのか」を客観的に考える時間を持つようにしています。

── 経験が長くなると、自身の思い込みを過信してしまうこともありそうですね。

板谷さんもちろん知識や経験はすごく大事なんですけど、どうしてもそこに頼りがちになる側面もあると思っていて。だからこそ私は、一度「無」になって、第三者の視点で「何が正しいのか、何が求められているのか」を考える時間を、意識してつくるようにしています。

そうすることで、自分を俯瞰して見ることができたり、相手の意見にじっくりと耳を傾けられたりする余裕が持てるようになるんです!

100点より、80点から生まれる対話

── ほかにも意識されていることはありますか。

板谷さんもう1つ大切にしているのが「完璧を求めすぎない」ことです。もちろん、本当に完璧さが必要な場面もありますが、社内での打ち合わせやプレゼンでは、完璧なものを出そうとするより、少し「余白を残しておくほうがいい、と思っています。

それに、100点を出さなきゃと思うと身動きが取りにくくなるので、80点の状態になったら社内で共有する。そこから周囲の意見を聞いて、ブラッシュアップしていく。そのほうが気持ちも楽だし、結果的によいものも生まれやすいんです。

── みんなで100点をつくる、という考え方が素敵です!

板谷さん自分の考えを100%で固めてしまうと、相手の意見を入れる余白がなくなってしまう。そこは、すごく意識しているところですね。

たとえば、相手から質問されたときも、「私はこう考えていますが、どう思いますか」と、対話する余白を残しておく。それが次につながると思っています。

「これはよい商品なんです」が誰にも響かなかった

── 「一度無になる」という考え方は、どこから生まれたのでしょうか。

板谷さん新卒で入った会社で、営業職をしていたときの経験が大きいと思います。

当時は、自分の中に「これが正しい」「こう伝えるべきだ」という考えが強くあって。それを貫こうとすると、相手に響かなかったり、うまく伝わらなかったり、という壁に何度もぶつかったんです。

── 自分では正しいと思っていても、伝わらないことってありますよね。

板谷さんそうなんです。「これはよい商品だから」という伝え方だけでは、相手には届かない。「その人が何を求めているのか、何のためにその商品を使いたいのか」。そこまで考えられていなかったことに、あるとき気づいたんです。

── そこから、どう変わっていったんですか。

板谷さん一度自分の考えを取り払って、「本当の課題は何なのか」を考える、というやり方を、当時の上司に教えていただいて。それを少しずつ習慣にしていきました。

商品そのものの良さは変わらなくても、「商品に求められていること」や「どうすれば良さが伝わるか」は一人ひとり違いますよね。その違いを客観的に見られるようになったことが、自分にとって大きな転機でした。

答えを教えず、問いを投げ続けてくれた

── 上司の方から言われて、とくに印象に残っている言葉はありますか。

板谷さん具体的な一言というよりも「自分で考える方向へ導いてくれた」ことが、印象に残っていますね。

「あなたは何を伝えたいの?」「この方は何を考えて、こういうことを聞いたんだろうね?」というように、答えを教えるのではなく、自分で考えられるような問いを、ずっと投げかけてくれたんです。

── 答えをくれるのではなく、自分で考えるきっかけを与えてくれたんですね。

板谷さんそれが、自分の頭で考えるきっかけになりました。そこから、「もっとお客様にどう届けるかを考える仕事に携わりたい」という思いが強くなり、マーケティングの部署に進んだことにもつながっています。

常に生活者の視点を忘れない

── 「相手の目線に立つ」という考え方は、今の開発の現場でどのように活きていると思いますか。

板谷さんそうですね。研究開発チームがいろいろな製品を提案してくれる中で、「これはどのタイミングで使うんだろう」「お風呂の中で使うとしたら、面倒ではないか」「放置する時間が長すぎないか」など、生活者の視点を強く意識するようにしています。

── 開発側にいると、つい「よい商品だ」と前のめりになることもありそうですね。

板谷さんまさに!開発側にいると「これはすごくよい商品だ!」と思って進めたくなる場面もあるんです。

でも、生活者として見たときに、「少し手間に感じる」「もう少ししっとり感がほしい」「艶は出ているけれど、髪の柔らかさが足りない」と感じることもあって。

──  開発のプロでありながら、生活者の目線を持たないといけないんですね!

板谷さんあと個人的には、「周りの人が思わず触れたくなる質感か」「近くにいる人が心地よいと感じる香りか」というところまで考えるようになりました。

自分だけじゃなくて「周りの人がどう感じるか」、そうした生活者としての感覚を、開発やブランド戦略に反映することを意識しています。

日本の基準は、世界の中でも高い

── 生活者の視点を大切にされる一方で、グローバルチームとのコミュニケーションにおける難しさなどはありますか。

板谷さんそうですね。私のポジションでは、グローバルチームからコンセプトが共有されて、それを日本市場にどう適応させるかを考えるのですが、そこで問題になるのが、髪質や文化の違いなんです。

── 海外と日本では、どのような違いがあるのでしょうか。

板谷さん生活習慣や髪質だけでなく、美容師さんがサロンの中で製品を使う方法や、カラー・ケアに対するサービスのあり方も、まったく異なります。

だからこそ、日本市場の特徴を丁寧に伝えて、きちんと理解してもらうことが、とても重要なんです。

── なるほど。こういった違いを理解してもらうのは、簡単ではなさそうですね。

板谷さん最初は、商品の知識も十分ではなくて、意見を伝えることの難しさを感じていました。

グローバルチームから「すごくよいものができたから、日本でも展開してください」という話をされたときに、「日本ではこういう背景があって、こういう見せ方をしたいんです」と、説得しなければいけない場面が多くて。

「そうなんだ」で終わっていたのが、変わった瞬間

── その壁を、どうやって乗り越えていったのですか。

板谷さん最初は、知識がないので「そうなんだ」で終わってしまうところもあったんです。でも、経験を重ねる中で、美容師さんやお客様が何を求めているのかが見えてくると、「本当に日本人に合うものを届けたい」という熱い気持ちを持てるようになってきました。

その思いがあるからこそ、「日本ではこういう市場背景があり、こういう見せ方で展開したい」と、より明確に、自信を持って伝えられるようになりました。

この2年で、そこはかなり強くなった部分だと思います。

── 日本で求められていることを、ちゃんと伝えることが重要なのですね!

板谷さんそうです!ただ、それだけだと不十分で……。やはり、お互いを知ろうとしなければ、相手にも受け入れてもらえないので、こちらの意見を伝えるだけではなく、まず相手の背景も理解するようにしています。

「海外ではこういう髪質の方が多いから、こういう製品が求められるんだろうな」と理解したうえで話をする。

最終的なゴールは、日本の美容師さんや消費者の方に価値を届けることなので、そのためにも、お互いの背景を理解したうえで提案することが大事だと感じています。

サロンクオリティを自宅で。使うたびに髪の手触りを楽しめるブランド

── ここからは少し、製品についてもお伺いします。アルタイムの一番の魅力はどんなところですか。

板谷さんアルタイムには「瞬間」というキーメッセージがあって。ご自宅でも手軽に取り入れやすく、使用感や仕上がりを感じていただきやすいのが特徴です。

サロンクオリティなのに、ご自宅で手軽に使えて「髪の手触りや指通りの変化を楽しんでいただける」。そこが、このブランドの大きな魅力です

──  「アルタイム」という名前にも、意味があるそうですね。

板谷さん「アルティメット(究極)」と「タイム(時間)」を組み合わせた造語なんです。

お客様がこれを使うことで、髪の変化を楽しんでいただいたり、しなやかさを実感していただけたり、そんな究極の時間を過ごしてほしい」という思いを込めています。

──  具体的には、どのような特徴があるのでしょうか。

板谷さん「リペア」はダメージ補修に特化した製品で、「スムース」は髪の広がりやうねりに悩む方に向けた製品です。

日本人女性の約65%が、湿気などによる広がりやうねりに悩んでいると言われています。私自身も髪が広がりやすいタイプなので、自分の悩みに合うものを選んでいただくことで、それぞれの良さを実感いただけると思います。

一人ひとりに合うものを届けたい

──  素人質問で恐縮なのですが、「サロン専売」という形にしているのは、なぜでしょう。

板谷さん弊社はもともと、プロフェッショナル事業を大きく展開している会社で、美容師さんとのつながりが近いんです。

だからまず美容室で使っていただいて、「プロである美容師さんが何を求めているのか」を知り、クオリティを追求していく。そのうえで、お客様に本当によいものを使っていただきたい、と考えています。

──  髪のプロである美容師さんが髪質や仕上がりを見ながら、お客様に合うものを提案することが大切なんですね!

板谷さんはい!サロン専売品は、効果をしっかり感じていただける反面、髪質に合わない使い方をすると、重さやベタつきを感じてしまうおそれもあります。

──  どんなによい商品でも、自分の髪質に合わないと、かえって逆効果になってしまうこともあるんですね。

板谷さんそうなんです。「ふんわりさせたいのに、しっとりしすぎた」「ボリュームを抑えたいのに広がってしまった」といったミスマッチが起きてしまう。だからこそ、髪のプロである美容師さんの判断のもとで選び、使っていただくことを前提につくっています。

美容師さんがお客様一人ひとりに向き合う時間に、製品を通して寄り添いたい。そういう思いから、サロン専売という形を大切にしているんです。

──  最後に。アルタイムというブランドを、これからどう育てていきたいですか。

板谷さん一人でも多くのお客様に「今日はこの髪で出かけるのが嬉しい」「少し幸せな気持ちになれた」と感じていただけたら、幸せですね。

そのためにも、「お客様の髪の悩みやライフスタイルに寄り添いながら成長していくブランド」でありたいと思っています。

Wellulu編集後記

経験が浅いからこそ、一度自分を「無」にして、第三者の視点で考える。板谷さんのお話からは、知識や経験だけに頼らず、生活者の声に耳を傾ける大切さが伝わってきました。

100点を一人で目指すのではなく、80点の段階で周囲に共有し、対話を重ねながらよりよいものへと磨いていく。グローバルチームや美容師さん、それぞれの背景を理解しようとする姿勢が、日本市場に合う製品づくりにつながっています。

完璧を抱え込まず、周りの力を借りながら、一人ひとりの髪や暮らしに寄り添う。板谷さんの柔軟な仕事観が、ブランドを育てるうえで大切なことを教えてくれました。

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